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生前宿儺の編集履歴2024/10/04 03:48:56 版
編集者:語呂合わせ
編集内容:追記した。

※本誌を未読の方は閲覧する際、ご注意ください。重大なネタバレを含んだ記事となっています。

概要

呪いの王・両面宿儺の生前の姿、および完全体の状態。

これまでの宿儺は、自身の器である虎杖悠仁と全く同じ容姿となっていたが、受肉する前……生前は厳つい顔つきに筋骨隆々な巨漢の姿であった。

特筆すべきなのはその異形さで、顔の右側は歪に変形しており、まるで仮面が張りついているようにも見える。さらに四本の腕腹の口を持ち、まるで伝説の両面宿儺を現した存在となっている。

この姿は渋谷事変編真っ最中のセンターカラーで初めてお披露目され、後に死滅回游編における仙台結界の戦いが終結した直後の烏鷺亨子の回想で改めて登場。

その後は「星と油」でも回想の形で登場。

羂索四つの目を持つ現在の天元の姿を目の当たりにし、生前の宿儺を想起していた。

このように作中では何度か真の姿が示唆されるも、その姿は過去のものでしかないはずだったが…?

※記事では「生前宿儺」だが、pixivやSNSでは「御形宿儺」または「御形様」と一部の読者から呼ばれている。

人外魔境新宿決戦にて、消耗しながらも五条悟との直接対決を制した宿儺。続く鹿紫雲一は一度きりの術式を発動し、宿儺に猛攻を仕掛ける。

だが宿儺には一度だけ反転術式を使わず肉体を修復する手段があった。

その手段とは受肉の再開である。

受肉の再開によりかつての姿を取り戻した宿儺は鹿紫雲を一蹴、高専の呪術師たちを迎え撃つ。

能力

呪いの王・両面宿儺の真価は肉体にある。

その肉体は腕が4本、顔が2つという伝承通りの異形の姿。

術式効果のX線を利用して解析した鹿紫雲曰く「完全無欠」

全てのステータスが作中最強格である。乙骨憂太の倍以上の呪力総量、石流龍を難なく仕留める呪力出力、六眼がなければ五条を上回っていたとされる呪力効率と呪力操作、そしてそれによるトップクラスのキレと呪力強化術、呪力強化により虎杖を大きく上回る身体能力、空間の面を視る目などとにかく規格外。

術式や領域展開の発動に必要な掌印を結んでいても、問題なく拳や武具を振るえる四本の腕。心肺に負担を掛けず、呪詞の詠唱を絶え間なく続けられる腹の口。呪術師として大きな優位性を得ながらも、異形の肉体は一切の身体機能を損なっていない。一つの時代では確かに最強であった鹿紫雲は同じ強者として、この姿の宿儺に「美しい」と感服していた。

この肉体性能に加え、持ち前の呪術への深い理解力と知識量、一度見た技術を我が物にする学習能力、無類の呪力出力と呪力総量も併せ持つ。

また、渋谷や仙台での戦いでも見せたが、覚醒した禪院真希同様、空を蹴って空中での移動すらも自在。

これらの能力と下述の呪具を駆使し、過去には藤原北家直属の「日月星進隊」と「五虚将」を殲滅し、天使含む安倍家の精鋭と菅原家与党で編成された「涅漆鎮撫隊」を退けた。

五条戦で伏黒恵の肉体のままでいた理由は、魔虚羅を利用して無下限の不可侵を突破する糸口を探すためであり、後に控えた虎杖達との連戦で疲弊した場合の「反転術式を使わない一度きりの保険(回復手段)」を取っておくためだったのが窺える(後に日車が、五条との戦いで「十種影法術」の機能を失ったと推測しており、そして事実、魔虚羅を倒された事で使えない事が宿儺本人から語られ、現在は伏黒の術式を使えない)。

しかし、五条戦で負ったダメージは相当深く、変身による肉体の修復を経ても結界術の運用に必要な部分の脳が回復しておらず、領域展開は使用不能。

反転術式も出力は落ちたままで、徐々に戻りつつあるものの、未だ万全の状態とは言えない模様。さらに呪力総量も、今は乙骨並にまで下がっている。

だがこれらは後に複数回の黒閃によるバフで、不完全ではあるが領域と反転の出力を取り戻している。

ただし他者に受肉して存在している以上、魂の輪郭を捉えた攻撃を受け続けると呪力出力が下がり、最終的に宿主から引き剥がされ肉体を維持できなくなるという致命的な弱点が存在する。

呪具

  • 「神武解(かむとけ)」

が「絶命の縛り」を対価に構築した、宿儺が生前所持していた呪具。五鈷杵のような形をした短剣で中心の持ち手の両側に十字の球体があるのが特徴。

対象に強力な雷撃を放つ術式効果を持ち、鹿紫雲のような耐性が無ければ防ぐ事はほぼ不可能。

名前の由来は「神解け」だと思われる。「神解け」は「霹靂」とも書き、どちらも「雷が落ちる」事を意味する。

  • 「飛天(ひてん)」

1000年前の宿儺が生前所持していた槍型の呪具。

術式効果は不明。

生得術式御廚子

斬撃を放つというシンプルな術式だったが、五条悟との戦いを経て進化を遂げる。

「解(カイ)」

通常の斬撃。基本的に飛ばして相手を切断するが、連射や格子状に重ねた形で放つなど自由自在。

体表に細かい斬撃をチェンソーのように纏う事で、刃に触れないで刀を受け止める、という器用な応用法もある。手掌をかざして放つ場合が多いが、ノーモーションで放つ事も可能。

