概要
『遊戯王ARC-V』の赤馬零児×沢渡シンゴのBLカップリング。
原作での性格や立場から、”クールで傲慢な飼い主の零児×零児に手綱を握られている沢渡”といった雰囲気で描かれた二次創作作品が多い。一方で、”使命の重責に押しつぶされそうな零児×天真爛漫に零児を癒す沢渡”といった描かれ方もよく見られる。
公式の全作品内それぞれで異なる経緯と理由ではあるものの、その全てに於いて二人は思惑を持って榊遊矢に接触する人物として描写されている。
アニメ版、Vジャンプ掲載の漫画版、最強ジャンプ掲載の漫画版とで零児と沢渡の関係には違いが見られる。詳細は下記の「作品別の関係」を参照のこと。
作品別の関係
零児、沢渡は共にアニメ版、2つの漫画版の計3作品に登場し、それぞれで関係性や呼び名が異なる。
沢渡から零児への呼び名及びその変遷は以下の通りである。
アニメ版「赤馬零児」(第47話)→「零児」(第140話)
漫画版(最強ジャンプ)「赤馬」(第3話)
漫画版(Vジャンプ)「赤馬社長」(第2話)
一方、零児から沢渡への呼び名は全ての作中で「沢渡(沢渡シンゴとフルネームで呼ぶ場合もある)」である。
作品別の関係は個別項目に記述する。
各項目では、まず作品内で二人が互いに対してした言動、行動の個別概要を記述した後、カップリングとして注目すべき点を特記する。
アニメ版
概要
この項目では、2014年4月6日から2017年3月26日まで放送されたアニメ『遊戯王ARC-V』内での、零児と沢渡の二人が互いに対してした言動、行動の概要を記述する。
本編開始時点で二人に個人的な面識は無く、レオ・コーポレーション(以下L・C)の社長と、L・Cが運営するレオ・デュエル・スクール(以下LDS)の塾生の関係であった。ただし零児の母と沢渡の父とは仕事上の付き合いがある。
第1話以降から第2話の終盤までの時間軸で、零児は秘書中島を通じて沢渡に”榊遊矢のペンデュラムカードの奪取”を依頼する。
第3話にて零児は司令室から、遊矢と対戦中の沢渡にデュエルディスクから通信をする。その際沢渡を威圧し、指示下に置いてのペンデュラム召喚を行う。
尚、この時零児は最後まで名乗ることはなく、沢渡は通信の相手が零児だと気が付いてはいない。
以降第47話に至るまで、二人が邂逅する描写は存在しない。
ただし、沢渡が「噂じゃL・Cが独自にペンデュラムカードを開発してるらしい。俺はそれを真っ先に手に入れ、必ずお前を倒す。」と遊矢に宣言し(第15話)、実際に妖仙獣デッキを支給されたことから(第31話から第32話舞網チャンピオンシップ1回戦遊矢vs沢渡戦)、この間に直接、あるいは秘書を通じて間接的に交渉したと推察できる。
尚、第32話にて対戦終了後に零児の指示により妖仙獣のペンデュラムカードは回収されている。
第47話にて、舞網チャンピオンシップ3回戦バトルロイヤルの中継が打ち切られたことに抗議するため沢渡が司令室の零児に直談判する。零児はその場で沢渡に敗者復活戦を持ちかける。沢渡はそれを受けて、オベリスク・フォースvs黒咲・セレナ・月影戦に乱入する形で参戦する。
敗者復活戦を受け入れてから翌日バトルロイヤルに参戦するまでの間の二人は描写されていない。しかし第49話の終盤、現れた零児に向かって沢渡がバトルロイヤルでの勝ち残りがランサーズ加入への条件であった旨を明かしていることから、その間に零児から異次元勢力の侵攻やランサーズについての説明を受けていたと推察できる。
その後、第53話でL・C社長室に零児と沢渡を含めた計9人のランサーズが集まり、その場からシンクロ次元に次元移動する。尚、この回でのみ沢渡は零児に向かって「社長さん」呼びをしている。
又、零児からランサーズの結成が市民に宣言された第52話以降最終回までで、沢渡の言動に「赤馬零児に選ばれた男である俺様」や「ランサーズの次期リーダーである俺様(つまり零児がランサーズの現リーダーであると認めた上での発言)」といった”自己アピールのために零児を持ち上げる発言”が頻出するようになる。
第58話にてランサーズがシンクロ次元到着時に散り散りになったことで行方不明であった零児を探すためと称し、沢渡がクロウ宅を出る場面がある。(ただし、これは沢渡がセレナに単独行動をさせないために同行する方便であった可能性もある。)
第72話にて、フレンドシップカップでの沢渡vsユーゴ戦を零児は議事堂から観戦しているが沢渡に関する言及はない。
シンクロ次元編(第54話から第99話)において、二人が同じ場所に居た回数は少ない。具体的には第63話・第95話から第97話・第99話の計5回分のみである。
特筆できるのは第96話冒頭での零児と沢渡を含めた4人のランサーズに徳松長次郎を合わせた計5人がセキュリティを圧倒する場面が短く挿入されていることである。
沢渡による”自己アピールのために零児を持ち上げる発言”はシンクロ次元編でも健在であり、第93話では徳松長次郎に「リーダー(零児)に最も近ぇ男」扱いされて機嫌を良くし、零羅に対して「なんなら俺様を兄様と呼んでもいいんだぜ。」と発言している。
第99話にて、ランサーズに向かって零児への信頼に揺さぶりをかける発言をしたロジェに対し、遊矢は「俺は赤馬零児を信じる。」という返答をし、沢渡は遊矢の隣でそれに同意する様子を見せている。その後ロジェがひき起こした次元移動装置の暴走によるワームホールに遊矢・権現坂・黒咲そして沢渡の4人が巻き込まれ、エクシーズ次元に転送される。
以降エクシーズ次元編(第100話から第112話)から融合次元移動後に再会するまでの間、沢渡と零児に接触は無い。又、この間沢渡の言動にも零児の名が出ることはなかった。
第115話の遊矢vsキャプテン・ソロ戦にて、遊矢・権現坂・沢渡に、零児・零羅・素良・月影・クロウの5人が合流する。
だがアカデミア上陸直後の第118話にて、零児・零羅・素良をプロフェッサーのもとへ向かわせるため、沢渡を含めた5人がおとりとなったことで再び別行動になる。
第139話の零児が沢渡・クロウvsズァーク戦終盤で沢渡達と合流、そのままズァーク戦に乱入する。
