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幻徳ショック

げんとくんしょっく

『仮面ライダービルド』第40話以降で氷室幻徳が視聴者にもたらした衝撃である。
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概要

自らの過去の悪行を悔悟し、その罪に向き合って苦悩する氷室幻徳。自分のせいで道を踏み外した内海成彰のために、傷ついた身体に鞭打って戦場に向かおうとした彼の真摯な生き様は、少なからぬ視聴者の心を打ったことだろう。そんな彼を因縁の滝川紗羽も懸命に介抱し、戦いに出ようとする彼を制止していた。

そんな第39話までの極めてシリアスな雰囲気は、翌40話で急変する。
それは、幻徳が戦兎からも仲間として受け入れられ、初めて私服でnascitaを訪れたときのことだった。戦兎にとっても彼の私服姿を見るのは初めてだったが……。

その服装のセンスが、超絶レベルで壊滅的だったのだ。

もう個性的とかいうレベルではなく、Tシャツのロゴの「威風堂々」の文字を見せびらかし、満面の笑顔でポーズを取る幻徳の姿に、一海「想像の斜め上を行く破壊力だ!」龍我「もはやどこから突っ込んでいいのかわかんねぇ!」と一同はドン引き。紗羽は記者の仕事柄か「その服はどこで買われたのですか?」とインタビュー風に尋ねたが、その答えは実に「オーダーメイドだ。羨ましいのか?」というのだから、もはやどうしようもない。

戦兎たちは仮にも仲間になった彼を傷つけまいと、何とか気遣ってオブラートに包んで表現しようとしたが、1人ブチ切れた美空から「ダサッ!!ダサすぎる」「放送事故レベルでしょ」とストレートに罵倒される。ここでショックを受けるのかという視聴者の心配もよそに「見る目ねぇな」のひとことで片付けた後、戦兎に急に真顔になって「葛城…お前、桐生戦兎の記憶が戻ったのか?」と話しかけたが「その格好のままじゃ普通に会話できる自信ないんで…一旦休憩!」と突き放された(しかもご丁寧に本当にCMを挟んだ)。

放送事故


そして戦兎と一海が北都に潜入している間に新しい私服を用意するも、これまた全身ピンクで「親しみやすさ」と謎のロゴの入ったTシャツという論外な代物で、再び美空に「ダサい」と言われ、「はぁ?ここまで妥協した俺のセンスが伝わらないのか!」と逆ギレするが、美空から「伝わる訳ないでしょこの変態!」とまで言われ「変態だと!?俺のどこが変態なんだ?言ってみろ!!」とヒートアップ。そのまま大喧嘩になり、「ピンクマン来ないで!」と嫌がる美空にビニール製の上着を着せようとしていた。

この、前話までのシリアスな雰囲気とはあまりにもかけ離れた幻徳の姿は視聴者に大変な衝撃を与えた。本筋のシリアスなドラマはきちんと進行していたにもかかわらず、「幻徳に全部持って行かれた」という声も多々聞かれたほどである。
まさしく「幻徳ショック」と呼ぶのが相応しいだろう。

次話でも……

続く第41話のアバンでは、「最近俺の扱いがおかしい…」とぼやきつつ、その原因として「1人で電車の切符が買えない」「ピーマンが食べられない」「明かりがないと寝られない」等々、聞かれてもいないのに自らお子ちゃまな弱点を告白(単なるネタで本編とは関係ないという可能性もあったが、ハイパーバトルDVD『仮面ライダープライムローグ』で正真正銘の事実であることが判明した)。

GENTOKUSAN


ファッションセンスは相変わらずで、今日は民族衣装風のポンチョ(7代前の作品の多国籍料理店なら様になったのかもしれない)に、下のTシャツには二枚目気どりの三枚目(ある意味で間違っていない)というロゴが。再びキレた美空から「出禁!出て行って!」と追い出されたが、結局その格好のまま戻ってきている。
その後は一海と共にやけに明るい様子ではしゃぐなど非常にコミカルな様子を見せた。
また、今回のAパートはほぼ過去の回想で、幻徳の回想については、実は殆ど何も知らない状態だったファウスト時代のものだったり、ナイトローグ時代を含む幻徳の敗北の映像など残念なものばかり流れた(一海にも言える事だが、あくまでエボルトの行動を遡る為の回想だった為、西都所属時代の話はカットされてしまっている)ため、馬鹿にされ続けてしまい「俺は負けてない!」と弁明に追われる羽目に陥った。