  • 「世界を断つ斬撃」

「龍鱗 反発 番いの流星」

無下限呪術への適応を推し進めた魔虚羅の斬撃を手本にした、術式対象を空間・世界そのものに拡張した強化型の「解」

世界に存在する全てを空間ごと分断する事であらゆる防御を突破し、五条の無下限による不可侵すら意味を成さない。

本来は「閻魔天の掌印」を結べば発動できる御業だった。

しかし、変身前の宿儺は片手を失って掌印が結べない状態にあったため、最初の一度だけ条件無しで使える代わりに、後の使用には複数の条件を満たさなくてはならないという縛りを科す事で五条悟を斬り伏せた。

その条件は下述の三つで、どれか一つでも欠けると「世界を断つ斬撃」は発動できない

  1. 閻魔天の掌印
  2. 呪詞の詠唱
  3. 手掌による指向性の設定

「捌(ハチ)」

対象の呪力量・強度に応じて自動で最適な斬撃を繰り出し、対象を一太刀で切断する。「解」と異なり、直接触れなければ発動できない。

ただし領域では必中と化すため、触れなくても発動可能。

高専側は「捌」と零距離の「解」、そして「世界を断つ斬撃」は、簡易領域や領域展延を含めたどの手段でも防御不能と分析している。

  • 蜘蛛の糸

触れた箇所を蜘蛛の巣状に切り刻む「捌」の技。

「竈(カミノ)」

高専側からは使用しない事を不気味に思われ、使われたら対応不能とされていた炎の術式。

今まで「竈」の部分は「■」と隠されていたが、今回虎杖達に向けて発動した際に明らかとなった。

使用時は「開(フーガ)」と告げ、出現した炎を矢の如く対象に向けて放つ。

発動条件が存在し、対象に「解」と「捌」の両方を当てる必要がある。事実、渋谷の漏瑚戦と魔虚羅戦は、どちらも斬撃を浴びせた後に使用していた。

凄まじい火力を誇る「竈」の炎だが、それに対して効果範囲が狭く速度も無い(漏瑚との一騎討ちでは周辺の被害がほぼ無かった)。この欠点を補うべく、宿儺は普段から領域展開中を除く多対一での「竈」の実行禁止の縛りを科し、自身の最終奥義へと昇華している。

領域内にて行使した場合は下述の領域展開で説明。

反転術式

五条戦の後遺症で出力は落ちているものの、回復自体は可能。

虎杖と同じ肉体を同居していた影響で、宿儺は己の魂の輪郭を知覚しており、魂にダメージを与える釈魂刀で斬られた心臓を修復しながら呪力操作で動かす、という高度な運用法を実践してみせた。

五条のように特異な反転術式回路を構築させて出力を回復させるつもりだったが、虎杖から七度の黒閃を伏黒恵との魂の境界に打ち込まれた事で、その契機を失った……と思われていたが、後に宿儺も黒閃を連発した事で出力が回復する。

結界術

閉じない領域等を含め、五条以上の実力を見せる。

乙骨の領域に対抗する為に展開した宿儺の持つ領域対策。レジィや鹿紫雲など過去の術師が使うものと同様のもので、現在の「簡易領域」の原型。領域の結界を中和して必中効果を打ち消す事が可能。

通常簡易領域や彌虚葛籠は心象を具現化した領域に比べて出力が弱くいつかは押し負けてしまうのだが、宿儺は発動後も掌印を結び続ける、呪詞の詠唱を腹の口で唱え続けることで出力をカバー。脳の結界術における部分のダメージが抜けない状態でも、本物の領域と渡り合えた。また両腕が塞がってももう1組腕が空いているため戦闘も十分行える。

レジィの場合は外縛印を前後に動かしながら内縛印に変える、2モーションで発動していたのに対して、宿儺は四本の腕により2種の掌印を同時に結ぶ1モーションで発動し、掌印を結びながら戦闘や術式の使用が可能。

術式を付与しない領域を自らの体に纏う事で空いた容量に相手の術式を流し込み、中和する領域の応用。漏瑚や花卸のものより出力が高く、五条の不可侵を難なく突破し、(炸裂前とは言え)正面からの「赫」を中和してダメージを最小限に抑えることが可能。

五条戦では脳に損傷を受けた後も行使していたので未だ使用可能と思われるが、これも出力が低下しているかは不明。

領域展開伏魔御廚子

効果範囲内の悉くを細切れにする領域。

これを閉じない領域として展開する事で『逃げ道を与える』縛りを作り、効果範囲を半径200メートルに拡げる。

この効果範囲の広さや外殻が無い特性により、領域対決では相手の領域を外側から破壊する等の絶対的な優位性を誇る他、本来は展開時に領域外へ弾き出されてしまう建物等の無生物すら術式効果範囲に捉えてしまう。

呪力を帯びた物に「捌」、呪力の無い物には「解」が絶え間なく浴びせられる必中効果により、呪力ゼロの存在も必中効果対象となる。

また、平時から上述の「竈」の縛りにより、領域における「解」と「捌」の術式効果も拡張されており、二つの斬撃で粉塵化した全ての物質は「竈」と同様の爆発性の呪力を帯びる七海建人の、破壊した対象に呪力を篭める拡張術式「瓦落瓦落」と似た効果)。この効果により、ただの物質だった粉塵は多量のサーモバリック爆薬と化す。

さらに、結界の要件を変更する事で生物以外の出入りを制限し、伏魔御廚子の出力を下げずに効果範囲内を密閉(爆薬の粉塵が外に流れないよう阻害し、文字通りのを造る)。

これらの工程を踏み、最後に「竈」の炎で辺りに充満した爆薬を着火させ、領域内の全生物を発生させた凄まじい爆風と熱、衝撃によって死に至らしめる。

五条戦では、領域の要件変更を重ねて効果範囲を絞り続けた事で、十分な威力を発揮するための粉塵(爆薬)が確保できない、という理由から封印していた。

その後も、五条戦の後遺症により使用不可とされているが、いずれは反転術式の出力と共に再び使えるようになると乙骨に危惧されている。

そして乙骨の予感通り、五度の黒閃を経て復活

三本の腕の損傷と「無量空処」による後遺症は依然残っているため、掌印の変更、後遺症の無い脳の部位で術式と結界術を運用など不確定要素と即席の縛りを含むが、結界術としての難易度・出力・効果範囲を落とさず展開する事に成功している。

