概要
アメリカ合衆国が有名だが、実は上記の職業で無い人でも銃器を合法的に入手できる国は複数存在し、スイスやカナダのようにアメリカ以上に自由に入手可能な国や、メキシコやトルコのように事実上規制が働いていない国も存在する。
また、殺傷目的の銃弾ではなく信号弾を打ち上げる信号拳銃も殺傷能力を有している事から銃火器(もしくは拳銃)へと含まれるため、救命設備規則等によりボート等への信号拳銃の搭載が義務となっている場合、拳銃の普及率が増加することとなる。
理由としては自衛があり、その用を果たす事例もあるが、単なる怨恨や犯罪に使用される例も多い。(信号拳銃の場合は自衛ではなく、救難信号等の伝達目的となる)
アメリカだと、一般人による銃撃での死者数は交通事故の死者数(一年に35,000人)を上回っている。(ただし、正当な反撃や警官の発砲によって生じた犯罪者の死亡、整備中の事故などの使用者のミスに由来する死亡事故、銃を用いた自殺など、銃が関係していればすべてカウントされるため、死亡者数や発砲件数だけ見るのは問題である。ちなみにCDC、アメリカ疾病対策センターの調査によると2013年におきた銃による死亡のうち、63%が自殺、33%が殺人、1%が事故との事だが、これも詳細は分けられていないため、殺人の内訳は不明であり、どの程度が銃犯罪の被害者かは数字の上では不明である)
あまりにも銃が行き渡った結果、玩具の銃やまったく関係のない玩具で遊んでいる子供が本物を手にして撃とうとしていると誤認され、銃殺後に真相が明らかになった事件もある。
アメリカでは玩具の銃に「本物の銃とは完全に異なるデザイン」が求められており、大人の警察官が使う訓練用の銃型模型、エアソフトガンにすら赤や青等の目立つ色をつける事が義務付けられている(ただし訓練用銃火器に関しては実弾装填も可能な操作訓練用モデルの場合は間違えて通常弾を撃つと銃身破裂などにより負傷するといった事故が起きる、実銃のつもりで訓練用銃を間違って持ち出すの防ぐため、といった理由もあり、規制の無いアメリカ以外でも同様に色を変えている)。
この規制は子供向けテレビ番組にも及んでおり、初代トランスフォーマーでワルサーP38に変形していたメガトロンが二作目以降は拳銃に変形しなくなったうえ、初代版玩具の再販も不可能となっている(一応、パラボラ銃なガルバトロンや、ナーフのデザインを流用した(更にはメッキシルバーな日本版に対しアメリカ版はプラスチックそのままな派手な色である)クラシック版など、実銃とは似ても似つかない形ならOKではある)。
また、『仮面ライダー龍騎』の北米向けリメイク作品である『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』では、仮面ライダートルク(原作における仮面ライダーゾルダに相当)の専用銃マグナバイザーは、現実世界の銃と形状が全く異なるにもかかわらず実弾銃からビームガンに改変されている。
ちなみにフルオート火器は多くの地域では入手が不可能な火器となっており、入手が可能な地域であっても一般人でも手が出せる正規品は規制により古いモデルのみで数も限られている上に投資目的もあって非常に高価、維持に非常に高い税金が必要、ライセンスの取得のために面倒な審査が必要で取得までに長い期間がかかるといった感じで、実際に手に入れるのは難しい。
新しいモデルを持とうと思ったらさらに取得の難しいガンスミスやディーラーのライセンスなどが必要で、現実的ではない事が殆ど。
このような状況なので、実際に乱射事件で使われたものは正規のフルオート火器が使われる事は限りなく少ない、使われたとしても盗難されたものや違法流通したもの、違法改造品である。(ラスベガスの事件で使われたバンプファイアストックは、連続してトリガー操作をすることで疑似的にフルオート射撃をする技術の一つであるバンプファイアを再現する機構が付いた部品であり、フルオート火器の定義からは外れ、部品自体もフルオート化する部品ではないので合法であった)
アメリカでも銃の一般所持の停止(銃規制)を求める人は多いが、地域による意識の差もあり、保守派を中心に銃社会を維持する事に拘る人々も多く、アメリカ合衆国大統領経験者等の有力政治家や著名人も擁する全米ライフル協会(NRA)等の擁護団体の存在もあり、実現できていない。
アメリカにおいては様々な理由で銃が必要となる地域は多いが、銃規制を推進する側が銃器を必要としない大都市に住んでいたり、武装した警備員を雇うことが出来るので自分で身を守る必要が無いといった理由から銃を必要のないものとして認識しているのに対し、銃規制の反対する側からすると規制により自身や家族を守る権利すら奪おうとしていると認識されてしまっている。
銃規制を推進する側と反対する側の意識の差も大きく、銃規制が進まない大きな原因の一つとなっている。
どうしてこうなったのか
アメリカ合衆国の場合、西部開拓時代から生じている。「開拓」とは白人から見た観点であり、アメリカ・インディアンからすれば侵略であった。
先住民の恨みを買った白人たちは彼らの復讐・襲撃を防いだり反撃するために武器を持っている必要があった。
また、犯罪者の流刑地の一つであった事もあり、同じ白人の開拓民であっても信用が出来るような状況ではなかった。