その衝撃はここまで……

このインパクトを受けて、「威風堂々」「親しみやすさ」Tシャツが「バンコレ!」から商品化までされてしまった
さらに第三弾として、「二枚目気どりの三枚目」Tシャツまで商品化決定。どうしてこうなった

思えば…

あまりの突然なキャラ路線の変更に困惑したという視聴者も多かったのかもしれないが、平成2期ではそれまで生真面目さを貫き通していたキャラクターが、ある時期を境にネタキャラとしての頭角を急に現しだすことが多々ある(ちなみにこのパターンはニチアサの別シリーズでこそ染み深いパターンと言った方がいいかもしれない)。
ただそれは、とっつきにくく打ち解け難い「関係者」から、親しみが持ててイジっても構わない「仲間」になった証しでもあり、彼も晴れて戦兎たちの仲間になれたという事なのであろう。

美空との絡みも、元々の立場(美空=秘密結社ファウストの実験体であり被害者、幻徳=秘密結社ファウストの幹部であり加害者)を考えると感慨深いものがある。

もとより、この2エピソードはギャグテイスト満載だったアバンの「あらすじ」の雰囲気が本編にまで入り込んだような色合いが強かった。「放送事故レベル」「いったん休憩」「ここは親父の仇を討つ展開だろ!」といった、明らかにメタ発言ととれる台詞が本編でたびたび出てくるのがその証拠である。あまつさえ、戦兎が「そういうメタ発言やめてもらえる?」と、自らメタ発言に言及してしまってまでいる。
幻徳の残念すぎる扱いも、この文脈で理解するのが妥当かもしれない。

そして、この間も、「エボルトロストフルボトル収集に向かって動き出す」「一海がハザードレベルの上昇による強化と引き換えに、敗北が死を意味する身体になる」「エボルトに感情が芽生え、それによって狂乱が加速する」「戦兎の実父である葛城忍の生存が判明する」など、本筋のシリアスなドラマはきちんと進行していることも忘れてはならない。

ショックの鎮静……か?

続く第42話では、「あらすじ」では相変わらず前話までのノリを引き継いでいたものの、本編では亡き父親・氷室泰山が治めていた祖国・東都がエボルト率いる西都軍によって制圧され、父の遺志を継げなかったことに苦悩しつつ戦いに臨む彼の姿が見られ、シリアスな幻徳が帰ってきた
服装も黒いライダースーツにジーンズとまともなものになっている(この事情は、『仮面ライダープライムローグ』で明らかになった)。
ともあれこれで事態は収束するかと思われたが、彼の拘りはジャケットの下のインナーに残っており、第43話では無言のまま言いたいことの書かれた文字Tシャツを見せつけて会話するという更に突き抜けた行動を披露。(しかもシリアスなシーンで真顔で)会話の相手からは「自分で言いなさいよ!」「いつ仕込んだんだよ?」とツッコまれていた。

そしてこのエピソードで着用していた「さらば!」「賛成だ」Tシャツまで商品化決定。なんてこった。

別ベクトルで幻徳ショック再来

第44話ではハザードレベルを上げるため、一海とわざとファウストに捕まってネビュラガスを浴びるという捨て身の策を取ったが、脱出の段取りまでは考えていなかったらしく戦兎と龍我に救出される。
その後、無茶な行動の真意を戦兎らに問い詰められるが、その問いに対しマトモなジャケットの下の奇妙奇天烈な文字Tで返答するというセンスは、別ベクトルでハザードレベルが上昇しており、文字TのYesとNoで返事(しかも自前のSE付き)をしようとしたが間違ってNoと返答してしまうという更なる珍行動を起こした(龍我はすかさず「使いこなせないなら口で言え」と突っ込みを入れた)。
もっとも今回は相方の一海も奇行を披露しており、それに対してはやはり文字Tで「No」のツッコミを入れていた。

