2011年10月から12月まで、フジテレビ系列の「ノイタミナ」で放送された。全11話。
あらすじ
近未来。終戦を迎えたばかりの東京には、いまだあちこちに戦火の爪痕が残っている。
それは文明のみならず、この国に住むすべての人間たちにも影を落とし、巷では不可解な難事件が頻発している。
戦後の情報網を統べるメディア王・海勝麟六は、その優れた頭脳であらゆる事件を解決に導いている。だが、その推理には裏があった。
立ち入り禁止区域の廃墟に住む結城新十郎と、摩訶不思議な能力を持つ因果は、とうに廃れた"探偵"を名乗る二人組。
海勝が語る"美しい結末"を覆すべく、二人は今日もひた走る。
たとえ世間に真相が知らされず、"敗戦探偵"と呼ばれようとも。
概要
『明治開化 安吾捕物帖』をはじめとする坂口安吾の複数の小説を再構成。
時代設定を明治から近未来に変更し、世界観や登場人物を大胆にアレンジ、オリジナルストーリーが展開される。
ミステリーの体を取りつつも、特殊能力を操る異形というアニメ的なギミックや、"戦後"の混沌の中に見る人間模様を描く人間ドラマでもある。
水島精二監督のtwitterでの「ノイタミナで何かやってみたい」というつぶやきが、フジテレビの山本幸治プロデューサーの目に留まったことから、企画がスタート。
山本の出したコンセプトは「バディ(相棒)もの」「社会派」だったという。
脚本の會川昇、制作のボンズと、結果的に『鋼の錬金術師』(第1期)のスタッフが集結することになった。また、キャラクターデザインの高河ゆんは水島監督の『機動戦士ガンダム00』に参加している。
テレビシリーズのほか、本編の前日譚に当たる『UN-GO episode:0 因果論』が制作。
2011年11月19日よりTOHOシネマズにて、二週間のレイトショー限定で劇場上映された。
原案『明治開化 安吾捕物帖』について
1950(昭和25)年10月1日以降、『小説新潮』に全20作が掲載された推理小説。
文明開化後の明治時代を舞台としながらも、発表時の第二次世界大戦後の昭和の情勢と重ね、"戦後"を風刺した作品である。
主人公の結城新十郎は『UN-GO』と同じく探偵。相方の花逎家因果(はなのやいんが)は、因果のような人外ではなく戯作家、新十郎の隣人で、逃げる犯人を捕らえるのが主な役目。もう一人の隣人である泉山虎之助(『UN-GO』では虎山泉に当たる)は剣術使いで、警察に剣を教えて暮らしている。
海勝麟六に当たるのは、明治の偉人・勝海舟。虎之助が、剣の師匠である勝に事件のあらましを説明し、勝が安楽椅子探偵よろしく推理を披露するが、それは間違っており、新十郎が真相を看破する。そして最後に勝が負け惜しみを言う、というのがおおよその流れとなっている。
『UN-GO』のヒロイン・海勝梨江に当たる"お梨江"は、勝ではなく『"舞踏会殺人事件"』で死亡する加納五兵衛の娘である。
作者の没後50年が経過し著作権が切れたため、現在はすべて青空文庫で読むことができる(外部リンク)。
1973-1974年に毎日放送制作、『新十郎捕物帖・快刀乱麻』の題でドラマ化されたが、テープを上書きして使用していたため、最終回以外残っていない。
世界観
あるアジアの異国でボランティアをしていた日本人数名が、反日テログループに惨殺される映像が流れた。
これを機に日本政府はPKOへ参加するが、それに反発するテログループが国内でテロを起こし、内戦が勃発。出動した自衛隊が市街戦を繰り広げる大惨事となった。
物語の舞台となるのは、その戦争の傷が癒えぬ、"戦後"の東京。
その姿は現実の東京の面影を残しているが、あちこちに瓦礫の山が積まれている。
戦争の影響で治安が悪く、政府は右傾化しており、激しい政治抗争が起こっている。
戦後、情報インフラを復興し、情報を一手に握ったのは、海勝麟六が会長を務める"JJシステム"であった。
政府内には、外圧への対処と各省庁の調整を行う"連合調整部"という部署が新設され、独自の権限で捜査を行っている。
"新情報拡散防止法"という法律が施工されており、さまざまなものを規制するため恣意的に運用されているきらいがある。
時代年数は劇中で明示されないが、脚本担当の會川昇は、「今(2011年)からおよそ20年弱が経過している」と発言した(MangAnimeナビにいがたより)。
