概要
シルビアとしては5代目。
もともとスペシャリティカーとして登場し、当初はホンダ・プレリュードやトヨタ・ソアラと共にデートカーの代表的車種として商業的な成功を収めた。
同時に、当時すでに少なくなってきていたミドルクラスの後輪駆動スポーツカーであり、特に90年代以降は安価な中古車が大量に流通したことで、AE86やホンダ・シビックと共に違法競争型暴走族、いわゆる走り屋の定番車種となった。そのため、デビューから30年以上経過した現在でも任意自動車保険の保険料率の高い車種となっている。
モデルライフ
1988年5月、発売。
一見直線的ながら各所に流麗な曲線を取り入れており、当時としては未来的なデザインをセールスポイントとした。CMや雑誌広告のコピーでも「アートフォース・シルビア(ART FORCE SILVIA)」と表現していた。
搭載エンジンはデビュー当初は1.8L・自然吸気のCA18DE型(135ps)とターボのCA18DET型(175ps)。1991年のマイナーチェンジ後は2LのSR20DE型(140ps)とSR20DET型(205ps)に変更された。また、足回りには新開発のリアマルチリンクサスペンションが採用された。
オプション装備ではプロジェクターヘッドランプ、四輪操舵装置のHICAS IIや、デジタルメーター、HUDであるフロントウインドウディスプレイなどが用意され、未来的なイメージを後押しした。
グレードはJ's、Q's、K'sの3種で、特別仕様車の名称も含めてトランプを意識した構成になっていた。
1988年7月、オーテックジャパン製の「コンバーチブル」を追加発売。K'sを改造したものであり、製造はオープン構造の車の生産を得意とする高田工業に委託されていた。
1988年10月、昭和63年度の通産省選定グッドデザイン大賞を受賞。
1988年12月、'88~89年日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞。
1989年4月、姉妹車の180SX(RS13型)が発売。リトラクタブルライトを採用したS13型の北米輸出仕様車240SXハッチバックボディの日本仕様車であり、車名の「180」は排気量の1800ccにちなんでいる。エンジンはシルビアと異なり、ターボモデルのCA18DET型のみ設定していた。この180SXはS13型同様に人気が高く、S13シルビアの販売終了後もS14型と共に販売が続けられた。
1990年2月、「ダイヤセレクション」シリーズを追加発売。
Q's、K'sをベースにそれまでの販売実績から人気の高いオプションを標準化しながら価格上昇を最小限に抑えたお買い得仕様。内容はオートエアコン、アルミホイール、CDプレーヤー(ソニー製)、アーム式シートベルトガイド、電動格納式ドアミラー、プロジェクターヘッドランプ、リアスポイラー、スーパーファインコーティング(フッ素樹脂塗装)、専用エンブレム(銀地にQ'sあるいはK'sと書かれ左右にトランプのダイヤのマークが入る)、アクセントモール。尚、ダイヤセレクション専用オプションとしてレザーバージョン(本革シート、ステアリング、シフトノブのセット)が設定される。同時にQ'sに従来設定の無かったビスカスLSDのオプションが設定される。
1991年1月、マイナーチェンジ。
エンジンがCA18DE/CA18DET型からSR20DE型とSR20DET型に変更された。姉妹車の180SXも同時期にSRエンジンに変更されたが、名称は180SXのままであった。そのほか、4輪操舵のHICAS IIがSUPER HICAS に変更され、タイヤサイズが195/60-15から205/60-15にサイズアップされた。さらにトランクリッド後端中央のキーホールカバー形状を逆台形から楕円形に変更、リアスポイラーを飛行機の翼をモチーフにした新形状に変更、その内蔵ハイマウントストップランプには横一列配列のLEDを採用、サイドドアビームの追加、プロジェクターヘッドランプが4連からフォグランプも含めた6連に変更、アルミホイールの形状変更、トランク裏にトリム(内装)が追加されるなどの細かい点も変更が行われている。内装はシートの形状が変更され、リア3点式シートベルトが採用され、ワイパーの間欠時間調整が追加(Q's系、K's系)、ファッションキー(キーヘッドが丸で中に「SILVIA」のロゴが入る)の採用、前期型で多かった女性ユーザーからの要望により従来の助手席側に加え運転席側にもバニティミラーを追加(Q's、K's系)。ダイヤセレクションは廃止されたが、ダイヤセレクションの内容からCDデッキと専用エンブレムを省いた仕様のメーカーオプション「ダイヤパッケージ」が設定された。また、内装のオプションとして「レザーセレクション」(本革シート、ステアリング、シフトノブ専用内装地。スーパーハイキャスとセットオプション)とアートテリアセレクション(大理石模様のスウェード調生地のシート、内装地)を追加している。マイナーチェンジ前の型式がS13型、マイナーチェンジ後はPS13型となっているが、通称としてどちらも「S13」と呼ばれることが多い。
