曖昧さ回避
- 天体の北斗七星の別名。本項で取り上げる寝台特急列車の由来となった。
- 小惑星帯に位置する小惑星のひとつ。北海道北見市で発見され、発見の前年に運行を開始した寝台特急から名付けられた。
- 北斗星君:中国において北斗七星が神格化されたもの。
- 菅谷北斗星:将棋観戦記者。
- 東芝が製造・販売していた家庭用冷凍冷蔵庫。
概要
1988年から2015年まで、JR東日本とJR北海道が共同で運行。
1988年3月13日、青函トンネルを含む通称津軽海峡線の開業と同時に運行を開始した。
上野駅〜札幌駅間というそれまでにない長距離運行であり標準所要時間も約16時間かかる事から、これまでのブルートレインとは性格を変え、出張などのビジネス客を最初から想定せず、「北斗星」に乗車すること自体も含めた観光需要を掘り起こす事を目的としてスタートした。
このため、首都圏周辺のそれぞれの主要駅の発車時刻は夕食前であり、着時刻も昼前あたりとなっている。この辺りは現代のクルーズトレインに近い運行形態だったといえる。登場当時は日本がまた好景気であった時代であり、また青函トンネル開業時点で首都圏から北海道への旅客輸送がほぼ航空機に移行していたという事情もある。
運行開始以来廃止まで客車は24系客車(食堂車は485系・489系電車から)の改造車両が使用されていた。なお、JR北海道所属車とJR東日本所属車で内装・外装に差異があり、外見状はJR北海道所属車の側面にワゴン・リ社の向かい獅子の紋章をモデルとしたエンブレムが飾られていることで区別できた。
A個室寝台車「ロイヤル」や食堂車(グランシャリオ)、ロビーカーを連結した豪華編成での運行が好評を博し、その後の「トワイライトエクスプレス」や「カシオペア」の登場の素地を作った。
最盛期は毎日3往復が運行されたが、需要の減少もあって1994年10月以降、3・4号は「毎日運転の季節列車」という、かなり変わった扱いで運行されるようになった。
1998年に同一区間を走行する「カシオペア」の運行開始により、1999年に2往復に削減。さらに2008年3月以降は青函トンネルの北海道新幹線の線路敷設工事開始に伴い、夜間の工事時間帯を確保するためとのことで、毎日1往復の運行になっていた。
1号車~6号車がJR北海道所属車、7号車~電源車がJR東日本所属車の混結編成になったのもこの時である。
2010年7月より、上野駅~青森信号場間の牽引にJR東日本が新製したEF510形電気機関車が投入された。なお、列車番号は「1・2」。2014年の時点では客車列車としては全JR線で唯一のトップナンバーであった。
国鉄時代のブルートレインのイメージを吹き飛ばした次世代ブルートレインとして時代の寵児であった北斗星であったが、北海道新幹線開通のための工事時間の確保や客車の老朽化を理由に、2015年3月14日限りで定期運用を終了した。この時点でJR北海道所属車が全車運用を外れ廃車となった。
その後、8月までJR東日本所属車による臨時寝台特急「北斗星」として定期運用の時と異なる編成で運行。上野発は8月21日出発分、札幌発は8月22日出発分で運行終了となった。夜行特急列車として現役最後のブルートレインであり、その歴史において有終の美を飾った。
停車駅
上野駅 - 大宮駅 -宇都宮駅 - 郡山駅- 福島駅 - 仙台駅 - 函館駅- 森駅- 八雲駅 - 長万部駅 - 洞爺駅 - 伊達紋別駅 - 東室蘭駅 - 登別駅 - 苫小牧駅 - 南千歳駅 - 札幌駅
通常のルートは東北本線〜IGRいわて銀河鉄道線〜青い森鉄道線〜津軽海峡線(津軽線・海峡線・江差線)〜函館本線〜室蘭本線〜千歳線であるが、災害時には迂回運行という形で違うルートを走行することもあった。(後述)
バリエーション
定期列車以外にも、かつては同じ車両を使って「北斗星」の名前を冠して様々な臨時列車が運行された。
・夢空間北斗星
「夢空間」車両を連結して運行した列車。下記の臨時列車にも連結して運行したことがある。
・北斗星トマムスキー
北海道側の始発・終点をトマム駅にした列車。冬季のみの運転。
東京側は当初は上野駅だっだが、のちに横浜駅や品川駅、新宿駅になった。
経路は横浜駅から大宮駅まで横須賀線、山手貨物線、東北貨物線を経由(つまりは湘南新宿ラインのルート)し、大宮駅~沼ノ端駅間は定期列車と同じルートを走る。そして沼ノ端からは室蘭本線をそのまま走り、追分駅から石勝線に入ってトマム駅まで走った。
