物質にはすべて毒性があり、毒性のないものはない。量が毒か薬かを区別する ―― テオフラトゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバトゥス・フォン・ホーエンハイム
現実世界における毒
上記のパラケルススの言葉通り、ある物質が毒となるか否かは量次第であり、食塩(というかナトリウム)のような人体に必須な物質であっても大量に摂取すれば死ぬこともある(例えば醤油を1リットルも飲めば高ナトリウム血症で死に至る)。アルカロイドの一種であるカフェインなど、本来生物にとって毒である物質でも、その薬理作用から人間に嗜好される場合があり、毒とそうでない物質との境はかなりあいまいである。人間はカフェインの解毒酵素を持っているため、日常的に摂取する程度の量ではほぼ無害であるが、犬のような動物がコーヒーを口にすると死亡することもある。
人間は、自然界から毒を抽出してその生理作用を薬物として利用することも多く、アルカロイドと呼ばれる一連の化合物は幅広く応用されている。自然界に存在しない、人工的に合成された毒物もある。
解毒、検出の技術は毒の発見より遥かに遅れて発展してきたので、分かっていないだけで相当多くの毒が暗殺に用いられてきたと考えられている。
物質ではないがガンマ線、紫外線なども生物にとって害があるということで「毒性がある」と表現されることもある。
比喩として人に害を及ぼす/人のためにならないものを指す事も(毒婦、毒親など)。
生物毒
多くの生物が毒を持っているが、動物毒は捕食のために用いられるタイプ(サソリやムカデなど)と、天敵からの防御のために用いられているタイプがある。一部の動物の毒は捕食用と防御用を兼ねている。変わり種として、捕食用の酵素毒と防御用のステロイド配糖体毒を別に持っているヤマカガシの例がある。
植物毒の多くは防御用と思われるが、毒を競合する植物を排除するのに役立てている(アレロパシー)キョウチクトウなどの例もある。上記のカフェインや、ネギ科ネギ属の植物に含まれる硫化アリルは多くの動物にとって毒であるが、人間の肝臓はこれらを解毒できるためむしろ好んで摂取されている。しかし、カフェインを代謝の限度を超えて大量に摂取するとヒトでも中毒を起こすし、ネギ類も生で大量に食べるなどすると腸内細菌などを殺してしまうなどして胃腸障害を引き起こす危険性がある。
菌類の毒(毒キノコ)は、遅効性のものや特定の条件で毒性を示すものも多く、必ずしも捕食を回避する役割を果たしていないため、多くはどうして毒を持つようになったか謎である。
毒を持っている動植物については、危険生物、天然危険物に一覧がある。
生物濃縮
食物連鎖の過程で生物が捕食対象と一緒に毒物を摂取し、毒物が濃縮される事を「生物濃縮」という。この毒物の起源は、人間の捨てた化学物質、細菌など生物が有する毒、など様々である。例えば熱帯性の魚介類の食中毒として知られているシガテラは、生物濃縮が原因と考えられている。シガテラ毒を有するプランクトンが小さな魚に食され、その魚が更に大きい魚に食されてを繰り返し、毒素が強くなっていくのだ。
一般に毒を持たないとされる生物(例えばバッタ)なども毒草を食べればその毒素を溜め込むというわけである。なので、野外で生物を捕って食べる際には十分な注意が必要である。
どぶ川のエビでチャーハンを作ったyoutuberのホモサピ氏も、池の魚を食べる際には大柄な捕食者は避けるよう注意を促している(参考)。
フグ毒として知られるテトロドトキシンは細菌由来であり、スベスベマンジュウガニなど他のいくつかの生物も同じ毒を持っている。ヤマカガシはもともと捕食用の毒を持っているが、好んで食うヒキガエル類から得た毒を防御用に使っている。ミツバチはトリカブトなどの毒花でも蜂蜜を作ってしまう事があり、そうした植物が生育している地域では養蜂は避けられる。
創作における毒
※キャラクターについては「毒属性」を参照。
現在ほど情報技術の発達していない時代では、存在するのは分かっていてもどのような毒が存在するのかは医者以外碌に分かっていなかったので、童話などを筆頭に魔法のような扱いを受けていた。
例としては白雪姫の毒りんごで、これはもちろん魔法の毒であるが、解毒の手段が愛の口づけであり死には至らないなど現実には到底有り得ない毒である。
(ちなみに原典での解毒の手段は「毒を持った物を物理的に取り除く(ただし、これだと毒ではなく窒息で倒れていた事になるが…)」というものであり、近年の作品で有名な「愛の口づけ」という手段は別の童話から取られた要素である)
しかし推理小説などで毒を利用したトリックが登場してくると、ミステリーにおいては現実に存在しない毒を使ってはならないと言う掟が徐々にできはじめ、創作においても対象年齢が高い作品では薬により解毒が可能な物と言う扱いが出始め魔法のような扱いは最早なされていない。
また、毒に対しての色の認識やイメージとして日本は創作物等を通して「紫色」を連想させるが、外国などでは「緑」が毒の色として認識されている。
ゲームにおける状態異常としての毒
ゲームにおいては、最もオーソドックスな部類の状態異常として幅広く登場する。
効果は主にキャラクターのヒットポイントが徐々に減少するもので、スリップダメージと呼ばれる。
現実で言うところの出血毒に近い。脅威度はピンキリ。
他の初歩的な状態異常と比べると、脅威になり難い代わりに治り難い傾向がある。
古典的なRPGにおいてはこの傾向が極端であり、戦闘中は全く痛くも痒くも無い代わりに、宿屋に泊まっても治らなかったりし、怖さの代わりに鬱陶しさ、面倒臭さでプレイヤーを攻撃する。
一方、昨今のRPGにおいては、スリップダメージの効果が毎ターンごとの割合ダメージである場合が多い事に加え、しばしばボスに対しても有効であるため、恐ろしく頼もしい威力を発揮する事がある。
視覚的には体色が毒々しく変化する、あるいは頭から毒々しい色(主に緑色か紫色)の煙や泡が吹き出すなどの形で表現される。
パワーアップ版として「猛毒」が別に存在する事も定番となっている。
関連タグ
影響・被害
言葉
危険な動植物
武器・兵器
創作のネタ
状態異常 毒属性(どくタイプ) 毒沼 毒の沼地 精神攻撃 萎え要素
セイキン(SEIKIN):「毒を盛られた事に気づいたセイキン」というものが一時期ネットで流行していた。