第140話冒頭にて、沢渡が引き継いていた遊矢のペンデュラムのペンダントを零児に渡す。この時、「ズァークの中に遊矢は絶対にいる。零児、あの怪物の中から遊矢を引っ張り出してやってくれ!」と発言する。
このことから、この回で沢渡から零児への呼び名が「零児」に変わることがわかる。(この回よりも先に公式サイト内で沢渡が「零児」呼びをし始めている。詳細は超熱血!デュエル塾に関する項目で後述する。)
第141話にて、零児がランサーズの記憶をよみがえらせるために舞網チャンピオンシップを再開し、遊矢・権現坂・沢渡が集められる。こうした中、沢渡を含めた3人はデュエルの最中に記憶を取り戻していく。
第142話で沢渡は月影と共に敗北したが、ランサーズとしての記憶を取り戻している。
この回のデュエルの最中、沢渡は「あの天才デュエリスト赤馬零児ほどの男が期待を込めてアカデミア討伐を託したこの俺、沢渡シンゴが最高のエンタメデュエルを見せてやるぜ!」と遊矢に対して発言している。
その後第146話から最終回(第148話)にかけて、沢渡は観客席から遊矢vsジャック戦及び遊矢vs零児戦を観戦している。
そして第148話終盤にて、零児と沢渡は遊矢達と共に柊柚子の復活を見届けた。
カップリングとして注目すべき点
まず注目すべき放送回は、二人が言葉を交わす場面のある第3話と第47話である。
第3話は遊矢達に対して徹底して卑怯な悪役として振舞う沢渡が、まだ自らの素性を明かしていない零児の「”まだ、だ”と言ったはずだ。」の一言で、明らかに動揺し声を震わせながら萎縮する様子は印象的である。
この場面では、瞬き一つせず短くも静かで厳格な言葉で沢渡を操る零児と、冷や汗をかき眼球が震えるほど怯え「やだな~、何ムキになっちゃってるのかなぁ…」と軽口を叩きつつ得体の知れない何者かにおとなしく従う沢渡が対比されている。
さらに第3話の見どころとなるのは、司令室の零児の指示に合わせる形で二人が声と動作をぴったり合わせて行った間接的ダブルペンデュラム召喚である。この時零児は沢渡に合わせて「俺」という一人称を使用している。又、この場面では二人が声を合わせると同時に沢渡の背後に零児の姿が重なる演出がなされている。零児が沢渡を操り人形のように扱って行われたこのペンデュラム召喚は放送当時から話題になった。
この回では、ボスの零児とその子分(小悪党)の沢渡といった関係が強く表れていると言える。
結局第3話から第4話にかけて行われた遊矢vs沢渡戦では沢渡が敗北したことでペンデュラムカード奪取は失敗している。しかしその後、第31話から第32話で試作段階のペンデュラムカード妖仙獣を沢渡に渡し、さらに敗者復活戦への参加に次いで第49話以降に沢渡が使用する魔界劇団のデッキも渡している。ランサーズを結成した後にシンクロ次元でフレンドシップカップに参戦させたことも含めれば、零児は計4回沢渡を手駒として使っていると言える。
第47話は零児と沢渡の初めての邂逅場面と、零児による敗者復活戦への参加持ちかけが見どころである。零児が沢渡に敗者復活戦を持ちかける際の「ならばキミだけに見せてやってもいい。沢渡シンゴ、敗者復活戦をやってみる気はないか。」という発言には沢渡自身も優越感をくすぐられたようである。
こうして沢渡だけに敗者復活戦の権利が与えられ、それに伴い新しいペンデュラムカード魔界劇団が支給されることになる。この回で零児は、えこひいきを感じさせるほどに沢渡を優遇している。
余談だが第47話で二人が司令室で会話した後、第48話終盤で沢渡がバトルロイヤルの会場に現れるまでの間に一夜明けている。
上記した通り、シンクロ次元以降になると二人の直接の会話はなくなるが、沢渡による”自己アピールのために零児を持ち上げる発言”が増加する。第142話にて沢渡はまだ記憶を完全には取り戻しきっていないにもかかわらず「あの天才デュエリスト赤馬零児ほどの男」と発言している。
これら発言群は、勿論零児の権威を笠に着る意味もある。しかし沢渡が同じく口にする「次期市長のパパ」という言葉は、父親本人がいない場所であろうとその威光が相手に効かなくとも無関係に度々発言していたことから、精神的安定を図るために心から尊敬する人物の名を口にし続けていたと考えられる。そのため沢渡が、父の権威と同じように口にしていた零児の権威は、零児への尊敬の念の表現でもあると言える。後述する2つの漫画版に於ける沢渡も、零児に対して高評価を口にしており、自分より上の存在として敬意を持っている。
一方で、零児自身が沢渡をどのように思っているかといった描写は本編では一切無い。しかし、一度依頼を失敗している沢渡をその後手駒として使い、デッキを2回支給し敗者復活戦にも参戦させるという破格の扱いをしている。このことから、沢渡の実力を評価していると言える(無論沢渡が扱いやすい性格の人物だからというのもあるだろう)。
尚、超熱血!デュエル塾では零児が敗者復活戦への参戦を持ちかけた理由についての発言がある。詳細は超熱血!デュエル塾の項目で記述する。
又、もしも第3話・第4話に於いて沢渡が遊矢に勝利し、零児の”ペンデュラムカードの奪取”の依頼が達成されていた場合、ズァークは復活しなかったと考えると、二人は意図せず次元崩壊の危機を食い止めかけていたと言える。
まとめるとアニメ版に於ける二人の関係は、”序盤で主人公と対峙するボス格のライバルと、その子分の小悪党”である。それは零児が沢渡に対して常に報酬を与え、時には威圧することで自身の支配下に置き、沢渡は常にそれを受け入れることで成立している。
その一方で、沢渡から零児への敬意と、零児から沢渡への一定の評価も感じる関係でもある。
二人は、利害の一致による上下関係のつながりでもあり、内面の信頼関係のつながりとも言え、そのどちらでもある関係が尽きぬ魅力を持つカップリングである。
超熱血!デュエル塾
アニメ公式WEBサイト内で放送と連動して更新されていたデュエル解説コーナーである。解説コーナーに使用されていたAdobe Flash Playerが2020年12月31日にサポートを終了したため、現在は閲覧できない。
解説はSD化させたキャラクターアイコン同士の寸劇で行われ、コメディタッチに展開している。本編では会話が少なく、互いへの明確な心理描写も無かった二人だが、このコーナーの中では幾度か言葉を交わしている。
