泰山王
たいざんおう
仏典注釈書『金光明経疏』では二十人の護法神が紹介されているが、中国ではさらに四人が追加され、「二十四天」とされる、
太山府君はその追加メンバー四柱の一人である。ちなみに他の三名は緊那羅王、紫微大帝、雷祖天尊。
道教の冥府神「東嶽大帝」ゆかりの聖地・泰山の信仰の影響を受け、「泰山府君」「泰山王」と呼ばれるようになる。道教と仏教との影響は相互的なものであり、泰山が冥府に関係するようになったのも、仏典にある「太山地獄」が泰山の地下にあるとされた事による。
中国において太山府君は東嶽大帝と習合している。
日本では陰陽道で重要な位置を占める。陰陽師・安倍晴明が「泰山府君の法」を用いて、瀕死の僧侶を救ったエピソードは有名。
生死の境にあった人物を救った事、そして泰山府君が冥府と縁のある神である事からか、後世の創作では「泰山府君の法」が死者蘇生の秘術として扱われる事もある。
法華経を守護する三十番神の一人とされる。三十番神とは天台宗で発祥した概念だが、日蓮宗、吉田神道でも取り入れられた。
三十番神のメンバーとしての名は「赤山大明神」であり、京都にある天台宗の寺院「赤山禅院」の本尊である。
「赤山」とはこの寺院の開基である僧安慧の師である円仁が中国に渡った際に滞在した赤山法華院の所在地「赤山」に由来する。
泰山府君はこの山の守り神とされていた。円仁は無事に日本に帰れた事をこの神に感謝し、泰山府君を寺の本尊とする事を望んだがそれはかなわなかった。
円仁の遺言をうけた弟子・安慧により赤山明神を本尊とするこの寺院が建てられる事となる。
赤山明神信仰において、泰山府君は七福神の一人福禄寿と同一視されており、赤山大明神の天上における姿が福禄寿で、地上における姿が泰山府君なのだとされる。
赤山大明神の像は、死者を審判する判官の格好をした泰山府君像と異なり、弓を手に持ち矢筒を背負った唐装束の貴人の姿で作られている。
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