In Space, No One Can Hear You Scream.
概要
救難信号が発せられていたある無人の惑星に降り立った宇宙貨物船ノストロモ号の乗組員が、探査中に未知の生物に寄生され、宇宙船に連れ込んだ事から惨劇が始まる。
宇宙空間での密室状態の宇宙船で、H・R・ギーガーデザインの凶暴な怪物に襲われ追い詰められていく恐怖と、それに立ち向かうクルーの死闘を描き切ったリドリー・スコット監督作品。20世紀フォックス配給。
大ヒットを記録し、人気を博して続編やスピンオフ作品が次々と作られていった。
あとエイリアンの項にもあるように、本来は“異邦人”という意味でしかなかった、「Alien」という単語だが、本作公開以降は完全に“人間離れした異星生命体”を指す言葉に変わってしまったことも有名である。
なお、海洋堂からはリボルテックブランドで高品質なアクションフィギュアが3000円程度で発売された。良い時代である。
また、とある酒屋では缶ビールを手にしている巨大エイリアンのオブジェが飾られていた(現在、その酒屋は閉店)。
シリーズ一覧
また現在、2023年放送を目指して、ドラマ版がアメリカで製作中。
これ以前に、『第9地区』のニール・ブロムカンプによる、『エイリアン3』以降の歴史をなかったことにしてシリーズを仕切りなおす新たな第3作と、リドリー・スコットによる、『PROMETHEUS』から『エイリアン:コヴェナント』に至るまでを補完する物語の企画が立ち上がっていたが、前者はリドリー・スコットのシリーズ製作優先のために、後者は『エイリアン:コヴェナント』の予想以上の不振のためにそれぞれ凍結・中止されている。
ストーリー
巨大企業ウェイランド・ユタニ社が所有する宇宙貨物船ノストロモ号は、他恒星系から地球へ帰還する途中、未知の異星文明の物と思われる電波信号を受信した。
人類初となる異星人との遭遇の為にガス状惑星の衛星LV-426に降り立った乗組員達は、異星人のものと思われる無人の宇宙船を発見する。
内部には謎の卵のような物が無数に並べられており、乗組員の一人が顔を近づけた途端、卵から飛び出した生物が顔に貼り付いてしまう。
さらに電波信号の内容は警告文だった事が判明する。
やがて貼り付いていた生物は剥がれ落ち、乗組員の容態も回復したが、他のクルーと食事を楽しんでいる最中に彼は突然苦しみだし、その腹を食い破ってエイリアンの幼体が飛び出してきた。
成長したエイリアンは船内で次々と乗組員を殺していく。更に会社からはエイリアンの捕獲が最優先され、乗組員たちは使い捨てにされてしまう。
辛くも生残した乗組員達は、生き残る為にエイリアンを抹殺するべく戦いを挑む。
登場人物
※日本語吹き替えを担当した声優は、前者はVHS・DVD版、後者はBD版。
エレン・リプリー
演:シガニー・ウィーバー 吹替:幸田直子
ノストロモ号の二等航海士で、『エイリアン』シリーズを通しての主人公。
あまり女とは思えない男勝りな容姿と男顔負けの度胸と根性を持つ漢女。
劇中では通信の他に船内の保安管理も担っている様で、未知のウィルスが他の船員に感染するのを危惧して、ケインをノストロモ号内へ収容する事に反対、隔離するべきだと主張し、船長のダラスと対立した事も(これは本船の地球への出発前に前任の航海士と交代して乗り込んだ事も絡む。因みにこうした交代は実際の船舶でもよく在る事である)。
ちなみに既婚者であり、アマンダという1人娘もいるのだが、本作の後日談を描いたアドベンチャーゲーム『エイリアン アイソレーション』では、母親と同様に会社の陰謀とエイリアンがもたらす災厄に翻弄される運命にある。
なお、一部で「彼女の飼い猫」と誤解されているジョーンズはノストロモ号に住み着いている「船猫」であり、その乗船歴はダラス船長やパーカーよりも長い事が小説版で明かされている。
アーサー・ダラス
ノストロモ号の船長。
危険な役割を自ら志願するなど責任感が強いが、それ故に会社の命令には忠実で、フェイスハガーに貼り付かれたケインを助ける為に、彼を船内に運び込んでしまった上に、剥がれたフェイスハガーの管理や異星人対策の行動方針を科学主任のアッシュに一任してしまう等、間接的に事態を悪化させてしまう事になる。
