Fallout
ふぉーるあうと
War…war never changes.―――人は、過ちを繰り返す。
1997年にInterplay社の発売した第1作『Fallout』に端を発するRPGシリーズ。
ゲーム中の物語の主な舞台となるのは、核戦争によって荒廃し弱肉強食の掟が支配する過酷な暴力の世界となったアメリカであり、現実の年代で換算して22~23世紀頃の近未来を描いている。
第3作からは、ベセスダ社開発となり同社の『The Elder Scrolls』シリーズ(以下TES)の技術を投じて製作されている。
現在、第6作『Fallout76』をシリーズ最新作とする。
pixivではローカライズ(翻訳)などの関係で、第3作以降のファンアートが大半を占める。
マッドマックスや北斗の拳などに代表される世紀末モノ(ポストアポカリプス)の一種だが、本作の世界観は「核戦争によって崩壊する前の世界」が1940年台~50年台に思い描かれていた未来世界を基に構築された、いわゆるレトロフューチャーとなっている。
また、世界情勢やアメリカの風俗・体制・思想・核への認識のいい加減さなども当時の水準を元にしている。随所にそれらを揶揄・風刺したブラックジョーク的なネタが組み込まれており、作中に残されている核戦争前の遺物からはその不条理さを感じ取る事ができる。
物語の本筋となるメインクエストのシナリオ自体は、シリアスかつ重厚な内容となっているが、サブクエストを始めとして各所にジョーク要素や細かいパロディネタ、メタネタといった小ネタがギッチリ盛り込まれており、いわゆるバカゲーとしての側面も持つ。
シリーズを通して極めて自由度の高いゲームデザインも特色の一つで、困った人々を助ける正義の味方になることもできれば、道行く人や訪れた先々の集落を片っ端から討ち滅ぼす人類の敵になるのもすべてプレイヤー次第。
また、クエストやトラブルの解決方法も戦闘だけでなく、話術や交渉技能といった手段で解決・回避することができる場面も多い。
キャラクターのビルド(育成)もプレイヤーのこだわりや自由が利く仕様となっている。あらゆる種類の銃器を使いこなすワンマンアーミーになるもよし、誰にも見つからずスリ・潜入・窃盗を働く泥棒キャラにもなれるし、ハッキングスキルと口の上手さで生き抜く詐欺師キャラにもなれる。どこぞの世紀末救世主よろしく己の肉体と鉄拳のみを武器に、並み居る荒くれ者や危険生物達を殴り倒していくのもまた一興。
Perks(レベルアップ時、基本ステータスの上昇とは別に取得できる特殊スキル)もバラエティに富み、作品によっては「放射線障害を自然治癒させ、人間の死体を食って体力を回復し、時折通常の三倍以上の速度で動く」というワケ分からん生き物になることも可能である。
第1作誕生
本シリーズの発端は1988年にInterplay社が開発し、エレクトロニック・アーツより発売された『wasteland』である。
発売元であるエレクトロニック・アーツから『wasteland』の版権を買い取れなかったInterplay社がその精神的後継として作り上げたのが本シリーズである。
当時はInterplay社がTRPGのコアルールセット『GURPS』のライセンスを受けていたこともあり、企画段階ではGURPSを使って「タイムマシンで過去に戻って恐竜と戦い、魔法の力で現代に戻って彼女と結婚する」という筋立てのファンタジーゲームとなる予定だった。しかし、これは社長のブライアン・ファーゴに速攻で却下され、代わりにファーゴ社長の過去作品である『wasteland』にスポットが当たったという。
その後、『Vault13:A GURPS Postnuclear Adventure』というタイトルでリリースされる予定で開発が進められたが、すったもんだあってGURPSのライセンス失効を迎えてしまう。さらに本作のバイオレンス要素が似つかわしくないということでライセンシング延長もさせてもらえなかったため、結局GURPSをアレンジした独自のルールセットが採用され、発売5か月前の時点でテスト版をプレイしたファーゴ社長の鶴の一声で『Fallout』という名称に決定された。
ちなみにルールセットの変更時に盛り込まれた新ルールがPerksである。これはリードデザイナーのクリス・テイラーが、社長の「なんか物足りない」という言葉を受けて苦し紛れに発案した概念だった。だが当時としては非常に画期的なアイデアで、Falloutシリーズだけでなく後年の多くのゲームにも採用されるなど、ゲーム業界に絶大な影響を及ぼすことになった。
2→3の進化と変化
『Fallout2』まではPC用ゲームとしてInterplay社名義で発売されていたが、同社が経営破綻の末にゲームの製作を行っていた元傘下のベセスダ・ソフトワークスにシリーズの全権利を売却、『Fallout3』以降はベセスダで開発が進められている。
これに伴い、ゲームジャンルが見下ろし視点RPGから、同じくベセスダ社のTES同様にオープンワールド型の一人称視点アクションRPGに変更された。また、日本語化およびコンシューマ機移植も『3』から行われた。
『3』以降のPC版ではTES同様にMOD作成ツールが公式から無料配布されており、ネット上のコミュニティでは有志達によって作成された多種多様なMODが配信されている。『4』ではコンシューマ版でも限定的ながらMODの使用が解禁された。
Fallout:A Post Nuclear Role Playing Game
- 発売:1997年Interplay社
- 日本語版:なし(日本語化MODあり)
- 作中年代:2161年頃
- 舞台:かつてのロサンゼルス等西海岸
