CV:無し
概要
四幻将の1人。
普段は棺に入っており、出てきても恐ろしく寡黙でコミュニケーションの一つさえ行わず、時々獣のように「グルル…」と唸る程度で言語能力はない模様。ロン曰く「心が無い」らしいが……。
幻獣キメラを手本とし、キメラの体が複数の動物のパーツで成り立っているように、現存する全ての獣拳を模倣できる「幻獣キメラ拳」の使い手。
この掟破りとも言える能力は自身の幻気を使って「肉体のある部分は固く、ある部分は柔らかく」といった矛盾した肉体を作り出す事で実現させているのだが、繰り出す獣拳の強さは技の使い手により著しく左右される模様。
幻獣王の命令のみに従うとされ、名乗り等の意志疎通は全て同僚のロンが代行。また配下である双幻士のコウとシュエンからは忠誠心など全く持たれておらず、「木偶の坊」呼ばわりされる等、完全に舐められている。
虎はそのまんまだが後半の「ピカ(ピカピカ)」はジャン語において「いいやつ」を表し、より具体的には「誠実な/心のきれいな」という意味。つまり「トラピカ=虎のいいやつ」となる。
その正体
修行その40にて明かされた正体は、理央が唯一勝てなかった「白虎の男」ことダン(演:大葉健二)。彼はジャンの父にして激獣ホワイトタイガー拳の使い手でもある。
ロンはダンを暗殺した後「全魂集結」で激気魂を凝縮、幻気を与えて「幻獣拳士スウグ」を生み出した。
その本質は所謂フランケンシュタインの怪物のような物であり、幻獣王覚醒までの間、創造主であるロンにより操られる傀儡に過ぎない。言葉を話さないのも、精神を持たない激気魂の塊であるが故である。
だが意思が完全にないわけではないらしく、臨獣殿から離れた山中で草笛を吹く等、僅かだが自立行動する場面もあれば、自身を従える主がいない場所で制御不能の暴走状態に陥って見境無く暴れ回ることもある。
ジャンはスウグの草笛の音を聴いた時、心がワフワフ(※心地よい)になったが、それは彼が本能で自身の父親の存在を感じ取っていたからだろう。また、元が善人だったからかジャンの父親だったからかは不明だが、初対面の際も息子に対して敵意を見せず、ジャンもゾワゾワ=悪意を感じなかった。
こうした点からも、スウグが他の幻獣拳使いとは一線を画して特異な存在である事が分かる。
息子に救われし魂
終盤、理央が幻獣王として覚醒しない事に業を煮やしたロンは、彼の幻獣王としての力を堰き止める弊害こそゲキレッドであると判断。彼を始末すべく、刺客としてスウグを送り込む事を理央に進言する。
「スウグを作った私が言うのですから、間違いありません。一度命じられれば、スウグはゲキレッドを躊躇無く殺します」
一方、息子ジャンもシャーフーからスウグがダンの紛い物であって本人ではないと諭され、その上でジャンは「オレがやる……オレが、トラピカ倒してくる」とスウグ打倒を決意。
ロンの立会いの下、一騎打ちの果てにスウグを追い詰めるスーパーゲキレッドだったが、「トラピカ……さよならだ」とトドメを刺そうとするも、肉親の情からスーパーゲキクローを寸止めしてしまう。
ジャン「何でだ……何で倒せない…!! あんなに……あんなにハッキリ決めたのに」
対して意思を持たない戦闘マシーンであるスウグは、チャンスとばかりにジャンに渾身の一撃を見舞って変身解除に追いやると、そのまま容赦無く痛めつける。
ロン「フフフフフッ、父親の激気魂に止めを刺されるか……さぞや良い悲鳴をあげ、極上の絶望をくれるだろう」
嗜虐的な笑みを浮かべるロンの目には血で染まった爪のスウグと、見るも無残なまでにボロボロになったジャンの姿が映っていた。
ボロボロのまま、今にも殺されそうになる中でも、ジャンはスウグに向けて肉親の情に訴え掛ける。
「…………父ちゃん…………あれもっかい聞きたいな…葉っぱで吹いてたろ、ワフワフの曲… オレあれ聞くと、ギュギューてされた気持ちになるんだよな ……なんだよ……激気魂だけになっても、父ちゃんは父ちゃんじゃないのかよ!! 一回だけでいいから、オレの事…………オレの事……ギュギューってしてくれよ……っ!!!」
虫の息になりながらも、親子の抱擁を懇願するジャン。彼の言葉によってスウグの中のダンの魂が呼び覚まされる様子を見て、ロンは驚愕すると同時に彼を危険と判断するや、怪人態となってジャン目掛けて弓矢を放つ。
しかしスウグがジャンをかばって大ダメージを受け、その姿を目の当たりにしたロンは「スウグ……いやダン! 血盟を上回る激気魂があるというのか……!!!」と捨て台詞を吐きつつ撤退。
そしてスウグは息子をぎこちなく抱きしめた後
構えを解き、最期の意志を示した。「止めを刺せ」と。
ジャンも涙ながらにその意思に応え、スーパーゲキクローの一撃を放つ。かくしてスウグは光となって消滅し、父の魂はロンの呪縛から解放されたのだった―――――。
余談
原典である山海経(海内北経)の記述では、「林氏国に珍獣がおり、大きさ虎の如く、五彩が備わっており、尾の長さは体長ほどあり乗ると一日に千里を行くという。」とある。
また、「淮南子」にも「白虎で黒紋があり仁で、死んだ獣を食べ、日に千里を行くという。名を騶吾といった。」と言う記述がある。スウグの元になったダンが「白虎の男」と呼ばれている所からも、妥当なチョイスである事が分かるだろう。
キメラ拳なのに胸部のレリーフは白虎で、右半身はゾンビやアンデッドを彷彿とさせる禍々しいフォルムだったのも伏線だったのだろう(元がホワイトタイガーの獣拳士、かつリンリンシーではないが本来は既に死亡している存在)。
関連タグ
ドーラキマイラ、キマイラオルグ、合体冥獣人キマイラ:キメラ繋がりの先輩の戦隊怪人達。
バリゾーグ:4年後に登場する幹部怪人で、こちらも正体が自我を奪われ戦闘マシーンと化したヒーローの知人繋がり。ただし、こちらは人間に戻れずに「友の魂だけでも」救わんと、決戦の際にヒーローの手で倒されている。
鬼王:サクラ大戦2に登場する幹部で、こちらも正体が自我を奪われ敵と化したヒロインの父親繋がり。こちらは正気に戻って娘をラスボスの攻撃からかばって死んでいった。
ハカイザー:同じく操られた父親が敵となって現れた戦士。そのことに息子が気づく回ではスーパーゲキレッドの偽物が召喚されていた。