獣の心に感じ、獣の力を手にする拳法、獣拳
獣拳に相対する2つの流派あり
一つ、正義の獣拳「激獣拳ビーストアーツ」
一つ、邪悪な獣拳「臨獣拳アクガタ」
戦う宿命の拳士達は、日々高みを目指して、学び、変わる(OP前のナレーション)
概要
獣の心を感じ、獣の力を手にする拳法。
地球上に存在する様々な生物の動きと能力を己の技や術に応用するという、いわゆる“象形拳”の一種で、古代中国にて誕生し、4000年もの古い歴史を誇る由緒正しき武術である。
その創始者であるブルーサ・イーには10人の弟子がいたが、その内の3人が裏切ってブルーサを殺害してしまい、この出来事を切っ掛けに獣拳は2つの流派に分裂した。
1つはブルーサの遺志を継いだ7人の弟子(※後の七拳聖)が興した流派であり、獣拳の力で世界の平和を守る正義の流派・激獣拳ビーストアーツ。
もう1つがブルーサを裏切った3人の弟子(※後の三拳魔)が興した流派であり、獣拳の力で世界の支配を目論む邪悪な流派・臨獣拳アクガタ。
この2つの流派の対立により、物語がスタートする遥か昔に起こった大戦は激臨の大乱と呼ばれ、戦いの末に七拳聖が三拳魔を封印した事で幕を降ろしている。
そして現在、時を超えて闇堕ちしたマスター・シャーフーの弟子の理央が臨獣殿を再興し、その当主に就いた為、獣拳は再び激と臨の2つに分かれて新たなる争いが勃発。
『獣拳戦隊ゲキレンジャー』の物語はここから幕を開ける。
決して閉鎖的な拳法ではなく、かつてバット・リーを愛していたが、価値観の相違により獣拳嫌いになってしまった骨董品屋の含韻(ハンユン)婆さん(演:石井苗子)やヌンチャク使いの香港警察秘密捜査官のラオファン(演:小野真弓)など一般人にも知られた拳法らしい。ラオファンからは激獣拳も臨獣拳も同じ獣拳であると評されている(このキャラクターが登場した映画こそ激気と臨気が合わさったゲキリントージャの初出であり、後述する獣拳の本質に迫った発言であると言える)。
最終回後はジャンが子供達に獣拳を教えている事からより習得志望者が増えているようだ。
なお、劇場版では銘功夫というこれまた動物の動きを手本とする拳法が登場するが、獣拳とはまた異なる。
獣拳の真髄
獣拳の基本は気の力であり、激獣拳が激気、臨獣拳が臨気と言う具合に流派毎に異なる気が存在。拳士達は流派毎にこうした気を操る能力が求められ、修行によってその気を高めなければならない。
劇中において激気には過激気、臨気には怒臨気と呼ばれる究極の気が存在しており、ジャン達ゲキレンジャーや理央達は各々の流派でのマスターとの修行や、ライバル同士での戦いの中で会得して行き、敵味方問わず各流派の若き拳士達が成長して行く姿が並行して描かれるのも今作品の特徴の1つである。
尚、激気には更にゴウの紫激気の様な、本人しか持ち得ない独自の激気も存在する他、ケンのように最古の獣拳を扱う者もおり、獣拳にも様々なスタイルが存在するのが分かる。
中には拳法と言いがたい技を持っているものもあるが、気にしてはいけない。
各流派の気はゲキワザやリンギと言った技の発動のみならず、それぞれの獣拳に因んだ強化形態に姿を変える他、巨大化やゲキビーストと呼ばれる巨大戦力の具現化にも使われる。
無論、変身の際にもこの両者の気は必要不可欠であり、ゲキレンジャーはゲキチェンジャーを介して全身を激気で包み込む事によって変身。対する理央も、全身を鎧の様に臨気で覆う「臨気鎧装(りんきがいそう)」によって黒獅子リオへと変身する。
特に姿を変える技の極め付けとも言うべき「獣獣全身変(じゅうじゅうぜんしんへん)」は、全身を獣の様に変身させて自らを獣人と化す禁断の技で1度行使したが最後、人間の姿に戻るのは難しく、拳聖達ですら人間の姿を失い不老の報いを受けた(※不死ではない為、殺せば死ぬ)。また、身体が縮んでしまったバエの様に、不完全な使用では何かと不具合も生じてしまう。
尚、似た様な技として臨獣拳士の使う「獣人邪身変(じゅうじんじゃしんへん)」が存在するが関連は不明。
獣拳は今でこそ激と臨の2つに分かれたが、元は1つである事を踏まえると激気と臨気は本質的には同じ力である事が窺える。
劇中でジャン達激獣拳の拳士達が心と技を磨き、体を強く鍛え、正義の心で激気をみなぎらせて拳を振るった所から、激気の本質は陽の“気”であり、理央が三拳魔との修行の中で怒りや憎しみ、嫉妬と言った負の感情によって臨気を高めていた所から、臨気の本質は陰の“気”と言える物なのかも知れない(この他にも理央以外は全員『死人』であったり、臨獣殿がマクの『屈辱』感から始まった事を考えれば確かに『陰』寄りである)。
