概要
いわゆる「○○脳」の一種であり、電子掲示板サイト『2ちゃんねる(以下、5ちゃんねる)』の利用者、その中でも特に熱心に利用している者達に多い考え方の傾向および、ネットスラングの一つ。
当初は比較的ポジティブな呼称だったが、次第にコミュニティの悪影響を受けた者達のことを指す、比喩的かつネガティブな蔑称へと変わっている。
しかし21世紀に入り、『電車男』や『ニコニコ動画』、まとめサイトの影響で5ちゃんねるの風潮がネット・SNS全体に広がってしまったため、「2ch」脳という限定的な表記を避け、
など、近年ではマクロな視点を取り入れた類語、または各特徴に合わせた同義の名称を用いられる事の方が多い(後述)。
なお2ch脳とされる人達は、匿名性を利用して以下のような特徴の書き込みをする事がほとんどであり、匿名により攻撃性が増すことを、心理学用語で『ペルソナ効果』『オンライン脱抑制効果』と呼ばれる。
かといって実名や顔写真でやれば問題解決に至れるかと言えばそうでもなく、現に実名と顔写真が多く出回っている『facebook』や海外のネット・SNS上でも以下の症状は見られるので、一枚岩な問題ではない。
もっとも、偽名や偽写真を使う事も可能なので反証としての説得力はやや薄いが、根本的な解決を求めるなら、ネット・SNS上の法整備や、さらに重い厳罰化を求める他なく、今のところは個人のネチケットや情報リテラシーといった、個々のモラル向上を求めるしかないのが現状である。
主な特徴
批難的な意見しか述べず、斜に構える
端的に言えば「あまのじゃく」「ひねくれ者」とも言い、あらゆる物事に対してまず否定・ネガティブから入り、肯定・賛美を一切認めない。
情報を揃えた建設的な意見ですら「専門家気取り」「エセ業界人」と一蹴したり、中立的なコメントであっても信者・アンチ・社員・工作員だと一方的に決めつけ、二元論な考え方をする(後述)。
よく勘違いされるが、「批判」と「批難」は全くの別物であり、「批判」は物事の良否を考え、相手に敬意を表して思いやる評価方法であるのに対し、「批難」は相手の気持ちを考えず、一方的な誹謗中傷・バッシング・ネガティブキャンペーン・罵詈雑言を書き込むことである。
情報源がインターネット上に書かれた内容
『ネットde真実』とも言われ、5ちゃんねるやまとめサイト、個人のTwitterなどのネットの伝聞を情報源とし、ネット・SNSの情報を真の常識と思ってしまう(「ネット・SNSは正しい情報を出してくれる」「ネット・SNSで叩かれているから駄作・クソゲー」など)。
テレビや新聞を「真実を隠している」「嘘ばかり流すメディア」と称し、逆にネット・SNSの情報には不確実でも都合のいい周辺情報は信用するなど、『確証バイアス』の状態に陥っていることも多く、情報の鵜呑みはデマ拡散など、深刻な風評被害の原因になる。
テレビ・新聞・ネット・SNSも、例外なく正しい情報と誤った情報が錯綜しているため、各メディアの情報を客観的に吟味し、情報の取捨選択をするのが『情報リテラシー』『メディアリテラシー』である。また、放射能問題にノイローゼを起こして政府の陰謀を謳うブログやサイトを読み漁り、誤った知識や偏見、感情論により、問題発言や迷惑行為を働く、いわゆる『放射脳』と呼ばれる人達も、この傾向が見られる。
他者に対しては威圧的・攻撃的
常に喧嘩腰で息をするように、「ガイジ」「死ね」「ゴミ」などといった言葉を多用し、自分が気に入らない人間や風潮、叩く対象に対して肯定的意見が出れば徹底的に叩き、「こいつ〇〇だろ」などといったような、差別的・人格否定的なレッテル貼りを多用する。
中には話が合わないだけで障害者・アスペ・在日認定・ネット右翼(左翼)扱いにするなど、横暴な事をする者や、上から目線で相手を見下し、マウントを取って優劣を付けたがるなど、非寛容で許容の心がないのも特徴で、もし現実世界ではおとなしい性格だった場合は、いわゆる『ネット弁慶』と呼ばれる状態になる。