劇中世界にはYouTubeやニコニコ動画を髣髴とさせるインターネット動画サイトが登場したり、VOCALOIDがかつて存在していたことが台詞で発言されるなど、現実と地続きであるかのような演出がなされている。
これは原案小説と同様に、作中の近未来と作品発表時の現在(2011年)をリンクさせる手法をとっているものと思われる。
登場人物
結城探偵事務所
主人公。自称"最後の名探偵"。
推理力、身体能力ともに優れており、連合調整部や警察からも一目置かれている。
さまざまな事件を解き明かしているが、海勝麟六がメディアを牛耳っているため、その成果は世間の知るところにはならない。
戦争の発端となった事件に関与していることから政府やそれに類する権力者に不信感を持っており、麟六とは対立しがち。人の死に名誉を与え、美化するような行為を特に嫌っている。その態度は無頼そのもの。
新十郎の助手。二つの姿を持つ、人ならざる存在。
妖艶な美女に変身し、相手に一つだけ質問を答えさせる特殊能力を発揮することができる。
二つの姿でファッションも大きく違うが、どちらもパンダを模したデザインになっている。
人間が腹の底に潜めているという"御魂"を得るのが目的で、捜査の過程でそれを引き出す、という契約の元、新十郎の助手を務める。
佐々駒守の開発したRAI(人工知能)。
ネットワーク上に自身のデータを分散させており、あらゆる電子機器に入り込むことができる。
新情報拡散防止法に違反するとしてRAIが摘発を受けたため、現存する最後のRAIとなった。
第3-4話の事件以降、新十郎らと行動をともにするようになる。少女型ボディ、またはパンダのぬいぐるみに入って活動する。
JJシステム周辺
戦後に復旧した情報インフラ・JJシステムの会長。
圧倒的な情報力と推理力を振るい、警察・検察からの情報分析顧問も任されている。
政財界にも広く顔が利くが、それゆえに癒着の疑惑がある。
常に飄々とした態度を崩さない食わせ者で、新十郎に追及を受けてもそれは変わらない。
麟六の娘。
おおらかで好奇心旺盛、自由奔放なお嬢様。
新十郎に興味を持っており、麟六の抱えた事件をの新十郎に持ち込むことで接点を持っている。
検察庁連合調整部の検事。
難事件が起きると海勝麟六の元へ相談に訪れる。
警察庁警備局課長。
事件現場でよく新十郎と出くわす。
その他
因果と同じく、人ならざるもの。
『UN-GO episode:0 因果論』(以下『因果論』)で初登場。テレビシリーズにも登場する。
神のようで、少女のような容姿。
人に嘘を信じ込ませる能力を持ち、新十郎が関わるいくつかの事件に噛んでいる。
『因果論』に登場。
新十郎とは学生時代の友人で、新十郎が異国を放浪している時期に再会した。
『因果論』に登場。
新十郎が異国を放浪している時期に出会い、新十郎の生き方に影響を与えた女性。
テレビシリーズ第3-4話に登場。
佐々家の長女で、風守の義妹。
テレビシリーズ第6話より登場。
民間刑務所・東関東社会復帰促進センターの囚人で、"小説家"を自称する謎の男。
現実をペン、新十郎を名探偵に見立てて推理小説を書こうとした。
『UN-GO episode:0 因果論』
2011年11月19日公開。配給は東宝。
アニメ映画ではあるが、本編は49分と短編で、二週間限定のレイトショー上映(特別料金)というかたちが取られた。
結城新十郎と因果の出会いと、最初の事件、因果と別天王の出自が明かされる。
別天王はテレビシリーズに先駆けての登場となった。また、『因果論』での一件はテレビシリーズ8話以降で触れられている。
各話リストと原案
話数 | サブタイトル | 原案 |
---|---|---|
第1話 | 舞踏会の殺人 | 『明治開化 安吾捕物帖 "舞踏会殺人事件"』 |
第2話 | 無情のうた | 『明治開化 安吾捕物帖 "ああ無情"』 |
第3話 | 覆面屋敷 | 『明治開化 安吾捕物帖 "万引一家" "覆面屋敷"』 |
第4話 | 素顔の家 | 『明治開化 安吾捕物帖 "万引一家" "覆面屋敷"』 |
第5話 | 幻の像 | 『明治開化 安吾捕物帖 "幻の塔"』 |
第6話 | あまりにも簡単な暗号 | 『アンゴウ』 |