まず、第54話放送後に掲載された『講義5 超熱血!「ランサーズ」!!』に於いて本編では描写されなかった、零児が沢渡に敗者復活戦への参戦を持ちかけ、ランサーズに引き入れた理由が零児から語られている。
「沢渡シンゴ、LDS所属。」
「舞網チャンピオンシップでは榊遊矢に敗れ、本来ならバトルロイヤルへの参加資格を失っていた。」
「だが、私は彼の覇気(はき)を買った。そして見事に融合次元のデュエリストを退け、私の期待に応えてくれた。」
「彼のような変幻自在のデュエリストは、厳しさが予想される今後の戦いの中で必要となる時が来るだろう。」(講義5 48/84から51/84より)
要約すれば、零児は沢渡のデュエリストとしての技能と共に、第47話で司令室に直談判しに自分の下に来た強い意志を評価したということである。自身が派遣したユースチームが壊滅状態になった直後に沢渡が現れたことから、言わば渡りに舟を得た状況だったとはいえ、自分の下に赴いた沢渡に覇気を感じたからという理由で敗者復活戦を受けさせ、新しいデッキを与える零児は沢渡をだいぶ優遇していると言える。
又、第137話放送後に掲載された『講義88 超熱血!ズァークの「ダークリベリオン」!!』では、第140話よりも先んじて沢渡が零児に向かって「零児」という呼称を使用し始めている。
「もしかすると、ズァークも零児みたいに他の召喚方法をマスターしてるんじゃねぇのか!?」(講義88 39/43より)
尚、沢渡の「零児」呼びへの移行は権現坂や素良よりも遅い。
その一方で超熱血!デュエル塾に於いては、零児のいる場で「さすがランサーズのリーダーだぜ」と発言を繰り返している。これは本編で繰り返された”自己アピールのために零児を持ち上げる発言”とは異なり、又、文脈から見ても零児に世辞を言っている意味とも異なる、素直に”零児本人に感服し、褒め称える発言”を意味している。
このように本編では不明瞭であった零児から沢渡への心理描写を補足している超熱血!デュエル塾ではあるものの、このコーナー内でも二人が言葉を交わす展開は少なかった。
だが、講義87から講義90の4回分に於いては、これまで会話のなかった零児と沢渡が中心となってデュエル解説をしている。
そして『講義90 超熱血!明かされる『覇王龍ズァーク』の力!!』では、ついに零児と沢渡の二人だけが会話をし続けた。これは第136話から第140話まで続いたズァーク戦の間に、解説に参加できるキャラクターがことごとく敗退したためである。加えて、ズァークと化した遊矢と、レイを復活させるために統合されたことにより安否不明となった柚子が本編から消えたことにより、主人公もヒロインもいないデュエル塾という異様な空間と化した。
講義90では、沢渡がいつもの調子で得意げに自身のデュエルを解説し、零児は「今まで得た情報が、役に立ったということだな。」と受け流していく。それに対して「おい!俺のタクティクスをもっと誉めてくれよ!!」と沢渡がツッコミを入れても、零児は聞き流して解説は進んだ。ただし沢渡から質問されると常に零児はきっちりと答えている。二人の会話からは、淡白で無駄のない零児と、いつもの自慢を軽く受け流されつつも零児の受け答えに感服する沢渡という関係が見える。
尚、遊矢が復活した第141話放送後の講義92以降は、再び遊矢を中心とした寸劇に戻っている。
特別予告映像(漫才フェイズ)
2015年2月7日から2019年6月29日まで毎週土曜日に放送された『遊戯王DM 20thリマスター』の放送枠にて、『遊戯王DM』の次回予告後から続けて翌日放送の(『遊戯王ARC-V』は放送当時、毎週日曜日放送であったため)『遊戯王ARC-V』次回予告が流れていた。
この際、2015年2月7日から同年11月28日までの次回予告放送後にのみ、特別予告映像が放送された。尚、9月5日・9月12日・9月19日・9月26日分の次回予告には特別予告映像がついていない。
通称は「漫才フェイズ」及び「漫才次元」である。内容は、本編の映像を背景にSD化させたキャラクターアイコン同士がコメディタッチに寸劇を展開するものとなっていた。
この映像で、零児は2回(2015年8月1日・10月24日)、沢渡は11回(2015年3月28日・4月18日・4月25日・5月16日・5月30日・6月6日・6月20日・6月27日・7月18日・8月8日・8月29日)登場している。しかし二人は同じ映像内に登場せず、互いについての話もしていない。
沢渡はかなりの登場回数であるが、他登場人物達からの扱いはアニメ版及び超熱血!デュエル塾と同様のものになっている。
本映像ではアニメ版と同様に、沢渡の懐の深さを存分に味わえる内容になっている。
特に7月18日分の、ジャック戦での敗北(第64話)で落ち込む遊矢に対して普段の自慢口調を装いつつ励ます沢渡の回は、沢渡のキャラクター造形を理解する上でも一見の価値があると言える。
一方、零児の登場回数は少ないが、その中で遊矢のマフラーに関する質問に応えずにあしらい、黒咲にはその物言いで脅威を感じさせている。
漫画版(最強ジャンプ)
概要
この項目では、『最強ジャンプ』にて2015年5月号から2017年9月号まで連載された漫画『遊戯王ARC-V最強デュエリスト遊矢!!』内での、零児と沢渡の二人が互いに対してした言動、行動の概要を記述する。
本作品の二人は、零児がLDSの最高顧問であり、沢渡はLDSの塾生(沢渡父は次期市長であるとのことだがアニメ版と同様に市議会議員かは不明)という大よそアニメ版と同様の関係である。ただし本作では遊矢がペンデュラムカードを創造する設定自体が存在しないため、零児による”遊矢のペンデュラムカードの奪取”の依頼が発生しない。
このため二人はそれぞれ別々に遊矢と接触している。
沢渡は第1話から、零児は第3話から登場する。
第3話にて、エンタメデュエリスト榊遊矢の評判を聞きつけた零児からの招待により、LDSスタジアムオープニングセレモニーに於いて遊矢vs零児のエキシビションデュエルが行われた。