1992年1月、「クラブセレクション」と「Q'sSC」追加発売。クラブセレクションは先のダイヤセレクションと同等の仕様。相違点はCDデッキがソニー製からクラリオン製に変更、アルミホイールが標準車と違いシルバーポリッシュ(光輝仕様)タイプとなる、専用の銀地の楕円型グレードエンブレムの文字色が濃赤になり、左上にトランプのクラブのマークと下に「club」のロゴが入る点。「Q'sSC」はQ'sにオートエアコンとシルバーポリッシュのアルミホイールを装備しながら価格上昇を抑えた質実剛健型グレード。尚、SCとは「スペシャルカード」の意である。
同時に一部仕様変更が行われ、シートベルト警報&警告灯の装備。これはエンジン始動時にメーター内の警告灯が点滅し、同時に運転席ベルト未装着の場合は警報がいずれも8秒間作動する仕組みになっていた。これに伴いメーターの変更が行われ、オートエアコンのデジタル化も行われた。
1992年5月、「Q's2」(Q'sスクエア)限定発売。同時期の日産主力車種と同様、オール日産4000万台達成を記念した期間限定車。ベースはQ'sSCでランバーサポート付きの運転席や専用ヨーロピアンインテリア、リアスポイラーなどを追加装備したもの。ボディカラーは1月に追加されたパールホワイトと既存のスーパレッド、スーパーブラックの3色。
1992年12月、「オールマイティ」追加発売。モデル末期に入り、廉価なお買い得版による販売力強化を図った仕様。ベースはJ'sでマニュアルエアコン、アルミホイール、パワーウインドー、カセットデッキ付きチューナー&4スピーカー、電動格納式カラードドアミラー等J'sには標準では未装備の快適装備を追加した仕様、またこのモデルのみベロア調ニットを使った専用シート地(縫い目の位置が見える位置に変更されコスト削減のテスト的意味合いが強い)が装備される。尚、この内装は180SXの中期型の黒ヘッド仕様にも用いられる。専用エンブレムも装備されるが、楕円ではなく長方形で銀地に黒で「A」マークとトランプのスペードのマークが入った仕様となる。
これに伴いベースとなったJ'sと年頭に追加されたQ'sSCが廃止される。
モデル末期には、そのころ発足したばかりの全日本GT選手権のGT2クラス(後のGT300クラス)に参戦し、クラスチャンピオンを獲得している。
1993年、生産終了。歴代シルビアでは最も生産台数が多かった。
いろいろな仕様
輸出仕様車として北米仕様の貨物車用の2.4Lエンジン(前期型はKA24E、後期型はKA24DE)を搭載した240SXと欧州仕様の200SX(搭載エンジンは日本仕様と同様、初期型がCA18DE/CA18DET型、後期型がSR20DE/SR20DET型)が存在する。北米仕様の240SXは、現地のヘッドライト位置の法規に対応するため、フロントのデザインに180SXと同様のリトラクタブルライトを採用している(日本においても、S13型シルビアのフロントセクションを180SXのものに換装した、個人レベルで製作された改造車、通称・ワンビアが存在する)。
バリエーションとしては上記の姉妹車180SXのほか、光岡自動車がS13型シルビアをベースにクラシックカーのようなボディに換装した初代ラ・セードを発表している。また、180SXがベースではあるが、フロントセクションをS13型のものに換装した(後に一部の日産系ディーラーで正式に販売された)通称シルエイティが存在する。
また、S13シルビアのボディは、ニュルブルクリンクにて開発中のスカイラインGT-R (BNR32) をテストする際に、偽装用ボディパネルとして使われた。
モータースポーツ活動
ワンメイクレース・GTI(JGTC以前のカテゴリー)への参戦
『デートカー』などの軟派なイメージが先行されたS13型も、軽量化のため内装を全て剥ぎ、ロールケージを張り巡らされ、外装ノーマルでエアロパーツが一切不可、さらにはSR20DEのメカチューンを搭載したスパルタンな車両が若手レーサーの激戦区でもあったワンメイクレースにて活躍。 また、1993年に国際級レースにNISMOよりグループA仕様のGT-RベースにしたカルソニックGT-Rと共にシルビアワンメイクレースのN2仕様のスーパーシルビアに大型エアロパーツを装着、モディファイした車両が参戦している。
