剣よ魔法よ、見るがいい。
──これが、相撲だ。
概要
川獺右端(かわうそうーたん)によるライトノベル小説作品。小説家になろう連載。
フルタイトルは『大相撲令嬢 ~聖女に平手打ちを食らった瞬間相撲部だった前世を思い出した悪役令嬢の私は捨て猫王子にちゃんこを振る舞いたい はぁどすこいどすこい~』。
第二部も存在しており、こちらのフルタイトルは『大相撲令嬢Z ~エルフの森の宰相に条約破棄をくらった皇太子妃候補の私は拾ったもふもふをなでくりまわしたい はぁどすこいどすこい~』。
第一部「大相撲令嬢」が2020年8月から9月まで連載。第二部「大相撲令嬢Z」が2021年9月から12月まで連載された。
現状では第一部、第二部、共に完結扱いである。
作者からは第三部の存在と構想が、ほのめかされているが開始は未定(現在、展開している物語の終了後)とされている。
作品内容
いわゆる転生悪役令嬢もの作品のひとつ。パターンとしては断罪イベント中に前世覚醒し、断罪によって降りかかる火の粉を払うために奮戦するタイプの話。
そして最大の特徴はタイトルにもある通り、相撲(大相撲)がモチーフである事で、これをベースにした「無双もの」のスラップスティックラブコメ格闘ギャグラノベ。なので結構、読み手を選ぶ作品であり、書籍化した出版社をして怪作(あるいは奇書)とまで言わしめた作品。
作品の舞台からして、いわゆる剣と魔法の中世風世界であり、本作に登場する「相撲」は「元々の成り立ちは神事であり神技」という解釈から、いわば聖属性の儀式魔法という扱いなのでテニヌ・バヌケ・超次元サッカークラスの大技・荒業が、がっつりと出てくる。何しろ相撲で対軍ワンマンアーミーや攻城が出来てしまっている。まさに異世界(超次元)相撲。まさに女子力(物理)。
メディア化
アーススターより書籍化および漫画化している。
第一部は2021年7月に、第二部は2022年10月に発刊している。レーベルは、お馴染みアース・スターノベル……ではなく「アース・スター ルナ」つまり基本、女性向け。……女性向け?
挿絵担当(キャラクター原案)は『ドロップ!!〜香りの令嬢物語〜』や『本物の方の勇者様が捨てられていたので私が貰ってもいいですか?』で知られる村上ゆいち。
なお第二部『大相撲令嬢Z』のタイトルの表記が『大相撲令嬢2 Z』となっている場合がある(おそらくは「続編」と気付かれない事を防止するための措置)。
漫画版はコミックアース・スターにて2021年7月から2022年12月まで連載。内容は第一部のみで、コミックス単行本は全3巻。作画はまさかの『かりん』で知られる影崎由那。
こちらではフルタイトルが少し短く『大相撲令嬢 ~前世に相撲部だった私が捨て猫王子と はぁどすこいどすこい~』と、なっている。
あらすじ
アリアカ王国の第一王子、ジョナスの婚約者であったフローチェ・ホッベマー侯爵令嬢は、他ならぬ婚約者ジョナスと、その恋人となっていた聖女ヤロミーラより、身に覚えの無い様々な冤罪を着せられて断罪・婚約破棄されるに至る。
ヤロミーラから華麗にざまぁを決められ、さらに彼女からのビンタを受けたフローチェは、受けたビンタのまさかなベストにいい具合の入りっぷりに、前世の記憶を思い出す。
そう……かつての前世、フローチェは大学女子相撲部にて汗を流していた、一塊の女力士だったのである。さらにフローチェは、この世界が自らが練習の合間、息抜きに興じていた乙女ゲーム「光と闇の輪舞曲」の世界である事も看破する。
かくてその身に力士の魂を甦らせたフローチェは起ち上がり「ヤロミーラ、お前に本当の張り手を教えてやる!」とヤロミーラを張り手の一発でぶっ飛ばし、ジョナスへの「かわいがり」を慣行して、その器の矮小さを改めて思い知り、彼に失望。
直後その身に滾る相撲魂(スモウ・センシズ)の導きにより、力業で断罪の場から離脱し、ジョナスとヤロミーラによって地下牢に幽閉されていた弟王子(第二王子)のリジー君を救い出し、彼と共に自領ホッベマーへと向かうものの、フローチェとリジーの逃亡を知ったジョナスとヤロミーラは慌てて追手を差し向ける。
逃亡しつつ体制を整える"悪役令嬢"フローチェ、闇雲にフローチェを狙うジョナス王子と"聖女"ヤロミーラ。
今ここに、国の命運を賜杯に乗せた、大相撲アリアカ場所は初日を迎えた。
てっぽう(突っ張り)を打てフローチェ。四股を踏めフローチェ!リジー君と共に幸せの千秋楽を迎える、その日まで!
