CV:三木眞一郎
概要
『プリティーリズム・レインボーライブ』では第27話から登場。
人物
エーデルローズ財団の主宰。7月18日生まれ。
財団理事長である法月皇とその正妻の法月愛の長男として生を受け、実家の法月家は、政財界において強大な発言権と影響力を持ち合わせている。
普段は温厚な紳士を装っているものの、その本性は傲慢なまでに「格」を重んじ、自分以外の他者やその思想を決して認めない、異常なまでに狭量かつ自己中心的な人物。更には凄まじいまでの執念深さの持ち主であり、一度敵と見なした者に対しては、権力行使や世論操作等、あの手この手を使う形で潰しに掛かろうとする。
エーデルローズにおいて事実上の最高権力を持っている立場を良い事に、極端過ぎるとも言える実力主義を掲げた支配体制を強いており、所属する若者達個人の価値観を全く認めようとせず、自分にとって意にそぐわない者を徹底的に冷遇したり、勘に触る行動に出た人間は即追放処分を下す等、自らの不満の捌け口同然に扱ってきた。
主宰に就任する前は、自身もエーデルローズに所属していたプリズムスタァであり、高等部在学時においては男子プリズムスタァの最高栄誉とされる称号「プリズムキング」を得ていた実績を持っているとされている。また、現・プリズムスタァ協会会長である氷室聖、ストリートダンサー出身の黒川冷とプリズムキングの座をかけて競い合い、当時においては男子プリズムスタァの最候補である「3強」の一人として数えられていた。
しかし、世間からは現役時代に4連続ジャンプを成功させた聖や独自性に優れた冷に比べると天性のセンスやカリスマには劣っていたと一歩劣っている存在として評価されており、この為か、聖や冷の二人には現在も強い憎しみを抱いている。特に聖の事は、自身の父親である皇に特別目を掛けられていた事から凄まじいまでの敵意を見せる事が多く、冷に至っては彼を尊敬していた仁科カヅキとの面接において「野良犬」呼ばわりまでしている。
過去の経緯もあってなのか、ストリート系のプリズムスタァ達や聖が賞賛しているプリズムライブにさえも激しい嫌悪を抱いており、自らの傘下にあるベルローズのメンバーがプリズムライブを行う事についても否定的である。
速水ヒロや蓮城寺べるには一目置いており、次期プリズムキング、プリズムクイーンの座につかせる事を約束しているものの、結局は自らの野心の為の道具にすぎず、ヒロにはプロのプリズムスタァとしてのデビューを条件に親友の神浜コウジが作曲した曲を盗作させたり、べるには大会に負けた腹いせに選手生命に関わる苛烈な特訓や小鳥遊おとは、森園わかなの二人の立場を盾にしてプレッシャーを掛け続けたりまでしている。
しかし、ヒロの親友で彼と共にデビューする予定となっていたコウジについては、華や格が無いという理由で内心目障りに思っていたようで、ヒロに彼の曲を盗ませたのも、曲を奪われたコウジが自分からエーデルローズから出て行くよう仕向ける為であったと思われる。これらの結果、多くの若者達から夢や希望を奪い続け、父親の築きあげたエーデルローズを仲間同士の潰し合いが公然と起こるまでに歪ませた張本人といえる。
ただ一方で、エーデルローズに属する立場を笠に着て、一般市民に迷惑行為を行った不良生徒に追放処分を下す等、エーデルローズの品位を下げない為に真っ当な判断を下す事もある。
また、エンターテイメントであるプリズムショーのビジネスに関しては、理想主義的な側面の強い皇や聖に比べると割と現実主義的な観点で物事を決定しているとも言え、「今は売れている物が更に売れる時代」、「世の中に残るのは記憶ではない。記録なのだ」といったビジネスマンとしては優秀な理論を展開してもいる。
ある意味、『レインボーライブ』から始まり、『KING OF PRISM』へと続くストーリーの裏の主人公と言える存在。
特に『KING OF PRISM』では、彼と聖の隠された関係、そして彼自身の過去等が物語の大きな根幹になっていると言え、視聴者からは主人公側よりも活躍が注目されていたりする。