また彼は致命的に料理が下手という欠点も判明。一海に特製パスタのレシピを教えてもらって「本日のシェフ」文字Tを着ながら振る舞ったが、(見た目は不味そうでは無かったものの)女性陣二人は一口するや悶絶。自分のレシピに不手際があったのかと思い味見した一海が驚愕した後ブチ切れるほどの不味さで、今度は一海から出禁を喰らった(一応フォローするなら一海はレシピを目に見える形で保存していなかった)。
ちなみに後ろで食べていた龍我は「美味い」と言って普通に食べている

更に文字Tはシリアスなシーンでも使用されており、自分が一番右にいるにも関わらず「右に同じだ。」文字Tを使ったため他のライダーからツッコまれると同時にシリアスな雰囲気をクラックアップフィニッシュした(ちなみにそれを見た戦兎のリアクション)。

ここまで毎回のようにネタキャラぶりが繰り返されるとそれが平常運転となりつつあり、そろそろショックを受けるというよりは「またお前か」状態になっている視聴者も少なくなかろう。もはや「安定の幻徳」とでも呼んだ方が良いのかもしれない……。

しかし特撮雑誌『宇宙船』vol.161で明かされたところによると、幻徳の「天然お坊ちゃん」設定自体は制作当初から存在していたらしい。素を露呈させる時のギャップを狙って、あえて作中で私生活の描写を省いていたという。
当初彼の素は物語初期で見せる予定であったが、本作の脚本を手掛けた武藤将吾の「考えを作中で明示してから素を見せたい」という意向で終盤まで引き伸ばされたのであった。
しかし壊滅的な私服のダサさは第40話の監督を担当した諸田敏がやり過ぎた結果であり、全くの想定外だったとのこと。


振り返れば……

ちなみに幻徳といえばご存知のようにはや第1話でかのホテル発言でお茶の間を騒然とさせており、このときすでに「幻徳ショック」は起きていたといってもいいかもしれない。

















そしてガチの……(以下ネタバレ注意)

 それは最終話前話となる第48話で起こった。
 前話での一海の死の悲しみを胸にエボルトとの最終決戦に臨む戦兎、万丈、幻徳だったが、あまりの力の差に圧倒される。ロストボトルを遂に揃えたエボルトが今にも地球をブラックホールに呑み込もうとするその時、ただ一人変身解除されていなかったローグは、最後の力を振り絞ってエボルトに立ち向かう。

 エボルトリガーを壊せばエボルトの動きが止まるという唯一の弱点を狙って集中攻撃を仕掛けるも、ハザードレベルも含め力の差は歴然でありエボルトは歯牙にもかけない。ローグはマスク割れに追い込まれ消滅も近づくも、民衆の応援する声を耳に、「親父、やっとわかったよ、国を作るのは力を持つ者じゃない、力を託せるものだって」と悟り、「大義のために犠牲になる」ことを胸に総力を挙げてクラックアップフィニッシュを放つ。

 それも跳ね返されると遂に限界を迎え、戦兎に後を託して消滅。その素性を知ってからずっと「葛城」と呼び続けてきた幻徳が、改めて「桐生戦兎」と呼んだのだった。
 消滅直前、変身は解除されていながら影はローグであるという演出が印象深い。

「無駄死にだったな」と嘯くエボルトだったが、その決死の攻撃はトリガーを破損させ、後を託された戦兎らに逆転のチャンスを与えていたのだった……。

 前話での一海に勝るとも劣らない壮絶な最期であり、視聴者に与えた衝撃も劣らないものであったことだろう。これこそガチの「幻徳ショック」に他ならなかったのだ。

 なお、一海が「最期までドルオタのままでありつつ無類にカッコよかった」「戦闘には勝利したが限界を迎えて消滅した」のに対して、幻徳は「それまでのネタキャラぶりを吹き飛ばすようなシリアスそのものの最期だった」「敗れはしたものの仲間の勝利に決定的な貢献をした」と、いずれ劣らぬ壮絶な最期でありながら対照的な面もある。


関連タグ

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