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未来の想い出

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みらいのおもいで

藤子・F・不二雄の漫画。1991年よりビッグコミックに連載され、翌1992年には映画化された。

概要

人生に後悔している漫画家・納戸理人が「記憶を持ったまま人生を何度もやり直す」というループものの作品。

なお藤子・F・不二雄は本作の中で、ループものの基本構想が『ファウスト』(ゲーテ)を元ネタにした発想の延長線上に過ぎない事を指摘しており納戸に「(時間遡行あるいは逆行転生を基礎とするループものそのものが)古いね。ファウスト以来、手あかのついた題材じゃないか」と突っ込ませている。

登場人物

  • 納戸理人(メイン画像奥の人物)

主人公。落ちぶれた漫画家。1971年に漫画家となるため青雲の志を抱いて上京し、ヒット作『ざしきボーイ』で成功を得て他の作品も注目されるが、肝心の『ざしきボーイ』の人気の陰りをきっかけに凋落して事実上の一発屋に堕し、あとは打ち切りと移籍を繰り返す漫画業界のお荷物となり、あげく1991年に出版主催のゴルフコンペでホールインワンを叩き出した歓喜のショックで突然死して、上京した日の朝にタイムリープ。以降、上京から突然死までをループし延々と同じ間違いを繰り返す無為な周回を強いられる事になった。

当初は自分のループに気付いていなかった(ループの度に記憶のリセットがかかり以前の周回を「夢」として認識していた)が、ある周回にて交通事故に遭った事でループの存在に気付き、運命への反逆を開始する。

ループに気付いてなかった周回では代表作『ざしきボーイ』のヒットに図に乗った挙げ句、悪友の誘惑に負けた上で担当やスタッフを蔑ろにした結果、それを恨みに思った(のちに雑誌社のエラいさんになった)若手編集と彼に目をかけられた自身の弟子に出し抜かれて転落していく運命であった。

ループに気付き「やりなおし」を始めた後は人間関係を大事にすると共に「未来の想い出」を用いて自らの有利になるよう行動する。しかし、もとのループの流から大きく外れようとすると凄絶な頭痛に襲われるようになる。

  • 水谷晶子(メイン画像手前の人物)

劇団研究生。納戸の最愛の人で本作のヒロイン。生活苦からヌードモデルのアルバイトもしており、この事からデッサンの練習をしていた納戸との距離が近づいていた。

元は町工場の娘であり、納戸が気付いてなかった周回では実家が経営難の苦境に晒された結果、親に泣いて呼び戻される事となり、泣く泣く夢を断念して実家に戻り家の経営を手伝う事となったが、時勢に押された結果として資金繰りは悪化。いや増した経営のプレッシャーとストレスの果てに正気を失った両親によって一家心中に巻き込まれ、親によって実家に放たれた炎の中に巻かれて苦しみのまま無意味に儚い人生を終えた。

納戸が「やりなおし」を始めた周回では、納戸が「未来の想い出」を使って宝クジを当て、その金を実家の経営に回した事で家が持ち直し、実家に帰る事はなくなった。しかし、彼女の周囲には、なぜか不穏な「何か」がつきまとうようになる。

