概要
知る人ぞ知る鬱エンドで有名な作品である。いわゆる『全滅エンド』ではないものの、世界各地が大波に飲まれ壊滅状態になる地球側の完全敗北ともいえる結末は、当時の視聴者に衝撃とトラウマを植え付けた。真の結末を描いた『劇場版』でもさらなる悲劇が起き、勝利者のいない決着を向かえたことはもはや伝説といえよう。
主人公のマリンの心境に関してもこと細かに描かれており、敵味方に挟まれた立場ゆえの心境やブルーフィクサーからの信頼に至るまでの経緯、仇敵であるアフロディアの対立から芽生えた愛情などに至るまでを描いており、劇場版はそれが強調された展開となっている。
TVシリーズが未完になった経緯は下記の通りだが、円盤発売のイベントでのインタビューの際に、それに関しては「(視聴率や売り上げが悪いわけではなかったため)後悔していない」とのことである。
現在では配信や円盤等で視聴することができる。スーパーロボット大戦にも参戦しているので、知っている人も多いだろう。
製作は国際映画社と葦プロダクション。国際映画社のロボットアニメ作品はこれが最初となった。
ストーリー
S-1星はいつの頃からか放射能に汚染され、S-1星人は絶滅の危機に瀕していた。しかし、今後の方針をめぐって軍と科学者グループの意見が対立。軍は住民全員を巨大宇宙船(亜空間要塞)に乗せての新天地への移民(侵略)を主張(ただしあてはない)したが、レイガン博士たち科学者は放射能浄化装置の開発を第一に考えていた。
軍の指導者ガットラーの腹心の部下アフロディアは暴走の果てに皇帝陛下を暗殺し、その罪をレイガン博士の息子マリンに着せる。それをきっかけにガットラーは自分が指導者となって移民準備を始める。
この際、レイガン博士を殺害しようとしたアフロディアの弟ミランは逆にマリンに(正当防衛で)殺されたが、激高したアフロディアによりレイガン博士も致命傷を負わされた末死亡。これにより、マリンとアフロディアはお互いに仇同士となってしまう。
ガットラーは巨大宇宙船で旅立ち、マリンは父の残した宇宙艇(亜空間戦闘機)パルサバーンで脱走するとガットラー達に攻撃を仕掛ける。しかし、両者は亜空間突入のトラブルに巻き込まれてしまう。
予想外の亜空間突入で両者がたどり着いたのは西暦2100年の地球だった。
ガットラーは地球が居住可能な惑星と知ると、地球侵略軍アルデバロンを結成して地球侵略を開始。一方のマリンは敵側の人間という事で地球側に囚われの身になるが、S-1星では見られなくなった青い海に感動する。
アルデバロンの戦闘メカは亜空間に自由に出入りできるため、地球側の兵器では太刀打ちできない。
だがクィンシュタイン博士はパルサバーンを分析し、地球製メカのバルディ・プライズ、キャタレンジャーと合体して亜空間への突入が可能な巨大ロボ『バルディオス』へと魔改造する。さらにマリンの素質を見抜いた上で「憎しみは愛より強い」とパルサバーンの専属パイロットに指名、こうしてマリンの果てなく苦しい戦いが幕を上げたのである。
用語
ブルーフィクサー
世界連盟所属の地球防衛軍。BFS(Blue Fixer Secret)の名の通り秘密組織であり、世界連盟では解決できない(判断できない)事件や紛争・抗争などに対し独自で行動し秘密裏に処理する役割を担っている。別名「裏(影)の軍隊」。
表向きは地球環境調査などを担当する組織だが、2100年現在ではそれに加え地球防衛の裏方としての役割も担う。世界連盟所属ではあるものの組織的には独立しており、独自の軍事力と開発力を備える。また組織内の規制も軍とは大きく異なる点も特徴。
軍事関連は月影長官が総括し、開発関連は主にクィンシュタインが担当。パルサバーンの入手により飛躍的に戦力が強化されることとなる。
防衛軍としての戦力は世界連盟と比べても抜きんでているが、それゆえに連盟との亀裂も生じているのも事実である。
ちなみに「フィクサー」は『黒幕』という意味であるが、修正・確定させる(する)という意味でもある(Fix+er)。
世界連盟
世界各国が手を結び結成された防衛組織。主に地球防衛や環境改善を目的としている。
しかし亜空間航行の技術を持つアルデバロンには手を焼いており、裏方であるはずのBFSに手柄を奪われることもしばしば。そのため当初は仲が良くなく、犬猿の仲に近い間柄となっていた。当然連盟は元敵側の人間であるマリンにもちょっかいを出しており、度々酷い目に合わせている。しかし月影長官たちの尽力によりBFSの実力を連盟側が認め、以降は共同戦線を敷くこととなる。