また、2000年代から勃興したドリフト走行の技能を競う各種レース(D1GP/SL、Formula Driftなど)では、草創期からずっと第一線で活躍している。
改造
走り屋、特にドリフト族から好まれた車種であるため、ドリ車として改造を受けた個体が非常に多い。各種アフターパーツもたいへん充実している。これは後継のS14、S15も同様。
また現在も通用するスタイリッシュなデザインから、近年流行しているJDM/スタンスでも人気が高い。
S13特有の弱点として左側のメインフレームが途中で切れているため、その部分に補強を施す必要がある(専用の補強用パーツが複数のパーツメーカーからリリースされている)。
またマイナーチェンジ後に搭載されたSR20DETエンジンはアルミ製ブロックのため、パワーチューンを施した際の耐久性はあまり高くない。また極端に燃料系のキャパシティが少ないため、ブーストアップ程度でも強化燃料ポンプへの交換とインジェクターに交換する必要がある。更に横からの重力が強く掛かる運転を続けていると燃料タンク内の仕切り板が外れ、燃料を吸えなくなりエンジンブローするなど、サーキット走行やドリフト走行では注意や対策が必要といわれている。
一方で、車体は小型軽量で空力にも優れていること、特に前期型に搭載されているCA18DETエンジンはFJ20ETやRB26DETTと同様に頑丈な鋳鉄製ブロックを採用しておりパワーチューンへの適性が高いこと等から、最高速やゼロヨンを狙って改造された個体も少数ながら存在する。特に最高速アタックにおいては(エンジンはRB26や2JZなどよりハイパワーな物へと換装されていたものの)谷田部高速周回路で330km/hオーバーを記録した事例がある。
S13が登場する作品
走り屋の定番車種であるため、自動車を題材とした漫画/アニメ/ゲームの登場が非常に多い。特にいくつかの作品では主役級の扱いを得ている点が特筆される。
「頭文字D」
あまりに有名な走り屋漫画の金字塔。作者はしげの秀一。
主人公たちが勤務するGSの先輩にして、「秋名スピードスターズ」のリーダーでもある池谷浩一郎がS13を愛車としている(グレードはK's)。しかし序盤で赤城レッドサンズにボロ負けした挙句に事故ってしまうなど、あまり見せ場は無し。
その代わり、シリーズ中盤で青いシルエイティーが豆腐屋のパンダトレノや黄色いFDに優るとも劣らない大活躍を見せる。
「ジゴロ次五郎」
「カメレオン」や「くろアゲハ」で知られる加瀬あつしによる漫画作品。
ひょんな事からナンパ勝負をする事になった主人公・石川次五郎が解体屋で見つけたS13(グレードはQ's)を気に入り、格安で引き上げてくる。実はこの個体は特別な能力を持った「妖車」であり、この愛車と共に次五郎は成り上がっていく。
元から改造済みで、純白のボディカラーとシザースドアが印象的。当初はVeilsideを彷彿させるエアロを付けていたが、中盤でBNR34風バンパー・オーバーフェンダー・GTウイングとより硬派な出で立ちに変わる。
最後は制御不能の高速バスに囚われたヒロインを救うための次五郎の捨て身の特攻により大破するが、仲間の協力もあり修理された。
この他、登場キャラクターの1人である沢田がVIPカー風の外観をした黒いS13に乗っている。中盤で次五郎も懇意にしているショップでチューニングされ550馬力を発揮(なお改造費はフルローン)。
「ザ・ファブル」で知られる南勝久による漫画作品。大阪の環状族を描いている。
主人公のグッさんが序盤でS13(グレードはQ's)を購入し、以降愛車とする。当初はナンパ目的で「走り屋の皮を被ったくっさいくっさいチンポ」とナレーションでこき下ろされていたが、次第に走り屋として本気になっていき、それに伴い本格的な改造を施すように。序盤では先輩のワンダーを見て「ジャングルジムみたいじゃのお~」と若干引き気味だったグッさんが、自身の愛車に組み込んだロールケージを見て不敵に笑うシーンは象徴的。
首都高バトルシリーズ
元気によるレースゲームシリーズ。
PS2用のソフト、首都高バトル0と続編の01に登場するボス・裏切りのジャックナイフが黄色いS13に乗る(0ではシルエイティー、01ではシルビアK's)。最序盤のボスだがまだまだ資金不足で愛車のチューニングもままならないプレイヤーにとっては脅威となる。
また、通常ライバル/リーダーでも同車種に乗る者が多数存在する。