そして「開拓」が急速に進んだこともあり、公権力の目と力が十分に及ばない地域も生まれた。そこでは白人の盗賊・強盗もさらなる脅威となり、個々人の武装の必要性が強まる。
銃を使えば女性や老人でも、大男や格闘技を修めた男を撃退することができる。
逆に言えばこうした特徴を持つ相手が犯罪者で銃を持っている場合、武器なしではさらに太刀打ちできなくなる。
更には危険な野生動物に対する自衛手段としても銃火器は必要となる。
このような状況下において、白人からもたらされた銃器は、先住民や黒人などの他人種の人々にとっても必要性の高いものとなった。
こうした歴史的背景から、銃所持論者のアメリカ人にとって銃とは、個々人の「自衛権」そのものであり、シンボルでもある。
現代においても地域によっては脅威となる野生動物が生息していたり、公権力の目の及ばない地域や駆けつけるまでに時間のかかる地は多くあり、警察等の法執行機関が地域によっては非力であったり兼業である等であてにならない、等の理由で自衛手段となる銃火器の必要性は残されている。(一例としては住宅街の庭ですら熊やワニなどの危険な野生動物が出没する地域、砂漠のど真ん中を抜けるハイウェイに出没する強盗、隣家まで数㎞で警官が駆け付けるまで30分以上かかる田舎、引退した世代が保安官をしていて名誉職状態の田舎、等)
都市部であっても治安が非常に悪く、街中で強盗に遭う可能性が高いので銃を携行して身を守らねば命すら危ういという地域もある。
また、ハリケーンなどの自然現象を含めた災害により法執行機関等の機能麻痺により治安が非常に悪化する事が大都市でさえ起こるため、無法地帯と化した際に自分の身を自分で守る手段を持つ必要があるという問題もある。
加えてサンフランシスコなど、一部の地域では重犯罪に法執行機関のリソースを注ぐために、一定以下の犯罪は実質取り締まりがされないという問題のある法案を施工している地域もあるのだが、その地域では犯罪の温床となってしまい役割を放棄したともいえる法執行機関の代わりに自衛しなければならない事態となっている。
信号拳銃も無線機等の性能が向上し、信頼性も向上しているが電源を必要とする精密機器という関係上確実に動くとは限らず、電波では複数個所で測位しなければ発信源を特定することは難しく測量システムがあるとは限らない、と現在地を伝える目的としては不確実であり、現在も信号弾を打ち上げる信号拳銃を必要としている。また、航空機に対して風向きを伝える等の使い方もあり、無くす事はできない機材となっている。
また、銃規制を強めたところでパーカッションリボルバーやマスケットなどの金属薬莢を用いない銃は古式銃だけでなく最近製造されたものであっても規制の対象とならずに無登録で購入可能などの穴があり、それらを規制したとしても犯罪者は違法な銃火器を入手するために意味がないとする意見もある。
加えて合衆国というシステム上、州により規制の差がある事から隣接した地域が(必須となる等の理由から)銃の入手が容易であった場合、そちらで銃を購入して持ち込んでしまう事から州単位では規制を強めたところで正直者が損をするという事になりかねない。
アメリカで厳しい銃規制が行なわれているカリフォルニア州でさえ乱射事件が起きている。
ちなみに犯罪率が減少傾向にあった中、イリノイ州では全州で一番厳しいといわれる拳銃所持規制を行ったが結果としては犯罪が増加することとなった。その後、コンシールドキャリー(拳銃を隠して携行)の規制緩和をしたところ、(他の要因もあっただろうが)犯罪率が減少した。
他国の例ではオーストラリアでも同様に銃規制を行い合法であった一般市民の銃の所持を禁止したところ、規制後には減少傾向にあった犯罪数が増加しており、銃による殺人事件では約3%増加、武装強盗は40%以上増加した。殺人事件が300%を超える増加をした州もあった。(皮肉なことに銃を用いた自殺は大幅に減少しているが、自殺自体の件数は大きく減少はしていない)
イギリスでも犯罪が減少傾向にあった中で同様に銃規制を行ったところ、銃犯罪を含めた犯罪数が増えている。
銃規制が早くより行われて規制期間が長く続き、殆どの一般人が銃の持てない日本であっても違法銃器による銃犯罪が起きており、押収銃火器の中には銃砲店で購入可能な猟銃や違法製造された銃のみならず、流通のない拳銃や軍用の突撃銃、グレネードランチャー、RPG-29等の重火器も含まれており、それらが使用された事件も起きている。
「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。」 — アメリカ合衆国憲法修正第2条
銃所持論者はこの憲法条文を、自身の立場の論拠としている。条文にある民兵は、イギリスからの独立戦争にも参戦している。
「銃を個々で保有する民兵」は合衆国という国の成り立ちに深く関与したイメージであり、少なからぬアメリカ人をひきつける要因となっている。
ちなみに連邦法である合衆国憲法ではこのような権利を持つとされるが、各州が独自に持つ州法では異なる為、カリフォルニア州やハワイ州のように連邦法より厳しい規制がされている州もある。
変わった規制ではニュージャージー州ではアメリカ国内でスマートガンが販売された場合、3年以内に同州内のすべての拳銃に装置の搭載を義務とする法がある。(ただしそれが問題を持つ製品であっても同法が適用されるために試験的な販売すらできず、かえって普及や装置の進歩が阻害されているという問題もある)