その為、『レインボーライブ』から見てきた視聴者の一部からはカルト的な人気を誇っており、「法月仁の誕生祭」といったイベントも行われている程。
来歴
レインボーライブ
かつて聖と冷の二人とプリズムキングの座を賭けて争った「パワーホールセッション」では、実力ではなく、卑劣な方法で聖を陥れた末に勝ち取った物であった。
聖が練習中に4連続ジャンプを成し遂げたのを知って嫉妬した余り、練習中の彼が事故に巻き込まれるよう画策。結果的に聖はプリズムスタァとしての選手生命を絶たせている。
冷についても、「プリズムキングカップ・フライ・スカイハイセッション」でのプリズムダンスについて「ブレード以外で接地している」と難癖に近い批判を繰り返し、高得点が取れないようにした(しかし、実際の冷は、浮いていただけで接地はしていなかったのだが、あえて冷は何も抗議をしなかった)。
こうして、上記のケガのせいでプリズムスタァとしての生命を絶たれた聖は「パワーホールセッション」の決勝への出場を辞退し、冷も聖以外をライバルと認めなかった事で同じく辞退した結果、繰り上がりでキングの座を得るに至った。
その数年後、聖のコーチングによって最年少でクイーンの座についた天羽ジュネを自分の元に勧誘しているが、ジュネ本人からは、卑劣な手段で聖の選手生命を奪った自らの歪んだ一面に気付かれており、最後には「あなたは偽りのキング。人をおとしめてまで上に立とうとする最低の人間」と毒づかれた上でエーデルローズを去られる事になった。
逆恨みした仁は彼女を「裏切り者」として排除しようと狙いを定め、エーデルローズのプリズムスタァ達にどんな手段を使ってでも潰すよう命令している。
新たなプリズムクイーンを決める『オーバー・ザ・レインボーセッション』の開催を控えた前日、秘密裏に雇ったパパラッチに撮影させたジュネの元へ見舞いに行く聖の写真を用いて、「聖とジュネの熱愛報道」というでっち上げの記事を作成させ、ジュネやハッピーレインのメンバーが『オーバー・ザ・レインボーセッション』の出場取り消しになるよう仕向けた。
仁と内通し次期会長の座を虎視眈々と狙っていた会長側近によるプレッシャーもあって、責任を感じた聖は、記者会見でジュネとの熱愛関係を否定した上で、プリズムショー協会会長の座を辞任。この時、聖は父親・皇を後任に選んでおり、その後のヒロのライブ会場にて、仁は聖から説得を受けるも、仁は完全に憎悪を燃やしていたが為に、「口を慎め!この一般人がああああっ!」と話を全く取り合おうとしなかった。
その後、コウジだけでなく母親さえも侮辱した為に、ヒロが遂に我慢の限界を迎え、ライブ中に曲の盗作をしていた事実を告白する事態を招いてしまう。
仁は、逆上の余りにヒロのプライベートを全て暴露するとライブ後にプレッシャーをかけるが、DJ.Cooとなっていた自身の正体を明かし怒りを露にした冷に殴られ、過去に聖の選手生命を奪った取り巻き達の証言を、ヒロだけでなくハッピーレインやベルローズのメンバー達の前に突きつけられる。しかし、それでも自らの非を一切省みようとせず開き直って「やれるもんならやってみなぁ!そんな事をしたら、プリズムショーの地位は奈落の底に落ちるだろうがな!」と脅迫を続けた為に、父・皇にもこれまでの全ての悪事を知られることになり「お前のやっている事は最低だ!若者達の未来を潰すことで、自分の嘘を晴らして…もう二度とプリズムショーに関わるな!」と非難され、遂にエーデルローズ主宰職を解任。今後プリズムショーに関わる事も一切禁じられるという、因果応報とも言える顛末を迎えた。
その後、杳として消息が知れなくなるが、最終回ではオペラ座の怪人の様な不気味な衣装をまとい、青いバラを握り締めながら雷の降り注いでいるエーデルローズ敷地前に佇んでいた。
「フン…せいぜい今は、束の間の勝利を楽しめば良いさ…」
「俺は決して諦めない…。何度でも甦り…立ち上がる…。」
「待っていろエーデルローズ…!絶対にぶっ潰してやる…!」
「勝利を掴み取るのはこの私…法月仁だぁっ!!」
「ふはははははっ!はぁーっはっはっはっはっはぁ!」