第7話 | ハクチユウム | 『明治開化 安吾捕物帖 "愚妖"』 『白痴』 |
第8話 | 楽園の王 | 『明治開化 安吾捕物帖 "愚妖"』 『選挙殺人事件』 |
第9話 | 海勝麟六の犯罪 | 『明治開化 安吾捕物帖 "冷笑鬼"』 『赤罠』 |
第10話 | 海勝麟六の葬送 | 『明治開化 安吾捕物帖 "冷笑鬼"』 『赤罠』 |
最終話 | 私はただ探している | 『明治開化 安吾捕物帖 "冷笑鬼"』 『赤罠』 『余はベンメイす』 |
episode:0 | 因果論 | 『明治開化 安吾捕物帖』『復員殺人事件』 |
スタッフ
原案 : 坂口安吾
ストーリー・脚本 : 會川昇
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督 : 稲留和美/矢崎優子/やぐちひろこ
美術デザイン : 宮本崇/脇威志
プロダクションデザイン - 宮本崇/石垣純哉/柳瀬敬之
美術監督 : 脇威志
色彩設計 : 中山しほ子
撮影監督 : 佐々木康太
編集 : 吉武将人
音響監督 : 三間雅文
チーフプロデューサー : 山本幸治
プロデューサー : 大薮芳広/小中大典/竹枝義典
アニメーション制作 : ボンズ
制作 : 「UN-GO」製作委員会(フジテレビジョン/東宝/ソニー・ミュージックエンタテインメント/電通/ボンズ)
主題歌
オープニングテーマ
「How to go」
作詞 - 内村友美 江口亮 / 作曲 - School Food Punishment、江口亮 / 編曲 - 江口亮 / 歌 - School Food Punishment
エンディングテーマ
「Fantasy」
作詞・作曲・歌 - LAMA
挿入歌
「ヴァルハラ処女ヶ丘」(第2話)
作詞 - 畑亜貴 / 作曲 - NARASAKI / 振り付け - 能登有沙 / ダンサー - 能登有沙 高松舞 稲光志帆子 / コーディネイト - STYLE CUBE / 歌 - 夜長姫(常実公美(加藤英美里) 梅澤夢乃(牧野由依) 中橋澄香(安済知佳))
「ブルーライト・ヨコハマ」(第2話)
作詞 - 橋本淳 / 作曲 - 筒美京平
「目には青葉 山ホトトギス 初恋」(第2話)
歌 - アイドリング!!!
「THE LIGHTBED」(第3話)
歌 - COALTAR OF THE DEEPERS
「Beautiful dreamer」(第10話)
作詞 - 畑亜貴 / 作曲 - NARASAKI / 歌 - 夜長姫3+1
漫画
『UN-GO 敗戦探偵・結城新十郎』
ニュータイプエースVol.1から連載。
漫画 : 山田J太
原典 :「UN-GO」制作委員会
監修 : ボンズ・「UN-GO」製作委員会
『UN-GO episode0 因果論』
月刊ニュータイプ2011年10月号から連載。
ストーリー : 會川昇
画 : pako
作画協力 : 高河ゆん
その他コンテンツ
SD化された新十郎と因果、風守が掛け合いをするショートアニメ。
公式ホームページで公開。全10回。
虎山レポート
公式ホームページの「Story」にて、テレビ放送時に提示されるパスワードを入力することで、虎山泉が書いた報告書という体の、劇中事件の情報を読むことができる。
オーディオドラマ
第1章 | 海勝館の秘密 | 『明治開化 安吾捕物帖 "時計館の秘密"』 |
第2章 | 不連続正解事件 | 『不連続殺人事件』 |
第3章 | 私はなんか抱きしめていたい | 『私は海をだきしめてゐたい』 |
第4章 | 桜の森の満開のホニャララの、のが多い | 『桜の森の満開の下』 |
関連タグ
カテゴリ | アニメ テレビアニメ ノイタミナ |
---|---|
関係者 | 坂口安吾 水島精二 會川昇 高河ゆん pako ボンズ |
表記ゆれ | アンゴ UNGO |
カップリング | 【NL】新梨 ♀因新 【腐向け】麟新 【分類不能】因新/新因 風新 |
users入り | UN-GO100users入り UN-GO500users入り UN-GO1000users入り UN-GO5000users入り |
関連要素 | ミステリー 探偵 戦争 戦後 パンダ |