しかし彼らを批判する際に、「君たちは2ch脳だ」と言うのはダブルスタンダードになってしまうため、そもそも『2ch脳』をはじめとした呼称自体を、積極的に用いるのは好ましくない事は留意しよう。
極端な目線(二元論)でしか語れない
「正義・悪」「神ゲー・クソゲー」「名作・駄作」「信者・アンチ」「人格者・異常者」といったように、良いか悪いかだけの極端な考えでしか物事を語れず、勧善懲悪を好む傾向にあり、近年ではこれらを『1bit脳(1ビット思考)』と呼称される(プログラムの2進数は「0」と「1」のみで判断するため)。
議論・ディベート経験が少なかったり、脳の異常や障害、まとめサイトの見出しが極端で煽ったものが多いなどが原因として挙げられ、実社会で生活すれば、「(全てではないが)世の中の人やモノには良い面もあれば悪い面もあり、曖昧かつ複雑である」事を自然に理解し、気付くのだが、彼らにはそれが見えてこない。
これらの目線しか語れないが故に、意図的に対立構図を生み出して煽り合いをすることもあり、ゲームハード陣営の戦争やAT/MT免許論争、洋画の字幕派・吹き替え派の対立が挙げられる。
きのこたけのこ戦争のように平和的なものであればいいが、煽り合いには人格否定・差別的言動も含まれており、かつては隔離されていたが、悪質なまとめサイトが原因でネット・SNS中に拡散してしまっている。
倫理面・モラルが壊滅的になる
『疑似的なサイコパス(ソシオパス)』と呼ばれる状態に陥り、人として最低限やってはいけない行為・差別的言動やヘイトクライム(憎悪犯罪)といった、言ってはいけないタブーを平気で破り、最悪「特定されなければ違法ではない」という考えを持つようになる。
これによって一斉逮捕されたのが『スマイリーキクチ中傷事件』である。
ネット私刑や、犯行予告や犯罪自慢、悪質デマがその一例として挙げられ、一部のまとめサイトなどは収益目的により、センセーショナルさや過激さを求めて、モラルが欠如した見出しや文章になっている場合も少なくなく、これに影響されるケースもありうる。
詳細は『モラルハザード』を参照。
なお似たような言葉に『バイトテロ』があるが、これはネットに影響されたとは言い難く、むしろネット初心者だからこそ起こす要因が多いため、厳密には異なる。
他人の不幸・失態を必要以上に大喜びする
上記の倫理面・モラルの件にも通じるが、「他人の不幸は蜜の味」と言う言葉があるように、
- 「ざまああああああああああ」
- 「○○冷えてるか〜?wwwww」
- 「○○息してる〜?wwwwww」
といった文言で相手を煽ることも多く、主に犯罪で捕まった無職や貧困層、実生活に恵まれない社会的弱者、SNSで炎上した者がターゲットにされる事が多い。
これらの波に呑まれ、自身も同じように傾倒した場合は『サイバーカスケード』と呼ばれる状態になる。
一部分の要素で揚げ足を取り、全体の評価を貶める
一部の言動や状態を偏向的に抜き取って大げさに誇張させ、意図的に煽って大騒ぎをする事もある。政治的・国際的話題や、アニメやゲームといったサブカルチャー関連を扱う悪質なまとめサイトで比較的見られる。
これらの歪曲された情報に踊らされて、「犯罪国」「作画崩壊」「手抜き」などと称して、対象の全体的な評価を下げようとする。
自分の言動には無責任
上記のような行動をしながら、いざ自分達に矛先が向けられると責任を持たず、他者に自己責任を押しつけ、時には被害者意識をあらわにする事も少なくない。
炎上・ネット私刑をはじめとした、彼らのような2ch脳の人達が引き起こした数々の諸問題を批判する記事・メディア報道に対しては、「マスゴミも同じことやってる」「つまりテレビですね」などといった、自分達を棚上げする発言もよく見られる。
2013年にはとある岩手県議員が炎上したことを苦に自殺をしたとされるが、その際もメディアで取り上げられた出演者のコメントを槍玉に挙げ、マスコミに責任転嫁を繰り返した者が数多くいたことから、これらの問題の深刻さを物語っている。
詳細は『ネットイナゴ』を参照。