長時間の維持はできずに99秒で崩壊するが、効果範囲を絞ればこの制限も無効となる。

この時の領域展開時の掌印は、五条と同じ帝釈天印。領域内のシンボルも変化しており、従来の「伏魔御廚子」では牛骨を象った寺のお堂が顕現していたが、この領域ではおどろおどろしい頭部から脊椎が伸びた呪霊のようなシンボルが顕現する。宿儺の心象の変化によるものなのか、領域の完成度が不足する事に由来するのか、はたまた虎杖の「魂を捉える打撃」の影響なのかは不明。

これだけの過程を踏んでまで『閉じない領域』に拘るのは、呪力を持たない真希も必中効果の対象になるよう、結界で空間を分断せずに建物等の呪力の無い無生物も捉える必要があったから。

なお出力は落ちていないと言われているものの、それとは別に結界の精度や必中術式の効果に何らかの支障が表れているのか、虎杖達の「簡易領域」でもある程度は耐えられるほどの領域となっていた。(出力が落ちていないと言うのは五条戦のような万全という意味ではなく、無理して展開をしたため本来なら捌の出力が更に落ちるところを技量でなんとか停滞させている。の可能性もある)

しかし、最後に魔虚羅すら一撃で屠った、「竈」の超広範囲高威力の大爆発を引き起こさせた

人物像

「存外 人間の味は多種多様で刹那的でな」

「死ぬまでの暇つぶしとして啜る分には丁度いい」

これまで宿儺は、傲岸不遜で邪悪な〝呪い〟として多くの者の前に立ちはだかってきた。

実際にその通りの人物ではあるのだが、物語が終盤に差し掛かっていくに連れて、徐々に宿儺がどのような人間なのか掘り下げられている。

実は、宿儺に具体的な目的はない

強いて言えば、羂索の「面白いと思ったから」という動機に近く、史上最強の生物である彼にとって人生は死ぬまでの暇つぶしに過ぎない

他者はその暇つぶしの相手で、目障りならば壊し、面白ければ遊ぶ、まるで遊び道具程度の認識。それ故に宿儺は、五条や鹿紫雲一のように他者を求めず、愛を下らないモノと吐き捨てる。

漏瑚に五条、鹿紫雲に呪いとしての本質や愛について愉したが、あくまで宿儺自身の所感を伝えただけで、それが本当に彼らが欲しかった答えなのかは判断できない。他人はどこまで行っても他人なのだから。

彼らが命を懸けて戦った理由も、摑みたかった理想も、宿儺にとっては真偽の分からない後付けの遺言でしかない。

しかし現在、自分の何かが変わっている事に宿儺は気付いた。

千年前から変わらず、両面宿儺は自分の身の丈で生きている。最強の彼に出来ない事は無く、阻む壁は大抵障害にすらなり得ない。

だからこそ今まで宿儺は、自分の身の丈以上の願い……理想とは無縁だった。

その事に気付かせた人物が虎杖悠仁。

全く違う人間でありながら、一つの肉体に魂を同居した事で性根まで理解してしまった他者。

だから宿儺は知っている。

虎杖悠仁の魂が、百折不撓の理想を持っている事を。

その理想が偽りではない真実のモノである事を、他ならぬ宿儺自身が知っている。

五条や鹿紫雲のような強者ではなく、よりにもよって自身が「つまらん」と蔑んだ弱者に、自身は理想を嫌う人間であったと理解させられた。

それは同時に、身の丈に合わない理想を掲げる弱者は、時として意思の強さでのみ強者に比肩する事を意味し、それを宿儺も実感する羽目になった。

虫と嘲った者達が示した事実に、心底不愉快な気分を味わった呪いの王は宣言する。

「成り行きではなく 明確に今一度」

「お前たちの理想を 切り刻むことにした」

そんな宿儺にとっての一番の地雷は「憐れまれること」

羨望、恐怖、憎悪など様々な感情を向けられ、それを一切意に介さない宿儺であるが、自身に向けられた「憐憫」の感情に関しては明確な嫌悪と怒りの反応を示す。

活躍

「贅沢者め」

人外魔境新宿決戦にて、現代最強の術師・五条悟との決闘を制した宿儺だったが、呪いの王である彼もまた大きなダメージを負っていた。

無量空処」で脳に負荷が掛かった事で領域展開は使用不可に陥り、傷を癒す反転術式も出力が落ち、失った左目と左手の修復すら困難となる。

しかしこれは同時に、虎杖達にとって絶好の機会であった。

五条に続く二番手は雷神・鹿紫雲一

同時に、戦場に駆け付けた裏梅から宿儺はが最期に構築した雷の呪具「神武解」を受け取るも、呪力特性による電撃耐性を持つ鹿紫雲には効果が薄く、さらに命を代償に超人的な力を得る術式「幻獣琥珀」を解放された事で、ほぼ一方的に攻撃を叩き込まれる。

五条が命懸けで残した傷に、鹿紫雲が死力を尽くして繰り出す怒濤の連撃。

かの呪いの王も、徐々に追い詰められていく。

しかし。

宿儺には反転術式以外に一度きりのみ

肉体を修復する術がある

それは意図的に中断していた

受肉による変身の

再開である

顕現する 真の御形。

四本腕に二つの口、屈強な肉体である生前の姿へと変身した直後、鹿紫雲一を八つ裂きにした宿儺の元へ、虎杖と日車が現れる。

日車は、宿儺の術式「御廚子」を没収する為、領域「誅伏賜死」を展開する……が、

「俺がいつ何したかなど どうでもいい」

「さっさと終わらせろ」

弁明する気など更々無かった宿儺の言により、あっさりと死刑判決が下る。

有罪となった者を必ず殺す「処刑人の剣」が日車の手に握られ、援護する虎杖を筆頭に脹相日下部猪野も参戦する。彼等は本来術式を没収した上で臨むはずだったが没収の対象は宿儺が所持していた呪具「神武解」であった

