概要
東映の特撮ヒーロー作品、メタルヒーローシリーズのうち、『特警ウインスペクター』『特救指令ソルブレイン』『特捜エクシードラフト』の3部作の総称。
他の特撮ヒーロー作品とは違い、クリーチャーと戦うことよりも犯罪・災害から(犯罪者を含めた)人々の命を守ることを強調している。ヒーロー番組の定番である「世界征服を企み、毎回怪人を繰り出してくる悪の組織」が登場せず、個々の犯罪者が起こす事件や災害に立ち向かう。着ぐるみを使った敵キャラも殆ど登場しない。
ただし、クリーチャーや怪人が登場するエピソードもある他、超常現象などは存在しているようで、エクシードラフト終盤ではまさかの天使と悪魔が登場する。
ヒーロー像が近いトミカヒーローシリーズをレスキューポリスに数える人もいるが、制作会社もスポンサーも異なるので注意。
(本シリーズは制作・東映、スポンサー・バンダイ。トミカヒーローシリーズは制作・松竹及び日活、スポンサー・タカラトミー。)
このシリーズが生まれた時代背景
『特警ウインスペクター』が生まれた時代背景は埼玉連続幼女誘拐殺人事件の影響でアニメや特撮が報道や週刊誌で大きく叩かれていたことにある。
今までのメタルヒーローは怪人や宇宙人といった悪の組織との勧善懲悪が基本だったが、「悪を倒すだけが正義ではない」とのコンセプトで敵の逮捕や人命救助を重視したスタンスで制作された。
結果大きく成功し『特救指令ソルブレイン』『特捜エクシードラフト』まで続くこととなった。
世界観もウインスペクターからエクシードラフトまで繋がっている。しかしソルブレイン最終話で彼らが着用していたスーツが量産され全国に配備される計画が実施された筈だったが、エクシードラフトではその設定が繋がっていない。実は当初エクシードラフトは前2作と繋がっておらず、終盤に後付けで繋がりが設定された。
作風
「人の命ひいてはその心」を救う事が一貫したテーマとなっているが、基本的にモンスターが介在しない人間ドラマに主軸に置かれているからこそ、多種多様なゲストやレギュラー陣が織りなすトラウマ回や名エピソードが多数生まれたシリーズである事も他のシリーズと一線を画する大きなポイント。
刑事ドラマにメタルヒーローの要素を加えたものと解釈しても差し支えない。
ただ「西部警察」や「電脳警察サイバーコップ」のような勧善懲悪スタイルではなく、当時のテレビ朝日+東映の刑事ドラマの基本作風である、説教臭さや陰湿さを前面に押し出した作劇を導入しており、社会問題を取り扱うエピソードも散見される。
たとえ、怪人がいなくても人間の「心」の持ちよう次第で平和な世界はいとも容易く崩れるという事なのだろう。
あくまでも主人公たちは、超常的なパワーを持つスーパーヒーローなどではなく、救助用強化スーツを纏っただけの一人の人間である。最悪の場合、人々の命や心を救えない事もあるが故に犯人たちの動機や被害者たちの姿を目の当たりにして苦悩するシーンもしばしば描かれた(第1作と第2作ではサポートロボットもいるが、ここでは突っ込まない)。
ではここで、そのエピソードの一例を見てみよう。
特警ウインスペクター
- 第31話「哀しみの最強ロボ」(1990年9月2日放送/脚本:杉村升)
- 殺人マシーンとなってしまった仲間と戦う宿命を背負わされる哀しみを描く。
特救指令ソルブレイン
- 第21話「帰って来たWSP」、第22話「非情のファイヤー」、第23話「竜馬から大樹へ!」(1991年6月9日〜6月23日放送/脚本:杉村升)
- 第10話「わしら純情放火団」(1991年3月24日放送/脚本:扇澤延男)
- 若者に蔑ろにされた老人達の復讐劇を描く。
- 第51話「特救・解散命令!」、第52話「特救・爆破命令!」、第53話「また逢う日まで」(1992年1月12日〜1月26日放送/脚本:杉村升)
特捜エクシードラフト
- 第35話「見えない巨人」(1992年10月4日放送/脚本:扇澤延男)
- いじめ問題の凄惨さを描いたエピソード。裁かれるべき被害者、救われるべき加害者という逆転構造に加え、ヒーローである前に国家権力側であるが故に救えない弱者がいる事に歯痒い思いをする拳、根本的には解決していないオチなどの生々しさから今尚、語り草となっている。
- なお、『ビーファイターカブト』第23話「誇りの荒野を走れ!!」(1996年8月4日放送/脚本:扇澤延男)もいじめ問題を描くが、『エクシードラフト』第35話とは対照的に被害者の少年の悩みも本当の意味で解決できた明るいエンドになっている。
- 第38話「不発弾、出前一丁」(1992年10月25日放送/脚本:宮下隼一・鈴木康之)
- 不発弾という戦争の爪痕を描くエピソード。
- 第46話「魔獣を飼う美少女」(1992年12月27日放送/脚本:扇澤延男)
- ソルブレイン最終章とは違った角度から「人の心」や「愛」というシリーズの根幹を成すテーマに踏み込んだ一作。
本シリーズにも出演している宮内洋氏は「ヒーロー番組は教育番組である」という持論で有名だが、こうしたエピソードの数々は確かにどれも考えさせられるものばかりである。
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電脳警察サイバーコップ=東宝が制作した特撮ヒーローものだが、当時一強状態だった東映に多大な影響を与えた。同時に本作と同じ東映の『ロボット刑事』共々、前後の『機動刑事ジバン』・『特捜ロボジャンパーソン』同様に本シリーズの「影の原点」と言える。