全てを失い、ただ一つ…エーデルローズへの復讐心のみだけは失わなかった仁は、必ず再び表舞台に戻りエーデルローズそのものを潰すと復讐を誓い、静かに去って行った。
『レインボーライブ』の放映終了後、時は流れプリティーリズムシリーズはプリパラに移行。その移行も完了しつつあり、TV版終了から1年半経った2015年10月4日、公式ファンイベント「エーデルローズ入学説明会」が開催された。
ここでは、OverTheRainbowのニューアルバムが発表。当然、駆けつけたファンはこれがメインだと思っていた。しかし、そのすぐ後にそれは前座であると思い知る。
ニューアルバム発表の後で上映された1本の特報ムービー。それは男子プリズムショーをメインに据えたスピンオフ映画『KINGOFPRISMbyPrettyRhythm』の製作・上映を伝えるものであった。この青天の霹靂な展開に歓喜・阿鼻叫喚するファン。
しかし、彼らは見逃していなかった。そのムービーの中に前述した最終回時の仁が写っていたことを。
それもそのはず、映画では彼が率いるプリズムスタァ団体『シュワルツローズ』が登場し、OverTheRainbowや次世代プリズムスタァと対決すると言う展開だったからだ。
まさか、最終回から2年近く経ってその伏線が回収されるとは思っていなかったファンは「逆襲か!?」と、さらに阿鼻叫喚となったのは言うまでもない。
さて、彼の復讐劇がどの様な展開と結末を迎えるのか…。
KING OF PRISM
「笑顔の仮面を被れ!!ファンのエールを金に換えろ!!稼げない事は万死に値する罪悪なのだっ!!」
「私は…シュワルツローズ総帥・法月仁っ!!異論は一切受け付けぬっ!!」
一度はプリズムショー界から追放されていた仁であったが、実父の法月皇が逝去したのを機に、エーデルローズ財団の実権を掌握して完全に復帰。服装に関しても、聖が聖職者を想起させる白い礼服だったのに対し、悪の独裁者を想起させる黒い軍服の様なデザインになっており、体罰用のムチとしても使える杖を持っている。
一度プリズムスタァ界を追われた事によってプライドを砕かれた影響か、以前に比べて性格や言動がよりエキセントリックな物となっており、自らに少しでも反抗を見せる者には物理的な制裁(暴力)も辞さない等、一切の容赦をしない。
聖の擁するエーデルローズへの復讐の為、十王院ホールディングスの真田泰山と結託して新たにシュワルツローズを発足。エーデルローズの有望な男子プリズムスタァを次々とヘッドハントし(現クイーンのべるを擁する女子部は聖が係属校として独立させ、経営分離したことで難を逃れた)、エーデルローズに対しては相続税を始めとする負債を押し付ける事(おそらく自身と聖の関係を公表する事で負債を押し付けられるよう仕向けた)で窮地に追い込んでいる。また、『レインボーライブ』と『KING OF PRISM』の間の時期には、プリズムキングの座を得ていた山田リョウの女性絡みのスキャンダルをでっちあげ、彼がプリズムスタァとして活動出来なくなるよう追い込んでいる。
シュワルツローズの本部は超高層ビルとなっており、屋上には露天風呂が設置されている。一方で、教育環境はダンススクールというよりもはや軍事国家に等しく、生徒達に課す特訓に関しても最新鋭の科学を駆使し「殺人マシーン」とも呼ばれる全自動化された過酷な環境下(視察も兼ねて潜入していた十王院カケル曰く「プリズムスタァの工場」)で行われ、一瞬でも笑顔を絶やすとプリミア(一軍)からツヴァイテ(二軍)に落とされてしまう事になる。所属する生徒達の中でも上位の実力者達は仁自らの手によるより過酷なスパルタ指導が行われる事になるが、それらを経た者はプリズムスタァとして並外れた実力者となっているのは間違いない。
現在の代表的な所属者は如月ルヰ、大和アレクサンダー、高田馬場ジョージ等で、特にルヰは仁の一番のお気に入りでありその寵愛を一身に受けている。また、シュワルツローズの精鋭部隊といえる「YMT29」の上位メンバーで構成された池袋エィスをリーダーとする「Theシャッフル」も、注目を浴びつつある。
グロリアス・シュワルツ! グロリアス・シュワルツ!