宿儺は呪具を失うも、五条戦の後遺症など微塵も感じさせない凶悪な術式と凄まじい身体能力で多勢相手に立ち回る。

術師として覚醒して二ヶ月弱ながらも、宿儺の斬撃を展延で中和しつつ、呪いの王に近いレベルでの運用を見せる日車。果敢に立ち向かうその才能の原石に魅せられた宿儺だが、彼を容赦なく弄んでから日車を倒す。

日車は事切れる寸前に「処刑人の剣」を虎杖に託し、その剣は宿儺を斬りつけるも、術式は終了していて効果は無かった。

直後、羂索の保険で、天元と人類の超重複同化の発動権を手に入れた宿儺は、次いで強力な一撃と共に現着した乙骨と「リカ」、そして虎杖を迎え撃つ。

「しっかり踠き抗えよ」

「俺を殺さねば お前らが助けたい人間は全員死ぬぞ」

リカ「誰に言ってンだ!!」

「出たな 女王」

乙骨の領域「真贋相愛」で3vs1の戦いを繰り広げ、乙骨の多彩な術式行使と虎杖の「魂を捉える打撃」により弱体化を余儀なくされる宿儺は、再び追い詰められていく。

五条を斃した「世界を断つ斬撃」を使おうにも、リカと乙骨の奮戦で即座に腕と口を攻撃され、掌印と呪詞を封じられる。

さらに、受肉体にとって天敵である天使の術式「邪去侮の梯子」が乙骨によって最大出力で放たれ、無防備となった宿儺の胸に虎杖の拳が直撃する。

虎杖「起きろ 伏黒」

虎杖の「魂を捉える打撃」で伏黒の魂を叩き起こし、宿儺を引き剥がすという二人の作戦が成功───したかに思われたが。

伏黒「いいんだ」

  「もう いいんだ」

を自身の術式で殺してしまった伏黒の魂には、すでに生きる意志など失せていた

その隙を突いて宿儺は「解」を放ち、乙骨の体は真っ二つに、虎杖とリカもまた無慈悲に切り裂く。

この窮地を脱し、崩れ落ちる二人と領域に勝利を確信して嗤う。

しかし直後、領域の崩壊に気を取られた隙を突かれ、真希の刃が。

心臓を破壊した特級呪具「釈魂刀」の効果により、宿儺は常に高度な反転術式と呪力操作を余儀なくされるも、難なく戦闘を続行。

呪術において対極に位置する両者の戦いが繰り広げられる。

「分かっているのか?」

「オマエの存在自体が術師を否定している!!」

自身とは正反対の呪いである真希の存在に、高揚した宿儺はなんと黒閃」を放つ

「黒閃」によって真希すら退けた宿儺は、意を決して立ち塞がる日下部との戦いに興じる。

数々の強者から一級最強と推される日下部がシン・陰流の技術を活用して奮闘するも、無慈悲に斬って退けた。

連戦を経た宿儺は、ついに戦闘不能となった者を回収していた憂憂にも手を伸ばすが、間一髪のところで彼を助けたミゲルラルゥの相手をする事になる。

そこへ再起した虎杖と脹相、自力で復帰した真希も加わり、ついに宿儺は腕を後一本にまで削られた。

これまでの彼らの積み重ねが実を結ぼうとしたところで、再び宿儺は「黒閃」を繰り出す。さらに三度、四度と立て続けに「黒閃」を出し、術式の威力と共に調子を上げていく。

だが、いかにボルテージを上げようとも、虎杖の「魂を捉える打撃」を喰らえば肉体の支配力や呪力出力の低下は免れない。

そして、ここに来て虎杖が術式を使用。脹相から受け取った「百斂」による血の塊を借り受けての「穿血」を至近距離で放たれ、これを回避して振り払った宿儺は、虎杖から「黒閃」の予感を察知。

対応しようと身構えた、その瞬間。

「何だ!? あの術師から目が離せない!!」

ラルゥの術式「心身掌握(ハートキャッチ)」によって心を鷲掴みされ、宿儺の意識は強制的にラルゥに引っ張られる。

結果、虎杖の強烈な「黒閃」を無防備な状態で叩き込まれた。

「黒閃」による潜在能力の解放で覚醒した虎杖は、「赤血操術」だけでなく「御廚子」も使用。しかし虎杖の「御廚子」は、宿儺の術式と比べて威力が低く、全体的にお粗末な精度だった。

しかし、宿儺が真に厄介だと感じたのは「黒閃」の方。虎杖は当然のごとく「黒閃」を連発し始めた。「黒閃」を畳み掛ける虎杖に、宿儺は徐々に苛立ちを覚え始め、六度目の「黒閃」を喰らったところで、その怒りは頂点に達した。

「小僧ぉっ!!」

これまで人を弄んで楽しんでいた宿儺は、一転して激情のままに迎撃しようとするも、眼前に尊敬する術師の形見が挟まれて虎杖が視界から消える。

その一瞬に。

猪野「ブチかませ」

虎杖「黒 閃」

虎杖の渾身の「黒閃」が背中に打ち込まれる。

本来は「黒閃」による覚醒で、反転術式の出力を取り戻して全ての腕を再生させ、宿儺は高専術師を蹂躙するつもりだった。

しかし「黒閃」と共に放たれた虎杖の「魂を捉える打撃」を七度も叩き込まれた事で、反転術式の出力復活の契機を完全に逃す

だが。

「領域展開『伏魔御廚子』」

王の領域は黒い火花と共に

主の元へ回帰していた

五回の「黒閃」を経た事で、失われていた鏖殺の領域が復活する。

掌印などの条件変更や即席の縛り、不確定要素を含みながらも再び効果範囲に存在する全てを斬り刻む神業の領域を構築する宿儺。しかし、今の疲弊状態では99秒の維持が限界だった。

