CV
- ドウェイン・ジョンソン
- 尾上松也(吹き替え)
概要
ディズニー映画『モアナと伝説の海』に登場するサブ主人公であり、ポリネシア神話でパイケアと並んで最も有名な英雄であるマウイがモチーフになっている。パイケアは、モアナ・ワイアリキのモデルにもなっている。
元人間にして風と海の半神である巨漢の英雄。
年齢は約5000歳。
天下無双の冒険者にして、極めて優れた航海士でもある。数多の太平洋の島々に伝わる半神や英雄でも随一のビッグネームであり、類希なるトリックスター兼文化英雄とされる。気分が高揚すると「ハカ」を踊ったり、ハカの意匠を込めたアクションを取ったりする。
自らを「英雄(Hero of men)」と名乗りはばからず、ムキムキの上半身は、己が打ち立てた数多の世界開拓伝説を描いたタトゥーに覆われており、偉業を為すたびに彼の体に自然と浮かび上がるようになっている。
- 全身のタトゥーはその経歴や功績をあらわす「歩く広告板」とされる(『ジ・アート・オブ モアナと伝説の海』より)。
その中の自画像である「ミニ・マウイ」はマウイの潜在意識のような存在であり、タトゥーの景色の中をひとりでに動き回り、マウイの秘めた本心を表す。
- ジミニー・クリケットへのオマージュでもある。
冒頭で語られる伝承では、「母なる島テ・フィティの心を盗むも、直後に大地と炎の悪魔テ・カァに打ち落とされ、二度と姿を現すことはなかった」とされる。
彼のネックレスは、倒した怪物などの牙などからできている。
しかし、現在のモトゥヌイの村では、女神テ・フィティの「心」を盗んで世界に闇をもたらした大悪人として言い伝えられている。
能力
動けるデブどころの話ではなく、その巨体の隅々まで筋肉の塊であり、長距離を跳び越えるジャンプやアクロバットなども得意である。
また、その身に流れる神通力ゆえに凄まじい怪力・タフネス・肺活量に加え不老不死を持つ。
このため、ジャンプをすれば地面がえぐれたり、吐息が暴風になる。そして、テ・カァに敗れてから絶海不毛の小さな無人島に流れ着き、モアナが訪れるまで幽閉同然の生活を1000年も過ごしている。そのため、おそらくは食べ物や飲み物が不足していても生きていける。
また、マグマに触れても熱がりこそすれど無事である。
なお、幽閉されていた際には極めて精巧な自身の彫像を(どの様な道具を使ったのかは不明だが)作っていた。彼の怪力を考慮すれば素手で作った可能性も否定できないが。
魔法の釣り針
神々から賜った巨大な魔法の釣り針によって、自身の想像する様々な動物に変身する力を持つ。変身した動物には、釣り針の文様が表れる。とくにお気に入りはハーストイーグルのような大鷲やイタチザメ(参照)、ザトウクジラ、ヒロオビフィジーイグアナのようなトカゲ、昆虫などである。
- ニュージーランドの創造神話では、セミクジラやザトウクジラが人間の英雄「パイケア」を助けてニュージーランド(アオテアロア)の地に連れていったとされている。パイケアはモアナ・ワイアリキに影響を与えたセミクジラを題材にした映画『クジラの島の少女』のパイの名前の由来でもあり、マオリ語で「ザトウクジラ」を指す。
- ニュージーランドも参照。
- マウイが変身する動物は、ポリネシアに伝わる自然神(龍神)のモオ(ハワイ)とタニファ(ニュージーランド)の変化形態に似ている。セミクジラはタニファのモデルとなった生物の一種とされる。モオもタニファも様々な姿に変身し、地形を作ったり壊したり、人々の守り神になることもあれば危険な存在となることもある、などの特徴も合致する。
- モオはジャラランガのモチーフでもある。
- 変身能力がコントロールできずにサメ型の怪人(シャークヘッド)になった姿は、ニウエに伝わるとある怪獣を思わせる。
- スヴェンにも変身しているが、これが原理的にはどういうことを示すのかは不明である。
功績
功績や設定は実際の神話がもととなっており、その再現度は非常に高い。
以下の様に、数々の凄まじい偉業を達成しており、人間たちがある程度平穏で楽しく暮らしていけるのは彼の恩恵が非常に大きい。
- 空を押し上げて人間が立って歩ける世界にした。
- 太陽の公転を遅くして、目まぐるしい昼夜の移り変わりを緩和した。
- 気流を生み出した。
- 魔法の釣り針で島を釣り上げた。
- 「火」を地底から持ち帰った。
- 大ウナギを倒してココナッツを生み出し、他にも様々な怪物を退治した。
ここまで人間に貢献する理由は、本人は「好きでやってるだけ」と話すが……?
