松前城
まつまえじょう
別名を正木城と呼び、正確な築城年数は不明であるが、南北朝時代から江戸時代まで存在した。加藤嘉明(豊臣秀吉に仕えた戦国大名。賤ヶ岳七本槍の一人、なお嫡男は無能)が一時居城としたものの、関ヶ原の戦い後の慶長8年、城主が松山城(加藤嘉明が築城させた城、金亀城、勝山城、伊予松山城、天守閣が現存する12の城の一つ、また天守閣に伴う建物も木造で再建されている)に移動したため廃城となったため、遺構などは残っていない模様である。
北海道における唯一の近世日本式城郭であり(他には西洋式の稜堡式城郭(五稜郭など)、野戦築城(館城など)、アイヌのチャシ、中世城郭(いわゆる道南十二館)しかない)、近世城郭としては日本で最後のものである。日本100名城のひとつ。
分類としては平山城(平野の中にある山、丘陵等に築城された城)であり、独立式層塔型3重3階の天守閣を持ち、現在の北海道渡島総合振興局管内松前町に築造された。
別名福山城とも呼ばれ、現在では桜の名所となっている。
歴史
戦国時代、慶長5年に蠣崎氏(糠部郡蠣崎、現在青森県むつ市の一部を領した一族の子孫、のちの松前氏)によって陣屋が建築される。この陣屋が福山館といい、松前城の前身である。
蝦夷にはシャクシャインの戦い以降戦乱がなかったため、そのまま城となることはなかった。しかし、幕末になると津軽海峡を無断で横断する外国船、特にロシアの艦隊が現れるようになった。そこで外国船に対抗するため嘉永2年、江戸幕府は当時その地を治めていた松前氏に築城を命じる(松前築城)。
築城の際、函館近郊の庄司山に築城する案もあったものの、城の移転の費用が出ないこと、それまで中心であった松前港が政治拠点の移築により寂れることなどの理由により、福山館を増築する形となった。
1868年(明治元年)、戊辰戦争中に、松前城は艦砲射撃を受けるおそれがあるということで松前藩は館城(現在の檜山振興局厚沢部町)に移転するが、館城は平地につくられた野戦築城程度のものであり、完成直後に箱館戦争で旧幕府軍の攻撃を受け、落城した。
松前城は廃藩置県において本丸周辺以外が破却された(なお、その際出た石材は松前港の船着き場として再利用された)ものの、第二次世界大戦の空襲の際にも天守閣は生き残った。
しかし1949年(昭和24年)、当時城跡に存在した町役場の失火のもらい火により焼失、1961年(昭和36年)に鉄筋コンクリート作りの天守閣が建築されている(ただしこれは耐震強度が不足している模様であり、建て替えの可能性が存在する)。
現状残存している当初からの遺構は本丸御門、御殿玄関、石垣、土塁堀である。
城の状況
前述の築城経緯により城壁に鉄板を仕込み、天守の壁には材木の中では硬いとされるケヤキの板を仕込む、屋根には北国の気候では割れやすい瓦の代わりに銅の板をふくなど、特色のあるつくり方をされている。
この特徴により海側からの砲撃に対して過剰なまでの防御力を持つものの、搦め手と呼ばれる城背後部の防御はほとんど考慮されておらず、明治元年の戊辰戦争の暁には五稜郭を落とし勢いづく土方歳三率いる700人の部隊にこの搦め手を攻められ、わずか数時間で落城したという。
また、通常の城では見られない緑色の石垣を持っていた(これは近辺で採取される緑色凝灰岩を用いたためである)。
明治期に本丸以外が破却され、天守閣はじめ構成建築物の多くが消失(のち天守閣は鉄筋コンクリートで再建)した現在も、本丸の堀や石垣、土塁、付属社寺などの遺構に旧状をとどめる。平成になり周辺の発掘が始まり、本丸以外の遺構が残存していることがわかりこの城の建築当時の規模等が明らかとなりつつある。
またかつて松前町を走っていた国鉄・JR北海道の松前線は松前駅付近で土塁・堀の跡地を経由しており、土塁跡を「松前トンネル」という鉄道用トンネルが貫通していた。
廃線後はトンネルの出口こそ塞がれているが、その他はほぼそのままの姿で残されている。
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