第2章と言える『PRIDE the HERO』では、OverTheRainbowの代表曲である「PRIDE」の版権を奪った上でそれをシュワルツローズのトップであるルヰに歌わせている。
一方、調査によって神浜コウジの出生を知る事になっているのだが、かつて「格が無い」と否定していながら「確かに前々から彼には格があると思っていました」と『レインボーライブ』時の視聴者から「嘘を吐くな!嘘を!(笑)」と突っ込まれかねない事を言ってのけている。
「ヒャーッハァッ!ざまぁ―――みやがれぇっ!!」
「聖ぃ―――っ!!『PRIDE』を使いたければ金を返せえええぇ―――――っ!!」
「100億うううぅ―――――っ!!」
更に聖から全てを奪う為、彼の最愛の存在でかつて自らを「偽りのキング」と指摘したジュネを手中に収めようと目論んでいる。だが、仁がジュネを求める理由として、聖への復讐や嘗て彼女がプリズムクイーンであった事が指摘されがちだが、実はジュネのことを女性として愛している。
OverTheRainbowが瓦解しかけている事もあって、「プリズムキングカップ -サンダーストームセッション-」でも予想外の展開(ルヰが「PRIDE」ではない別の歌を歌った)に見舞われつつ有利に進ませていき、メンバーの一人である大和がステージの破壊という暴挙に及んだ結果、それまでの成績によってシュワルツローズの勝利に持ち込もうとする。
しかし、最後まで諦めなかったカヅキのパフォーマンスによって破壊されたステージは修復されてしまい、更にはカケルの暗躍によって借金返済の目途が保証された結果、「PRIDE」の版権もエーデルローズ側に奪還されてしまう。そして、再起したヒロの歌う「PRIDE」とプリズムジャンプのパフォーマンスの前に、他の審査員共々屈してしまう事になり、自らの手中に収めていたジュネも聖の元へと戻っていった結果、再び敗北を喫する事になった。
第3章となる『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』では、エーデルローズの持っていたCMの97%を保有し続けている等、依然シュワルツローズの強い影響力を保たせており、プリズムショー協会(PSA)の方針に反発して、新たに「世界プリズムショー連盟(WPF)」を発足。
そして、今度は四谷に存在するエーデルローズの旧校舎周辺の地上げによる再開発を計画。更にはエーデルローズの支援者である四谷信金に1000億円もの負債を抱えさせ、これを利用してOverTheRainbow黄金像の落成式の際に、エーデルローズとシュワルツローズの生徒達を直接競わせる一大イベント「PRISM.1」の開催を宣言。勝者側に1000億円の賞金を与える事を条件とする事でエーデルローズ側を引きずり出し、今度こそエーデルローズを完全に終わらせるよう仕向ける。
ルヰ、大和、ジョージ、エィス率いるTheシャッフルの面々と、シュワルツローズの総戦力で「PRISM.1」へ挑む事になるも、一方でこの頃よりルヰに聖やヒロの姿を重ねてみてしまう等、次第に情緒不安定な様子を見せ始める。
大和がステージを披露してからは、彼のパフォーマンスに冷の姿を重ねて見たり、悪質な妨害行為と見なされても仕方のない乱入を行った香賀美タイガの得点を減点させた真田のやり口に対し「心から聖を屈服させなければ意味が無いのだ!」抗議する等、それまでに見せる事の無かった様子を見せ始め、ジョージや真田にも戸惑いを覚えさせている。
その後、ルヰがステージの最中に妨害を受けてプリズムジャンプを失敗させて転落した際には、身を挺して抱き留めて介抱し、その後はエーデルローズの7人が神の意思の放棄によって失われたプリズムの煌めきを取り戻すキセキを目の当たりにするが、最終的に「PRISM.1」は僅差によってシュワルツローズが制する顛末となるのだった。
