概要
いわゆる「○○脳」の一種であり、電子掲示板サイト『2ちゃんねる(以下、5ちゃんねる)』の特定のスレッド(板)利用者、その中でも特に熱心に利用している者達に多い考え方の傾向および、ネットスラングの一つ。2ch系コミュニティの悪影響を受けた者達のことを指す、比喩的かつネガティブな蔑称である。
2ちゃんねる初期は宮崎勤事件、オウム事件、酒鬼薔薇事件などを経て日本社会全体にワイドショー的バッシング主義の思考が蔓延しており、また当時の不況下で流行した冷笑主義的雑誌文化の影響を当時の若者は強く受けていたと考察されており、「ハッキングから今晩のおかずまで」を謳い文句に、あらゆるマニアックな話題を板やスレで区分けされていた2ちゃんねるは、そうした人々の鬱憤を晴らすのに最適な場だったという考察がある。
2000年代後半はそうした空気感が時代の流れで一度消滅した。2005年には2chのスレを元にしたドラマである『電車男』が放送されて知名度が上がったことや、それ以降は『ニコニコ動画』、まとめサイト(コピペブログ)、などの影響で2ちゃんねるがネット全体に広がりユーザー数が爆発的に増えたため、流行の元となっていたニュー速VIPを筆頭に秩序や良識の通用する板やスレが増加したと思われる。
しかし、2011年頃には東日本大震災が起きた影響か以前のような暗い空気に戻り、徐々に「他人の不幸で飯がうまい」を根幹とする空間が形成されていったと考察されている。
なお以降は時代の流れによってTwitterなどのSNSが爆発的に流行。そちらの方に2chのノリが浸透したりもしたため、本家2chよりも他のサイトの方で2ch脳が目立ち始めた2010年代では「2ch」脳という限定的な表記を避け、
など、マクロな視点を取り入れた類語、または各特徴に合わせた同義の名称を用いられる事の方が多い。
なお2ch脳とされる人達は、匿名性を利用して以下のような特徴の書き込みをする事がほとんどであり、匿名により攻撃性が増すことを、心理学用語で『ペルソナ効果』『オンライン脱抑制効果』と呼ばれる。
かといって実名や顔写真でやれば問題解決に至れるかと言えばそうでもなく、現に実名と顔写真が多く出回っている『facebook』や(もっとも、偽名や偽写真を使う事も可能だが)、海外のネット・SNS上、ワイドショーや週刊誌、一部タレント、評論家、顔出しYoutuberなどでも以下の症状は見られるので、一枚岩な問題ではない。
根本的な解決を求めるなら、ネット・SNS上の法整備や、さらに重い厳罰化を求める他なく、今のところは個人のネチケットや情報リテラシーといった、個々のモラル向上を求めるしかないのが現状である。
主な特徴
非難(批難)的な意見しか述べず、斜に構える
端的に言えば「あまのじゃく」「ひねくれ者」とも言い、あらゆる物事に対してまず否定・ネガティブから入り、肯定・賛美を一切認めない。逆に一部の批判されているもの(凶悪犯罪者等)は評価する(所謂「判官贔屓」)。
情報を揃えた建設的な意見ですら「専門家気取り」「エセ業界人」と一蹴したり、中立的なコメントであっても信者・アンチ・社員・工作員だと一方的に決めつけ、二元論な考え方をする(後述)。
よく勘違いされるが、「批判」と「非難」は全くの別物であり、「批判」は物事の良否を考え、相手に敬意を表して思いやる評価方法であるのに対し、「非難」は相手の気持ちを考えず、一方的な誹謗中傷・バッシング・ネガティブキャンペーン・罵詈雑言を書き込むことである。
情報源がインターネット上に書かれた内容
『ネットde真実』とも言われ、5ちゃんねるやまとめサイト、個人のTwitterなどのネットの伝聞を情報源とし、ネット・SNSの情報を真の常識と思ってしまう(「ネット・SNSは正しい情報を出してくれる」「ネット・SNSで叩かれているから駄作・クソゲー」など)。
気に食わないテレビや新聞は「真実を隠している」「嘘ばかり流すメディア」と称し、逆に不確実でも都合のいいマスコミ情報や、ネット・SNSの怪しい情報は信用するなど、『確証バイアス』の状態に陥っていることも多く、情報の鵜呑みはデマ拡散など、深刻な風評被害の原因になる。
テレビ・新聞・ネット・SNSも、例外なく正しい情報と誤った情報が錯綜しているため、各メディアの情報を客観的に吟味し、情報の取捨選択をするのが『情報リテラシー』『メディアリテラシー』である。
他者に対しては威圧的・攻撃的