BFSほどではないものの、ガムジャードなどの対アルデバロン兵器を開発する技術力は備えており、膨大な軍事力を駆使した対抗策を取っている(当のアルデバロンには相手にされなかったが)。
アルデバロン軍
ガットラーがクーデターを起こし、皇帝以下穏健派を粛清した際に設立した軍隊。通称「亜空間戦隊」と呼ばれ、亜空間航行を駆使しての戦闘を主とする。主な目的は地球移住とその足がかりとしての資源や工場の確保だが、地球を新天地にする計画は半ば行き当たりばったりと言えなくない(ガットラーは2万光年先に新天地があると住民に演説していたが、そこに移住可能な星があるのかは不明だった模様)。
軍組織については、コールドスリープしている一般人民を管理する行政機構と侵略・資源確保を担当する軍部をガットラーが統括する形を取るが、それゆえに組織的には不安定である。
BFSや世界連盟の抵抗で物資が滞り、エネルギー確保もままならない状態で気象兵器や生物兵器を使用、地球を窮地に陥らせるもかえって物資確保の道を途絶えさせることとなってしまう。結局エネルギー枯渇で亜空間からの離脱を余儀なくされ、BFSに要塞を発見されるという失態を被ることとなった。追い詰められたアルデバロンはついに取り返しのつかないことをしてしまう。
亜空間航行
パルサービームというエネルギーを放出し周辺の次元を歪め別次元に突入、そこを通って短時間で目的地に到着する航法。いわゆるワープの一種だが一定時間その空間に滞在できるのが大きな違い。ただし亜空間にいるだけでエネルギーが減少するため滞在時間は限られている。しかし亜空間航法には大きな落とし穴があった。
登場人物
()は、担当声優。原は原作、スはスパロボ。表記無しの場合はボイス無し
原作内で二人表示の場合はTV版/劇場版の意
S-1星人。奸計によって父を殺されたためガットラーを憎んでおり、改造されたパルサバーンのパイロットなってアルデバロンと戦う。出自ゆえに敵からは『裏切り者』と言われ、味方からは『スパイ』と疑われる。ブルーフィクサー入隊後も何かと不幸な目にあっておりチームの信頼を得るのに時間を要することとなった。
ジャック・オリバー(原:鈴木清信 / 田中秀幸、ス:田中秀幸)
バルディ・プライズのパイロット。マリンにスパイ疑惑を向けていたが雷太ともども信頼するチームとなる。エミリーという妹がおり、世界連盟本部の医療班に所属している。
キャタレンジャーのパイロット。豪放磊落。気は優しくて力持ち。厳しい面があるが基本的にはコメディキャラ。スパロボで共演した『ゴッドシグマ』の吉良謙作と顔が似ているため(奇しくも中の人が同じ)、放送当時から問題視されていた。
ブルーフィクサーの研究員だが、場合によってはバルディ・プライズに搭乗することも。戦闘員でないにもかかわらず、偵察など重要な役割を担っている。マリンのサポート付きではあるもののバルディオスの合体に成功しているため、パイロットとしての腕も確かなものといえる。
デビット・ウェイン(原:井上和彦)
ブルーフィクサーの予備パイロット。クィンシュタインとは師弟の関係であり慕ってる間柄でもある。
パイロットの腕自体は高いにもかかわらず、バルディオスの合体に失敗するなど足手まといの印象を持ってしまったライバルキャラ。最期はクィンシュタインに思いを伝えられないままフィクサー1で特攻し命を散らした。
ブルーフィクサーの司令長官。沈着冷静だが温厚であまり軍人くさくなく、その対応を上層部から「甘い」と言われることも。とはいえ、いざというときの行動は目を見張るものがあり、彼の機転で危機を脱したケースも多い。ガムジャードを視察した際、一目で性能は高くてもそれを操る技量を持つ人物はいないと判断したりするなど洞察力も高い。日本に家族を残しており、長い間帰郷していなかった。
最期はミニバーンを操縦しメルトダウンした核物質を安全圏に運び、スピリットガットラーもろとも消滅する。
エラ・クィンシュタイン(原:加川三起(現・鳳芳野) / 此島愛子)
女性科学者。落ちついた物腰だが、(良くも悪くも)感情よりも理論を優先する冷酷なまでのリアリスト。しかしながらファンが多いのも確かで、デビットのように慕われるケースも作ってしまっている罪深き女。半面、マリンの心境と素質にいち早く気づき、それを察した上でバルディオスのメインパイロットに任命するなど不器用ながらも心の支えに努めているのも確かである。
科学者としては非常に優秀である。なにしろ異星の高度なテクノロジーで作られたパルサバーンを分析した上、地球製メカ2台と合体させて亜空間突入能力を持つバルディオスを作ってしまうのだから。とんでもない魔改造である。