だが事件後、様々なアクシデントによって採点を行ったP.R.I.S.Mシステムへの信用性が大きく欠けているという世間からの評価もあってか、法月家の政治的圧力を行使してまで四谷の再開発計画の白紙撤回を決定。その後、法月家の実家へと戻り、勝手に計画を撤回させてしまった事を母・愛に謝罪するも、彼女からは「あの男に…法月(父・皇)に似たのね」と冷淡に突き放される。
関連タグ
如月ルヰ 大和アレクサンダー 高田馬場ジョージ 池袋エィス Theシャッフル
ルルナ(プリチャン):後年における似たような人物。こちらもとある人物の人生を狂わせた事から一人レインボーライブとも言われている。なお、あちらは最終的には改心した。
ここから先は、重大なネタバレの為に注意
孤独な心
劇中の様子から見ても「極悪非道」と思われても仕方のないキャラクターの突き抜けている仁だが、かつての彼は優しく他者に対して大らかな心を持った好人物で、実は聖がプリズムスターを目指したのもプリズムスターの新星として活躍していた仁の存在に憧れたのが切っ掛けであった。
『レインボーライブ』における描写からも、「仁は聖や冷を陥れる形でプリズムキングの座を得たに過ぎない」と誤解されがちであるが、実際は彼等がプリズムショーを始める以前にて、既に仁は卑怯な手段を行使する事無くちゃんと自分自身の実力のみでプリズムキングとしての座も手に入れていた実績の持ち主だったのである。
そんな輝かしい栄光を持っていたはずの仁がどうして現在にまで変わってしまったのか、その原因は「実の両親や聖との複雑な関係」にあった事が『プリティーリズム・レインボーライブアニメ公式ガイドブック』にて、明かされる事になっている。
かつて、仁の父である皇は両家の令嬢であった愛と結婚し息子の仁を設ける事になっているのだが、「煌めき」という理想を求めていた皇と「家格」という評価ばかりを求める愛の間は、価値観の不一致から冷え切っていく一方となってしまっていた。そんな中、初めて自分の理想を理解してくれるプリズムスターの女性であった氷室マリアと出会ってしまった皇は、距離を縮めて言った末に遂に「過ち」を犯してしまうまでの関係にまで至った。
その結果、マリアが身ごもる形で生まれてきた子が氷室聖であり、つまり仁と聖は腹違いの兄弟であったのである。
病によってマリアが死去した後、彼女に聖を託された皇は法月家で育てる事になり、仁は自分に腹違いの弟がいた事に驚きながらも彼を弟として受け入れ(母親から殆ど愛情を得られなかった為か、父親が他の女性に走ってしまった心境を、子供ながらに理解していたのかもしれない)、後に引き取られたヒロに対しても優しく接し、その関係は決して悪くない物となっていた。だが、ある時を切っ掛けに、仁と聖の関係は大きな亀裂を生じさせてしまう事態となる。
プリズムスターとして煌めきを放ち遂にはプリズムキングの座にまで至った仁の姿に強い憧れを抱いた聖は、自分もプリズムスターになる事を決意。そんな彼を仁も最初は微笑ましく見守っていたのだが、プリズムスターとしての天才的なセンスと他を圧倒するカリスマを発揮した聖は瞬く間にトップクラスのプリズムスターにまで輝き、自分が求めてやまなかった「煌めき」という理想を聖に見た皇はより彼を一層愛するようになり、あろうことか母親の愛までもが、自身から夫を奪った女の子供であるずの聖に自らの求めていた「家格」を見出して恍惚な表情を浮かべる程まで魅了される様になってしまった。
