プロローグ
「友情はコボルトよりも弱く トーレナ岩よりも消えやすい」
(ドカポン3世著「ビビルマウンテンの黄昏」より)
友達の家に行き、テレビゲームをプレイする。
2人協力ゲームならば仲良く遊べるだろう、そう思っていた。
だが、数十分後、何故か僕たちは二人でどつきあいの喧嘩をしていたのだった……。
解説
一緒に遊んだ者同士の人間関係を破壊しかねないゲームのことである。
ゲームは一人でコツコツ遊び、複数人で遊ぶ場合は順番に交代しながらスコアや到達ステージによりそれぞれの腕を競うのが当たり前であったのは黎明期の話。ファミリーコンピュータの時代から2人で対戦出来るものから、2人で協力するものまで様々なものが存在していた。
対戦出来るものはお互いの腕前が拮抗していれば良勝負、名勝負を演じることも可能であり、本来1人向けのゲームだが友情を確かめるべく二人で協力する、というタイプのゲームもあった。
だが、一部のゲームでは二人同時プレイをしながらも相手の邪魔をする事が出来たり、仕様の都合上何ら悪意はなくても相手の邪魔になってしまったりするケースも存在する。
友情破壊ゲームとなりうる要素は様々であるが……。
- 対戦型のゲームであるが対戦が最終的にリアルに及びがちなもの
- 協力型のゲームであるが仕様上邪魔をしたり攻撃したりできるもの
多くはこのどちらかである。
仕様上、ボードゲームやアクションゲームに多い。
前者のものはヒートアップしすぎて、ということになる。
対戦である以上相手の嫌がることをやり続けるのが勝利への定石であり、これに対して腹を立てるのはいささか大人げないと言えるだろう。
しかし、古くは人生ゲームやモノポリー、ビデオゲームに場を移してからはドカポンシリーズや桃太郎電鉄シリーズ等、ボードゲームにおいては相手を妨害し、コツコツ積み上げてきた努力の結晶を容赦なく破壊しつくして再起不能にまで追い込むことが可能な状況が存在する。
あるいは、格闘ゲームや対戦型RPGでも相手に何もさせず、封殺してしまうといった状況もあるだろう。
これが時に実力というより運要素により発生することもあるとなれば、腑に落ちないのも人情というものだろう。
後者のものはマリオブラザーズなどのアクションゲームで発生しやすい。
本来は難所を協力して乗り越えるシステムであるはずが、システム上いわゆるフレンドリーファイアが可能で悪ふざけがエスカレートしてしまったり、本来はゲームが苦手なプレイヤーをリフトアップして運ぶシステムであるはずがうっかり踏み台として奈落へ蹴り落してしまうなどサポート用の仕様が悪さをしたり、友達の腕が極端に悪く、サポートに駆けずり回ったり足を引っ張られたり、あまつさえ失敗などという事態を引き起こしながら何ら悪びれることが無く、それどころか『なんでもっと早く助けなかったんだ』『さっさとクリアしろ』と責める側にすら回る様子に鬱憤を募らせたり…
と、様々な事情から軋轢になってしまうケースがある。
あくまでゲーム、そんな気持ちでプレイすることを忘れてはいけない。
なお、対戦ゲームにおいて単純に彼我の実力差が大きすぎて一方のプレイヤーが負けたことで不機嫌になるだけの場合は「友情破壊ゲーム」扱いは基本的にされない。
友情破壊ゲームの一覧
- マリオブラザーズ
- アイスクライマー
- ドカポン
- 桃太郎電鉄
- いただきストリートシリーズ
- 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ
- カービィボウル
- マリオパーティシリーズ
- カービィのエアライド
- テトリス武闘外伝
- マリオカートシリーズ
- NewスーパーマリオブラザーズWii/U
- Nintendo Land
- 格闘ゲーム全般
- FPS・TPS全般
- モノポリー
- スターフォックスアサルト(対戦モード)
- SPYvsSPY
- パラノイア(TRPG)
- バトルトード - 作品やルールによっては例外あり
- 人生ゲームハッピーファミリー(配信終了)/ご当地ネタ増量仕上げ※
- AmongUs
- ボンバーマン
- ロックマンエグゼ
- 遊戯王OCG - 相手のターンでも使えるカードを持っていなければ先攻1ターン目から一方的にカードを展開し続けて相手に何もさせない土台を作り上げること等が当たり前のように行われるカードゲーム。「ソリティア」と揶揄されることも。
- 流星のロックマン
- ダウンタウン熱血行進曲 - リメイク版で本当にリアルファイトがネタにされた。
