概要
いまや誰もが知るドイツの独裁者の前半生に焦点をあてた作品。
当時のドイツの世相やサイドストーリーとしてイギリスならほとんどの人間が知っているというミットフォード姉妹の人生も語られる。
作者のスレの演出やAA作成、資料・エピソードの取捨選択、時たま入るメタネタなどが絶妙なバランスでシリアスとギャグの両立に成功している。
また歴史系の作品にしては珍しく最後までやる夫の歴史上の名前がでない。
登場人物
国民社会主義ドイツ労働者党
元の党名はドイツ労働者党。いわゆるナチス。国家社会主義ドイツ労働者党の名前の方が有名だが、作者の解釈によって翻訳が微妙に異なっている。略称はNSDAP。
やる夫
第一話から美大入学不合格・ホームレス化したりニート化する・兵役逃れ&国外逃亡で逮捕とやる夫らしい駄目さ加減を存分に発揮する。
本来であればそれで終わりだっただろうが、第一次世界大戦とその後のドイツの絶望的な混乱、そしてある党との出会い。まるで運命に導かれるがごとく、彼の人生が激変していく……
ルドルフ・ヘス
AAはちゅるや。恩師から日本の天皇の求心力を聞かされ、大戦でドイツが敗北したのは強力な指導者の欠如によるものと考えていた時に、やる夫の演説を耳にして心酔する。優秀なやる夫の秘書だが、どこか抜けているところがある。後の第三帝国副総統。
ヨーゼフ・ゲッベルス
AAはできる夫。党内左派の主要人物で反やる夫派だったが、彼と直に会って指導者の資格を直感。一転して他者を圧倒するほど強いやる夫への忠誠心を抱く。かなり下半身に忠実であるが、演説や宣伝の才能は並外れたものがある。後の第三帝国宣伝相。
ヘルマン・ゲーリング
AAはジャイアン。元ドイツ空軍大尉で、前大戦におけるエースパイロット。ある事件で銃撃を受けた時に痛み止めとしてモルヒネを使用されたため、中毒症状に陥る。党にとって各界の有力者への貴重なパイプを持っている。後の第三帝国空軍元帥。
ハインリヒ・ヒムラー
AAは坪内地丹。兵士になることに憧れて士官学校で訓練している間に大戦が終わっちゃったため、軍というものに妙な幻想を抱いている。言われたことをすることにかけては並外れた能力を持つキング・オブ・下っ端。後の親衛隊全国指導者。
ラインハルト・ハイドリヒ
AAは夜神月。元ドイツ海軍の通信士官だったがある問題が発生して不名誉除隊。そしてその頃丁度優秀な情報将校を探していたヒムラーに勘違いでスカウトされ、頭角を現していく。子どもの頃にユダヤ人と馬鹿にされてたせいで強固な反ユダヤ主義者。後の親衛隊国家保安本部初代長官。
エルンスト・レーム
AAは阿部高和。やる夫の元上官であり、最古参の同志。そして党内においてタメ口で話せる無二の親友。自分の突撃隊を国軍へと昇格させることを目論んでいる。因みに同性愛を禁止している党の党員であるにもかかわらず両性愛者である。後の突撃隊初代参謀長。
アルベルト・シュペーア
AAは藤原左為。建築家であり、党大会の会場設計を担当していたのだが、そこの責任者が責任回避に必死だったので会場設計の許可をもらう為だけにやる夫と面会することになるが、くしくもそれが党幹部への第一歩となった。後の第三帝国軍需相。
ディートリヒ・エッカート
AAは喪黒福造。最初期の党員であり、特に目立つこともせず物語の序盤で麻薬中毒による心臓発作で死亡する。しかしやる夫に与えた影響は絶大であり、NSDAPにとって最もミステリアスな人物。
ミットフォード家
時代錯誤なハウスルールを持っているイギリスの男爵家のひとつに過ぎない。……のだが、この時代に生を受けた子どもたちは揃いも揃って問題児ばかりで大量のゴシップを新聞記者に提供したため、非常に有名である。
ナンシー
AAは水銀燈。ミットフォード家6人姉妹の長女。利発で聡明な美人だが、凄まじい毒舌家。妹たちに対ししばしばひどい嫌がらせを刊行する。しかし一方で家の雰囲気を明るくするムードメーカーでもある。社交界で調子乗ってたためになかなか良縁に恵まれない。
パメラ