・北斗星トマムサホロ
トマムスキー号を延長して始発・終点を新得駅にした列車。
・北斗星ニセコスキー
上野駅~札幌駅間を函館本線(山線)経由で走り、ニセコ駅・倶知安駅・小樽駅を経由して運行した列車。
・北斗星小樽号
上記列車とは異なり室蘭本線経由である定期の「北斗星1号」を札幌駅から小樽駅まで延長した列車。
・北斗星まりも
2001年に札幌駅~釧路駅の夜行特急列車として「まりも」の名称が復活することを記念して運転された臨時列車。
札幌駅~釧路駅~根室駅で運転された(釧路駅~根室駅間は快速として運転)。
・北斗星利尻
2002年に札幌駅~南稚内駅(稚内駅では、機回しできないため)間で運転された臨時列車。
列車ではない「トレインホステル北斗星」
惜しまれつつも列車としての運行が終わってしまった「北斗星」がほぼ1年後…なんとホステル(ゲストハウス)として宿泊施設に生まれ変わった。
ロゴマークがそのままに「トレインホステル北斗星」という名前で、JRの馬喰町駅(4番出口)のすぐ隣に2016/12/15にオープン。
かつて使われていた寝台車の備品や装飾品がほぼそのまま余すことなく使われており、お手頃価格(なんと3000~5000円程度)で利用できるため、当時の寝台列車の感覚を味わえた。
しかし、R.projectによる運営が終了を理由に、4年半後の2021/07末を持って休止を発表。
トリビア
田端機関区のEF81では、お召し指定機の名残があった81号機、レインボー塗装の95号機はもちろん、ローズピンクの初期車も普通に牽引に当たっていた。
専用塗装化が始まるのは、DD51が1988年夏頃、EF81が1988年秋頃である。
- さらに、札幌駅も高架化される前(全面高架化は1990年)であったため、地上駅時代の札幌駅に停車する写真や動画も残されている。気になる人は探してみるといい。
- 当初「北斗星1号」の函館→札幌駅間では、「ヒルネ」(普通の特急券+乗車券で寝台に座席扱いで乗れる)の制度があった。これはそれまで同じ区間を走っていた特急「北斗」のダイヤを転用して走行していたためであった。しかし、函館駅から乗車した乗客の席が確保できないことが多く苦情が殺到、その後同区間でスハフ14形やスハネフ14形を増結して急場をしのいでいたことがある。
運行開始当初の北斗星を紹介した動画。札幌駅がまだ地上駅だった時代を発車しているという意味でも非常に貴重な映像である。
- 運行当初は2往復、1往復は季節運転扱い(北斗星3・4号 全車B寝台)で運行してたが、翌1989年夏に個室寝台車が増備され3往復になった。その後全車B寝台の列車は「エルム」となり修学旅行や北海道向けツアー客などの団体客はこちらが引き受ける事となった。
- 当初の個室車は全てB寝台車からの改造車である。なお運行開始時点から北海道受け持ちの1・2号と、東日本受け持ちの5・6号で編成の内容が異なっていた。(季節運転・全車B寝台の3・4号は東日本が受け持ち)
- 1989年には既存2往復に「ロイヤル」を含む個室車が2両連結に増強され、前述のように季節運転の3・4号が定期列車になった。定期運行化の際に北海道と東日本が1編成ずつ受け持つことになり、編成の内容は「東日本編成」に準じた編成になった。しかし両社共々改造増備された車両は、予備車の共用化や既存車からの仕様変更、さらに用意できた種車の関係で不本意な理由ながらも後述のように「珍車中の珍車のオンパレード」のような有様になってしまった。そのため両社で担当する3・4号は東日本受け持ちの5・6号と比較するとB寝台の定員が少ない。
- これは国鉄民営化の際にJR北海道に継承された24系(25形)の数が少なく、夜行急行列車で使用していた(定員の少ない)14系寝台車を種車にしたことに起因していいる。JR東日本に於いても24系(24形)の寝台車や14系座席車まで種車として動員しており、これら追加改造車の大半は3・4号で限定運用されることが多かった。
- さらに北海道受け持ちの1・2号では、1991年(ソロ・デュエット)と1997年度(デュエット・Bコンパート)の2回に分けて独自にB寝台の個室化を推進、1998年春には全車両の個室化を達成している。