※あまりのクソゲーっぷりに友情破壊するという意味。
余談
ゲームだけの話に限らず、スポーツや盤上遊戯も含め、対戦において「勝利すること」を追求した場合、最も簡単かつ確実な方法は自分だけが好きに動けて、逆に相手にやりたい事をさせない状況をつくることである。そして、その上で対戦のルールに反するものでなければ、非難される謂れは本来無い(あくまでルール上問題ない方法で勝利を目指しただけ)。
そのため「友情破壊」だの「友達が居なくなる」だの言われても、本来は気にする必要など無いのだ。
しかし、「ゲーム」というのは本来「コミュニケーションツール」の一種でもあり、参加しているプレイヤー達が互いに楽しめるからこそ成り立つものでもある。
故にただ勝つことだけを目標として一方的に相手を蹂躙する行為はコミュニケーション拒否と同じことであり、「自分さえ良ければ精神」の表れとして非難されることが多い。
勿論、絶対に勝たなければならない緊迫した事態というものは人生において往々にして遭遇するが、「友達とゲームで遊ぶ」というのはそういうものではない。それ故に「コミュニケーションの一環としてワイワイ楽しもうと思ってゲームを開始したら対戦相手からただ一方的に蹂躙された」という認識の齟齬から喧嘩等が始まってしまうのである。
この手の話題で騒ぎになるのは主に小学生辺りの低年齢層あたりの、つまり「認識力不足」や「自分さえ良ければ精神」「他者への気遣いの無さ」等と言った精神的な幼稚さによって生まれる問題であるが、残念ながらプレイヤーの年齢に関わらず起こりうる問題でもある。
昨今はネット通信等も発達したが、対戦ゲームである以上自分以外にもそれをプレイする「人間」がいることを意識することが大事である。
逆に「予め何でもありをルールとして定めておく」「予め『これはしてはいけない』という禁止行為を明確にしておく」等の一手間を設けることで簡単に回避できる問題でもある。互いに納得している行為の範囲内であればそれをされて文句を言う方が間違いなのだから。
例えば格闘ゲームの大会にて永久コンボや特定のキャラクターの使用を禁止するといったルールの整備が行われるのはこれに起因している。
そしてそういった一手間を行わなかった弊害として生まれた認識の齟齬により、勝つためには何をしても良いと考えてしまい、一方的に蹂躙したりされたりといったことが起こりうる。
それに対して文句を言われても、勝っている側は「勝てないから悔しいんだ」と捉えてしまい、行ってしまった煽りなどからさらに激しい喧嘩へと繋がることも精神的に幼稚な者にありがちなことである。
また、最近は様々な対戦ゲームにおいて「ランク戦」が導入されていることも多く、これは「勝つことでランクが上がり、同じような強さの者同士で戦える=より楽しめる」ことを目的とした仕様なのだが、それを曲解して「ランクが上の者の方が偉い=勝てば官軍=勝者こそが正義」と捉える者もおり、しばしば勝敗が決した際に「死体蹴り」や「挑発」「罵詈雑言」等を平然と行うプレイヤーが現れてしまっている(そういう「自分さえ良ければ精神」によって逆に自分が負けたor負けそうになった際に一方的に戦いをやめる「切断」行為も昨今の問題となっている)。
そういった相手への配慮やマナーを欠いた言動が友情破壊……他者との争いに繋がってしまうのである。
そして残念なことにこの誤った認識はプロゲーマーと言われるような腕の者であってもしばしば現れ、大会後に問題視され、ネット上で炎上するというのも珍しい話ではない。
アップデートによるバランス調整ができる現代のゲームでは少なくなったが、昔のゲームでは安易なハメ技やゲームの基本的な駆け引きをぶち壊しにする戦法(いわゆる害悪戦法)、飛び抜けた強キャラ、バグ技などのバランスブレイカー要素があることも多かった。
そういった要素を仕様上できるものを使って何が悪いという層とそれはゲームとして面白くないからやめてほしいという層で揉めるのもよくあることであるがこれも単に先に話をしておけば防げる問題である。
この問題に対する解決策は上記のように予め「ルールを定めておく」というものもあるが、あるいはそのゲームでの対戦をやめるというのも一つの選択肢であろう。
どうやっても他人との対戦を楽しめない作品ならばそのゲーム自体をプレイしない、あるいは一人用プレイモードのみ楽しむのもありである。
なんにせよゲームとは本来「娯楽」であり、参加する者皆が楽しめるようにルールの整備を含めた気遣い、マナーを意識するべきである。