AAは金糸雀。ミットフォード家6人姉妹の次女で、一番家庭的な人物。のんびりした性格の持ち主だったそうで、キャラが濃すぎる姉妹の話についていけないことがしばしばあった。綽名はウーマン(日本語で女性)。
トーマス
AAは蒼星石。ミットフォード家唯一の男子。ドイツに留学してからNSDAPに対して強い共感を持つようになる。一方で反ユダヤ主義については思うところがあった。愛称はトム。
ダイアナ
AAは雪華綺晶。ミットフォード家6人姉妹の三女で、母性的な性格で下の妹たちは酷いナンシーやなにか頼りないパメラよりも姉として慕われていた。貴族男性と結婚し、子も生まれて順調な人生を送っていたが、ある人物と出会いがきっかけで恋と現実に苦しむことになる。
ユニティ
AAは翠星石。ミットフォード家6人姉妹の四女で、エキセントリックなおてんば娘。小さいころからバッキンガム宮殿専用の便箋をちょろまかしたエピソードを筆頭に様々な悪戯を行うシャレになってない悪戯っ子だった。妹が共産主義にハマり始めたことを憂い、共産主義をぶっ潰す思想がなんかあったはずと調べていくうちにファシズムに傾倒。そして党大会でやる夫の姿を見て完全に一目ぼれし、恋の情熱に身を任せて暴走を開始する。
ジェシカ
AAは真紅。ミットフォード家6人姉妹の五女で、激動する世界をただ眺めていることに疑問を覚え、持つものが持たざるものを虐げているという主張の共産主義に傾倒していく。6人姉妹の中ではユニティと一番仲がよかったが、互いに相容れない思想に傾倒していたので不仲になっていった。愛称はデッカ。
デボラ
AAは雛苺。ミットフォード家6人姉妹の六女で、姉妹の中で一番まともな人物。夢は素敵な公爵と結婚して公爵夫人になるという貴族にとってはありきたりなもの。愛称はデボ。
その他
フリードリヒ・エーベルト
AAはやらない夫。ワイマール共和国初代大統領にして、ドイツ社民党(SPD)党首。敗戦後混沌とするドイツを安定させるべく反乱を起こすかつての親友や、過激な右翼と左翼の双方を弾圧し、双方から嫌われることになる。因みにやらない夫はエーベルト以外にもちょい役を何個か担当している。
パウル・フォン・ヒンデンブルク
AAはちよ父。ワイマール共和国第二代大統領にして、第一次世界大戦の英雄。プロイセン時代から自分が仕えた帝政ドイツへの思いは強く、その反動として背後から攻撃してきた共産主義者と帝政にとどめをさしたSPDを憎んでいる。NSDAPについては党首がオーストリア生まれの兵卒であることや暴力的性格が強すぎることからあまり気に入ってはいない。
クルト・フォン・シュライヒャー
AAはムスカ。ドイツ軍の質を守るべくフライコールを設立し、それで共産主義者の弾圧及び漁夫の利を得ようと攻め込んでくるポーランド軍に対処させる。
フランツ・フォン・パーペン
AAは龐統。元軍人でシュライヒャーの親友。元々政治家には向いていないから首相になる気にはなかったが、階級的に雲上人のヒンデンブルクに頼まれて首相の座につき、ヒンデンブルクのお気に入りとなる。
ヴィニフレート・ヴァーグナー
AAは朝倉涼子。やる夫のシンパで、ジークフリート・ヴァーグナーの妻。やる夫をドイツの救世主と信じ、彼の為に様々な支援を行う。
マリア・ライター
AAは柊かがみ。記録に残っている中でやる夫の最初のフィアンセ。作中ではゲッベルスがやる夫の為に頑張っている裏側で彼女との恋愛物語が進む構図になっており、かなりゲッベルスが哀れに見える。
アンゲリカ・ラウバル
AAはやる実。やる夫の姪で飽きっぽく気まぐれな性格。やる夫は彼女に重すぎる愛情を注いでおり、はた目から見ても男女のそれのような関係に見えたという。
エーファ・ブラウン
AAは柊つかさ。やる夫の愛人で権力にも政治にも関心を持たず、ただやる夫を愛した日陰の女。やる夫は彼女の存在が政治に利用されないように徹底的に秘匿しており、戦後になるまで一般的に知られていなかった。
レニ・リーフェンシュタール
AAは初音ミク。元ダンサーの映画監督。やる夫の演説に芸術的興味を惹かれ、思いつきで面会を申し込む。本作の終幕を演出する重要人物。ゲッベルスに性的に狙われたことがあるため心底嫌い。