素直に非を認めて謝ろうとしない
無責任な言動を取り責任転嫁をするため、これらの行動・言動に謝罪をするといったようなことをしない。
2018年にあるTwitterユーザーが、『高須クリニック』で有名な高須克弥院長とその妻に対して差別的言動を行い、院長側から注意された際に、そのユーザーはさらに過激な言動で挑発し、それをみかねて名誉毀損による刑事告訴を公言すると、事態を重く見たのか謝罪の体裁を取るが、内容は終始自己弁護や言動の正当化を繰り返し、被害者意識に満ち溢れていたものであった(そのTwitterユーザーはその後アカウント凍結されている)。
これを『謝ったら死ぬ病』と称して分析し、論じている記事も存在するが、いくら問題があるといっても、その該当ユーザーを執拗に叩き、個人情報を特定し、炎上に加担するのも同レベルの行為であるため、批判する際はこの先述の記事と同様に、冷静に論ずるべきである。
現実にネットの用語・習慣を無理矢理持ち込む
ネット・SNSのみならず、日常ですらネット用語を会話の中に混ぜる場合もあり、ネットに疎い者ならまだしも、知っている者からすれば良い気分はしないだろう。
近年では数々のゲイアダルトビデオなどから発端となった『淫夢語録』が、セリフの汎用性の高さからネット・SNS中に蔓延し、元ネタを知らないが故に日常で使う人もいる事もあってか、こちらも問題視されている。
煽り荒らしの姿勢が常態化する
上述のような喧嘩腰、ソシオパスの状態が慢性化し、自分に対する正当な批判を「不当な誹謗中傷」などと都合良く解釈し、自分からの誹謗中傷は「真っ当な批判」と主張する。
ここまでしておきながら、それでも自分は2ch脳に陥っているという自覚がなく、これが常態化すると、薬物のように相手を誹謗中傷する事にやめられない『誹謗中傷中毒』になる。
なお重ねるように、「批判」と「批難」は全くの別物である。
2ch脳になる原因や心理
先述の概要や特徴でいくつか述べた通り、2ch脳になる、もしくはなりやすい人は、
- 他人に影響されてすぐ騙される。良く言えば純真、悪く言えばおつむが弱い。
- 物事を論理ではなく、感情をまず優先して考える。
- 法律に関する知識に疎い(私刑行為は犯罪である事を知らないなど)。
- 自分に自信がない、または自尊心が低く、何かしらのコンプレックスを持っている。
- 逆に自意識過剰で、自分の意見が正しいと信じて疑わない自己中心的な性格。
- 議論・ディベートの経験が少なく、他者と真剣に意見交換する機会に恵まれていない。
- ストレスを溜め込み、適切な発散や冷静な判断が行えない。
- 人格障害・精神病などで、相手に思いやりを持つ事が困難な状態。
などが挙げられ、(人格障害、精神病などを除き)これらはネチケットを理解したり、知識や論理性・思考力、行間を読む鍛錬の習慣を身につける事で、2ch脳を脱却・克服したり、予防する事がある程度可能である。
なお通説として、「国民の8割はバカである」というものがあり、ある意味では2ch脳に陥りやすい人は、その8割側の人間なのかもしれない。
対策
ネットイナゴと同じように、自身に非がなく絡まれ、誹謗中傷や罵詈雑言を行うユーザーには無視やブロックを行い、あった場合は迅速な謝罪を表明し、悪質な内容には法的処置を辞さないと表明して、やり過ごすのが最善の策である。
良かれと思って助言や注意、話し合いの解決を求めたり、または建設的な批判までも締め出してしまうと、さらにエスカレートをしてしまい危険である。ストーカーのようにあまりに粘着され続け、個人情報を公開される特定行為をされた場合は、証拠を揃えた上で運営や警察に報告・届け出をする事も検討した方が良いだろう。
詳細は『エナジーバンパイア』を参照。
世の中には一定数、どうしようもないほどの非常識で言葉は通じても話は通じない、違う世界に住んでいる人達がいると思い、冷静にかつ毅然に対処する事が求められる。
関連項目
2ちゃんねる 荒らし ネット弁慶 ネットイナゴ モラルハザード エナジーバンパイア