最期はエイリアンを放逐するべくダクトに潜入したが、返り討ちに遭った。
ただし、ディレクターズカット版ではその後もブレット共々繭にされた状態で生存しており、変わり果てた姿でリプリーに自らを殺すよう嘆願するシーンがある。
ジョーン・ランバート
リプリーと同じくノストロモ号の女性航海士(航路算定士)。
リプリーとは対照的に気弱な性格で、どこかおどおどしており、想定外の事態の連続に戸惑い、度々悲観的になる。
しかし、ディレクターズカット版ではダラスらを断固として船内に入れまいとしていたリプリーに対して激昂し彼女を殴りつけたり、本編でもリプリーがアッシュに襲われた際には果敢に立ち向かうという意外な一面も。
終盤にて自爆装置が作動したノストロモ号から脱出するべくシャトルを用意している途中でエイリアンと遭遇してしまい、殺された。
デニス・パーカー
ノストロモ号の黒人の機関室長だが、機関士としての待遇には不満を感じていたようで、その旨をブレッド共々リプリーに訴えるも「欲張らないで」と一蹴されてしまう。
船内に潜むエイリアンとの戦いの際には即席の火炎放射器を製造したり、アッシュに襲われていたリプリーを助けるなど、何気にリプリーに次いで活躍の場が多い。
脱出用シャトルを用意していた途中でエイリアンに遭遇し、恐怖で身動きが取れないランバートを助けるべくエイリアンに立ち向かうも返り討ちにされてしまった。
サミュエル・ブレッド
ノストロモ号の機関士でパーカーの同僚。気弱なのか、男勝りなリプリーに終始押されていた。
行方をくらました猫のジョーンズを探す為に船内を彷徨っているところを成体になったエイリアンに殺される最初の犠牲者だが、ディレクターズカット版ではエイリアンによって繭にされていた。
ギルバート・ケイン
ノストロモ号の一等航海士。
宇宙船内に陳列されていた卵(エッグチャンバー)に興味を持って近づいた為に、中から飛び出したフェイスハガーに貼り付かれてしまう。
フェイスハガーが死亡して顔から剥がれた後は容体が回復するもクルーと談笑しながら食事を摂っている最中に突如苦しみだし、体内で成長したチェストバスターに腹を食い破られて死亡。その後遺体は宇宙葬にされた。
ちなみに「最後の晩餐」は本作を元にした対約式英会話教材本の解説では「リングイネ」とされている。
アッシュ
ノストロモ号の科学士官(技術者・医師を兼ねる)で、ノストロモ号出発の2日前に急遽担当者と入れ替わったクルーだが、その正体はウェイランド・ユタニが監視のために送り込んだアンドロイドであり、ケインに貼り付いたフェイスハガーの分析やエイリアンの位置を探る動体探知機の製造を行う一方で、異星の生物であるエイリアンを持ち帰るという企業の命令を実行するべく暗躍し、マザーを通じて会社の極秘事項を知ったリプリーに襲い掛かる。
その後は助けに来たパーカーとランバートの反撃によって首をもがれるが、リプリーらに会社の目的について問い詰められた際にエイリアンの捕獲のためには乗組員の安全は二の次である事と、完全生物であるエイリアンから逃げのびる事は不可能である事を告げる。最期はパーカーの放った火炎放射器によって焼かれ、機能を停止。
ちなみにリプリーに襲い掛かった際に彼女の口に詰め込んだ雑誌は当時の日本で出版されていた週刊誌「平凡パンチ」である。
アッシュに限らずノストロモ号の乗員の人となりは小説版を副読本とすると判りやすい。
エイリアン
ビッグチャップ
今作で登場するエイリアンの種類名。後に登場するエイリアンとは違い眼窩らしきものを持つが、眼球はない。
幼体のチェストバスターが寄生対象の腹部を喰い破って飛び出した後は急速に成長し、最終的には圧倒的な戦闘能力と強固な体格を持つに至る。ノストロモ号の暗闇に潜みつつ次々と船員を殺していく恐怖の存在として描かれている。
スーツアクターは当時学生だったナイジェリア人のボラジ・バデジョで、撮影スタッフがバーで呑んでいた時にたまたま居合わせた彼の長身に目をつけてスカウトしたという逸話がある。
メカニック
ノストロモ号