- 列車の知名度と人気とは裏腹に、鉄道模型の世界では長年冷遇されていた。1990年代半ばまで毎年のように編成が変わり、前述のように車両も多種多様になり過ぎてしまったため、当時の模型メーカーが手を出し難かったものと思われる。Nゲージの場合、運行開始後間もなく2社が製品化したが、両社共長年に亘り改良や追加車種の発売も無く(1社が後に東日本編成ロイヤル2両化用の増備車を製品化したが…)、稀に再生産される程度の放置状態が続いていた。北斗星の製品群が充実化するのは、皮肉にも実物の廃止が現実的になり希少価値が高まり始めた2007年頃からである。
しかしその後、特にTOMIXでは積極的に製品化を進めており、最近ではB寝台の梯子を標準で再現、また希少車・変形車を作り分けてセットに収録することがトレンドになっている。(ほかの同等製品でも同様)
そのため同社から発売されている「エルム」・「夢空間」セットを併用すると(クーラーやトイレ更新による手摺形状など、細部の変化に目を瞑れば)、登場時から末期までほぼ全ての車種・編成を網羅できてしまう状態である。(それでも東日本のツインDX/ロビーカー/電源車にまだ残りがあるが、それも間もなくフルラインナップを達成する見込みである)
- 災害などで本来の路線が不通となった場合は迂回運転を行うことがあった。本州では常磐線経由や高崎線・上越線・信越本線・羽越本線・奥羽本線経由の「あけぼの」ルート、北海道では有珠山が噴火した際に長万部~札幌間を函館本線(所謂「山線」)経由で走ったことがある。
通常の編成と前後逆転した状態で札幌を着発したため、当初は苗穂運転所にあった転車台で1両ずつ転回する苦労があったという。
テレビドラマやアニメにも登場
その知名度の高さもあり西村京太郎トラベルミステリー]]やドラマ『さすらい刑事旅情編』、他には『キテレツ大百科』にも北斗星が登場している。
また運行開始直後の1988年にはフジテレビで上野駅~札幌駅間の前面展望映像を2~3倍速で放送する「完全走破!上野〜札幌寝台特急北斗星の旅」という特番が放送された。
日本テレビ系列のバラエティ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』でも「北斗星」に乗って逃亡するTOKIOの城島茂扮する犯人を刑事役の山口達也と松岡昌宏が追う企画「夜行列車においつけるか?」が放送された。
『名探偵コナン』では「上野発北斗星3号」という事件があり、同事件を収録した単行本22巻では、実在の北斗星が表紙を飾っている。原作では実車と異なり函館駅〜札幌駅間も電気機関車で牽引されている描写があったが、アニメ版では実車と同様に函館駅〜札幌駅間をDD51形重連で牽引される描写に修正されている。
『キテレツ大百科』では39話で苅野勉三が札幌の大学を受験するため北斗星1号に乗り込んだ。タイトルは「北斗星で北の国にUターン」。
雪が積もる仙台駅に入るシーンがあるほか、キテレツ達がロビーカーで車掌に乗車券を持っているか尋ねられ、勉三が払う羽目になる描写がある。機関車はEF81で、EF81のまま青函トンネルに入っている。また久川綾の声優デビュー作でもある。
第三セクターとの関係
新幹線開通時に転換されJRから切り離されたIGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道にとって、本列車や「カシオペア」の通過によりJR東日本から支払われる運賃や走行料は同鉄道の重要な収入源の一つになっており、同線区間内では客扱いを行わないにも拘らず廃止発表後には反対する声明を出した程であった。
隠れた需要
上記にもあるが首都圏を午後に出発し札幌にお昼前に到着するダイヤということもあり、ジャニーズ系アイドルや大物アーティストが札幌ドームにおいて行うドームライブに向けて関東や南東北から本列車を利用して遠征するファンの利用が多かったという。
元々は飛行機の便が予約できなかった場合の知る人ぞ知るという隠れた手段であったが、札幌への移動は事実上飛行機か本列車の二択しかなく、また仙台まで沿線の主要な駅にも停車していた事、航空路線と異なり夜間を移動時間として使える事、札幌市内まで乗り換えをしなくて済む事などから、次第に知られるようになり、同時間帯運行の「カシオペア」と共にツアー開催時期の週末にはB寝台を中心に満席に近い状態になる事もあった。