常に喧嘩腰で息をするように、「ガイジ」「死ね」「アホ」「ゴミ」などといった言葉を多用し、自分が気に入らない人間や風潮、叩く対象に対して肯定的意見が出れば徹底的に叩き、「こいつ〇〇だろ」などといったような、差別的・人格否定的なレッテル貼りを多用する。普通に伝えればいいような内容にも煽りや嫌味やマウントを織り交ぜる。
本当に相手が間違っていたり相手に落ち度があるような場合でも、それにつけ込んで、過剰にボロクソにしてこき下ろす。
中には話が合わないだけで障害者・アスペ・在日認定・スパイ認定・右翼・左翼扱いにするなど、横暴な事をする者や、上から目線で相手を見下し、マウントを取って優劣を付けたがるなど、非寛容で許容の心がないのも特徴で、もし現実世界ではおとなしい性格だった場合は、いわゆる『ネット弁慶』と呼ばれる状態になる。
しかし彼らを批判する際に、「君たちは2ch脳だ」と言うのはダブルスタンダードになってしまうため、そもそも『2ch脳』をはじめとした呼称自体を、積極的に用いるのは好ましくない事は留意しよう。
極端な目線(二元論)でしか語れない
「正義・悪」「神ゲー・クソゲー」「名作・駄作」「信者・アンチ」「人格者・異常者」といったように、良いか悪いかだけの極端な考えでしか物事を語れず、勧善懲悪を好む傾向にあり、近年ではこれらを『1bit脳(1ビット思考)』と呼称される(プログラムの2進数は「0」と「1」のみで判断するため)。
実際のディスカッション・ディベート経験が少なかったり、脳の異常や障害、まとめサイトの見出しが極端で煽ったものが多いなどが原因として挙げられ、実社会で生活すれば、「(全てではないが)世の中の人やモノには良い面もあれば悪い面もあり、曖昧かつ複雑である」事を自然に理解し、気付くのだが、彼らにはそれが見えてこない。
これらの目線しか語れないが故に、意図的に対立構図を生み出して煽り合いをすることもあり、ゲームハード陣営の戦争や自動車運転免許のAT限定/MT免許論争、洋画の字幕派・吹き替え派の対立が挙げられる。
きのこたけのこ戦争のように平和的なものであればいいが、煽り合いには人格否定・差別的言動も含まれており、かつては隔離されていたが、悪質なまとめサイトが原因でネット・SNS中に拡散してしまっている。
倫理面・モラルが壊滅的になる
『疑似的なサイコパス(ソシオパス)』と呼ばれる状態に陥り、人として最低限やってはいけない行為・差別的言動やヘイトクライム(憎悪犯罪)といった、言ってはいけないタブーを平気で破り、最悪「特定されなければ違法ではない」という考えを持つようになる。
これによって一斉逮捕されたのが『スマイリーキクチネット中傷被害事件』などである。
ネット私刑や、犯行予告や犯罪自慢、悪質デマがその一例として挙げられ、一部のまとめサイトなどは収益目的により、センセーショナルさや過激さを求めて、モラルが欠如した見出しや文章になっている場合も少なくなく、これに影響されるケースもありうる。
詳細は『モラルハザード』を参照。
なお似たような言葉に『バイトテロ』があるが、これはネットに影響されたとは言い難く、むしろネット初心者だからこそ起こす要因が多いため、厳密には異なる。
他人の不幸・失態を必要以上に大喜びする
上記の倫理面・モラルの件にも通じるが、「他人の不幸は蜜の味」と言う5ちゃんねる発の言葉があるように、
- 「ざまああああああああああ」
- 「○○冷えてるか〜?wwwww」
- 「○○息してる〜?wwwwww」
といった文言で他人の不幸を喜ぶ事が多い。これらの波に呑まれ、自身も同じように傾倒した場合は『サイバーカスケード』と呼ばれる状態になる。
一部分の要素で揚げ足を取り、全体の評価を貶める
一部の言動や状態を偏向的に抜き取って大げさに誇張させ、意図的に煽って大騒ぎをする事もある。政治的・国際的話題や、アニメやゲームといったサブカルチャー関連を扱う悪質なまとめサイトで比較的見られる。
これらの歪曲された情報に踊らされて、「犯罪国」「作画崩壊」「手抜き」などと称して、対象の全体的な評価を下げようとする。
自分の言動には無責任
上記のような行動をしながら、いざ自分達に矛先が向けられると責任を持たず、他者に自己責任を押しつけ、時には被害者意識をあらわにする事も少なくない。
炎上・ネット私刑をはじめとした、彼らのような2ch脳のユーザー達が引き起こした数々の諸問題を批判する記事・メディア報道に対しては、
- 「マスゴミも同じことやってる」
- 「つまりテレビですね」
- 「〇〇も同じじゃないですかやだー」
- 「この記事を書いた〇〇も人のこと言えないよね」