この時、観戦のために会場に現れた沢渡が「まさか遊矢が赤馬と対決するとはな………」と発言し、「赤馬相手にどこまでやるか見ものだぜ」と内心思う場面がある。又、対戦を観戦中には、「これからヤツが行うことにくらべたらたいした事ねぇよ」「この後ドギモを抜くぜ」「ここにいる観客も榊遊矢もな!」と沢渡が零児のデュエルに期待を見せる描写もある。
第4話では、デュエルに勝利した零児に対し湧き立つ観客を見て「すっかり赤馬一色にそまったじゃん!」と発言し、柚子に叱られている。
第7話からはデュエルスクールトーナメントが始まるも、沢渡はLDS代表として選ばれてはいない(LDS代表には志島北斗が選ばれ、遊矢と対戦している)。
しかし、第9話で沢渡は自身の父にデュエル塾(ネオエンタメスクール)を設立してもらうことでその個人塾の代表としてトーナメントに参戦し、遊矢と対戦する。ただし沢渡がLDSから退塾したという描写は無く、沢渡自身も襟にLDSのバッジを付けたままであるため、LDSに在籍したままであると考えられる。
第9話で遊矢に敗退した後、最終回第15話で沢渡は観客席から零児と遊矢のデュエルを見守った。
カップリングとして注目すべき点
本作の二人は、大まかな設定こそアニメ版と同様であるものの、それぞれ別々に遊矢と接触しているため、当人同士の接触が一切無い。
沢渡は第1話で妖仙獣、第9話で魔界劇団を使用している。アニメ版では両方とも零児から与えられたペンデュラムカードであるが、本作では最初から沢渡の使用デッキとして扱われている。又、零児も沢渡個人を指して言及する描写はない。LDS代表には別の生徒(志島北斗)が選出されている。これらをまとめると本作の二人の関係は、”デュエル塾の最高顧問と、塾生の一人”の関係であり、そこに個人的な付き合いは見えない。
一方で、本作の沢渡はアニメ版と同じく零児のデュエルを高く評価する発言を繰り返している。
関係性のある描写が薄い本作の二人だが、この作品ならではのキャラ付けを楽しむことができる。デュエルで髪を刈上げられる沢渡や隙を見つけては居眠りをする零児といった展開や設定は本作独自のものである。
又、アニメ版ではシンクロ次元での沢渡の定番となった「パパにいいつけてやる」という台詞の初出は本作の第1話である(ただし、当時未放送だった回の脚本から取り入れた可能性はある)。
本作は二人のキャラクターとしての役割分担が明確にされており、”遊矢の前に壁として立ちはだかる零児”と”遊矢とエンタメデュエルで競い合う沢渡”という個々の役割がアニメ版より強く表現されている。
例えば第5話に於いては、零児戦での敗北を引きずりエンタメデュエルができなくなってしまった遊矢のために、コスプレをして「THE SUPER SAURUS MASK(SSマスク)」を名乗って正体を隠し、遊矢をデュエルで叱咤し立ち直らせようとする沢渡が描かれている。
こういった本作世界観を踏まえて、二人の関係を想像することも可能だろう。
漫画版(Vジャンプ)
概要
この項目では、『Vジャンプ』にて2015年10月号から2019年6月号まで連載された漫画『遊戯王ARC-V』内での、零児と沢渡の二人が互いに対してした言動、行動の概要を記述する。
本作では各話数を「スケール(数字)」と表記しているが、ここでは「第(数字)話」と記述する。
本作中の二人は、零児がL・Cの社長であり、沢渡はその部下という関係である。
本作はアニメ版・最強ジャンプ版と物語や設定が大きく異なっている。零児はオリジナル世界の未来人であり、沢渡は「G・O・D」の力で破壊された後、榊遊勝の引き起こしたワールド・イリュージョンにより巻き戻された過去世界(=本作の本編世界) の人間である。
又、沢渡の名前は沢渡慎吾と漢字で表記されている。
零児の容姿や衣装はアニメ版と同様である。
沢渡の容姿や衣装もほぼ同じだが、LDSの設定が無いため沢渡の襟にLDSバッジは無い。アニメ版の舞網市立第二中学校の設定が無いため沢渡の衣装も学生服ではないと思われる。又、沢渡の瞳の描き方が、アニメ版・漫画版(最強ジャンプ)の沢渡、及び他キャラクターと異なる特徴で描画されている。
沢渡の素性もアニメ版・漫画版(最強ジャンプ)とは異なり、父の権威を笠に着る発言は無く、沢渡父を含めた家族設定は不明である。ただし、本人の台詞から金持ちになることへの憧れが語られている(例:後述するジャンプビクトリーカーニバル2018公式ガイドブックの書き下ろし漫画等)ことから、アニメ版・漫画版(最強ジャンプ)とは異なり本作の沢渡は金持ちの家の生まれではないと推測できる。
そして大きな違いとして、沢渡が零児に対してのみ常に敬語で話すことが上げられる。もっとも沢渡の性格はあまり変わってはいない。
この他にも本作では様々な設定が異なっている。
本編開始時点で零児と沢渡は上司と部下の関係であるが、零児が沢渡と出会った時期や経緯、部下に引き入れた理由は判明していない。
本編の時系列に則った零児と沢渡の出会った時期に関する推測は、「本編に於ける零児と沢渡の出会った時期に関する一考察」で後述する。
尚、連載に先立ち、2015年7月に開催されたジャンプビクトリーカーニバル2015の来場者記念品公式ガイドブック内の特別漫画にて、沢渡は零児の部下の一人として登場し、”ファントム(=榊遊矢)”を追っている。(書き下ろし漫画の内容は、本記事内その他の『ジャンプビクトリーカーニバル2015公式ガイドブック』の項目で詳述している。)
第1話にてMAIAMI市内でファントムを捕捉した零児が、司令室から特殊部隊にファントム捕獲を命じ、沢渡を含め黒咲・素良の計3人の部下がヘリコプターに乗って向かう。
第2話にて、単独でファントムを捕獲しようとした沢渡が、相手が遊矢ではないことに気が付き、片耳にしたインカムで「どうします赤馬社長!?」と司令室の零児に指示を仰ぐ。この場面により、本作の沢渡が零児に対しては敬語で話すことが判明する。
沢渡からの連絡に対し零児は捕獲を指示、沢渡も「そうこなくっちゃ!」と発言し、沢渡と遊矢の別人格(=ユート)とのデュエルを開始する。終盤、デュエルの最中人格がユートから遊矢に切り替わる。
