回転翼の羽音を侍らせ、其れは唐突に艦隊に火の雨を齎す。
概要
深海棲艦の一種。「軽母」とは「軽空母」の略称。空母ヲ級の帽子に腕と脚が生えた様な外観をしている。その身体の殆どが装甲(外皮?)で覆われており、その表情を窺い知ることは出来ない。深海棲艦によく見られる歯は非常に大きくて目立っている。特に前から二番目の前歯が異様に大きく、プレイヤーに不気味な印象を与える。なお、アニメでは他の歯とあまり変わらない大きさである。
初登場となるのは鎮守府海域の1-4で、軽母というだけあって能力も空母ヲ級と比べると一回り低めだが、この時点では運が悪いと正規空母どころか軽空母ですら満足に揃えられない場合もあり、艦載機や対空装備が揃わないプレイヤーの艦隊を開幕時の航空攻撃で窮地に陥れる。
艦娘の軽空母は対潜攻撃が可能だが、こちらはflagshipと改型しか行わない。そしてflagshipのヌ級はヲ級共々夜戦でも艦載機を発艦させることが可能で、flagshipはeliteに比べて制空能力に劣る代わりに火力が高く、砲撃戦では戦艦すら大破させる打撃力を持つ。
二次創作ではやたら巨大に描かれたり、男性的に描かれたりすることもしばしば。また、話題性としては同じ空母のヲ級の陰に隠れがちである。
しかし時は過ぎ、2014年の夏季イベントの『AL作戦/MI作戦』では普段は熟練提督の任務消化のネタとされていた軽母ヌ級が遂に牙を剥いた。イベント序盤のマップAL作戦のE-1においてヌ級flagshipが大量に出現し、MI作戦、本土作戦のために戦力を温存している提督達の艦娘を前述の高火力で容赦なく中破大破に追い込み、夏イベ全制覇に意気込む提督達の出鼻を挫き、阿鼻叫喚の渦に陥れた。E-2の北方棲姫と並んで、前半海域なのに高難易度と言わしめる要因となった。ナメプダメ、ゼッタイ!
ヌ級改
2017年春季イベント『出撃!北東方面第五艦隊』において先制対潜攻撃を引っ提げてきた改elite・flagshipが実装。制空値、攻撃力、耐久共に高ステータスとなっている。ちなみに、グラフィック上の差異は全くないので、耐久値の差で見分ける必要がある。
なお、仕様上先制対潜攻撃は艦攻・艦爆が全滅していても行うため、首尾良く対空カットインが刺さっても油断してはならない。新型の鳥型の艦攻(爆雷を吊り下げており、恐らく対潜哨戒機と見られる)を搭載している。更に、射程が大和型戦艦と同じ超長であり先手を取られやすい。
弱点は開幕航空戦の火力で、一撃で大破するほどの致命傷を受ける事は稀である。勿論装甲が薄い艦がそうなる可能性自体はあるが、事故レベルである。空母棲姫や空母ヲ級の改型とは違って対空カットインが刺さっても開幕大破が続出、という事はまず起きない。前述の新型艦攻は雷装の値がそこまで高くはないようだ。また、搭載数も(あくまで他の深海棲艦の空母級と比べて、であるが)多くはなく、潜水艦を編成していない場合は対空カットインも弱点となる。
しかし、2017年秋季イベントではタコ焼き型艦載機搭載型のヌ級及びヌ級改が現れ、この唯一とも言える弱点は克服されてしまい、開幕・対潜・砲撃戦共に非常に厄介な存在と化してしまった。
2018年冬イベント『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(後篇)』では更に強力な黒いタコ焼き型艦載機を搭載したタイプが登場。もはや大和型や長門型戦艦の改二であろうと赤子の手をひねるも同然なチート火力であり、制空権が取れない事もあって砲撃戦の命中率が低くなるため、イベント期間中は「タフィ3にあっけなく追い返される栗田艦隊」が続出した。