持ち歌
この映画によって「ロック様も歌える」と判明して多くの人が驚いたらしい。
ドウェイン・ジョンソン版
尾上松也版
他のキャラクターとの関係
モアナ・ワイアリキ
当初は「私の舟に乗り、テ・フィティの心を返しに行く」という説得を聞かず、モアナを洞穴に閉じ込めてひとり島を出ていこうとしたり、何度も海へ投げ飛ばすなど、彼女のことを冷たく扱っていた。
だが、そんな彼もタマトア戦ののちにモアナのことを認めるようになる。
タマトア
因縁の相手。捨て子だった出自を知られているあたり、ただの敵ではない模様。
テ・カァ
自身を打ち落とし、釣り針を取り上げた上で孤島に閉じ込めた因縁の敵。
モチーフ
- モチーフ、ハワイやポリネシア、ニュージーランドなどに広く伝わる半神または完全神の英雄のマウイ。何人かの兄がいる末っ子であり、このことに因んでか、当初はモアナに沢山の兄弟がいるという設定だった。
- 鳥に化けるのは、映画とは異なり彼自身が叔父から学んだ魔法であり、「魔法の釣り針」も自分の祖母のあごの骨であるなど、映画とはかなり設定が異なるが、最も異なるのは生まれなどのバックグラウンドである。
- ハワイのマウイ島や、ニュージーランド固有種の絶滅危惧種のイルカのマウイイルカ(「海のミッキーマウス」と呼ばれるセッパリイルカの北島の亜種)やマウイサウルスなど、様々な事象が彼の影響によって名づけられている。
- マウイの功績や顛末などは文化圏ごとの神話によってかなり異なり、例えば釣り上げた島も異なり、最大の物はニュージーランドの北島とされる。
神話との相違点
- 釣り針の起源については神話上で「祖母の顎の骨から作った」とされるが、『モアナ』では「神々から授かった」とされる。
- 変化能力は自身が習った魔法ではなくて釣り針の神力とされる。
- 家族にまつわる設定や逸話は「もとは捨て子だった」「ラロタイの守護者だった祖母ヒネがいる(ただし原案のみ)」ということ以外なにも描かれていない。
- 純粋に神の血筋を引いているのではなく、出自は人間である。
- 神話では痩せているとされる。
余談
- 初期は小柄で坊主頭の外見だったが、「ものすごく大きい」「髪にマナという特別な力が込められている」「長い髪も彼のアイデンティティの一部」との現地民の見解から、マナを意識する為にも現在のデザインに修正された。
- デザインの参考にされたのは、レスラーやアメフト選手などであり、ドウェイン・ジョンソンが起用された理由も、彼がポリネシア人の血縁にあるという事だけでなく、レスラーであった事も関係している。
- 元ネタが元ネタだけに、とくにポリネシア圏ではこのマウイへの反響が大きく、当然、体型も含めたキャラクター性や商品展開に対して「西洋の偏見が反映されている」と大きな反発が起こったり、商品展開でもハロウィン衣装の件で騒動が発生し、結果として販売中止となっている。
- また、ネームバリューゆえに主人公であるモアナの役を食ってしまうことが心配されていた。
- スタッフによると、「1000年も孤島に幽閉されていたマウイが少し狂っていても不思議ではない」としているが、これもタマトアのモデルであるスマウグの設定と共通している。
- 「ラロタイ」は当初、祖先の霊が住まう冥界になる予定で、そこをマウイの祖母ヒナ(神話における釣り針の由来)が守護する構想だった。また、マウイとモアナによる「ハカ」が披露され、マウイと因縁を持つ怪物たちがハカが終わるのを待ち構えているという展開が予定されていた。
- モアナとタラの関係や、タマトアが自分の祖母に言及しているのも、マウイとヒナへの関連付けだと思われる。