第3話の沢渡による回想の中で、黒咲・素良と共に零児から遊矢の捕獲を命じられペンデュラム召喚について説明される場面が挿入される(本編開始前の時間軸の回想)。この後沢渡は遊矢に敗北している。
第4話にて、L・C社長室で沢渡は遊矢を捕獲できなかったことを謝罪するも、「言い訳は後でいい」と一蹴される。その後社長室を出た沢渡は悔しそうにトレーニング室に向かった。この時、素良の内心で沢渡は「単細胞」扱いをされている。
第5話では、MAIAMI市郊外の虚偽の谷にて柊修造を人質に取った黒咲が遊矢とデュエルを始める。沢渡は黒咲を止めようとするも零児に引き止められる(この際沢渡は悔しそうにしている)。零児・沢渡・素良はそのまま司令室で黒咲のデュエルを見守る。
第6話にて黒咲の言動を不可解に思う沢渡に対し、零児が「奴は追い詰められるほど強くなる」と説明している。しかし沢渡は理解できなかったのか「?」という反応をしている。
第8話にてL・Cの情報物理システムカンパニーでの遊矢vs素良戦を、零児・沢渡・黒咲が司令室から見守る。遊矢捕獲のため沢渡が素良のもとに向かおうとするも零児が引き止める。
このデュエルの最中、「病気の妹を赤馬零児によって人質に取られている」という素良の嘘を沢渡はモニター越しに聞くも特に反応を見せる描写はなかった。寧ろ、その話に激しく動揺し天誅を下すとまで息巻く黒咲に対して「コイツ自分も人質取ったくせに…」と内心唖然とした様子を見せた。
第9話にて、素良戦の最中に遊矢の3番目の人格(=ユーリ)を、モニター越しに零児・沢渡・黒咲が確認する。素良が零児からペンデュラムカードの試作品を渡されていたことを知り、沢渡は「社長!あんなカードがあるならなぜ俺に!?」と抗議するも、零児から「君達を差別したつもりはない」といなされる。
第10話でユーリから再び人格を切り替えた遊矢によって素良が敗北する。LPがなくなる寸前に素良が発動させたアクションカードのバトルダメージによりシステム実験室が破壊され、沢渡と黒咲は現場に向かう。
司令室に残された零児は、単身でMAIAMI市郊外の発掘現場に向かったことが第13話で明らかになる。
第14話にてL・Cに戻ってきた沢渡と黒咲は、零児を探して発掘現場に向かう。一方で零児は遊矢のアジトに向かっている。
発掘現場で沢渡・黒咲は地下に埋没したシェルター(零児の自宅)を発見し、部屋の物の日付が20年以上未来のものであることに気が付く。
第15話にて沢渡・黒咲がデュエル・シグナルから零児の居場所をつきとめる。
第17話にて、零児のデュエル・シグナルから辿った座標により沢渡・黒咲が遊矢のアジトを発見する。ここで柚子とも邂逅する。
第18話にて沢渡・黒咲・柚子が地下空間に到着し、遊矢と零児を発見する。この時遊矢と零児のデュエルにより発生したアダムの因子の共鳴と、蓮の姿を目撃する。アダムの因子の共鳴により起こった衝撃で地下空間が崩落し、遊矢・零児を助け出す間もなく沢渡・黒咲・柚子は脱出を余儀なくされる。沢渡は零児の身を案じるが、脱出の後は零児とはぐれることになる。
第19話は、第18話の後から半月経過している。零児の行方を捜し続けていた沢渡・黒咲は、柚子から零児が空港に向かったという目撃情報を得る。この時再会した柚子は沢渡・黒咲を指して「赤馬社長にくっついていた金魚の『フン』」と呼んでいる。
その後閉鎖されたL・Cの入り口を黒咲が破壊し、沢渡がデコイを起動させて零児の行き先を探索する。
この時沢渡は、素良の部屋から持ち出した零児の指紋手袋(第7話でマザーコンピューター室に入るために素良が作った物である)を使ってデコイのロックを解除している。
尚、何故素良の部屋から発見したその手袋が赤馬零児の指紋であると沢渡にわかったのか、その理由は判明していない。
デコイでの探索により、零児の行き先がL・C宇宙開発センターであることを沢渡・黒咲が知る。
第28話にて、宇宙開発センターに到着していた沢渡・黒咲が地上に帰還した零児と再会する。沢渡が零児に事情を聞こうとするも「そんな事は後だ!」と2回も言われる。さらに行き先も告げられず強引に飛行機に乗せられ出発されてしまい、沢渡が涙目になる場面もある。零児・沢渡・黒咲に遊矢・柚子も合流し、5人で南極に向かう。
機上で沢渡・黒咲・柚子は、遊矢・零児から蓮と素良が未来人であることを明かされるも半信半疑な様子を見せた。尚、遊矢・零児も未来人であることを伝えたかは不明である。
第29話にて南極のEVE達のアジト内に5人で潜入する。一行は二手に分かれ、零児は沢渡・黒咲を引き連れ、遊矢・柚子とは別行動をとる。
しかし第30話で探索途中の沢渡・黒咲は、発信機の信号を頼りに素良と交戦中の遊矢(人格は途中でユーリに切り替わる)のもとに向かったため再び零児と離れて行動している。沢渡・黒咲が零児から離れた直後、零児はアダムと邂逅する。
第32話にて素良はユーリに敗北する。ユーリから人格を切り替えた遊矢は、デュエルを見守っていた沢渡・黒咲に気を失った素良と柚子を託し、EVEのもとへ向かう。遊矢が立ち去った後、沢渡は黒咲に零児の居場所を聞かれ、この時初めて零児が一緒にいないことに気が付いたのか「まったく!」「あの社長も肝心な時にいねえな!」と悪態をついている。
その後、沢渡・黒咲は素良・柚子を医務室に運ぶためにアジトの外に停められた飛行機に戻っている。
第41話にて、沢渡・黒咲は目を覚ました素良と共に3人でアジトに再度潜入する。そこでG・O・Dのカードを巡ってデュエルをする遊矢と零児、そしてそれを見守る柚子と合流する。以降第45話まで沢渡は黒咲・素良・柚子と共に、遊矢vs零児戦を観戦している。
この回で沢渡は、マフラーを活用してアクションカードを取る零児の姿を見て「あのマフラー…凄かったんだな」と言い、黒咲と共に衝撃を受けていた。
沢渡・黒咲が零児のマフラーの噂について話をする書き下ろし漫画が『ジャンプビクトリーカーニバル2018公式ガイドブック』に掲載されており、この場面はその内容と対応していると考えられる。(書き下ろし漫画の内容は、本記事内その他の『ジャンプビクトリーカーニバル2018公式ガイドブック』の項目で詳述している。)