その99秒間、「簡易領域」で必死に耐え凌ぐ高専術師達。結局は耐えきれずに剥がされ、「捌」の斬撃に襲われる虎杖だったが、いつの間にか斬撃は止んでいた。

耐えきった、と彼が安堵して顔を上げた───その時。

「竈(カミノ)」

「開(フーガ)」

王は万死の炎を手中で燃え盛らせていた。

ついに明かされる「竈」の正体。その真髄は領域により粉塵化した物質を爆薬に変え、圧倒的な劫火で領域内の全てを焼き尽くすというものだった。

手の業火を領域内に炸裂させ、宿儺は高専術師達を一掃した……筈だったが、自らを守り犠牲となった脹相の死に報いるために立ち上がる虎杖と、左腕(ビブラスラップ)と術式仕様を新調して現れた東堂に対し、術式の焼き切れた現状で彼らの十八番である殴り合いの土俵へと強制的に引き下ろされてしまうことになる。

術式を改良した東堂と虎杖の猛攻による「不義遊戯・改」の知略戦で着実に削られていき、入れ替えの予測を読み違えた末に虎杖の八度目の「黒閃」を喰らってしまう。

さらに心臓を抉り出そうと咆哮する虎杖を前に、術式が回復した宿儺は再び領域を展開しようと試みた、その時。

宿儺は見た

手ずから葬った

最強の亡霊

「そこまでできる奴とは思わなんだ!!」

「乙骨憂太!!」

亡霊の正体は、羂索の術式を利用して五条悟の肉体を貰い受けた乙骨憂太であった。

再び始まる最強同士の領域対決……かに思われたが、乙骨は六眼を持ってしても運用が厳しい「無下限呪術」に手を焼いており、領域展延を纏った宿儺が優勢に戦いを進めた。乙骨の術式の仕様から、彼が捨て身である事を察知した宿儺は「茈」を発動する隙を与えないため、容赦なく攻撃を加えていく。

だが、今の乙骨には「無下限呪術」以外のカードが無いと思い込んだ隙を逆に突かれ、あらかじめ仕込んでいたボイスレコーダーによる術式……本家狗巻の「呪言」を喰らった宿儺は体の自由を奪われる。

そこへ乙骨から呪詞の詠唱を重ねた虚式「茈」を放たれ、領域ごと吹き飛ばされた。

戦場は瓦礫の山となった新宿の街に戻り、宿儺はまたもや術式の使用が困難な状態に。

外で待機していた虎杖と東堂が詰めるも、術式が焼き切れた事で五条の肉体を動かせなくなった乙骨は地面に倒れる。それに気を取られた東堂に、宿儺は機を逸する事なく六度目の「黒閃」を決めた。

しかし、ビブラスラップを損壊させながらも耐えた東堂が「不義遊戯」を発動。さらに虎杖が縛りを利用した「魂の境界を引き裂く『解』」を使い、宿儺の脳裏に着々と敗北の予感が刻まれていく。

再び2vs1の状況の中、東堂が最後の「不義遊戯」を発動する。虎杖との入れ替えはない、と確信した宿儺の予感は的中したが…………

乙骨「本来 模倣(コピー)の強みは」

  「同じ手札(カード)を手元に2つ揃えておけること」

実際に入れ替わったのは、戦線離脱したかに思われた来栖と天使だった。

宿儺が真上にいる天使に気付いたその瞬間、出力最大の「邪去侮の梯子」が頭上から降り注いだ。

が、宿儺は拳で道路を砕き、その瓦礫をいくつか来栖と天使に向けて殴り飛ばすと、なんとそれを足場に利用して駆け上がり始めた。

この間も当然「邪去侮の梯子」は宿儺を焼き続けるが、天使が術式に依存して受肉せずに来栖と共生した事で術師としての肉体強度が無いため、右腕を失った事で前回ほどの出力を発揮できておらず、光の中でもある程度は行動が可能になっていた。

さらにこの「邪去侮の梯子」は乙骨の領域内で発動する対象を絞った必中効果のものとは違うので無差別に虎杖と東堂をも襲う。

結果、誰にも邪魔されずに来栖と天使の元に辿り着いた宿儺は七度目の「黒閃」を打つ。

しかし、寸前で東堂が来栖と天使を庇い、またもや天使にとどめを刺す事は出来なかった。それでも「黒閃」の威力は相当で、三人は建物をいくつか突き抜けながら地上に墜落し行動不能となる。

これで宿儺と戦える術師が虎杖だけとなった

同様に瓦礫を駆け上がってきていた虎杖から攻撃を食らうも、宿儺は「魂を引き裂く『解』」以外は特に警戒しておらず、もう支援や連携が望めない虎杖相手に余裕の表情すら浮かべる。

虎杖が次々と放つ「解」を難なく避け、的確にカウンターを決める宿儺。加えて、二回の「黒閃」を決めた事で反転術式の出力が回復する

失った三本の腕と腹の口を取り戻した宿儺は、体術のみで虎杖を圧倒し始め、術式回復までの猶予を確保……勝利を確信した。

虎杖「領域展開」

直後、宿儺は見知らぬ駅のホームにいた。

しかも、虎杖の裡に受肉していた頃の姿で。

何が起きたのか理解できずに困惑していた宿儺へ、やたら気安い様子で虎杖が話しかける。

「なんだ……これは……」

虎杖「行くぞ!! 宿儺!!」

二人の決戦は 未知なる“領域”へ!!