  • 郷カオリ

納戸の漫画家仲間。納戸が「やりなおす」前の世界における妻だった人物。資産家(不動産会社)の令嬢であり親のスネをかじりながら漫画家を目指していたが、その出自(甘やかされて育ったお嬢)ゆえに作風は独り善がり。当初は短編の持ち込みもやっていたが、それで目が出ない事に業を煮やしたあげく「自分は短編には向いてないんだ」と自らの未熟という現実から逃げるがごときの盛大な勘違いを冒し、すでに雑誌連載漫画全盛となっている時代に数百ページものボリュームを誇る大長編巨弾少女漫画『ファラオ五千年のたたり』を執筆して出版社に売り込もうとしていた。しかし貸本漫画時代ならともかく雑誌連載が漫画のメインとなっている現在にそんなものを持ち込みされても出版社としては時代遅れの遺物としてもて余すだけである、という現実を容赦なく突き付けられ情熱を折られて漫画家への道を断念した。納戸と結婚したのは漫画家を諦めて生じた心の空虚を埋めるためで、その空虚が晶子を喪った納戸の空虚に共鳴してしまったがゆえ。そのためお互いに愛情なんか欠片もないのに惰性で結婚まで突き進んでしまったというものであり、晩年に至っては納戸の苦悩にもほぼ無関心。旦那(納戸)へのアドバイスもまずは旦那の存在と考えの全否定から入るというていたらく。主婦仲間と俳句のカルチャースクールに通っており、納戸の食事も忘れて放蕩し、そのまま午前様になる事も数知れず。お互いに関心もへったくれもなく夫婦仲は完全に冷えきっていた。

  • 沢井登

納戸の親友で、納戸や郷が所属していた漫画サークルのまとめ役。人情漫画で人気を博し落ちぶれた納戸とはもはや立場も何もかも違っており、もはや業界内では納戸が近付く事も憚られるような立場にあるが、それでも納戸を友として遇し、彼の姿を見れば追いかけて寄り添い、友の復活を信じて励まし続け、ネタ出しやアドバイスもしていた。担当(出版社)もサークルメンバーだった皆も妻も見放していた納戸を、ただ一人見捨てずにいた心の友

  • 矢吾団平

納戸のアシスタントを務めていた漫画家。納戸が原稿を落としかけた際に代原として自作の『やぶれハッポー』を提供して担当編集を助けた。この事をきっかけに人気を得て納戸から独立。やがて『やぶれハッポー』は納戸の『ざしきボーイ』を越える人気を叩き出し、結果としてではあるが納戸の凋落の原因を作った人物となってしまった。ただし本人は今でも納戸を師匠として敬愛しており、いかなる時も師匠を下には置かず礼儀を欠かさぬガチの紳士。ただ、そんな彼の態度も凋落後の納戸にとっては自らの境遇をより惨めに感じさせてしまうという精神的な苦痛のタネとなっている。

  • 「奴」(運命の神)

ループに気付いた納戸が感じていた謎の存在。この存在に弄ばれていると感じた納戸が、打ち負かして鼻を明かしてやる、と明言した存在。納戸が「未来の想い出」を使おうとする度、彼に(警告として)頭痛や体調不良を起こさせ、その行動を断念させようとする。やがて納戸自身が警告への対処をするなど自らのいうことを聞かないと理解すると、その警告をやめるが、最終的にはとんでもない形で運命の帳尻を合わせようとした

映画版

1992年に『未来の想い出 Last Christmas』として映画化される。監督は森田芳光

主人公は原作と違い、女性の納戸遊子(清水美砂)と金江(杉田)銀子(工藤静香)。原作者・藤子・F・不二雄も2周目の人生で出逢う占い師役で出演している。また、赤塚不二夫石ノ森章太郎といった大物漫画家がパーティーの客として出演している。

映画版登場人物

主人公の売れない女性漫画家。出版社主催のゴルフコンペで倒れ亡くなるが、気が付くと10年前に戻ってしまう。意外と力が強く、劇中で大の大人の男を2人倒している。しかもそのうちの1人は銀子に怪我を負わせた凶器持ちの暴漢(演:唐沢寿明)である。

もう一人の主人公で1周目では平凡な主婦。占い問屋でアルバイトをしているところで遊子と知り合う。彼女もループに巻き込まれ、2周目では1周目の記憶を使って競馬と経済講演で大儲けをするが・・・。

ファッションデザイナー。2周目以降での銀子の恋人。彼を成功に導くことが銀子の目標となる。

狂言師。2周目で出逢った遊子の恋人で、銀子が結果を知らなかったレースが行われた競馬場で出逢う。ループを匂わせる発言をするが・・・。

出版社の編集長。

銀子の1周目での夫で証券マン。

女性漫画家。遊子とは対照的に売れっ子。

余談

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