この記事には、親記事になっている人物のネタバレがあります。
概要
本名を伏せていたのは、「掠風竊塵(リョウフウセツジン)」という通り名で活躍する、狙った獲物は必ず奪う大盗賊であったため。
その悪名高さは、外界と隔絶された生き方を送ってきた丹翡の耳にも届いていたほど(ただし、過去の厄災の経緯から、物理的に断絶した状態にある隣国出身の殤不患はさすがに知らなかった)。
また、彼の悪名は盗賊のそれもあるが「大悪党を自らの策謀で欺き、踊らせ、奪い取り、傲岸な鼻っ柱を完膚無きまでにへし折ることで、相手を最大限の屈辱に塗れさせる」ことを至上の悦びとする、自身の困った性根に因るところも大きい。
しかも悪党や奸物ばかりを標的にするのも義侠心などからではなく、ただの一般人や善人よりも悪人のほうが野心があって精神的にしぶといので苦しめ甲斐がある程度の理由でしかないフシも見受けられる(本人曰く「如何なる邪道でも断ってしまっては面白くない。悪党は生かしたままからかって楽しむのが一番」とのこと)。
これだけだと「正義の味方」ではないにせよ「悪の敵」ぐらいに思えるが、彼は策謀を巡らす過程で第三者を平気で巻き込み利用するため、邪悪ではないが外道ではある。ゆえに人から買う恨みも相当なもので、「殺したがる人間を集めたら行列ができる」とさえ言われる始末。実際、彼に復讐しようとする輩は少なくないが、大抵が返り討ちにされて心を折られてしまう模様。
――つまり、本作における彼の旅の目的は「丹翡に協力する事」でも「金品」でも「天刑劍」そのものですらなく、蔑天骸に嫌がらせをして愉しむ事であった……
おまけに、このひん曲がった性根は相当な筋金入りで、「極上の獲物」と見込んだ蔑天骸に対してせっせと嫌がらせに勤しんだ結果、最終盤で逆ギレして開き直った彼に笑いながら死に逃げされた際は、それまでのクールで余裕綽々な態度はどこへやら、地団駄踏んで悔しがり、蔑天骸の亡骸に掴みかかって「卑怯者!」と食ってかかるという、天邪鬼どころではない屈折ぶりを見せている。
…そこ、「卑怯者」とかお前が言うな。
なお、刑亥、殺無生達は過去に同様の経緯で彼に酷い目に遭わされた、いわば「掠風竊塵被害者の会」の面々である。
こう書くとまるで権謀術数に長けた恐るべき大悪党のように見えるが(実際そうでもあるが)、その一方で相手の度量を見誤ることも割とよくある。
(それでもその辺の凡百の小悪党よりかは遥かに鋭いほどの聡明さではある。さすがは大怪盗)
元々は剣の使い手であったようだが、剣の道を修め続けた結果、武というものは極めれば極める程に更なる領域が見えてきてキリがないという事を悟り、更にそのまま続けていけば「剣を極めて悟りを開いてしまっては渾沌とした世界を愉しめない」という酷い理由で修行をやめ、現在の盗賊家業に鞍替えした。
しかしながら剣の道そのものを侮ったわけではなく、「侮らなかったからこそ、ついには嫌気がさした」とも言っている。
実際に、外伝においては殺無生を指して「はしゃいでるだけの未熟者」と呆れ、剣技大会に対して「気に喰わない」などと吐き捨て、自分を一瞬とは言え追い込んだ人物の才を惜しんだりと、武芸に関しては一家言を持つ部分が見て取れる。
それでもなお蔑天骸と互角以上という凄まじい剣技の持ち主であり、最終決戦では彼の攻撃を全て涼しく受け流し圧倒。最後は蔑天骸が全身全霊で放った奥義を、自身も奥義で迎え撃つ…と見せかけて受け流した挙げ句、寸止めで剣を納めて、彼にさらなる屈辱を味あわせるという性格の悪すぎる舐めプを披露した。もっとも、剣に拘らずに術も駆使すれば勝負は蔑天骸に軍配が上がっていたとされるため、彼を煽って剣術勝負に持ち込んだ凜雪鴉の作戦勝ちともいえる幕切れである。
事件が解決した後は、殤不患の持つ魔剣目録を狙い現れるであろう、より弄り甲斐のある悪党…もとい、自身よりも実力のある強者に目標を定め、獲物を求めて殤不患の後を追いかける。そしてついていった先で新たな獲物を見つけるのだが…?