第43話ではペンデュラム・マッチの効果を解説している際に、沢渡が「圧倒的に赤馬零児の方が有利だ!」と発言している。これは漫画版(Vジャンプ)で唯一沢渡が零児の名前を役職名付き以外で発した台詞である。
そして最終回第45話にて、沢渡は黒咲・素良・柚子達と共に遊矢vs零児戦の決着を見届ける。その後「G・O・D」を引き裂いた瞬間現れたゲートを遊矢・零児・アイザック・蓮の4人は潜る決断をし、沢渡・黒咲・素良・柚子に脱出を促す。この時柚子に対して言った遊矢の「オレたちはこの世界の人間じゃない。」という言葉により、沢渡・黒咲・柚子達は遊矢と零児が別世界から来た人間であることに気が付いたと言える。尚、彼ら二人が20年先の未来から来たことは最後まで知らされることはなかった。しかし第14話で埋没したシェルター(零児の自宅)の中を見た沢渡・黒咲は、零児の正体に気が付けた可能性がある。
別離を決めた零児は沢渡・黒咲に対し「行け」「よくここまでやってくれた 礼を言う」と初めて優しい言葉をかけ、それを聞いた沢渡は「社長…」と言い涙ぐむ様子を見せた。
沢渡・黒咲・素良・柚子はデュエルフィールドから脱出し、遊矢・零児・アイザック・蓮は「G・O・D」を創った者と決着をつけるべくゲートを潜って行った。
未来人達との別離の後、南極のアジトからMAIAMI市に帰還して以降の沢渡の姿は描かれていないが、未来人で唯一過去世界に残留することになった素良を「ずっと面倒をみる!(第32話より)」と言い切った沢渡は、黒咲と共に素良を大切にしながら過ごしていくことが予想できる。
カップリングとして注目すべき点
本作では注目すべき点が2つある。この2つの点は、アニメ版・漫画版(最強ジャンプ)で述べたカップリングとしての注目すべき点とは大きく相違する。
まず1つ目の注目すべき点は、アニメ版・漫画版(最強ジャンプ)と異なる二人の関係性である。
塾の社長と塾生であり主人公に立ちはだかるボスと子分のような関係であったアニメ版とは異なり、本作の二人は明確に上司と部下の立場として表されている。
さらに、他作品では零児に対しても不遜な態度を(上辺だけでも)取り続けていた沢渡が、本作では一転して零児にのみ従順に振舞う部下となっている。
その従順さたるや、不測の事態には零児の指示を仰ぎ、たとえ不満があろうとも零児の命令なら聞き、所在不明となった零児を捜し続け、零児の理不尽な行動に振り回されてもついていくという徹底した服従ぶりである。
命令違反や越権行為を平然と行う黒咲と素良に比べると、沢渡の従順さは際立っている。ただし部下としての従順さが、当の零児にさして評価されてはいないようであり、二人の命令違反を止めにいこうとして逆に零児に引き止められるという場面がしばしば見られる。アニメ版・漫画版(最強ジャンプ)の沢渡は零児と話す際、又、零児のことを語る際に不遜な態度でありながらも彼への敬意を発言するといった様子が頻繁に描写されていたが、本作の沢渡は心からの盲従を常に零児の前で表している。
一方、本作の零児はアニメ版・漫画版(最強ジャンプ)と比べてさらに傲慢な人物として描写されている。その態度は頑なであり、沢渡を含め3人の部下達どころか遊矢に対しても心を開こうとはしていない(もっとも本作の彼の背景からすれば頑なな態度も無理からぬことである)。
二人の接点はアニメ版よりもはるかに多いが、本作の零児は沢渡を粗雑に扱っている。本作では他2人の部下達の行動を止めにいく、あるいは加勢しに行こうとした沢渡を引き止め、沢渡からの進言を遮る場面が多い。
零児が沢渡を部下に引き入れた経緯や理由については描写されていない。
第4話にて、実力者であった黒咲を零児が部下としてスカウトする場面が描かれていることから、おそらく沢渡も零児によって実力を見出されて部下としてスカウトされたと考えられる。実際に作中の沢渡はユートを追い詰めるほどの実力を持っている。その一方で、沢渡のデュエリストとしての実力を評価している描写はなく、沢渡が黒咲・素良に実力不足を指摘されている現場を見ても零児が二人を咎める場面はない。
(2016年6月20日特大号『週刊少年ジャンプ』のVジャンプ宣伝のための4コマ漫画内に於いて、第9話のパロディとして「あんなカードがあるなら何故俺に!?」と聞いた沢渡に向かって「だってお前……」と思い止める零児が描かれている。しかし、こちらはあくまで石塚2祐子氏作の漫画であるため、本作の零児も同一の見解であると判断はできない。)
沢渡が仮に実力以外を評価されているとすれば、それは先述した零児への従順さであると考えられる。そのように推察するならば、零児は沢渡からの敬意を利用して手駒として扱っていると理解できる。
ただし、沢渡も”素良の部屋で発見した指紋手袋を説明無しで零児の指紋だと判別し、誰にも言わず持ち帰った上に、半月の間持ち歩いていた(第19話)”ことを考えると、零児に対する敬意が単にデュエリストや上司に対するそれとは異なる意味合いになると思わざるを得ない。
そして2つ目の注目すべき点は、零児が20年先の未来世界から来た未来人で、沢渡は過去世界の人間だということである。漫画版(Vジャンプ)の概要で前述したように、本作の本編世界はワールド・イリュージョンにより巻き戻された過去世界という設定である。
つまり沢渡は零児より18歳年上である。 ただし、沢渡の年齢設定がアニメ版と同じく14歳であると仮定しての話である。
過去へのタイムトラベルといった要素を持つ物語は、過去世界の人間との交流や別離、あるいはその世界への残留を決意する等といった描写がなされる。本作の連載中は、未来人である零児が沢渡にどのような感情を抱いているか、そしてどのような別離(あるいは残留)を選択するのかといった心理描写や展開が注視された。
又、そういった心理描写や展開があると踏まえてみると、1つ目の注目すべき点の中で挙げた“従順な部下である沢渡を粗雑に扱う零児”という描写に傲慢や冷徹さだけでなく、いずれ来る別離の時に情が移らないためという意味を見出すこともできる。
概要にて前述したように、別離の時になってようやく労いの言葉を伝えたのも、敬意を持って従順についてきてくれた沢渡に対する零児なりの思いやりだったとも考えられる。