ウェイランド・ユタニ社が保有する貨物輸送船で、製造メーカーならびに形式名はロックマート社製CM-88Bバイソン。
乗組員らが活動・生活する深宇宙タグボートがノストロモ号その物で、積み荷として各惑星で採取した資源を生成する巨大プラントを曳航しており、救難信号が発せられた惑星へと向かう際には積み荷のプラントを分離して降下している。
本船のシステムを管理・制御するAIとしてマザー(MU-TH-R 6000 182モデル)が搭載されており、運用には数百人規模の人員を必要とする現実の艦船とは違い、数名のクルーのみで運用可能なほどにオートメーション化が進んでいるほか、途方もない距離の遠隔地へと向かう為にクルーがコールドスリープについている時は自動航行を行う。
原語版のセリフ内容、小説版の描写から鉱石精製用プラントは(あくまでも)「積み荷に過ぎない」事が判明している。また、映画公開時のパンフレットに記載されたリドリー・スコット監督のコメントの内容から「宇宙のトラック野郎」を乗員達について意識していた事が窺える事から、本船の運用はアメリカの長距離トラック網のそれを意識していたと見られる(特定の集積所で牽引して来た積み荷を切り離し、別の積み荷を繋ぎ直して他の集積所に向かう。もしくは本拠地に帰る)。この辺りはダラスとリプリーの口論の際にも断片的に確認できるが、やはり小説版の方が深く掘り下げられている。
積み荷の鉱石精製プラントは映画を観ただけだと伝わり難いが、「文明社会を維持するのに欠かせない『プラスチック原料』の精製、確保」を目的として作られた物である(この辺りも小説版や劇場公開時のパンフレット他の各種広報資料に詳しい)。
機関部の外観は実は船外からの視点を想定して撮影された物では無く、船内の動力炉側からの視点を想定して撮影された物である(制御ブースを隔離する形で機関部を維持、管理する方式は実際の大型船舶等でも採用されている方式である)。
映像では「スターウォーズ」シリーズの様に派手な視覚効果が無い(予算的にNGとなった)為判りにくいが、設定上は一応「ハイパードライブ」と呼ばれる航法で光速を超えて宇宙を移動している。
その独特の外観から世界的にファンが居るらしく、画像検索を行うと彼等の自作した造形物の画像もかなり引っ掛かる為、撮影用造形物の資料捜索に苦労する事になる。
ナルキッソス
ノストロモ号に搭載された3人乗りの緊急用脱出艇で、文献によっては「ナルシサス」とも。
ノストロモ号と同じくロックマート社製であり、正式名称はスターキャブ級軽イントラシステム・シャトル。平時はダラス専用の休憩スペースとして利用されている。
エイリアンから逃れるべくノストロモ号の自爆装置を起動して同船を放棄した際にただ一人生き残ったリプリーが搭乗している。
本編では使用されなかったが、サルマキスという名の2番艇が存在する。…但し、サルマキスの存在は1990年代時点の資料では確認されておらず、また、その存在を認めると本編描写に矛盾が出て来る(そもそもナルキッソスの搭乗員数制限は「会社の非人道性を示す為」の演出である為、乗員の半数以上が脱出できる環境は最初から想定されていない)。その意味ではサルマキスの存在は誤情報の可能性が否定できない。
なお、本作におけるナルキッソスのデザイン、造形はマーティン・バウアー単独による物とされる。
格闘ゲームにも登場
海外で人気の格闘ゲーム『モータルコンバット』では、ジェイソン、フレディ等のホラー映画の殺人鬼や、宿敵のプレデター共々DLC専用キャラクターとして有料配信されている。
設定上では本作品の魔界の住民 バラカに寄生して生まれており、歯(外側も)が鋭い牙になっていたり、腕からブレードを出したりと原作とは異なる設定となっているが、尻尾やインナーマウスを使ったゼノモーフらしい技もしっかりとある。
フェイタリティ(KO状態となった相手にトドメを刺す残虐技)は倒した相手を捕食する。
ちなみに、戦闘スタイルの中にはクイーンエイリアンがあり(頭の形がクイーンのような形状になる)、仲間を呼び出す技などもある。
関連タグ
女王蜂のイリアン:名前の由来。
ALIEN→エイリアン2