概要
反体制とは、確立された教義、政策、または制度に積極的に反逆・挑戦することを指す。
1.政治的な意味で使用される。
2.1などの社会的な要因を背景にしたクリエイターや若者層の自己表現。反権力、ロック精神とも。
に区分できる。
どちらも完全に分離している訳でなく、少なからず影響し合っている。
政治的な意味
18世紀頃啓蒙思想の流布やフランス革命あたりから使われはじめ、体制の権威・支配への反発として用いられている。穏健な市民運動から武装奮起したレジスタンス・パルチザン、過激派のテロリストやただの不良までを含む。
反体制派からすれば体制側は打倒するべき対象だが、体制側からすれば相手はテロリストと紙一重のなにかでしかないため、どちらが正義か悪の次元で一概に語ることはできない。右翼・左翼とも断言できない。
また反体制派も一枚岩でなく、第三国から支援を受けた第五列や、革命のどさくさ紛れた権力獲得目的の集団も存在し、流血と生臭さを併せ持った印象が強い。
社会・文化において
チェコの人形劇(※)や50年代アメリカのロックンロール、ピカソらの前衛芸術など、芸術や音楽といった文化面にも大きい影響を残している。
※ハプスブルク家支配によってチェコ語は衰退してしまっていたが、演劇等はセーフであった為に自国語を用いた人形劇が隆盛した。この事は、自国の文化保護やその後の独立のための地下水脈となっていく。
こうした芸術系統への影響は、言ってしまえば個人あるいはコミュニティの権利や選択肢が制限・抑圧された(と感じられる)社会への疑問や鬱憤を様々なかたちで創作に投影しようと試みられたもので、それらは先述の政治的な思想や運動と少なからず影響しながら各階層に影響を与えてきた。フォークソングと学生運動・反戦運動との連動等が有名。
特に20世紀中盤~後半にかけてのロックシーンの躍進が与えた影響は計り知れなかった。
ジャズといった黒人音楽から派生していったこれらにエルビス・プレスリーやビートルズ、ボブ・ディランやジミ・ヘンドリックスといった西側先進国のミュージシャンたちが自身の葛藤や社会への不満を籠めて発信し、世界各地の若者層から絶大な支持と共感を集めた。
反体制文化は言論・集会の自由が保証されていたアメリカ合衆国とその周辺の民主主義国家で発達した。この頃の合衆国では人種問題と徴兵制問題、キリスト教への反感によるニューエイジ運動などが反体制の大きな原動力になっていた。
日本においてはベビーブーム世代を受け入れる社会体制の不備が学生運動に向かい、若者の心理を歌ったフォークソングが大ヒットした。
商業化
しかし、これら反体制運動の影響もあり旧来の社会が解体に向かい、戦後復興も達成され、個人が主役の高度消費社会、小さな政府の時代に移行するようになると状況が変化する。
ロックだけでなくフォーク等も含めて、「個人を制限する社会への反発」が主旨であったものが行き場を失い、次第に横浜銀蠅や尾崎豊、映画『理由なき反抗』といった多感な青少年の反抗期や不良文化の象徴にシフトしていったのである。
学生運動はもはや生きた化石のようになっていたが、さらにマルタ会談によって冷戦が終結、続くソ連崩壊によって「スターリン主義の現ソ連を打倒し再びトロツキー化、そして世界革命を行う」という政治目的の根幹の一つは潰えた。
時を同じくして日本ではバブル崩壊。アジア通貨危機やリーマンショックに先駆けての不況到来で、市民の生活そのものが不安定になると「自由よりも秩序」「思想や変革よりも、今ここにあるささやかな幸せが大事」といった感情が若者層にも情勢されていき、曲調も日々の生活や恋愛に比重が強まっていく。(かぐや姫/イルカのなごり雪のあたりからアレであったがTHE虎舞竜のロードなんてもう完全にソレだし…)
こうしたことから、少なくとも現在の音楽シーンは我が道を行く系なロックやメッセージ性増しましなフォークよりも大衆迎合バッチ来いなポップスのほうが主流を占めているのが現状である。
それでもロックとそれに伴う反権力的なスタイルは現在もなお様々な世代のスタイルに影響を与え続けているが、政治的な背景はほとんど鳴りを潜めて「ただのフッション」の「産業ロック」と化している部分が多い。
フォークに至っては、世界レベルでは民謡や民俗音楽といった伝統的なスタイルへ回帰が謳われ、独自の発展を遂げてきた日本でもほとんど歌謡曲の一部と化している。
今なお過激にやっているとすればラップグループの一部などだが、日本ではそのラッパーの中で商業的に成功している筆頭がケツメイシやヒルクライムらハートフルな曲想のグループだったりする。
絵画関連では、バンクシーのような積極的に大衆や権力者をおちょくるような行動派もいるが、その絵は高値で取引されている。既存の概念への挑戦が主旨であったアバンギャルド等自体が今となっては一種の様式美となっている側面も否定できない。
こうして自己表現やスタイルも含めて、これらはほとんど商業ベースに呑まれたのであった。こうなるともう世間受けしない電波ソングとかのほうがよほど反体制反権力といえるだろう。
名言
・ロックの核心は反体制、反権力だ。成功した俺にもうロックは歌えない。聴衆を誰一人ごまかしたくない。こんなはずじゃなかった。成功したから俺は死ぬ。
byカート・コバーン
・希望を捨てない方がいい。俺はサイコーなんだって信じるんだ。既成の概念なんか疑ってかかった方がいい。「なんでなんだ?」っていつも子供みたいに感じていたいぜ。
by忌野清志郎
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