などといった、自分達の問題行動を平然で棚上げし、自己正当化する発言もよく見られる。
2013年にはとある岩手県議員が炎上したことを苦に自殺をしたとされるが、その際もメディアで取り上げられた出演者のコメントを槍玉に挙げ、マスコミに責任転嫁を繰り返した者が数多くいたことから、これらの問題の深刻さを物語っている。
詳細は『ネットイナゴ』を参照。
素直に非を認めて謝ろうとしない
無責任な言動を取り責任転嫁をするため、これらの行動・言動に謝罪をするといったようなことをしない。
各自の性格の問題に加え、少しでも非があればボロクソに叩かれる環境であるため尚更この傾向が助長される。
なお、先述の「スマイリーキクチ氏の中傷被害事件」で警察が動き中傷者が特定され検挙の際、中傷者はほぼ責任転嫁の言い訳ばかりだったという。
現実にネットの用語・習慣を無理矢理持ち込む
ネット・SNSのみならず、日常ですらネット用語を会話の中に混ぜる場合もあり、ネットに疎い者ならまだしも、知っている者からすれば良い気分はしないだろう。
近年では5ちゃんねるの一部スレッドが発端の『なんJ語』や、数々のゲイアダルトビデオなどから発端となった『淫夢語録』が、セリフの汎用性の高さからネット・SNS中に蔓延し、元ネタを知らないが故に日常で使う人もいる事もあってか、こちらも問題視されている事がある。
煽り荒らしの姿勢が常態化する
上述のような喧嘩腰・ソシオパスの状態が慢性化し、自分に対する正当な批判を「不当な誹謗中傷」などと都合良く解釈し、自分からの誹謗中傷は「真っ当な批判」と主張する。
ここまでしておきながら、それでも自分は2ch脳に陥っているという自覚がなく、これが常態化すると、薬物のように相手を誹謗中傷する事にやめられない『誹謗中傷中毒』になる。
なお重ねるように、「批判」と「非難」は全くの別物である。
2ch脳になる原因や心理
先述の概要や特徴でいくつか述べた通り、2ch脳になる、もしくはなりやすい人は、
- 他人に影響されてすぐ騙される。良く言えば純真、悪く言えばおつむが弱い。
- 物事を論理ではなく、自分の感情をまず優先して考える。
- 自分に自信がない、または自尊心が低く、何かしらのコンプレックスを持っている。
- 逆に自意識過剰で、自分の意見が正しいと信じて疑わない自己中心的な性格。
- 議論・討論経験が少なく、他者と真剣に意見交換する機会に恵まれていない。
- ストレスを溜め込み、適切な発散や冷静な判断が行えない。
- 人格障害・精神病などで、相手に思いやりを持つ事が困難な状態。
- 秩序よりも「ノリ」や「刺激」を求め、その為なら他人が犠牲になる事を顧みない。
- 法律・ルール・マナーを振りかざすが、それらの詳細な知識・相反する知識に乏しい(二次創作の拡大解釈、私刑行為は犯罪である事を知らないなど)。
- 元ソースを参照しない、参照してもそれを叩きの理由につかう。(特に分裂以降は元スレへのリンクすら貼らないまとめブログが増え、結果的にまともに相手にされていないスレでさえ大きな話題のスレと思わせる悪質な印象操作も増えている)
などが挙げられ、(人格障害・精神病などを除き)これらはネチケットを理解したり、知識や論理性・思考力・行間を読む鍛錬の習慣を身につける事で、2ch脳を脱却・克服したり、予防する事がある程度可能である。
対策
ネットイナゴと同じように、自身に非がなく絡まれ、誹謗中傷や罵詈雑言を行うユーザーには無視やブロックを行い、あった場合は迅速な謝罪を表明し、悪質な内容には法的措置を辞さないと表明して、やり過ごすのが最善の策である。
ただし良かれと思って助言や注意、話し合いの解決を求めたり、または建設的な批判までも締め出してしまうと、さらにエスカレートしてしまい危険がある。中傷と批判と不評と罵詈雑言の区別は付けるべきである。
それだけに留まらず、ストーカーのように粘着され続けたり、個人情報を公開される特定行為で風評被害・日常生活に支障を来たし、個人の力ではどうにもならない場合は、証拠を揃えた上で運営や人権団体、警察に報告・届け出の検討を考慮に入れる場合が出てくる。
世の中には一定数、どうしようもないほどの非常識で言葉は通じても話は通じない、もしくは違う世界に住んでいる人達がいると思い、冷静にかつ毅然に対処する事が求められる。
関連項目
2ちゃんねる 荒らし ネット弁慶 ネットイナゴ モラルハザード エナジーバンパイア ヤフコメ 放射脳
村社会:上記よく似た特徴を持つ「村」の悪習を揶揄する言葉。