ゼオ・ガットラー(原::青野武 / 柴田秀勝、ス:柴田秀勝)
S-1星の軍人。クーデターを起こしてS-1星の権力を掌握、移民の為の地球侵略作戦を指揮する。
しかし司令官としては手段を択ばないところがあり、ルールを破ったものには容赦なく死刑にし、無茶と思う作戦も強行したりと、結構力押しなところもある。アルデバロン側の台所事情を考えると致し方ないといえなくはないが…。それでも国民の支持が高いのだから驚きである。
ローザ・アフロディア(原:神保なおみ / 戸田恵子、ス:永田亮子)
ガットラーの部下であり地球侵略軍参謀でもある。上記の通りマリンとはお互いに仇同士となる。
根はやさしい性格であり、部下のことを心配する一面もみられるが、基本的には立場もあってか容赦ない身振りを取ることの方が多く、果ては「情け無用の掟」という軍規どころか悪の組織の規律じみたものを策定し、アルデバロン軍崩壊の遠因の一つを作ってしまう。
仇敵であるマリンの命を奪おうとするが、次第に躊躇する場面が増え、最終的にはガットラーの銃弾からマリンをかばう行動をとってしまう。
司令官としても、情緒面はともかく能力面は優秀であり、ガットラーに指揮系統を任されるほど。信頼も軍の中でも高いがそれゆえに上層部からは嫉妬の対象ともなっている。
S-1星皇帝。ガットラーが起こしたクーデターにより暗殺される。ふたばちゃんねるの二次裏板で「お前達、もう寝なさい」の台詞と共にカルト的な人気を集める。
メカニック
バルディオス
地球製マシン2機とマリンが持ち込んだパルサバーンそれぞれを魔改造し誕生したロボット。
詳しくはリンク先を参照。
ガムジャード
本編17話で世界同盟側で開発された全高200mを超える非変形の巨大ロボ。
実戦参加したのは試作1号機のみだが、2号機以降の開発も進んでおり、将来的には量産も考えているとのこと。
バルディオスの性能を参考にした強力な武装に加え(スペック上は)亜空間への突入も可能な性能を持っており、その上初戦ではアルデバロン軍のメカを単機で葬る(しかも2機も)という戦果を挙げたため、一時はバルディオス不要説まで流れるほどであったという。
しかしそれはアルデバロン軍がブルーフィクサーを排除するために演じたハッタリで、実際には用済みになった際に倒せるようわざと三味線を弾いていたのである。そして用済みとなったガムジャードはアルデバロン艦の攻撃であっけなく破壊される最期を迎えるのだった。
フィクサー1
ブルーフィクサーが開発したとされる高性能戦闘機。パイロットはデビット。単機でアルデバロン戦闘機団を相手にできるほどの戦力を持つ化け物じみたマシン。亜空間エンジンを搭載しているため単独での亜空間突入が可能とされる。
突然の打ち切り
本作は突然打ち切りになっただけでなく、本放送は何と3話が未放送のお蔵入りとなった。(打ち切り最終回が「前編」だったのもその名残と言える)
全39話の予定で製作されたが、そのうち全34話が完成さるも前述の通り道31話しか放送されず(実は本来第32話になる筈だった)31、33、34の3話が未放送となり、終盤の35~39話は制作されず本当にお蔵入りとなった。
その終盤も過酷な展開であり、当時出版された小説やアニメ雑誌でその終盤のストーリーが掲載された結末は意外なものであった。
後に劇場版でその結末が映像化されたが、本来描かれるはずだった結末とは若干異なるものとなった。が、意外な結末はほぼそのままであり、今でも語り草となるほどに印象の残る物語となっている。
小ネタ
主題歌が「あしたに生きろバルディオス」で、歌詞の中に「明日を救え バルディオス」となっているので、結末を知るファンからは「明日は救えましたか...?」とか「※救えませんでした」と無慈悲なコメントが付く事が多い(劇場版で描かれた本来の結末はバッドエンドと言うよりはビターエンドに近い)。
関連タグ
スーパーロボット大戦:スパロボZにて参戦。
伝説巨神イデオン:バルディオス同様、打ち切りの目にあった同時期のロボットアニメ。同局放送、視聴率の低迷、関連商品の売れ行き等、共通点が多い。結果的に完結編が劇場版に持ち越されたのも同様である。ただしこちらは打ち切り後も完結の為に4話分の制作が進行していたことが大きな違いである。
宇宙大帝ゴッドシグマ:イデオンやバルディオスと同時期に放送(放送局も同じ)され、同時期にスパロボに参戦して絡んでいる。ゴッドシグマのパイロットの一人が雷太にそっくり、敵が未来から襲撃する(ただし経緯は大きく異なる)、タイムパラドックスを扱うなど共通点がある。こちらは打ち切られずに完結。