更には、聖、冷と共に「3強」として扱われていた時期には、プリズムキングカップフライスカイハイセッションのアナウンサーから「そつのない確実な演技で着実にポイントを重ねました」と何処か面白みが無いかの様な評価をされ、スランプに陥っていた聖には「このままでは冷どころか仁にすら勝てない!」、冷に至っては「聖を倒す事無くしてプリズムキングの価値無し!」と、実は世間はおろかライバルであるはずの2人にまで結構ボロクソに軽んじられていた事実が『レインボーライブ』の作中にて描かれている。仮にもプリズムキングになった実績があるのに何で…。
聖にしか目を向けなくなった皇と愛の姿を目の当たりにし、更に世間や冷、聖にすらも自分の価値を否定される様な評価しかされなかった仁は、「誰も自分を見てくれない」という現実から次第に精神の均衡を崩してしまう事になり、聖の活躍によってプリズムキングとしての地位も危うくなっていった結果、聖への激しい憎悪と嫉妬(所謂カインコンプレックス)に取り憑かれ、異常なまでの勝利至上主義に染まってしまう。
そして、遂には事故に見せかけて聖のプリズムスターとしての選手生命を奪うという取り返しのつかない行動に出てしまう形でプリズムキングの座を死守する道を選んでしまうのだが、「空虚な王の座」以外、本当の意味では何も得られず、両親との関係も破綻してしまうも同然となった。そして、事故の真相を知ったからなのか、プリズムスターからコーチとしての名声を挙げた聖に皇がPSA会長の座までも託した事で、より仁は聖への憎悪を向けてしまうまでになった。
一度は皇に勘当を言い渡され、プリズムショーの世界からも追放されてしまっても、その憎悪を絶やす事無く、皇の死を機に再びプリズムショーの世界に姿を現して新たに「シュワルツローズ」を発足させてまで聖やエーデルローズへの復讐を望み続ける仁。
しかし、そんな仁に対して、聖やヒロは今でも自分達に親身に接しプリズムショーの素晴らしさを教えてくれた優しい仁の事を覚えており、それ故に今の彼の姿をどこか哀れに思う様子も見せ、なし崩し的に彼と決別した立場でありながらも、心の奥底ではかつての煌めきを見せていた事の彼に戻って欲しいという想いを抱えていた。
過去に仁を「偽りのキング」と称して拒絶したジュネもまた、聖から仁の過去を聞かされたのか、『KING OF PRISM』の時にはどこか悲しげな目を向けており、ヒロがプリズムキングの座に輝いて聖の元へと戻る際も、「大丈夫よ…きっとあなたを愛する人も現れる…」と優しい言葉をかけ、ルヰもまた「僕は…あなたのそばにいます」と仁を後ろから抱きしめている。それに対し、まるで子供の様に泣きじゃくる仁のその姿は、誰からも愛してもらえなかった彼の中に隠されていた「孤独」な本質であったと言える。
また、エーデルローズに対しては容赦なく潰そうとする反面、シュワルツローズの生徒達に対しては過酷なスパルタ訓練を課しながらも時折温情を見せる事はあり、夢を認められず孤独な幼少期を過ごしていたジョージや、人間関係を築くのが下手でスラムで燻ぶるしか無かった大和等、所属するプリズムスター達の中には仁に見出されなければプロのプリズムスターとして日の目を浴びられたかどうかも分からない者も少なからずいた為、一概に仁の擁するシュワルツローズの全てが「間違い」であるとは言えない部分もあった。
2024年夏に公開される『COME BACK』。
予告編で一条シンが呟いた「プリズムショーは、好きですか?」という問いかけは、一部の視聴者からは「かつてプリズムショーの先駆者でありながら周りにいた殆どの者に見向きもされなかった事に心を大きく歪ませ孤独へと陥ってしまう事になった仁へと向けられる事になるのではないのか」と思わせる。
果たして、自らの行動に少なからず「迷い」を見せ始める様になっていた仁が辿り着く先に待っているのは―――?
真の関連タグ