そして最終回(第45話)、零児は沢渡との別離を選択する。ゲートの向こうに行った零児と、過去世界の沢渡の時間が今後交わることはおそらく無いだろう。
しかし未来人達が去った後の世界で、終盤での柚子と少年遊勝の出会いによって遊矢との“再会”が示唆されたように、沢渡がこの後生まれてくる零児(年齢設定がアニメ版と同じく16歳であるならば本編終了4年後には零児が誕生する)と“再会”することも可能である。
その時“再会”した零児を見守る沢渡の目は、きっと温かく優しいものであるに違いない。
以上の2つの注目すべき点をまとめると二人の関係は、”傲慢で冷徹な上司と、その上司に従順な部下”であると同時に “20年先の未来世界から来た未来人と、過去世界の人間” と言える。零児に敬語で話す沢渡といった明確な上下関係を楽しむと共に、未来世界と過去世界の人間という立場の違いによる互いの心情に思いを巡らすこともできるカップリングだと言える。又、実は沢渡の方が年上という点を踏まえて 最終回後に再会した二人のifストーリーを考えることも可能だろう。
本編に於ける零児と沢渡の出会った時期に関する一考察
ここでは本編の時系列に則って零児と沢渡の出会った時期を推測する。本作の零児と沢渡は第1話開始以前に出会い、沢渡はL・Cに所属する部下になっているものの具体的にどの時期にどのような経緯で出会ったかは描写されてはいない。
本項では、”遊矢と零児が過去世界(本編世界)に飛ばされてから1年以内に本編第1話が開始した”と仮定し、これまで他キャラクターの回想を踏まえた上で沢渡が零児と出会った時期を考える。
まず、零児が過去世界にてL・Cを設立した時期であるが、具体的な時期は作中で明言されていない。素良の台詞から「ある日突然このレオ・コーポレーションができてあっという間に街のソリッド・ヴィジョンを掌握した…(第7話より)」とされているのみである。しかし遊矢の回想から、遊矢がファントムとしてソリッド・ヴィジョンのハッキング行為を行うようになった時期が半年前とされることから、本編第1話の1年前から半年以内にはすでに設立していたと考えられる。
次に沢渡が零児の部下になった時期だが、こちらも作中で明言されていない。ただし第4話の素良の台詞に「ここにボク達が集められて一ヵ月…」とあり、このことから本編第1話の1ヶ月前には素良が部下に加入し、沢渡を含めた3人の部下達が集められていたと考えられる(そのため第3話で零児に説明を受ける沢渡の回想は、この1ヶ月前までのものと推定できる)。
ここからは推測であるが、本作の素良が沢渡を「沢渡先輩」と呼んでいることから、沢渡は素良よりも先に部下として加入したと推定する。又、本作では初登場時搭乗したヘリコプターの番号(あるいは本人のコードネーム)から、沢渡が1号機、黒咲が2号機、素良が3号機と呼ばれている。第4話の黒咲の回想により黒咲は3ヶ月前に零児によってスカウトされたことが判明しており、これらのことから1号機から3号機までの割り振りは加入時期が早い順ではないかと推定できる。
以上をまとめると、沢渡が零児の部下になった時期はL・Cが設立した時期から黒咲の加入前までであり、すなわち”本編第1話の半年以上前から3ヶ月前まで”の間とされる。このように推察すると、零児が過去世界に飛ばされてからできた最初の部下が沢渡である可能性が高いと考えられる。無論これは推測であるが、沢渡が何故零児の部下になったのか、そして何故零児は沢渡を部下に選んだかの経緯や、このごく短い期間に何故沢渡は零児に従順に振舞うのかは不明である。
その他
ジャンプビクトリーカーニバル2015公式ガイドブック
2015年7月に開催されたジャンプビクトリーカーニバル2015の来場者記念品公式ガイドブックにて、Vジャンプ版の書き下ろし漫画が掲載されている。
内容は同年10月号から連載を開始する第1話の概要となっており、零児がファントム捕獲を命じ、沢渡はそれを受けて黒咲・素良と共にヘリコプターで遊矢を追跡する様子が描かれている。
この作中に於いて零児と沢渡が会話をする場面はなかったため、沢渡が零児に対してのみ敬語で話すことは当時まだ判明していなかった。
この書き下ろし漫画は、単行本には未収録である。
ジャンプビクトリーカーニバル2017公式ガイドブック
2017年7月に開催されたジャンプビクトリーカーニバル2017の来場者記念品公式ガイドブックにて、Vジャンプ版及び最強ジャンプ版からそれぞれ書き下ろし漫画が掲載されている。
Vジャンプ版書き下ろし漫画では海水浴場で遊矢(人格はユートに切り替えている)と柚子が、零児・沢渡・黒咲・素良の4人と鉢合わせている。
沢渡はイケメン水着コンテストに参加しているが、この時引き締まった体と全体にネコが敷き詰められたプリント柄の海パンを披露している。普段は零児に従順に接する沢渡だが、水着コンテストに私服のままで優勝した零児に対してはさすがに不満を口にしていた。
尚、この書き下ろし漫画は『遊戯王ARC-V』単行本第7巻に収録されている。
最強ジャンプ版書き下ろし漫画は全編4コマ仕立てになっており、本編と同様に零児と沢渡の直接の接触はない。最強ジャンプ版ならではのキャラ付けはここでも健在であり、零児は食事時・入浴時にも居眠りをしている描写がされている。
こちらの書き下ろし漫画は『遊戯王ARC-V最強デュエリスト遊矢!!』単行本第2巻に収録されている。
ジャンプビクトリーカーニバル2018公式ガイドブック
2018年7月に開催されたジャンプビクトリーカーニバル2018の来場者記念品公式ガイドブックにて、Vジャンプ版の書き下ろし漫画が掲載されている。
この作品は第19話の余談となっており、閉鎖されたL・Cに侵入した沢渡・黒咲が社長室を物色するという物語である。この時沢渡は零児のマフラーに関する様々な噂を黒咲に語り聞かせ、マフラーの秘密を暴き量産化することで一攫千金を目論んでいる。
沢渡が収集した噂は”自由に空を飛べる”や”デュエル時に自動アームとして使用できる”等といった荒唐無稽なものばかりであり、挙句の果てに「だからマフラーさえあればオシッコも楽チン!!」という驚愕の台詞までも口にしている。