なお、史実のモデルは米海軍の「タフィ3」であるが、これはあくまで小型・低速のカサブランカ級を主軸とした護衛空母群。主力戦艦を簡単に追い払うこれのどこが『護衛空母』なんだ(史実のサマール沖海戦では、タフィ3は栗田艦隊を追い払う為に複数の護衛空母・護衛駆逐艦を失う多大な犠牲を払っている)……
ノーマル版と異なり、flagshipであっても夜戦では対潜攻撃しか行わない。ただし、例外的にこちらが探照灯を使った場合に限り行動してくるようになる。火力はそれほど脅威ではないのだが。
2022年 春・梅雨イベントからは対潜哨戒機を搭載した個体も現れており、空襲マスでも潜水艦に打撃を与えてくるようになった。このため、これまでのセオリーだった『潜水艦隊で空襲マスを安全に通過』という作戦が取れなくなっている。
ヌ級Ⅱelite
2022年 春・梅雨イベントの後段作戦『血戦!異聞坊ノ岬沖海戦』より出現するようになった個体。改と同じくノーマルタイプは存在せず、こちらが最下級となる。
改で搭載された鳥型艦載機の割合が増大しており、制空値、対潜火力、砲撃火力が非常に高い。その火力たるや大和型改二でも状況次第でワンパン大破に持ち込まれることがある。
また、空襲マスでの対潜能力も改から引き続き有している。
一方で開幕航空戦の能力は低く、ヲ級達や空母棲姫のように開幕航空戦で大打撃を受けることは稀。また、elite個体は装甲が薄く、最弱の個体に至っては元祖ノーマルと大差ないほど低い。
そのため、砲戦に持ち込まれる前に排除することで活路を見出すことができる。
――そう、elite個体『は』。
ヌ級Ⅱflagship
eliteがいるなら当然こいつらもいる。flagship級も同時に実装された。
その性能は脅威の一語に尽き、
- eliteの弱点だった装甲はル級flagship以上の103
- 搭載数はヲ級flagshipを越える98機
- 制空値は空母棲姫改(弱個体)を上回る168
- 砲戦火力は単縦・同航戦に換算して戦艦棲姫どころか戦艦水鬼(弱個体)すら凌駕する247
と、まさにゲームバランス完全無視と言っても過言では無い能力を有する。軽空母とは……
上記のようにヌ級Ⅱ唯一の弱点だった装甲の薄さも完全克服しており、重巡以下の攻撃はまず通らない。唯一開幕航空戦の能力は相変わらず低いのだが、この能力では砲戦までに中破もしくは艦載機を全滅させて無力化するのは困難である。
そしてこれが『イロハ級の軽空母だからいいよね』と言わんばかりに道中にワラワラと湧いて出る。
血戦の名にふさわしく坊ノ岬を阿鼻叫喚の地獄絵図に叩き落とした。
――が、ヌ級の進撃はここまでにとどまらなかった。
後衛空母
2023年早春・春イベント『絶対防衛線!「小笠原兵団」救援』にて追加された新要素『機動部隊支援付き対潜戦』。史実において米軍の取った、潜水艦の周囲に艦載機を配置し支援するという戦法を再現したマスである。このマスにてヌ級が艦載機を発進させる空母枠として抜擢された。
話だけなら『潜水艦と空母が同時に出現する』という内容であり、これまでも潜水艦と別艦種の混成マスは普通に存在したためそれらと大差はないように見える。
が、そうは問屋が卸さなかった。このマスは、潜水艦を全滅させればS勝利となる特殊な仕様で、存在する空母は支援部隊扱い。
アイコン表示も潜水艦たちから一歩引いている上に耐久力も表示されていない。
要するに、このマスのヌ級はいかなる手段を用いてもダメージを与えることができないのである。