ファンの指摘の一つとして臨獣殿の持つ悲しみや苦しみ、怒りが力になるといった側面は、実はヒーローの本質に迫っているのではないかという見方もある(人々が涙し、苦しむ時にヒーローは悪への怒りを燃やして戦うから)。
尚、ゴウの持つ紫激気は性質的に臨気に近い様だが、それは劇中で「俺はただ好きな様に生き、好きな様に戦いたいんだよ。柄じゃないんだ、正義の為に戦うってのは…」と言いつつ、一方で苦しんでいる人間を放っておけない彼の捻くれた気質故に生まれた激気と言えるだろう。
(事実、マスター・シャーフーも紫激気に対応したゴングチェンジャーを手に戦いに赴くゴウを見送る際、『紫激気がお主を決めるのではない、お主が紫激気を決めるのじゃ…』と呟いている)
第三の流派
物語のが中盤、幻獣ドラゴン拳の使い手を名乗るロンの登場を皮切りに幻獣拳と呼ばれる第三の流派が登場。
幻獣拳とはその名の通り幻獣を手本とした拳法であり、「幻気」と呼ばれる気を基本としたゲンギによって戦う。激獣拳や臨獣拳を超える「極みの拳」とされており、この拳の使い手となる為には臨獣拳を極め、その臨気と幻気を「血盟の儀式」なる通過儀礼を経て融合させねばならない。
統一される獣拳
作中終盤、臨獣殿は理央とメレを残し壊滅。その二人も真の巨悪との戦いで命を落とした。
しかし理央が死の間際に「リンギ全臨伝授」により臨獣拳アクガタの全てをゲキレンジャーに託したことで、臨獣拳アクガタの技術は激獣拳ビーストアーツとひとつとなり、ただの獣拳として昇華された。そこから生まれたひとつの奥義が、物語を締めくくることになった。
なお、その後も技名の枕詞はそのままとなっている。
獣の心に感じ、獣の力を手にする拳法、獣拳
獣拳に相対する2つの流派があった
一つ、正義の獣拳「激獣拳ビーストアーツ」
一つ、邪悪な獣拳「臨獣拳アクガタ」
二つの流派は一つに還り、最後の戦いが今始まる(修行その49OP前ナレーションより)
その他用語
獣源郷
ジャンの住んでいた樹海近くにある激気に満ちた獣拳の聖地。奇妙な樹木が伸びているのが特徴で、ゲキレンジャーが提供クレジットで見つめている光景こそこの獣源郷に他ならない。激獣拳使いの修行地にも選ばれており、ケンは数年前はここで修行を行なっていた(理由は後述のマスター・ブルーサと同じライノセラス拳使いだから)。
ブルーサ・イーの魂が巨石に宿り、そこから拳聖たちが操獣刀を使ってサイダインの像を掘り上げた。これが獣拳の神が宿るという伝承の正体である。
臨獣拳使い避けの「七重七聖の関」が拳聖によって張られており、彼らは操獣刀という鍵を使わなければ生きてはいる事が叶わないが、理央が操獣刀で侵入したことを皮切りに拳魔達も介入。獣源郷は炎上してしまった。
こんな扱いを受けたわけだが、獣拳の創始者の魂が宿る場所なのだから、臨獣殿にとっても聖地である事には違いない。
獣拳のルーツは中国なのだが、この獣拳郷の所在地は不明。少なくとも美希がセスナを使って移動していたので都心から遠い距離にあるのは確か(なお、ジャンの住む森にはパンダがいたことから所在地が中国という可能性も否定できない)。
拳断
正す者よ。罪を犯した者に裁きを下すには、命を懸けた拳を以ってせよ。罪を犯した者よ。弁明もまた命を懸けた拳を以ってせよ(「修行その48 サバサバ!いざ拳断」より 原文ママ)
以上の教えを以って行われる決闘。要は拳で語り合いながら行う裁判のようなものである。
修行その48ではその正す者であるレツ&ランが罪人である理央&メレを相手に戦ったが、無間龍が介入した事で正式な裁きを下す前に理央とメレは死亡してしまった。
炎神拳
『ゴーオンVSゲキレン』で登場。
ゴーオンジャーがゲキレンジャーとの修行の末に習得した第4(?)の獣拳。
レッドはドルドル弾、ブルーはオンオン弾、イエローはブイブイ弾、グリーンはバルバル弾、ブラックはガンガガンガ弾という技を有し、ゲキレンジャーが手やゲキバズーカから激気を放っていたように炎神型の気功弾を発射する。
ちなみにジャンが走輔に課したのはビルの壁を雑巾掛けする修行、ランとケンが早輝と軍平に課したのは落ち葉をキャッチする修行、レツとゴウが範人と連に課したのは足でピアノを弾く修行となっている。
なお、須塔兄妹も獣拳の修行をしていたようだが、炎神拳は披露されず(シャーフーと共に秘伝ゲキワザで理央とメレを蘇らせてはいる)。
『ファイナルライブツアー2009』ではこの設定がしっかりと拾われており、復活したヌンチャクバンキに対してはゴールドがバタバタ弾、シルバーがギンギン弾という新技でトドメを刺している。
これらのことから他の戦隊ヒーローも修行さえすれば獣拳は使えるものと思われ、もし、ダイレンジャーが習得したら気伝獣、ガオレンジャーが習得すればパワーアニマルを発射でもしていたのだろうか…?