シリーズ第1作。主人公は核シェルターVault13の住人で通称「Vaultの住人(Vault Dweller)」。Vault13の生活用水の浄化に必要な部品が故障、その代替品の探索のために主人公が選ばれるところから冒険は始まる。修理に成功したあとは、スーパーミュータントという脅威の活発化の原因を探り、排除するのがストーリーの大筋として描かれている。
既述の通り、この頃は『GURPS』の影響を色濃く受けたシミュレーションRPGであり、FPS風RPGとなった『3』以降の作品とは異なるゲーム性だが、バイオレンス性の強さ・成長システム・自由度の高さ・V.A.T.Sシステムといったシリーズの根幹部分は既に確立されている。
Fallout2:A Post Nuclear Role Playing Game
- 発売:1998年Interplay社
- 日本語版:なし(日本語化MODあり)
- 作中年代:2241年頃
- 舞台:かつてのロサンゼルス等西海岸(前作と同じ)
シリーズ第2作。前作の主人公の孫にして、彼が作った村の住人である通称「選ばれし者(Chosen One)」が主人公を務める。凶作や病気による村の壊滅が迫り、それを止めるためキーアイテムを探し出すのが当初の目的となる。最終的には、自分たち以外の全てを殲滅しようという武装集団と戦うこととなる。
前作と比較するとイベント量が豊富でテキストの内容も前作以上に作り込まれているなど、シナリオ面が大幅に強化されている。その一方、前作以上に退廃的な世界観が前面に押し出されており、ジョーク要素にも下ネタが満載。
当時のPCゲーマー達の間でカルト的な人気を博し、今なお有志によってバグの修正パッチやMODが作り続けられている。
反面、ゲーム的には少々バランスが不安定で、キャラ育成の方針を間違えれば普通に詰みかねず、高難度のゲームが巷に溢れていた当時の洋ゲー界隈でも「最もクリアが困難なゲーム」の一つに挙げられるほどであった。
番外編・制作中止
- fallout:tactics――シリーズ初のシミュレーションタイトル。『2』の後の時系列となる。日本語化なし。
- fallout:Brotherhood of steel――アクションRPG。時系列は『1』と『2』の間。PS2にて日本語化されているが翻訳の都合、『3』以後のタイトルとは用語が食い違う。
- fallout online――interplayが開発していたが、ベセスダと訴訟(和解成立)の後、権利売却に伴い製作中止。
- van buren――同じくinterplayが開発しており、デモ画面を発表できるほど進行していたが、経営破綻のため製作中止。完成していればこのプロジェクトが『fallout3』になる予定であった。
Fallout3
- 開発・発売:2008年ベセスダ・ソフトワークス
- 日本語版:コンシューマ版のみ(パソコン版は日本語化MODあり)
- 作中年代:2277年頃
- 舞台:かつてのワシントンD.C.
シリーズ第3作。汚染と荒廃はシリーズ随一。
ローカライズ版は規制が厳しく、PS3日本語版に至っては丸ごと削除されたクエストもあったりする。
Fallout:Newvegas
- 開発:オブシディアン・エンターテイメント
- 発売:2010年ベセスダ・ソフトワークス
- 日本語版:コンシューマ版のみ
- 作中年代:2281年頃
- 舞台:かつてのラスベガス(ネバダ州南部)
シリーズ第4作。XBOX360版では支障ないプレイができる一方、PS3日本語版は不具合が異常なことになっておりハードの落差が激しい。
PC版は『3』同様に日本語未対応の上、Windows10のアップデートによりMODなしでのプレイが不可能になってしまった。
Fallout4
- 開発・発売:2015年ベセスダ・ソフトワークス
- 日本語版:コンシューマ版のみ
- 作中年代:2287年頃
- 舞台:かつてのボストン
シリーズ第5作。『TES5 Skyrim』の技術的続編であり、クラフト要素が大幅に強化されている。
Fallout76
- 開発・発売:2018年ベセスダ・ソフトワークス
- 日本語版:コンシューマ版のみ
- 作中年代:2102年
- 舞台:かつてのウェストバージニア
作中年代は大戦から25年後であり、シリーズ中では最も古い時代を扱った作品となる。
『4』のアセットも流用しつつ製作された、シリーズ初のオンラインマルチプレイ専用作品。
FalloutShelterOnline
上のスマホ版をオンライン対応させ独立したソシャゲにした作品。2020年6月サービス開始。Fallout4で登場した組織が登場する。
あるVaultで主人公は前任の責任者からVaultの管理を任されるが、その次の日にテラフォーミング装置(後述のG.E.C.K.と似た様なものと思われる)を持ち去り行方不明になってしまう。主人公たちは彼の行方を追いつつ、Vaultの発展を行なっていく。
Fallout(実写版)
ゲームではなく公式が正史の一部として制作に協力した実写ドラマ。Falloutシリーズのディレクターであるトッド・ハワード自身もスタッフとして参加している。
シーズン1は2024年4月12日よりAmazonプライムビデオにて配信。シリーズ最新作にもあたり、「4」の9年後という最も未来の時代を描く。舞台はロザンゼルスで、NVから15年後の西海岸の様子が描かれる。
数字は好調であり、アマゾンプライムで歴代3位ともいう視聴数を記録した(出典:映画.com)。Fallout76の運営にも影響し、プレイヤー数が5倍に増加したという(出典:4Gamer.net)。