VIPカーは、乗用車のカスタマイズのジャンルの一つ。
性能や実用性よりも、審美性…というかクルマをどれだけゴージャスに出来るかとかそんな具合の改造手法である。Very Important Personとは関係がないような気がする。
概要
一般的に、4ドアの高級セダンをベースに改造する。型落ちの自動車をローダウンしスモークフィルムを貼る、というだけならともかく、カスタムショップのデモカーや本当に稼いでる人が現行車に大掛かりに手を加えると改造費用は文字通り青天井である。
外装
ほとんど例外無く純正よりも車高は落とされ、巨大なホイールに薄っぺらい偏平タイヤを履かされる。
サスペンションのストロークが無くなって、地面の振動が直に車体に伝わるようになっても、ドンキホーテやコンビニの駐車場で、床をガリガリやるハメになっても、車高を落とすことが肝心である。当然、このような改造をしてしまえば乗り心地は劣悪を極めるものになるが、殆どのオーナーが「クルマは見せるためのもの」と割り切っている(はず)なので乗り心地に触れることは野暮である。
キャンバー角はホイールが綺麗にハの字になる所謂ネガティブキャンバーである。本当にハの字に見えるほどキャンバー角を付けると「鬼キャン」の称号を頂戴する。
前後のバンパーはそのままである場合もあるが、地を這うような重厚なデザインのものに交換、あるいは加工をすることでさらに車高の低さを強調する。
カスタムによってタイヤのサイズが変わることが殆どなので、フェンダーはぶっといタイヤが収まるように加工する必要があるが、走り屋系のカスタムと違ってそれっぽいオーバーフェンダーを付けるよりも、元のフェンダーを叩き出したり、或いはオーバーフェンダーを取り付けたあとに一見してオーバーフェンダーを外付けしたことが分からないように成型し塗装してしまう事が多い。この場合鈑金加工や塗装などの作業なので、結構お金が掛かる。
内装
とにかく、派手さと掛けた金額がモノを言う分野である。
特にちょっと古い国産高級車や、中の上くらいのセダンは内装がヘボい事もあるので、きちんと手を加えると化けることも。中には一見してシックな感じで「おっ?」と感心してしまうものもあるが、一般的な感覚からすると「派手すぎる」「落ち着かない」と感じてしまうものが多い。
出力○○○○Wを誇るオーディオの重低音のせいかもしれないし、やたら沢山ある液晶ディスプレイのせいかもしれないし、あるいは青いLEDのせいかもしれない。はたまた乗り心地のせいか… 或いは、マフラーを替えた所為で不快な低音がずっと車内に響いてるせいか…
種車のグレードやオーナーの趣味によっては「元々の内装で十分豪華」という理由で殆ど手を加えない場合もある。しかしながら、最低でも窓に貼るスモークフィルムは必須アイテムである。
オーナー
千差万別である。
眉毛を見えなくなるまで剃ったヤンキーだったり、お水の雰囲気を漂わせるワンレン茶髪の姐さんだったり、ラオウみたいな強面のオッサンだったりすることもあるが、普通に育ちの良さそうな若者だったりすることもある。
...間違いなく言えるのは七三分けでスーツをカッチリ着込んだ中年のサラリーマンとか、おじいちゃんやおばあちゃんでは無いと思う。
起源?
起源が関東地方か関西地方すらハッキリしない。
分かってることは、バブル期に大量に現れた「ハイソカー」にこの手の改造を加えられたのが最初と思われるので、この手のジャンルが生まれたのは少なくともバブル期より後である。
関東地方の族車が起源とも言われているし、関西地方の環状族が愛用していたシビックなどのコンパクトスポーツカーの改造手法を乗用車のドレスアップの分野に持ち込んだとも言われている。