使用武器・道具類
煙月
師である廉耆が作った武器で、普段は装飾された煙管の姿をしているが、凛が本気を出したときは曲刀に変化する。
煙管の形態でも煙による幻術や火炎放射といった攻撃ができる他、火皿の部分を分離させ鎖分銅として使うことも可能。
さらに凛の技量もあってのことだろうが、神誨魔械による攻撃を受け止めるほどの強度を誇る。
変装袋(仮)
頭に被ることで対象の人物に変装できる袋。
顔だけでなく声まで変化するものの、1期では殤不患が演技下手だったせいであっさり見破られてしまった。
しかし3期では同じく演技下手な人物が凛に成り切っていたので、何らかの改良が施されたと思われる。
通信装置
3期で別行動を取る際に殤不患に渡した通信装置で、相手が異次元にいても通信可能という高性能な品。
外見は凛の人形……というか、ねんどろいど凜雪鴉そのまま。
首を回転させると目が渦巻きになるなど、無駄なところが凝っている。
凛曰く「できるだけ可愛らしい外見にした」とのことだが、殤不患は一目見て「呪われそうな代物」と評し、同じく動く器物である聆牙からも気味悪がられた。
終盤では殤不患バージョンも登場した。
関連タグ
関連人物という名の被害者達(※3期までのネタバレを含みます)
上述の蔑天骸の様な失敗もあるが、本人にとって「嵌めてやった標的が望んでいた反応を見せてくれなかった」程度の差でしかなく、この男の標的或いは踊らされた悪党達はほとんどが筆舌にし難い形で失墜に追い込まれている。
判明しているだけでもその被害は甚大であり、殺無生を嵌める為の過程で利用された鐵笛仙は騙されたまま謀殺された挙句、「劍聖會」も「気に入らない」という理由で大量の犠牲者を出す形で潰され、玄鬼宗は弄ばれた末に頭目や幹部連を喪って壊滅。異飄渺は不憫極まりない最期を遂げ、照君臨は死に勝る地獄に堕とされる等々…。
関連人物の中では唯一被害を受けずに完全な協力関係を結んでいる(自分の身の丈を理解し行動していたため、愉しむ対象にされることはついぞなかったらしい)。殺無生を陥れる際には協力したが、蔑天骸のときはそちらに寝返った。
結婚詐欺(?)で交友関係を壊された事に始まり、幾度も邪魔され、煽られ、親族(後述)までも狙われ、と一番被害に遭っている。
凜に乗せられて暴れた結果、師匠を自らの手で討ち殺人鬼の汚名を着せられた。
上述の通り自慢の剣技を舐めプで負かされたが一矢報いた。
しかし、彼に不快感を与えた程度で終わってしまい、その後は死体蹴りを受けている。
標的ではないが蔑天骸へ近づくのに利用される。しかも道中で家宝を盗まれた。
本人は憤りよりも、その常識の埒外な人間性と凄まじい技量に終始圧倒されており、結局敵対はせずに利害の一致で協力関係のままだった。
巻き込まれた勢にして、凛が一方的に友人扱いしている男。散々こき使われた上に獲物を引き寄せる生き餌として利用されている。
西幽の悪徳役人。
汚職の証拠を暴かれ失脚し、西幽・東離の双方でそれまで培ってきた地位と居場所を失ってしまう。だが、それが凛の企みとは最後の最後まで一切気付かなかったばかりか、あっさり「身軽になったので別の悪事でまたやり直す」と開き直った挙げ句、驚愕して必死に嘯を煽ろうとする凛に対し、彼の「悪の矜持」を真っ向から否定して嘲笑する発言をして激怒させた(嘯曰く、「悪事をするのに誇りや矜持なんか持つ方が小物だろw(要約)」)。
どうも凛はこの手のプライドが無く執着心の薄い恥知らずなタイプの悪党とは相性が悪いようである(企みを台無しにしてやったところで、拘らないので自分からさっさと捨てて次へ行ってしまうため)。