登場人物
フローチェ・ホッベマー
本作主人公。ホッベマー侯爵令嬢。ジョナス第一王子の元・婚約者。令嬢だけれどスーパーヒーロー(まぁ女性なのでスーパーヒロインかも……ヒロイン? うーん……)。その身に力士の魂を甦らせた「大相撲令嬢」にして、女子相撲のアスリートであった前世を持つ。
前世覚醒前は気弱ながらも婚約者を常に立て控え目に侍る理想的な淑女であったのだが、婚約破棄騒動と前世覚醒によって完全なる武闘派へと変貌する事に。
感情が高ぶるとリリックのごとく相撲甚句を吟ずる癖がある。どすこい。
前世覚醒後は体型を前世同様のあんこに寄せようとしているが、体質なのか世界補正なのか、なかなか太れないのが悩み。なので、その分を魔力や魔法(相撲技)の使い方で補う形となっており、鍛練の結果として地力や筋肉はついているので、事実上は技のデパートを繰り広げるソップ体型となりつつある模様。
リジー
アリアカ王国の第二王子。第二王子だが血筋から王位継承に近い地位にあるため、兄からは疎まれており地下牢に幽閉されていた。しかし本人は「お兄ちゃんだいすき」であり、兄からの仕打ちに悲しんでいた。
ヤロミーラによって亜人(獣人)の血が混ざっている(本人も知らなかった)事を暴かれ、そのせいで猫耳が生えた姿に変えられ、かわいさが天元突破してしまっている。
「光と闇の輪舞曲」では非攻略の固定モブであったが、その事がユーザーを激怒させ「他の攻略対象とかどーでもいいからリジー君攻略させろやメール」が炎上爆発して開発元と発売元、両社のメールサーバがパンクし全てのSNSアカウントが運営判断で凍結(のち削除)された上で会社の各種システムも一挙にシステムダウンしたという(都市伝説がまことしやかに囁かれた)。
なお漫画版での彼は、かつてパソゲーメーカーの原画担当にして問答無用のネコミミストであった作画者の本気がびしびしと感じられるショタキャラとなっている。
アデラ
フローチェの侍女(メイド)。かなりの粗忽者で失言だらけのドジっ子。
主であるフローチェの力士言動に振り回されてしまう哀れすぎる子羊。料理が得意でとりえなのだが前世覚醒したフローチェが自らちゃんこばかり作るので「私のとりえを取らないでください」と泣いた(もちろん聞き入れられなかった)。
フローチェの覚醒、部屋の設立とともに「呼び出し」の役と「なとりの着物」を与えられて着るようになった。
何故か軍略・戦略にエラく詳しく、その方面がらみの言動になると「完全制圧」だの「皆殺し」だの「焦土作戦」だのと言うことが過激になる。
ジョナス
フローチェの元婚約者にしてリジーの兄の第一王子。
実は妾腹の子であり、継承権はリジーより弱く、自らが王となるためリジーの排斥を狙う。
自身も元は弟想いの兄であったのだが、ヤロミーラにコンプレックスを刺激されたあげく、自らが王位の夢を見てしまったがために、非情と外道の道を歩む事となる。
ヤロミーラ・シュチャストナー
教会の聖女にして、ジョナスの恋人。原典ゲームのヒロインにして、本作の転生ヒドイン。前世は引きこもりのヲタ娘。前世覚醒によって、本来のフラグルートには存在しない逆ハールートを狙っており、そのために攻略対象たちに自らの体をも餌とした、かなりのビッチ。むしろ聖女ならぬ性女(しかも清楚ビッチ系)。
彼女を転生させた駄女神であるフローレンスをして「ろくでなし」と言わしめており、最終的には女神から諸行を断罪され聖性剥奪を受ける(聖女の権能を奪われる)羽目になる。
アルヴィ
アリアカ国の王様。ジョナスとリジーの父。
ジョナスとヤロミーラによる秘密裏のクーデターによって拘束され、ヴァリアン砦に幽閉されていた。
フローチェ一行に助け出され、相撲に触れたのちは、その強さと公正と礼儀への厳しさに感服する。自らが年であるために体力的に相撲を極めるのが厳しい事を悲しむが、その想いを相撲の英霊たちに認められ、この世界のショウノスケ・キムラ(木村庄之助。行司職の最高位となる名跡)となった。
フローレンス
本作の世界を統べる駄女神。愛と戦い(戦争)の女神。瞳に星がある。
世界を良い方向に導くため、という名目のもと、何も考えずついつい楽しそうな流行に乗ってそこらへんにいたヒキヲタをヤロミーラに転生させた張本人。
が、ヤロミーラが早々にチョーシに乗って悪堕ちしてしまったため「とんでもないバカのろくでなしを転生させてしまった」と、頭を抱え嘆く羽目になった。
悩んで悩んだ結果として、ついに異世界の英霊の座(駄女神いわく戦士の楽園にしてヴァルハラ。たぶんきっと某所)に泣きつき、そこの英霊たちに選び出してもらった精鋭たる魂を「相撲の聖女」としてフローチェに転生させてもらった。
さすがに同じ過ちを繰り返せないため、あえて禁を冒して、自らもフローチェの近くにいる、ある人物に化身転生している。
フローチェとヤロミーラの戦いが佳境に入ると「まっとうな聖属性と闇堕ちした聖属性がぶつかる」という、ものすげぇヤベェ事(対消滅による世界消失レベル)になると気付き(もっと早くに気付け)慌てて戦いの場へ強引に降臨。女神の力でヤロミーラの乱行(性女っぷり)を暴き、その神聖を剥奪する公開処刑を慣行した(もっと早くにやっとけば、こんな騒ぎにはならなかったものを……)。
関連イラスト
↑このイラストは本作メディア化(書籍化・漫画化)前に第三者の手で想像によって描かれたファンアートなので、メディア化後に制定されたキャラクターデザインとは大きく異なっている事に注意。