異様な空間を前に、漏瑚や鹿紫雲を含め、感情由来の呪力を用いた戦闘では、稀に相手と意識が繋がる副作用が発生することを宿儺は推測しており、しかしながらそのケースとも異なる現状に驚きつつも異空間で対話を試みる虎杖に応じる。

虎杖に縁ある思い出の地を巡りながら、虎杖が心得た正しい死の解答と人の価値について説かれるが、宿儺には理解できても共感には至らなかった。

そして……これを語る虎杖が、自身に対して憐憫を抱き、その上で情をかけようとしている事に気付く。

虎杖「そうだ 宿儺 俺はお前を殺せる」

「伏黒を解放しろ もう一度俺の中に戻るなら殺さないでやる」

そう告げられ

「勘違いも甚だしいな 八つ裂きでは済まさんぞ小僧」

「貴様の首の前で

 貴様の言う価値のある人間とやらを皆殺しにしてやる」

厭悪する虎杖本人から憐れまれたという屈辱にかつてない程に憤りを見せた宿儺は、領域内で虎杖との戦闘を再開する。

術式は未だに回復していないが、持ち前の四本腕を用いて領域対策「彌虚葛籠」の掌印を結び続けて必中効果を相殺しつつの格闘戦。

二本腕を封じられた状態でも虎杖を圧倒する宿儺は、下した虎杖の首の前で他の人間を殺す事で、自身が受けた屈辱の腹いせができる日が楽しみで仕方無いと邪悪に笑う。

しかし、これまでの戦闘で叩き込まれた魂を捉える打撃魂の境界を引き裂く「解」に加えた虎杖本人の呼びかけによって、奥に沈んでいた伏黒の魂が呼び起こされ、宿儺の足元を掬うように十種影法術が発動して片足を影に捕らえられる。

その隙にと怒涛のラッシュを虎杖に畳み掛けられ、彌虚葛籠すら維持できない状況へと追い詰められた。

「領域展開」

宿儺は「無量空処」の後遺症がある状態の脳では危険とされる五条の術式リセットをリスク承知で決行。

虎杖に領域で対抗しようとした……が、術式で刻んだ虎杖の左腕を包んでいた呪具を破壊した時、彼の指が二本欠損している事に気付く。

伏黒への移動時に用いた小指、それとは無関係の薬指が無かった。

いつ失われたかと推理する中で、乙骨が「御廚子」の模倣に宿儺の指ではなく受肉体として術式が刻まれていた虎杖の指を使った事を察知した瞬間。

???「喜べ男子ども」

  

   「『共鳴り』!!!!!」

   「オッパッピーだよ 馬鹿野郎!!」

同時刻、高専内で五条が賭けとして保有していた最後の宿儺の指に、復活を果たしたある人物の術式が叩き込まれた。

その呪いが領域を展開しようとした宿儺の体を縛り、領域どころか術式すら使用できない状態に陥る。

そんな一瞬の硬直を見逃さなかった虎杖によって、必中効果として付与された魂の境界を引き裂く「解」が命中、立て続けに打ち込まれた打撃で指数本を吐き出しながらも覚えたての領域では剥がしきられなかった事で、負けじと宿儺も虎杖に攻撃を入れて後退させた。

長らく傷を反転術式で癒していない虎杖が既に限界を超えている事、さらにこの領域展開による莫大な呪力消費によって疲弊している事から未だ勝機はあると肉弾戦に応じるが炸裂した逕庭拳によって弾かれてしまい

虎杖「宿儺 決着をつけよう」

  「廻る呪いに…………!!」

虎杖による最後の「黒閃」が撃ち込まれた。

今際の際に宿儺は伏黒の魂に詰め寄る。

「どのツラ下げて 生きていくつもりだ?」

「諦めろ オマエはもう真っ当になど生きていけない」

「俺に任せて大人しくしていればいいんだ」

肉体を奪われ、姉を殺し、虎杖の差し出された手すら拒んだ伏黒自身に対して、また伏黒が助けた虎杖は渋谷で大勢の人間を殺した事実を突きつけ、伏黒の罪の意識を刺激して再び乗っ取ろうと問いかける。そんな宿儺に伏黒は───

伏黒「なんで そんなに必死なんだ?」

「……安心したよ アンタでも死ぬのは怖いんだな」

「始めから真っ当に生きたつもりなんてねぇよ」

「………当たり前のことだけど 世の中には自分より他人の方が多い」

「もう一度 誰かのために生きてみようと思う」

そう告げ、生きる意志を示した。

「ああ………っ!!」

「…………あ゛あっ!!」

虎杖により伏黒の肉体から引き離された宿儺は必死に伏黒に手を伸ばして最後の足掻きを見せたが、崩壊した宿儺の手は伏黒を掴む事ができなかった。

疲弊しきった宿儺に、虎杖は再び問いかける。

虎杖「どうする 宿儺」

「オマエは俺だ」

「宿儺……もう一度やってみよう」

「誰かを呪うんじゃなくて、誰かと生きるために」

「誰にも受け入れられなくても 俺だけはオマエと生きていける」

領域内で提案した事をもう一度宿儺に伝える虎杖であったが……

「……………ここまで愚行を演じきったことは褒めてやる」

「虎杖悠仁………!!」

「ナメるなよ 俺は 〝呪い〟だぞ………!!」

そう告げて、虎杖が最後に差し伸べた手を拒絶し、最期まで呪いの王としての生き様を貫き、宿儺は遂に完全消滅により死亡。

こうして長きに渡って呪術師達の前に立ちはだかり、殺戮の限りを尽くした呪いの王は自身が最も嫌悪し見下していた、ただの器に過ぎなかった1人の若き呪術師によって討ち取られ、憐れまれるという屈辱の中でその生涯を呪いとして終えたのだった。

