概要
戸塚慶文の漫画『アンデッドアンラック』に登場する否定者(否定能力が移行した人間)、および否定能力(超能力)の一つ。
UNFEEL-不感-(アンフィール)は、自己の「感情」が発露を否定する。
因みに「Feel(フィール)」とは、「感想」「感触」「感覚」「心情・感情」といった「感じる」を意味する英単語。
「不感」の理(ルール)
自己対象 強制発動型
感情的な発露(はつろ:心の中にある思考などが外に表れること)が強制否定される否定能力。
好感・悪感・反感(ポジティブ / ネガティブ)といった、気持ちが否定≒喪失される事で、表情変化はおろか動作の活動力(根源)を大きく削減され、会話や殆どの自活的な行動を欠損される。言い換えれば、ある種の要介護な重篤精神障がい者になってしまう状態。
この他、外的変化による感情誘発も否定される。作中の描写を顧みると、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の機能は正常だが、その刺激(感覚)による心情変化=感情の発露は否定され無反応となる能力特性が強制発動される模様。
だが、まだ分からない。
「感情」は個人差や多様性のある曖昧な分野でもあり、これと別物だが繋がりある行動原理も鑑みると、複雑な特性に類する能力および能力者といえるかもしれない。
本稿では便宜に感情含む3つの行動原理を基にして、考察も交えて確認できる限りの【UNFEEL-不感-】にある実像を整理していく。
先ず正常な状態と不感の状態比較として―
- 本能:先天的な行動原理。本来備えている心の指針、衝動的な行動力。
- 感情:物事に相対して誘発される心理。自己の気持ち、心の高まりとも。
- 理性:後天的な行動原理。道理に基づいて考えたり判断したりする能力。
の3つを精神的な自己形成と仮定して整理し図解すると―
精神 | 正常時 | 否定時 |
---|---|---|
本能 | ○ | ○ |
感情 | ○ | × |
理性 | ○ | ○ |
こんな感じに、感情とは別の行動指針【他の指示や状況の判断で動く】で生活を余儀なくされると考察される。さらに【UNFEEL-不感-】が発現(移行)した個人・状勢などによって、その時々で行動傾向は変化するだろうし、上記で触れたように仮定も加味した部分もあるから絶対の原理でないと留意。
では具体的に【UNFEEL-不感-】の状態異常となって以降、どんな日常を余技なくされるのか。
作中で発現(移行)した幼子の様子を基に考察も交えて情報整理していく。
機械人形のような体感
本編では10代未満、5歳前後な幼い男の子に【UNFEEL-不感-】が発現(移行)した。能力特性から彼の自発的な行動・発言『感情を根幹とする活動』は不可能であるが、それでも能力不適用と推察される特徴が視られる。
- 平時では親指しゃぶりをしている。これは幼子特有の仕草に加え、感情とは別物である【癖】による動作なのだろう。
- 腕に触れる相手をじーっと視たり、空の変化に顔を上げるなどの様子がある。これは感情が発露される手前の時点【反射】による動作と思われる。そのため通常なら「次の行動を予感」「外的変化に感動」したりがあるだろうけど、否定能力から〝次〟は無く制止したような状態と予想される。
傍目からは、まるでお人形さんを相手にしている風な体感かもしれない。
また以下の活躍から、聞き取り(指示・命令)により反感(やらず)を露にしない行動力を発揮する姿も確認される。
感服な活躍
作中世界には超技術の産物「古代遺物(アーティファクト)」が存在し、形状や機能は多種多様で戦闘に役立つ物も多数ある。しかし運用に共通する難点【精神負荷が生じる】によって痛感・疲労感と障害を伴っている代物。
だが【UNFEEL-不感-】になった者は、これらの【感覚】が否定される。そのため古代遺物(アーティファクト)を重装備でも、精神的負荷は不問題に活用できる利点があった。
本編初期の【UNFEEL-不感-】になった者は、古代遺物(アーティファクト)といった超常物を管理する《秘密結社》へ所属していた事から、全身装備をして仲間の指示で超常存在・UMA(ユーマ)と闘ったりと、感服の働きぶりをみせていた。
だが遺憾。
【UNFEEL-不感-】は精神的損傷を不問にできるが、肉体的損傷は別問題。思わぬ負傷・流血があっても、能力特性で危機感・恐怖感・痛覚といった『生命維持に関わる大事な感情』も否定されるため、他者の制止がない限り不停止で危険領域を脱しない危うさがあった。
作中例では―
- 命令解除の無防備な状況下で強襲があった場面。恐怖感すら否定される【UNFEEL-不感-】から防御・回避の行動が行えず、隣の仲間に守って貰う危機に陥る。
- 超高熱物が間近にある危険区域-数分いれば生命が危ぶまれる状況・場所-で、その時は指令【仲間を守る】の範疇による理性的と思われる判断で復旧作業を行い、頭部など重要器官から出血しても危機感すら否定される【UNFEEL-不感-】から、彼の命が滅するまで不停止(超危険地帯に駐留)の状態であった…。
といった感情障害の側面もあると考察される。
不感の悲劇
否定の理屈【感情の発露を否定】から、不感の悲劇は強い感情(心 / 魂)の大波が起きた場面で発生すると推測される。
例えば、青春時代に真っ盛りに特大の恋愛感情が膨れたり、日々の刻苦勉励から有望な金銭感覚・経営感覚が結実しそうな瞬間、総じて【幸福感が否定される】ような事変と想定できるかもしれない。
また上記で述べたように、個人の感性・状勢の変動などで繊細でもある「感情」の領域も変化すると考えられるため、歴代の【UNFEEL-不感-】は各々で状態に差異が生じるとも想像される。
だが裏返して視れば、否定能力を付与(移行)させる超理的存在にとって【否定したくなる程の感情を持つ者】という証左であり、事情を知る者からは特段の感情移入ができる否定能力者といえる。
「感情」の器
否定能力によって感情が失われた幼い男の子。でも残された心、それは本能か理性か。誰かのために戦う行動力をみせている。
それはフィルの優しさと仲間達は捉え、能力特性で彼は共感できずとも、皆からは感謝を述べられ大切に接せられている。
その他、詳細は【フィル=ホーキンス】を参照。