人物
埼玉県出身。本名は橋口千代美(旧姓は中山)。
18歳の時に押しかけ女房のような形で山野一と結婚。その後『月刊漫画ガロ』1990年6月号掲載の『ねこぢるうどん』(原作:山野一)で漫画家デビュー。
友人の吉永嘉明(鬼畜系雑誌『危ない1号』副編集長)の証言によれば、実際の彼女はショートカットで中性的な顔立ちをしており、スカートを履く事も滅多に無かったという。山野曰く、変な人を惹きつける何かを持っており、精神上問題のある人物に遭遇する機会が非常に多かった(その様子は著作内でも見ることが出来る)。
インドへ旅行した際には、夫婦で大麻を使用してトランスし「あの世界を一生知らないまま死んでいくのはなんだかバカバカしーほど不幸だと思う」という言葉を遺している。また帰国後、赤痢で閉鎖病棟に隔離された際は「ひょっとすると自分は子供の頃からずーっと隔離されてたのかも……自分はこのまま一生隔離されてる方がいーや……」と述べたこともある。
また本人の言う「波長が合わない人物」と接すると、話を聞いても全く頭に入らない上に帰宅したら寝込むほど肉体的・精神的に体力を奪われていたという。このため友人関係も非常に限られたものだった。この様な生涯の行動、言動から「アスペルガー症候群」や「自閉症」の持ち主だったと推測される。
「身長153センチ、体重37キロ、童顔…。18の時出会ってからずっと、彼女はその姿もメンタリティーも、ほとんど変わることはありませんでした。それは彼女を知る人が共通して持っていた感想で、私もそれが不思議であると同時に、不安でもあったのですが…」(山野一)
エピソード
- 最初に覚えた言葉は「バカ」で、誰に対しても「バカ」と言っていたという。漫画『ねこぢる』シリーズの話の一つ、「バカの巻」は、このエピソードが元となっている。
- またねこぢるは食欲も存在せず、吉永は「最期のほうは生きる欲望も薄れていった」と述べている。肉や魚に関しても「血の味がするから」と全く食べなかった。吉永嘉明の妻が勧めたアボカドも一口食べ、勢いよく吐き出したという。これに関して生前「トンカツって豚の死体だよね」という感想を夫の山野一に述べており、漫画の中でも豚は下等生物として罵られ殺され食べられる家畜程度の存在にしか描かれていない。
- 月刊漫画ガロの担当編集者であった高市真紀の証言でも、ねこぢるは殆ど外出せず、喫茶店も嫌いで、お世辞や社交辞令にも敏感に反応してしまい、世間との付き合いは苦手だったという。その一方で、高市の姉で漫画家の山田花子が1992年に投身自殺した時には、高市が山田の後追いをしないか心配して親身に話を聞いてくれていた。また「心を見抜かれそう」と緊張していた高市に対して「大丈夫、緊張しないで」と声をかける一面もあったという。
- 売れっ子になる前から3日間起き続け、その後丸1日寝るという体内時計(サーカディアン・リズム)に逆らった不規則な生活を送っていた。その様子は自殺の二日前に描いた遺稿『ガラス窓』でも見ることが出来る。
作風
大抵の作品には猫姉弟の「にゃーこ」と「にゃっ太」が登場する。また作者自身も猫のキャラクターで描かれている。一話完結型や4コマ形式の作品が多く、基本的にかわいらしいデフォルメが為された絵柄だが、内容は障害者差別や薬物、殺人などをテーマにした異様としか言いようのないブラックさで最早狂気の域に達している。
しかしどこかノスタルジックで非常に人間臭い部分もあり、その日常感と狂気感から掲載誌の『ガロ』共々カルトなファンが多い。
デビュー作は連作の元にもなった『ねこぢるうどん』という一話完結の作品であり、子猫がうどん屋で睾丸を切り取られて死ぬという凄まじい内容である。
ちなみにうどん屋はあんまり悪くない。
漫画の内容は前述の通り突拍子も無い物が多いが、これは彼女自身の夢を元にしているらしく、『ねこぢるうどん3』には夢のメモが収録されている。
山野一との創作上の関係
ねこぢるは当初「山野一+ねこぢるし」の共同名義で活動しており、夫の山野一は彼女の原作ネームの制作からペン入れ、スクリーントーンの貼り付けといった作画アシスタント、更にはマネージャーとして渉外担当の役回りも務めた。これら作業には二人の間で極めて微妙な関係性があったため、外部のアシスタントを入れることが出来なかったという。このため山野一がねこぢるの「唯一無二の共同創作者」であった
ねこぢるの死後も山野一は「ねこぢるy」の名義を用いて創作を引き継いでいる。2013年には新作単行本『おばけアパート前編』を上梓した。
メディアミックス
彼女の死後、作品の一部はアニメ化されており、『ねこぢる劇場』として深夜枠に放送された事もある。他にも『ねこぢるうどん』の内容をもとに湯浅政明監督によって製作されたOVA『ねこぢる草』も存在する。
亡くなる一年前の1997年、L'Arc~en~cielのシングル『the Fourth Avenue Cafe』のc/w作「D'Ark〜en〜Ciel」のイラストも手掛けていた(hydeがねこぢるのファンであった事から実現)が、当時のメンバーsakuraが覚醒剤使用で逮捕されたことにより発売が中止になった。CDは2006年の全シングルのマキシ化による再販に伴い彼女の没後から8年、本来の発売予定日から9年の歳月を経てついに公の場に出ることとなった。
自殺
直前の5月2日にはXJAPANのメンバーだったhideが同様の手段で逝去しており、一部マスコミで後追い自殺と報道されたが、夫・山野一の弁によると「彼女自身はAphexTwin等のテクノやゴアトランスに傾倒しており、関連性は全くない」とコメントしている。
関連イラスト
関連項目
同じ1967年生まれで、同じく自殺したガロ系の女性漫画家。
ねこぢると同時期に同様の最期を遂げたため、関連を疑われたが双方ともに否定。似た名前のhydeはねこぢるのファン。
外部リンク
鼎談◎吉永嘉明×山野一×根本敬「自殺されちゃった僕 刊行鼎談」
対談◎根本敬(特殊漫画家)×山野一(漫画家)「いまも夢の中にねこぢるが出てくるんです」
作品紹介
マンガ狂い咲き 山野一 ~アセチレンからドブの上澄みまで特殊全般~因業製造工場へようこそ
インタビュー
ねこぢる+山野一インタビュー「ゲームの世界に生まれたかった」
山野一ロングインタビュー「貧乏人の悲惨な生活を描かせたら右に出る者なし!!」
ねこぢるインタビュー「なんかシンクロしちゃってるのかな、とかたまに思ったりして」
ねこぢるyインタビュー「ねこぢる/ねこぢるy(山野一)さんにまつわる50の質問」
山野一インタビュー「カースト礼賛」(ユリイカ総特集=悪趣味大全)
関連タグ
月刊漫画ガロ ねこぢるうどん ねこ神さま にゃーこ にゃっ太 ブラックジョーク
ねこじる:誤記。