概要
『仮面ライダークウガ』から『仮面ライダーOOO』までの平成ライダー作品小説化企画の一環として発売された、『仮面ライダーW』のスピンオフ作品。講談社キャラクター文庫より2012年11月30日に出版された。
著者は本編の脚本も務めた三条陸。
原作ドラマでは放映されなかった「Z」をタイトルに冠する作品(なおこの「Z」を以て『W』サブタイトルはアルファベット26文字をすべて網羅した)。
時系列的にはTV本編の「ビースト」事件と「イエスタデイ」事件の間に起こった事件を描いており(冒頭の三条氏のメッセージにもその旨が記載されている)、公式設定にも組み込まれているエピソードである。
あらすじ
一時、仮面ライダーWとしてのコンビ解消の危機まで迎えたビースト&ゾーン事件も乗り越え、左翔太郎とフィリップはいつものように街を泣かせる毒・ガイアメモリによるドーパント犯罪を止めるために忙しく働く日々を送っていた。
しかし翔太郎はその日の事件解決に気を良くしてハメを外し過ぎ、バイラス事件以来のひどい風邪でダウンしてしまう。
翌朝、ぐでんぐでんに弱った翔太郎に呆れ果てるフィリップと亜樹子。
そんな折、鳴海探偵事務所に、高名な探偵・鳴海荘吉およびその後継者・左翔太郎の評判を聞いてきたという大財閥の令嬢、禅空寺香澄が依頼に現れた。
しかしその後継者は今、ゾンビもかくやな顔色でベッドで情けなくうめいている。どうする——?
ああ、そうだ。 ぼくが翔太郎だ。
特徴
上記あらすじなどの理由もあり、作中のモノローグなど基本的に翔太郎目線で進んでいたTVシリーズ本編とは違い、全編がフィリップの一人称視点で語られており、事件を追っていく中のフィリップの思考や感情、知識、他者への思いなどが興味深く語られている。
原作で描かれなかった部分を描写する番外編ということもあり、最終回までに詳しく語られることの無かった多くの伏線・謎を回収している。
具体的には
- ロストドライバーの出自
- マスカレイド・ドーパントの扱い
- ガイアメモリの製造工場の立地条件
etcetc……
また仮面ライダーサイクロンや本作独自のドーパントも登場する。
他にも、劇中ではイニシャルが「Z」になる単語が多く存在し、『W』のサブタイトルと同様、小説版のタイトル「Zを継ぐ者」には複数の意味が込められている。その中には『仮面ライダー(萬画)』のセリフオマージュが含まれている。
本作オリジナルキャラクター
- 禅空寺香澄
本作のヒロインで依頼人。18歳の現役女子大生で当時は検索以外に無頓着だったフィリップも認めるほどの美女(髪色は亜麻色)。
鳴海探偵事務所の評判を聞きつけて依頼を持ち込むが、誤解から彼を見て軽蔑の眼差しを向けた事から初対面はお互いに最悪の形となった。
禅空寺の人間からは疎ましく思われているが、今は亡き祖父の義蔵からは愛されて育っており、理解者がいなかったというわけではない。
強気な態度に隠れがちだが実際は一族の中では真っ直ぐな性格をしており、自分に非があれば謝罪するなど根っこの部分は素直。
- 弓岡あずさ
香澄の侍女である初老の女性。
他の一族から単なる一使用人としか見られていないが香澄にとっては母親に等しい人物であり、彼女から信頼を置かれている。
- 禅空寺俊英
30歳。禅空寺家の現当主で父の後を継いでCEOとなった人物。
身長は160cmと小柄で、それをコンプレックスに思っている。小物界の大物とはまさに彼の事だ。
慇懃無礼な性格だが、亜樹子曰く「イケメン」であるとのこと。
- 禅空寺朝美
25歳。俊英の妻で貞淑なショートカットの美女。
肝心の夫が亭主関白を気取っているため、彼の半歩下がった位置にいることが多い。
- 禅空寺麗子
24歳。俊英の同母妹であり、モデルとして風都のCMで活躍。
ZENONではイメージガールを務めており、髪型は腰まで届くほどのロングであり巨乳である。
- 禅空寺義蔵
犯人が名を騙った人物。
若い時からアマチュア生物学者として活動していた一族の長であり、本編中では既に故人。
別荘に動植物の標本(節足動物は抜け殻に止めている)や写真といった資料の類を収蔵しており、フィリップが感心するほどの物量を誇る。開発に反対気味だったのもそうした研究を重ねる中で風都海岸には絶滅危惧種を含めた豊富な生態系が息づいている事を知ったため。
- 禅空寺惣治
香澄の父。ZENONリゾートの創設者であり、一族の繁栄を願って開発を推し進めていた。
本編の1ヶ月前に病死し、遺産相続問題が発端となって事件が起こった。一族の話では義蔵との仲は良くなかったようだが、父親の想いは理解していた模様。
- 新藤敦
麗子の婚約者。高身長なイケメンだが、粗野で言葉遣いに品性がなく自分よりも地位が低い者にしか強気に出れない典型的なチンピラ。
本作に登場するドーパント
用語
- 禅空寺家
風都海岸付近の地主一族。風都海岸の自然を慈しんだ長の義蔵の意向により、自然との共存をモットーに慎ましやかに農林水産業を営んでいた。
一方で「妻が何らかの形でいなくなる」ジンクスが存在する一族でもあり、義蔵の妻は惣治の出産後に病死、惣治の妻である瑞枝は有力者の娘であった為、一族の政治に利用された事に怒って俊英と麗子を出産後に行方をくらましたという。なお、香澄は惣治の娘であるものの、どこの誰ともわからない女との間に出来た子であるため、本家の人間からは疎ましく思われている。
- ZENONリゾート
義蔵の息子である惣治が付近の土地や企業を買収して設立した大型レジャー施設。
風都市民にとっては夏の定番になるほどの人気スポット。プール、ホテル、アスレチックが併設されている。
名前は「ZENkuuji OrgaNizer(禅空寺オルガナイザー)」の略。