プロトジコチュー
ぷろとじこちゅー
「いかにも…… 我が名はプロトジコチュー。一万年の時を経て、今蘇った!」
CV:岩崎征実
ドキドキ!プリキュア第49話(最終回)で登場した本作のラスボス。
1万年前のプリキュアに封印された“闇”そのものであり、トランプ王国の国王(ビッグ・フォーチュン)をキングジコチューに変貌させた元凶。
阿修羅像のように腕を6本持っており、幹部と同じく悪魔のような姿をしている。サイズは人間を少し大きくしたもので、キングジコチューよりは遥かに小型化したものの強大な力を持っている。
正体について小説版でより詳細に明かされており、それによるとプロトジコチューとは神が「光あれ!」と言った遥か前(おそらく宇宙に光という概念が誕生する前)から存在している“原初の闇”であり、ベール曰く闇の根源にして心を持たず、すべてを闇に還そうとする恐ろしい存在としている。ただ、キュアハートは「心を持たないのに闇に執着している」という矛盾を指摘している。
また、自己中な人間がジコチュー細胞を取り入れることで「ウロボロスの円環」という現象が発生し、それによってその人間は“原初の闇”(プロトジコチュー)と繋がり、その影響で邪悪な魔物へと変貌することが明かされた(小説版では四葉財閥の倉田明宏が該当)。
なお、7人いるジコチューの幹部はいずれもプロトジコチューから生まれた分身で、彼らの根源にあたる存在ではあるが、幹部たちはプロトジコチューが人間を依り代にした形態=キングジコチューを主君として扱っており、その素となっているプロトジコチューについては敬意の対象ではなく畏怖されている模様。
前形態であるキングジコチューが器となった国王が娘への執着心でジコチュー化したため、娘のレジーナと二人だけの世界を作ることを目的としていたのに対し、純粋なジコチューであるベールを器にしたプロトジコチューは、他者への関心を完全に無くしている。その考えは自分以外の全てが嫌いというジコチューの本質そのもので、自分以外の全てを滅ぼすのが目的となっている。
論理的な話も一切聞かず、キュアハートに自身の野望とアイデンティティの矛盾を指摘されても、全く取り合わずに暴力で一方的にねじ伏せるなど非常に独善的な性格をしている。また下記の国王をジコチュー化させた経緯から、ずる賢く狡猾な面も窺える。
主な攻撃は念力・ビーム・ジャネジー注入。念力は高層ビルを複数持ち上げて相手にぶつけるなど非常に豪快な攻撃方法をとっている。
ビームに関してはレジーナ・キングジコチューと同種のもので、一発で巨大なクレーターを作る火力を持ち、さらにラビーズで守られているはずのプリキュアの心を、闇に染めることの出来るジャネジーを放出することも可能。
肉弾戦でもふるった拳の拳圧だけで地面が抉られ、加えて高速移動でプリキュア達を圧倒していた。
防御に関しても絶大で、トゥインクルダイヤモンド・エースショットを片手でいなし、切り札であるプリキュア・ロイヤルラブリーストレートフラッシュの直撃も全く効果が無かった。
かつては全宇宙を圧倒的な力で支配していたが、キュアエンプレス達との死闘により敗北。それでも完全消滅には至らず、エターナルゴールデンクラウンの力により現在のトランプ王国の地下に封印されていた。
しかし現代のトランプ王国にて、一万年もの時間の経過で封印が弛んだ隙を付いて力の一部を外部に放出。王女であるマリー・アンジュを不治の病にし、国王を『娘を助けたければ、すべての英知が詰まったエターナルゴールデンクラウンを解放して病を治す方法を知るしかない』という状況に陥れる。
「世界」か「娘」かの二者択一を迫られた国王が、「娘」を選びエターナルゴールデンクラウンを解放したことで封印されていた“闇”が解放。封印を解いた国王を「究極の自己中」となじり活動するための新たな器として取り込み、当初はキングジコチューとして復活した。
終盤の人間界でのプリキュアとの決戦にてキングジコチューは浄化されたため、かろうじて生き残った本体である“闇”も手のひら大まで弱体化してしまう。それをジコチューのNo.1になることを画策するベールがさらなる力を得るために取り込んだところを、新たな器として逆に吸収してプロトジコチューとなって姿を現した。