更に支援空母は砲戦にも参加する。しかも、先制対潜で潜水艦を全滅させても無敵のヌ級だけが一方的に砲戦で艦載機を飛ばしてくる。即ち、対空砲火で艦載機を枯らして「棒立ち」にさせる以外にヌ級の高い砲戦火力を阻止する手段がない。
その上、一部海域に至っては似たような仕様だったレーダー射撃マスと異なり索敵値不足や重編成のお仕置きマスと言った位置付けではなく、普通に確定で通るマスに配置されている。
このあんまりと言えばあんまりな仕様に、これまで決して低くなかったヌ級へのヘイトが爆発。『砲戦で飛ばしてくるのはバグだろ』『後方彼氏空母』『出てこいヌカスの連中よ』とボロクソに言われる運びとなった。
中でも阿鼻叫喚の地獄と化したのが、確定で通過する上、甲の場合最悪の編成だとヨ級flagship3隻・カ級elite1隻に加えヌ級Ⅱflagship2隻がスタンバイしているE2-3のMマス。
ダメージを与えて排除することは不可能な上、ヌ級Ⅱflagshipの搭載数ゆえにそれこそアトランタの対空射撃でさえ「棒立ち」にできるか怪しく、一部隊しか出せない基地航空隊での援護も見込めず、ついでに連合艦隊での攻略故に警戒陣での逃げ切りという小技も取れない状況下、火力も命中率も高い敵が最大6回攻撃を仕掛けてくるという八方塞がり。
その先の道中にナ級Ⅱやネ級改、ボスマスに欧州装甲空母棲姫が待つこの海域において、最初のマスで一方的に痛打を何度も浴びせてくるヌ級の凶悪ぶりはすさまじく、海域の攻略難度を前代未聞の領域にまで引き上げる一因となってしまった。
もっとも、今回の場合問題となるのは機動部隊支援付き対潜マスの仕様そのものなのでそこに抜擢されただけのヌ級にヘイトが向くのはある意味「とばっちり」なのだが、砲戦能力に振り切ったヌ級の能力が能力だけにマスの仕様とがっちり噛み合ってしまった結果がこれであったとも言える。
派生作品における軽母ヌ級
アニメでは第3話で2隻登場(赤や黄色のオーラを纏っていないため、無印のヌ級と思われる)。口から多数の艦載機を発艦させ吹雪達に襲い掛かり窮地に陥れた。睦月は危うい所を吹雪に助けられ、第三水雷戦隊の雷撃と金剛姉妹の支援砲撃によって2隻とも撃沈された。
しかし、生き残った艦載機が孤立していた如月と刺し違え、撃沈せしめる金星を挙げた。
オリョクルで潜水艦娘に幾度もカモにされてきた『かませ犬』の印象が強かった彼女の「公式メディアミックス作品で初めて艦娘を轟沈させた」という『初戦果』。これには深海棲艦のファンから歓喜の声があがった。更に一部では、睦月を守り抜いた吹雪ら艦娘の活躍を差し置いて、決死の思いで敵艦(如月)を沈めた『英雄』を称える声すらあった。
※これに限らず、艦これアニメでは空母ヲ級をかばった重巡リ級や、隻眼ヲ級の活躍など、本来の主人公である艦娘側を差し置いて、敵であるはずの深海棲艦側を賞賛する声は幾度も挙がる事となる。判官贔屓というヤツだろうか…
だが、その『金星』は同時に、艦これ界隈を一時騒然とさせ、アニメの評価を決定づける要因の一つともなったある事件を引き起こしたのであった。
2018年3月現在、公式メディアミックス作品において、深海棲艦によって艦娘を撃沈させられ、犠牲となった事が明確に描写されたのは、この軽母ヌ級による如月撃沈のみである(※一般人やモブを含めた場合はこの限りではなく、多くの名無しキャラが深海棲艦によって殺害されている事には留意する必要があるが)。尤も、多くの提督にとっては、これ以上艦娘の轟沈が起きる事は決して望んではいないだろうが…
関連イラスト
関連タグ
如月ショック(アニメにおいて、彼女の『戦果』が引き起こした波紋)