余談(ネタバレ注意)と考察

余談

  • 両面宿儺は4本の腕を持つ異形な姿をしているため、4本腕のキャラクターとして代表的なポケモンカイリキーによく喩えられるが、厳密には腕の生え方が異なる。あちらは肩からもう1対の腕が生えているのに対し、宿儺は脇からもう1対の腕が生えている構造である。描画する際は注意されたし。
  • 裏梅曰く、宿儺の敗因は受肉体であったからであり、千年前の生者だった頃の宿儺には高専組どころか誰も勝てなかった。つまり宿儺に勝利したのは運が良かっただけとのこと。

考察

  • 宿儺は最後の指一本を取り込めていないので生前の強さよりは弱体化していると考えられる(一応即身仏で補っているが)。
  • 誰かの理想を否定し、圧倒的邪悪として悉くを理不尽に破壊する宿儺だが、彼がその性質を持っていたのを生まれ持った人格だと言い切るのは疑問が残る。謎に満ちた出生だったが、本来は「双子で生まれる運命だった」という事を新宿決戦前に裏梅との会話で明かす。しかし、母が飢えていた時に胎の中にいた宿儺は双子の片割れを食らって生き延びたという。本来、物心という名の自我すら形成されない赤子の頃なので、悪意ではなく生存本能に従って生きようとした末の結果なのかもしれない。双子の胎児の片方が吸収されることは現代でも珍しくない現象であり、普通の赤ちゃんでも8人に1人は胎児のときに双子だった時期があるという。この生まれる前から感じていた生命の危機、「飢え」が宿儺の人格の根底を作り上げているとも考えられる。また、作中で忌み子であったこと、作者のインタビューでは生前から周囲から人間と認識されていなかったことが語られており、平安時代に宿儺が育った環境が(例えば虎杖の幼少期のような)幸福なものではなかったことは察しがつく。
  • 268話にて、伏黒は宿儺が自身に対して必死になっているのは死ぬのが怖いからだと解釈しているようだが、それだと虎杖の提案に乗って次の機会を伺う手もあるなど伏黒に拘る必要性が無いので、宿儺の伏黒への執着の理由にはならない。故にあくまで宿儺が死を恐れていたと言うのは伏黒の解釈である。宿儺が伏黒に対して必死だったのは、伏黒を逃した場合、四つの理由が考えられる。①自身に耐性がある器が他に無いため受肉できない。②ここで剥がされた後、残り一本があったとしても相手の手中にあるので天使によって抹消される危険がある。③共振の影響で十九本が消失すると最後の一本である呪物も魂を繋げられず消失する可能性がある。等の死の恐怖から来る三つ。④語られていないが、伏黒そのものに宿儺自身が自覚か無自覚か愛着があったからなのかもしれない。という伏黒そのものへの執着から来る四つ目。いずれにせよ、宿儺が呪物になってまで現代に来た理由や伏黒に執着した明確な理由は明かされていない。
  • 271話にて、宿儺の過去が少しだけ語られた。その際に宿儺が呪いとして生きるのではなく、別の生き方を選べるきっかけが二度あったことが明かされた。宿儺の背後には幼い姿の裏梅と巫女の格好をした女性がおり、その二度のきっかけとは「裏梅を養子もしくは義兄弟として引き取る道」と「その女性と結婚する道もしくは、宿儺が語っていた愚母である可能性もあるため、母親と暮らす道」のどちらかを選ぶ事ができたということなのかもしれない。しかし、宿儺は臓腑に蠢く呪詛を吐き出さずにはいられないほど人間を憎んではいるが、それと同時に自らの呪いにより焼き尽くされるのを恐れてどちらの道も選ばずに呪いとしての道を選んでいたのが彼の独白から窺える。また、考え方に変化が起きた宿儺が呪いではなく違う道もいいかもしれないと裏梅を連れて北に行ったのは、裏梅を養子もしくは義兄弟にする道の方を選んだという示唆なのかもしれない。また、「自らの呪いに焼き尽くされる」というのは、それを吐き出して他者を害する事をしない道を選んだ場合に行き場を失った呪いが制御できず精神的に不安定となり自身そのものを害する対象にしてしまう危機感とも捉えられる。
  • 宿儺が別の生き方を選べるきっかけの一つだったが選ばなかった巫女の格好をした女性の正体は不明だが、既存キャラなら天元羂索の可能性がある。もしくは宿儺を産み落とした愚母や語られていない別の女性の可能性もある。いずれにしろ、実際はどうなのか現状では不明となっている。
  • 宿儺の過去の独白で「愛を理解しているが、愛などくだらない」の意味は察せれたが、鹿紫雲の質問に明確な返答はしておらず、呪物になってまで現代に来た理由が死への恐怖か、もしくは、秘めた宿儺なりの愛に関する想いだったのかは不明である。
  • 最終回で宿儺の指が保管されている百葉箱は第1話の虎杖の学校にあった最初に宿儺の指が置かれていた百葉箱と似ているが、同じ場所なのかは不明。

伏黒への執着に関する考察

これについては、以下の二つが可能性として挙がる。

①少年院で伏黒の宿儺の器としての耐性と術式の潜在能力(213 話の台詞より)を感じた。

これについては、下述から推察される。

  • 虎杖は器として肉体強度が異常に高く乗っ取れない上に精神面(少年院で主導権を取り戻しても死ぬと分かりながら肉体を取り返したり、吉野順平や、渋谷の件で心が何度折れても奮起する)でも強くて付け入る隙が無いが、1話で虎杖の死刑を回避させようと嘆願したり、少年院では特級呪霊相手に敵前逃亡したがそれ以上の強敵(宿儺)を相手にも虎杖を救うべく奮戦する他、寝込んでいる姉等の付け入りやすい上に器として耐性がある伏黒に自由度を見出した。
  • 少年院での戦闘にて宝の持ち腐れと評したように、宿儺の発想の中では非常に使い勝手が良い術式。渋谷で披露された魔虚羅の性能と五条戦での利用法、十種の式神という多彩な手札と、影の中に相手を引きずり込んだり自身が潜伏できるという応用性から魅力を感じた。
  • 十種影法術の機能が失われた後も肉体に居座り続けたのは、虎杖を除いて伏黒以外に耐性のある器を見つけたような描写は無く、そもそも器を変える暇もない上に受肉体天敵が三名もいる危地にいるのに加え、そんな天敵のいる陣営に最後の一本すら握られた状態で次の復活は見込めないから。