だが荒唐無稽と思われていたこのマフラーに関する噂のほぼ全てが事実であったことが第40話及び第41話で明らかにされた。噂の大半が信憑性のあるものだとすれば、本当に「オシッコも楽チン」にしているのかもしれない。
こちらの漫画も、ジャンプビクトリーカーニバル2017の書き下ろし漫画と同じく『遊戯王ARC-V』単行本第7巻に収録されている。
ゲーム
この項目では遊戯王関連のゲーム内での、零児と沢渡の二人が互いに対してした言動、行動の概要を記述する。
『遊戯王ARC-V タッグフォーススペシャル』
2015年1月からダウンロード販売されたPlayStation Portable用対戦型カードゲームである。
本作ではARC-Vシリーズのキャラクターシナリオを2人分クリアすると、沢渡の個別シナリオが解放される。設定はアニメ版に準拠したものになっている。ただし沢渡シナリオ内で零児が登場してくることはない。又、タッグデュエル対戦相手として登場した際も二人の専用掛け合い台詞は存在しない。
『遊戯王デュエルモンスターズ レガシー・オブ・ザ・デュエリスト:リンク・エボリューション』
2019年4月からダウンロード販売されたNintendo Switch用対戦型カードゲームである。
又、2020年3月からPlayStation 4、Xbox One、PC向けも配信された。
ストーリーモードの内、ARC-Vのストーリーはアニメ版に準拠した内容となっている。
一方で、アニメ内で描写された沢渡と零児の邂逅や会話の箇所は省略されている。ただしアニメのストーリーを再現していることから、本作中に於いても“零児は沢渡に遊矢のペンデュラムカード奪取の依頼をし、沢渡に妖仙獣を渡して舞網チャンピオンシップで遊矢と対戦させた後、オベリスク・フォース戦を経て沢渡をランサーズに加入させた”という流れは同じであると考えられる。
尚、本作には「デュエリストをイメージしたカードを収録したカードパック」があるのだが、沢渡のカードパックは無く零児のカードパックに沢渡の使用カードが収録されている。
収録されている沢渡の使用カードの内訳は帝・帝王、妖仙獣、魔界劇団、ダイナミストの計4種であり(ダイナミストは漫画版(最強ジャンプ) 第5話にて使用している)、OCG化していないダーツシリーズを除けば全作品内の沢渡使用デッキを網羅している。
その一方で、魔界劇団とダイナミストは沢渡とのデュエル報酬で入手できないので留意する必要がある。
余談
この項目では、カップリングとして考察及び創作をする際の材料にすることが可能な事柄を記述する。
万葉歌
沢渡シンゴの名前の由来が、群馬県吾妻郡中之条町の沢渡神社であるという考察はすでに有名である。
この考察は、沢渡の取り巻き達の名前がそれぞれ万葉集の歌人になぞらえた名前であり、沢渡が用いた妖仙獣に鳥居をモチーフにしたカードがあることから、『万葉集 巻第十四』東歌に詠われた沢渡の地とその万葉歌碑が建立されている沢渡神社の名称が名前のモチーフではないかというものである。
歌碑の歌は「左和多里の 手児にい行き逢ひ 赤駒が 足搔きを速み 言問はず来ぬ」であり、歌を訳すると「左和多里の娘子に偶然出会ったけれど、赤駒の足が速いものだから言葉も掛けずに来てしまった」という内容になる。(読み下し文及び現代語訳文は、2006,稲岡耕二,「相聞歌百十二首」,和歌文学大系3『萬葉集(三)』,p.501より引用した)
この歌の「左和多里」は群馬県の沢渡の地名を指すとされる(尚、諸説がある)。そして「赤駒」であるが「赤毛の馬」つまり「赤馬」である。
興味を持った方は是非とも見に行って頂きたい。沢渡は古くから温泉地として有名であり、風光明媚な場所でもあるので湯治に訪れてみてはいかがだろう。特産品には「沢渡物語」というオリジナル焼酎がある。
妖仙獣 侍郎風
妖仙獣 侍郎風は2019年4月発売の「RISING RAMPAGE」に収録されたカードである。そのカードイラストは、アニメ版第31話にて沢渡がした渡世人のような衣装やポーズと類似している。又、侍郎風のカード効果は同第31話で沢渡が行ったペンデュラム召喚や「沢渡レジェンドコンボ妖仙ロスト・トルネード」をサポートするものになっている。
アニメ版の概要に前述した通り、第31話から第32話にて遊矢vs沢渡戦が行われた。このデュエルで沢渡は、L・Cが独自に開発した試作段階のペンデュラムカードを含めた妖仙獣デッキを使用している。このペンデュラムカードは直接的か間接的か不明だが、零児によって沢渡が与えられたものである。第32話終盤にてペンデュラムカードは、分析と量産化に回すという理由で零児の指示で回収される。これ以降のデュエルで沢渡は妖仙獣を使用しないため、デッキごと回収された可能性もある。
この遊矢vs沢渡戦の間、司令室から観戦していた零児は妖仙獣の持つ効果やそれを受けてより強くなる遊矢のデュエル内容に言及するのみであり、沢渡の戦術への関心やデュエル開始直前にしていた沢渡の渡世人衣装姿への感想はなかった。
しかし妖仙獣の新規モンスターとして作られた侍郎風の存在と、“妖仙獣はL・Cで開発され、零児が沢渡に使用させた後回収した”というアニメ版の設定をまとめると、第31話及び第32話での沢渡の戦術を高く評価していた零児が、回収した妖仙獣を量産化する際に渡世人衣装姿やポージングまで沢渡を模したモンスターを新たに作らせたと考えることができる。
そのように考えれば、零児は言及こそ無いものの沢渡のことをよく見ていたことになる。
他方、沢渡をモチーフにしているとされるカードには魔界劇団-ビッグ・スターもある。魔界劇団の魔法カードである魔界劇場「ファンタスティックシアター」のカードイラストにはビッグ・スターを模った像が描かれているが、その像のポーズはアニメ版第7話の沢渡と類似している。
そしてビッグ・スターを含めた魔界劇団も又、アニメ版第47話にて零児が沢渡に与えたデッキである。
このことから侍郎風と同じくビッグ・スターも又、その存在自体が零児の沢渡への関心の高さの表れと言えるかもしれない。