ある意味、本質的に小悪党だったからこそ、凜に一泡吹かすことができたとも言えなくもない。
結局、凛に愛想を尽かされて(?)そのまま捨て置かれ、色々あって凜とは全く無関係な所で自滅同然の最期を迎えている。
なお、凛としては軽いトラウマになったようで、嘯狂狷の名を聞くことすら嫌がり、さらに「今すぐ誰かが酷い目に遭うのを見ないと心が病んでしまう」という最低な理由で殤不患に協力した。
邪教組織「神蝗盟」の一員。
善性故に完全に対象外だが、禍世螟蝗への足掛かりとして利用される。
神蝗盟の一員。
凜の策に乗った結果、いつの間にか殺されていた。
1期からの知り合い。
敵地にひとり取り残されるわ、身代わりに洗脳されるわ、と大変な目に遭うも五体満足で帰還した幸運な男。
刑亥の姉で妖姫・七殺天凌の正体たる妖魔。
ようやく肉体を取り戻しヤンデレの束縛からも逃れられたと思ったら、そのヤンデレを召喚して全てを台無しにされた挙句に身動きが取れない剣状態のまま永遠に宇宙を漂う羽目になった。
前述のヤンデレその人。
2期では嘯狂狷との一件で苛立っていた凛に、「誰だか知らないが高笑いしていたから」という理由で八つ当たりされ、空の彼方へ飛ばされる(一応浪巫謠を助けたことになるが、この時点ではお互い本当に知らない人である)。
3期の中盤まで敵対していたが、最終話で利害が一致した凛に協力。最終的に生身で宇宙に放り出されたが「剣の媛を独占出来るなら心中上等」な婁にとって願ってもない展開であり、結果的に掠風窃塵のお陰で誰よりも幸せな最期を迎えた。
ニトロプラス20周年記念イベントで共演。
丹翡・刑亥・獵魅・蠍瓔珞の4人を相手にいつもの営業をしている最中に乱入され魔法少女のシステムを看破された事で女性陣の怒りを買ってしまい、(凛曰く「お前だけは許してはおけぬ」という人々の願いも乗せた)合体攻撃の前に「わけがわからないよ」と呟きながら爆散した。
なお、キュゥべえ自身は魔女の真相を一瞬で見破った凛を「僕たち種族の考え方を理解できる人間なのかもしれない」と評し、真相を知った刑亥からも同類扱いされている(もっとも被害者たちの素性が大きく違うのだが)。
第4期ネタバレ注意
魔界に来てから「何故か心地よさを感じる」と語り、浪巫謠と同じく、実は魔族の血を引いている可能性が示唆される。
そして、長らく声だけしか登場していなかった魔王が画面に現れると、その外見はなんと掠風竊塵と瓜二つであった!
…それでは、実は掠風竊塵は魔王の血縁者だったのか?……などという単純な話ではない。
その真実、掠風竊塵は欲を司る魔王の分体であったのだ。
かつて、魔王は窮暮之戰を起こしたものの、人間は知恵をつけ、いつか逆転されると推察し、同族の強化を画策する。そこで無心となるため、自身の欲望的な部分をみずから切り離し、転生の秘術で人間の世界に転生させたのである。
そこから生まれたもの、それこそが掠風竊塵の正体であった。
他の作品で例えるなら、『ドラゴンボール』シリーズにおけるピッコロ大魔王と神様の関係と同じ図式である。
そして、大元の魔王は転生後の自分の分体がどうなったのか全く関心を抱いていない有様だった。
以上の予想外すぎる事実を知った掠風竊塵は、さすがに驚愕せざるを得なかった。
物思いに耽り、今まで不思議に思っていた自分の趣味趣向の異質さにようやく得心する。
そして、これからについて答えを導き出し、刑亥の前で謎の高笑いを始める。これまで多くの悪党を欺き陥れることに楽しみを抱いてきた掠風竊塵にとって、「自分との対決」は最高の愉悦をもたらすと感じ取ったのだ。