②伏黒を宿儺が愛しているから。

これについても下述より。

  • 伏黒が魔虚羅によって死にかけた時にかなり焦っている表情が描かれた。また、その後瀕死の伏黒を仮設本部に運んだ時は伏黒の頭部や口元の血が拭われていた。
  • 虎杖に受肉した際はそんな話をしないのに、鹿紫雲や万に問われたとはいえ、やたらと愛について話すようになった。
  • 恵という名について、愛と書いても「めぐみ」と読む。
  • 十種影法術が機能を失った後も伏黒の肉体に拘ったのは、死への恐怖だけなら虎杖の提案を受けて次の機会を待てばいいのに、そうしなかった。必死に伏黒に大人しくしていろと閉じ込めようとした。

となっている。

しかし、①については(追記募集)

    しかし、②にも矛盾点がある。

    • 伏黒が魔虚羅によって死にかけた時の表情は、少年院の時から目をつけていた器が死ぬから。呪胎九相図の受肉時の描写や死滅回遊の受肉者からしても器は生者である事が大前提なので伏黒に死なれたら困るからと考えられる。
    • 仮設本部で血が拭われていた部分も、呪術廻戦の全体の戦闘描写を通して分かるが、血痕が消える等の描写はよくある。改造人間に渋谷地上の人間が襲われたのに虎杖達の活動中はそれらの痕跡が見当たらない(血や死体など)。さらに、伏黒が魔虚羅に吹っ飛ばされて激突した壁に付着していた血が宿儺の駆けつけた時には消えているどころか横に傾いていた姿勢が真っ直ぐになって項垂れていた(119話より)事に加えて、そもそも「そろそろだな」と虎杖が肉体主導権を取り返す寸前(119話より)の状態で顔や口の血を拭いながら仮設本部に運ぶ余裕が無い。また、五条が伏魔御厨子で切り刻まれた時の衣服が無事だったり血塗れだった虎杖が宿儺に乗っ取られた時に口の下や頬についた血痕が綺麗に消えている(110〜111話)等の描写から、傷どころか服にまで異常が残らない状態で描かれた場面は多々あるので宿儺が拭ったかは分からない。
    • 伏黒受肉後に愛について語る場面が多くなった部分は、単純に虎杖の時には万のように愛について問う者もいなかったので考える機会も無く、鹿紫雲の話は同格者の不在という共通点から万の愛についての話を思い出したから引き出したというだけの可能性がある。
    • 最後まで伏黒に拘った点は、戦闘前に羂索が言っていた通り五条打倒後も高専術師が間髪入れずに来ると聞いていた(222話より)から、そもそも他に耐性のある器があるかも不明な時点でしかも天使やその術式をコピーしているかもしれない乙骨参戦を予測する中で器を変える暇も無い。さらに、最後の指の一本すら呪物を消滅させられる天使もいる相手陣営に握られている状態では復活も至難且つ再び虎杖という「檻」、しかも自身を憐れんで情をかける……見下した態度を取った相手に救われる事を己を呪いと自負する宿儺のプライドが拒絶した可能性も否めない。

    以上の事から、どちらにも矛盾点はあり、可能性として両方が存在している。

    作者が語らない限りは不明。

    関連タグ

    呪術廻戦 両面宿儺 伏黒宿儺

    羂索 裏梅

    人外魔境新宿決戦 虎杖悠仁 伏黒恵

    ラスボス

    御形様 御形宿儺……生前宿儺の表記揺れ。

    271話のネタバレ注意

    宿儺は伏黒と引き剥がされ、虎杖に敗北。虎杖は宿儺に憐れみを向け共に生きる事を提案したのだが、自身は呪いだと告げ、潔く死を選び消失。こうして新宿決戦は終わり、死滅回游も幕を閉じた。宿儺は魂の通り道に辿り着き、そこで真人と三度目の再会を果たし、真人に問われる。

    真人「嘘をついていたろ?自分も他人もただ身の丈で生きているだけなんてさ。」

    「復讐だろ?アンタの人生は」

    「異形の忌子として生まれた自分を蔑み虐げた者たちへの」

    宿儺「同じさ それ以外の生き方を知らず それだけが俺の身の丈だった」

    「………いや違う 生き方を選ぶ事もできた」

    「きっかけは二度あった」

    そう告げた宿儺の背後には幼い頃の姿に戻った裏梅と、巫女の格好をした女性の姿があった。

    「だが、俺の臓腑に蠢く呪詛を吐き出さずにはいられなかった」

    「恐れたのだ 自らの呪いに焼き殺されることを」

    「次があれば 生き方を変えてみるのもいいかもしれない」

    そう告げて、宿儺は君主の敗北に悔し涙を流す裏梅を連れて北へと歩き出す。

    真人「つまんねー!! 丸くなりやがって!!」

    宿儺「当然だろう 負けたんだからな」

    真人「なんだよ!!俺だけガキみてぇじゃんか!!チクショー!!」

    宿儺は己の敗北を認め、次の機会があるのなら、違う生き方もありだという精神の成長を遂げ、呪いの王である自身と最後の呪いに別れを告げた。

    そして……魂が去った宿儺の指は、森深くの百葉箱に保管されている。その形状もこれまでの禍々しいものではなく、指の根元から腕が優しく包み込むような形状となっていた。

    これが宿儺の心境の変化と関係するかは誰にも分からない…。

    生前宿儺の編集履歴2024/10/04 03:48:56 版
    編集者:語呂合わせ
    編集内容:追記した。
    生前宿儺の編集履歴2024/10/04 03:48:56 版