概要
2020年春に暫定開業したJR東日本山手線・京浜東北線の駅(本開業は2024年を予定)。山手線としては1971年の西日暮里駅開業以来約40年ぶりの、また京浜東北線としては2000年のさいたま新都心駅開業以来約20年ぶりの新駅となる。
広大であった車両基地(田町電車区/品川客車区/東京機関区)跡地の中ほどの、市街地からやや孤立した場所に立地する上、近接する泉岳寺駅周辺も大規模な商業施設等が皆無(オフィスビル街の中に、少数のマンション・ビジネスホテル・コンビニ・飲食店ぐらいしか存在しない)の地域であること、また周辺の再開発も緒に着いたばかり、そもそも駅自体が暫定開業という状況であることから、現時点では山手線・京浜東北線の駅とは思えないほど駅構内・周辺共かなり閑散としている。
上記のように「何にもない」周辺環境で閑散としていることから、一部マニア筋の間では一種の「秘境駅」扱いされてしまうことも・・・
なお、新技術のショールーム的な存在として位置づけられているためか、人工知能搭載の案内ロボット投入や無人コンビニの設置、自動調光システムの採用など、技術面では挑戦的な試みが多く取られている。
駅名について
駅名はJR東日本の駅としては初めて一般公募に基づいて決定された。2018年6月5日~30日の間、インターネット及び郵送での駅名案募集が行われ、それら送られてきた駅名案を基に新駅名を決定、同年12月4日に公式発表された。
しかし、本駅名の応募順位は130位、応募数僅か36票である事、カタカナ交じりの長い名前が山手線のイメージに合わない事などから非難が殺到した。
応募順位1位は「高輪」、2位は「芝浦」、3位は「芝浜」であったが、それらが採用されることは無かった。
加えてこの駅名を、森友学園・加計学園問題(モリカケ)に匹敵するイカサマ(所謂「忖度」)とみなし、撤回と再考を要求する署名活動も行われ、4万8000名の署名が集まった。(JR東日本はこの名称の変更をするつもりはないと回答している)。
ただし、JR東日本が一般公募と称しておきながら、応募順位に関係ない名称を採用した事例=前科はこれが初めてではない。
例えば、2011年に運行開始した東北新幹線の最速列車も、応募数1位の「はつかり」を無視して7位の「はやぶさ」を採用。更に遡れば、2002年の八戸延伸時に運転を開始した「はやて」も実は19位での採用であった。「はつかり」は由緒ある東北本線特急の名称であるのに対し、「はやぶさ」は元々東京~九州間のブルートレインの名前だったことや、時期的に人工衛星「はやぶさ」にあやかったミーハーなネーミングとも考えられ、当初は批判が相次いだ(公募2位の「はつね」よりかは大分マシだが)。が、こちらも変更されなかった。
JR東日本が公募と無関係に命名した例は、実は過去にも存在した。それは、1988年に運行開始した寝台特急「北斗星」である。
この時の公募の結果は、1位は「北海」、2位は「タンチョウ」、3位は「オーロラ」であり、「北斗星」は108位、応募数わずか15票という超少数派であったが、「北を目指す夜行列車にふさわしい」という理由で採用された。
ただし、こちらは後にブルートレインの代表格となる人気列車に成長し、廃止されて久しい現在でも伝説的な人気を誇っており、JR東日本の先見の明が窺えた事例と言える。
「高輪ゲートウェイ」が、その先見性を評価される日は来るだろうか...
