村社会
むらしゃかい
日本では弥生時代以降、主に田畑を基盤とした村落が各地に設立されたが、山がちな地形に阻まれ、村同士の交流は(たとえ隣村であっても)常に限定的であった。また、中央権力や地元領主の統治能力が低かったこともあり、村自体の自治権が比較的大きかった。
そのような閉鎖的な環境の中で、固有のしきたりや風習が形成され、現地有力者を頂点とした序列社会が形成されていった。それが村社会である。
人の出入りの少なさから権力が固定化しやすく、公的規範や公正さよりも個人間の縁故や既得権益の保護が優先され、結果として各地で差別や有力者による独裁が横行することとなった。逃げようにも封建社会においては移住が厳しく制限されていたほか、前述の通りそもそも物理的にすら逃げ場がない環境であったため、たとえ不満があっても甘んじて受け入れなければならなかった。
一般的に以下のような特徴を持つ。
- 世襲等に基づく厳格な身分制度。有力者に逆らうと村での身分を失うおそれがある。
- 外部の者には理解しがたい奇習・掟の存在。
- 外部との接触を拒む排他性。外部の者が干渉してくる事をひどく嫌い、耳を貸さずに問答無用で追い返す。
- 外部の人間に対する敵対心。一旦村を離れた者が帰ってくると自分たちを見捨てたとして迫害する。被差別部落などに多い特徴。
- 「村八分」に代表される私刑行為の横行。
基本的に良いイメージを抱かれていないが、悪いことばかりかと言うとそういうわけでもない。強い同胞意識や互助精神による助け合いの文化根付いていることが多く、ご近所付き合いすら廃れ、独居老人の孤独死が多発する都市部においては、こうした横のつながりの大切さが見直されつつある。その「同胞」の枠から外れた者に対する当たりのキツささえなければ素晴らしい精神文化なのである。
とはいえ近代以降、交通網と通信網が整備されたこと、明治政府による国内の中央集権化が推し進められたことで典型的な村社会は次第に減少していった。さらに戦後の少子化および都市部への若年層流出に伴い、体制維持はおろか村落自体の存続すら危うくなったため、それまでの因習や身分制を廃止し、積極的に移住者を受け入れようとする自治体が急増した。
上記のように元来の意味での村社会は急速な衰退傾向にあるが、類似する特徴を備えた共同体・業界・組織は今も形を変えて残存しており、現代ではこちらを(もちろん批判的なニュアンスで)村社会と呼称することが多い。共通する特徴として「極度の排他性」「厳格な階級制度」「独特な規範意識」などを持つ。
特に排他性の強い組織は腐敗が進行しやすく、外部から内情を把握しづらくなるため、いじめやハラスメント、犯罪の温床になることも多々ある。
【芸能界】
先輩・後輩という厳格な階級制を持ち、その職種の特殊性から排他的でもある。こうした性質が仇となったか、特に近年は大物お笑い芸人の不祥事が多発している。
芸能界と同様の問題を抱えており、また、高度な芸術理論を内輪で持て囃し、それを理解できない一般人を見下すかのような言動も度々みられる。評論家が太鼓判を押した娯楽作品が商業的にはさっぱり…という場合、こうした認識のズレが原因であることが多い。
【宗教団体】
カルト宗教の項目も参照。教団支配のため、幹部らが意図的に村社会的なコミュニティ構築に勤しんでいることが多い。やたら出家を煽り、家族や友人と離縁させようとするのはその一環である。
【ブラック企業】
言うに及ばず。該当項目を参照。
【犯罪組織】
暴力団、暴走族、半グレ組織等。活動内容が活動内容なため、構成員が何らかの被害に遭っても外部に助けを求めにくいという問題がある。
【学校】
スクールカーストと呼ばれる非公式の階級制度が存在することがあり、これがいじめの温床となる。
特に体育会系が当てはまりやすい。大学サークルの場合はヤリサーなども該当し、仲間内の常識とノリが過熱して稀にシャレにならない犯罪行為を引き起こしてしまう。
【政治団体】
共通する政治思想の者が集って結成する関係上、排他的になりがち。学生運動時代の新左翼系団体などが代表例。
【タワーマンション】
一部証言によると、階層に基づくヒエラルキーが存在し、さらに近隣の非タワマン居住者を見下し、交流を持とうとしないなどの性質があるらしい。
【ネットコミュニティ】
厳格な階級制度こそないものの、サイバーカスケード化が進むと構成員が排他的になり、コミュニティ内におけるリンチが横行しがち。近年、陰謀論の温床になっているとして問題視されている。
【家庭】
家庭内不和による暴力行為やネグレクト等の温床となりやすい。プライベートな空間のため外部に気付かれにくく、行政も手を出しづらいため、長期にわたり放置されやすい。家庭内の謎常識を世間の常識と勘違いしたまま大人になったり、逆に親の過干渉の下、抑圧されて過ごさなければならなかったりするなど、子供の人格形成に大きな問題を引き起こす。
「村社会」という言葉自体は日本固有のものではあるものの、それに類するものは海外にも当然存在する。上記のような現代社会特有の事例の他、本来の意味での前近代的な村社会も数多く存在している。なお、必ずしも「村」という土地に立脚した共同体が主体になるとは限らず、日本では廃れて久しい「氏族」と呼ばれる血縁集団の影響力が根強い地域もある。
こうした農村や氏族の掟はしばしば国家が制定する法よりも優先され、人権の観点から度々非難の的となる。アラブ社会における名誉殺人が特に有名で、近年は難民・移民等を通じて欧州にも持ち込まれており、社会問題化しつつある。
新興宗教についても日本とはまるで規模が異なり、人口密度が低く土地を広々と使えるような国では教団自ら土地を購入し、因習村をイチから作ってしまう例すらある。
また、アメリカには苛烈なスクールカーストが存在し、度々発生するスクールシューティングの遠因にもなっている。
なお、日本の創作物では因習に固執する老人は大抵悪しざまに描かれるが、これを未開部族等に置き換えるとなぜか「伝統を維持し、部族のアイデンティティ守護に努める賢人」として美化されることが多い。
まず何よりも、村社会っぽい団体・組織には近づかない、加入しない。もちろん犯罪組織などもってのほかである。また、最初は大丈夫でも組織の性質が変わって村社会化するということも珍しくないので、きな臭くなったら手遅れになる前に直ちに脱出しよう。どっぷりはまってしまうとしがらみなどで簡単に抜け出せなくなるため、とにかく早い段階で逃げ出すのが肝要である。
万が一村社会に入り込んでしまった場合は、とにかく外部に助けを求めることを恐れない、諦めないこと。いざというときに助けてもらえるように、外部との人間関係を維持し続けることも重要である。特にブラック企業の場合は弁護士等による退職代行サービスがあるので、積極的に利用しよう。
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