復活後、プリキュア&レジーナと戦闘に突入。上記の能力を駆使して戦闘面では完全に圧倒し、一切の有効なダメージを受けずに叩き伏せた。自身の野望を宣言し、キュアハートにその論理の矛盾を指摘されても完全に無視。逆に「わたしに説教をする貴様こそ自己中」と暴論を振りかざし、キュアハートのプシュケーにジャネジーを注ぎ込み強制的に闇に染め上げた。
しかしプリキュア達を追い詰めた力も、自力でプシュケーが闇に染まった状態から復帰したキュアハートに、プリキュア全員の力とプリキュア三種の神器の力を吸収して生まれた「キュアハート パルテノンモード」の登場により形勢が逆転。舞台が宇宙にまで及ぶ一騎打ちになるものの、それまで圧倒的優位を誇っていた力を完全に覆されてしまう。最後は「マイ・スイートハート」で浄化され複数のプシュケーとなり消滅し、最期を迎えた。
この時のブシュケーにより、荒廃したトランプ王国や戦場となってボロボロになった大貝町も元の姿に修復された。
プロトジコチューの元になった“闇”は「人間の心の闇が具現化した存在」なので、「人間が自己中な考え持つ限りはいつか必ず復活する」存在である。
浄化される寸前、そのことを宣言して最後のあがきを見せたものの、キュアハートはそれを「人間ならばわがままな心を持つのは当然のこと」と受け入れつつ「たとえ誰かが闇に落ちたとしても、必ずそれを助けようとする人間もまたいるはずだ」として、逆にプリキュアとジコチューとの永劫の戦いを宣言。はるかな未来へ向けての宣戦布告を行った。
これにはプロトジコチューも呆気にとられ、精神・肉体両面において完全に敗北。最後のあがきも切り返され、浄化される流れとなった。
なお2016年3月公開のオールスターズ映画『プリキュアオールスターズみんなで歌う♪奇跡の魔法!』において歴代のラスボスと共に登場しているが、こちらは魔女ソルシエールがプリキュアの記憶を元に再現した複製体で本物ではない。
回想シーンでは、列に横入りしたり、電車の座席で寝そべったり、信号無視をしたり自己中な行動を行うラスボスらしかぬシュールなプロトジコチューの姿が描かれている。
これはプロトジコチューが今まで戦ってきたジコチューの本質であるがゆえの描写であり、ある意味どういう怪物なのかを端的に表している。どこにでもいる人間の、誰しも抱えている自己中心的な心の象徴が、このプロトジコチューなのである。
更に言えば、正体が「人間の負の感情が具現化した存在」であるラスボスは前作、前々作と続き彼で三連続となったが、これまでのラスボスたちがどうしようもないほど深い悲しみや怨念と言った、人間の心の中でもかなり暗く深い負の意識の集合体であるのに対し、それと比べればプロトジコチューの場合はあえて悪く言えば「質の低い悪意」と言える。
しかし、だからこそ本当に誰もが当たり前に様に考える最も人間に根強く浸透した悪意であり、同時に人間のエゴや欲自体、人間らしさに繋がる大事なものでもある。
前者たちがプリキュアの力と心によって深い悲しみを乗り越え新たな命として転生したり、渦巻く怨念の全てを受け止められて完全に浄化されたりした一方で、自身を浄化されながらも同化していたベールが限りなく弱小化しつつ最後の最後まで懲りずにジコチューでいたのも、ある意味ではそんな当たり前の人間性を最後まで否定しなかった結果なのかもしれない。
ただそれゆえか、ラスボスとしての威厳が些か感じられないという意見がごく一部にもあり、上北ふたごが手掛けたコミカライズ版の描き下ろし最終回ではわずか1コマしか登場していないという影の薄さが多少見受けられた。
ちなみに、名前の『プロト』は試作ではなく『起源』を意味する。その為か、毎話の怪物としてのジコチュー役の岩崎氏が声を担当している。
また彼の立ち位置はストーリー上のラスボスと言うよりはゲームでいうところの隠しボスと言ったところであり、以降のプリキュアシリーズでは組織のボスが最終話の最後の敵ではなく背後にいた黒幕、因縁の相手、忘れ形見、身近な人物と幅広く彼こそシリーズの裏ボスポジションを初めて確立させた存在と言える。
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