なお、「ゲートウェイ」の由来と思われる「高輪大木戸」(江戸時代の関所)は、現在の泉岳寺駅北側に存在した(現在も高輪大木戸跡という史跡がある)。
過去に京浜電気鉄道(現在の京浜急行電鉄)の高輪駅が存在しており(位置的には現在の品川駅高輪口付近)、本路線の終着駅であった。
また、当時の駅周辺では同時並行で「グローバルゲートウェイ品川」なるコンセプトのもとJR東日本が中心となった都市開発事業が行われており、こちらと合わせようとしたのでは、とする考察も見られる。
駅名決定後の反響
「高輪ゲートウェイ」なる珍駅名は、ネット上でも様々な反響を呼んだ。
ある年齢以上の世代からは、1990年代後半に人気のあった「ゲートウェイのパソコン」(パッケージのダンボールが牛柄だったため、「牛パソ」などと呼ばれていた)を思い出した者も少なくなかったという。(奇しくも至近の泉岳寺付近は、明治初頭まで高輪牛町とも呼ばれていた)
また、付近に存在する天井が低いことで有名なガード(高輪架道橋=通称高輪ガード、2020年現在は歩行者・軽車両のみ通行可)をもじって「高輪ガードウェイ」(逆にガード側の道を「ガードウェイ」と呼ぶこともある)、コンピューターネットワークの用語(デフォルトゲートウェイ)が元ネタの「高輪192.168.11.1」、酷いものだと「高輪ゲイとウェイ」などの蔑称も誕生した。
なお、長過ぎる駅名の略称として「高ゲー」「高ゲ」などの表現も散見されるが、駅自体の乗降客が少ないマイナーな駅である故、現時点ではほとんど浸透していないようである。
駅名標にも妙なダサさがあり、ヒラギノ書体ファンからの怒りを呼んだ。
ヒラギノと言えば、かつての文字印刷が写植だった時代の最大手事業者だった「写研」のスタッフが中心となり手がけたものであり、当時の印刷は「写植と組版はセット」という考えが当たり前であった。これは、文字自体のデザインだけでなく文字同士の配置にも気を配るものであり、必然ヒラギノも写研の影響を多大に受けている以上は繊細な配置をすることを念頭に置いた書体となっているが、高輪ゲートウェイ駅の看板においてはこの「配置」に読みやすくする工夫が見られていないことが批判の理由として挙げられる。
他には、その独特なネーミングや諸々の事情により存在感は強いことから、国鉄時代の駅名標を再現してあたかも昔から存在したかのようなネタ画像を作る鉄道ファンも出てきたりした。
「高輪ゲートウェイ」が与えた影響
横文字・カタカナ言葉に対する感性の違いが注目され、「ザギンでシースー」のようなネーミングセンスも偉い人たちの世代などと関係があるのでは?と言われた。
本駅名の決定と同時期に、東京メトロ日比谷線の新駅が虎ノ門ヒルズ駅に決定。同じくカタカナ交じりの駅名という事で比較対象にされたが、こちらは「虎ノ門ヒルズ」という場所が実在するため批判は起こらなかった。
また、東急田園都市線の南町田駅が南町田グランベリーパーク駅という謎の駅名に改称。ただ実際にグランベリーパークがあるのと、田園都市線がもともと何もないところに作った路線故か、これも話題にならなかった(話題にならないという意味では失敗か?)。
2021年には、福岡市営地下鉄の新駅が「キャナルシティ」を差し置いて「櫛田神社前」という無難な駅名を採用。難読漢字にもかかわらず採用されたこともあり、この騒動の影響ではといわれた。
そしてJR東でも2023年春、京葉線の新習志野駅と海浜幕張駅の間に新駅を作ることが発表され、2021年5月に、やはり公募による駅名の募集が行われた。
しかし、先述の「高輪ゲートウェイ」や「はやぶさ」の件から、JR東日本の名称公募は出来レースという認識が浸透してしまい、ネットでは「どうせ駅名は既に決まっている」「単なる話題作り」といった批判が多数噴出。10月29日、駅名が発表され「幕張豊砂」という、無難な駅名に落ち着いた(応募順位13位、応募数104票)。
なお、1位は「幕張新都心」だったが採用されなかった他、皮肉と思われる「幕張ゲートウェイ」があろうことか3位に食い込んだ)
駅構造
島式2面4線の地上駅。
西側ホームが山手線。東側ホームが京浜東北線となる。
渋谷駅との間は、当駅西側に発着する東急バス品川線【渋43】とある程度並行するが、そちらは山手通り(特に、JRの駅がない目黒区)を経由する(ただし平日は朝夕、土休日は昼間のみ運行)。
関連タグ
- あしかがフラワーパーク駅、Jヴィレッジ駅:同じくJR東日本にあるカタカナ交じりの長い駅名。
- 御厨駅:同じく2020年にJR東海で東海道本線静岡地区に開業した新駅。設置場所の名前をそのまま採用したことから、忖度のない駅名として比較対象にされた。
- 青の交響曲:近鉄特急。他社の事例にはなるが、列車名の一般公募が行われ約4000件近く集まったものの、こちらは最優秀賞「該当者なし」で近鉄側が考案したもので終わっている。こんな前例もあるんだ。
- リゾートゲートウェイ・ステーション駅:違う、そうじゃない。