概要
このジャンルの定義には諸説ある。そもそも「怪獣の定義」が諸説あるためである。
象徴的なのが1998年に公開された『GODZILLA』。これは日本の『ゴジラ』(1954年)のハリウッドリメイクという触れ込みで封切られた作品だが、内容がオリジナルから大きく改変されており、日本のみならず海外のゴジラファンからも落胆の声が漏れた――いわく、これは怪獣映画ではなく、モンスターパニック映画であると。
そのような物言いがされるということは、怪獣映画とモンスター映画の間に、あいまいながらもどこかに境界線があると考えられているということである。
怪獣とモンスターの印象的な違いとは、主に以下のことである。
- 怪獣はモンスターに比べて大きい。初代ゴジラの身長が50mであったため、これが一つの基準となっている。なお初代ゴジラが50mの設定になったのは、スタジオの面積の都合による。その巨大な体躯に人間社会が蹂躙される様は怪獣映画の醍醐味のひとつ。
- 怪獣は生物学的には考えられないような超能力(火を吐くなど)を有している。ただ既存の生物を巨大化したようなものではない。それゆえ人間サイドでは研究者枠の登場人物が暴れることも。
- 個体数は少ない、あるいは滅多に見られない。しかし一体だけで人類の生存を脅かしかねないほどに強大なので、人類はいつもひどい目に遭う。
- あまりグロテスクではない。この点はウルトラ怪獣のデザインを多く担当した成田亨も常に気をつけていた。そのため人類に危害を加える存在でありながら、ファンに愛される怪獣は多い。
- 怪獣は通常兵器で倒されない。『キングコング』(1933年)のコングは戦闘機によって撃墜され、『原子怪獣現わる』(1953年)のリドサウルスもアイソトープ弾で倒される。これに対して、ゴジラはオキシジェンデストロイヤーがなければ倒せなかった。このことから自衛隊がかませ犬になるのは一種のお約束になっている。
- 総じて、モンスターはクリーチャー、怪獣は神に近い存在である。このことからハリウッド版『GODZILLA』に登場するガッカリ怪獣はGOD(神)を引いてジラと呼ばれている。
もっとも、これらはゴジラに端を発する怪獣映画、および『ウルトラシリーズ』に代表される怪獣ブームから生まれた印象が積み重なったものであり、例外も数多く存在する。
また一般的な書籍では、これらの印象に当てはまらない『キングコング』が怪獣映画の元祖として挙げられていることが多く、以上の議論は日本の特撮文化に愛着を持つマニア層のこだわりによる主張と言わざるを得ない。
一方で、ウィキペディアにKaijuという項目があるように、少なくとも海外でも怪獣に対する共通認識があり、『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)のように往年の怪獣映画にリスペクトを捧げた作品も生まれている。
怪獣映画一覧
日本
モスラ(東宝)
空の大怪獣ラドン(東宝)
大怪獣バラン(東宝)
宇宙大怪獣ドゴラ(東宝)
海外
キングコング(アメリカ合衆国/RKO→パラマウント映画→ユニバーサル・ピクチャーズ→レジェンダリー・ピクチャーズ)
クローバーフィールド/HAKAISHA(アメリカ合衆国/パラマウント映画)
パシフィック・リム(アメリカ合衆国/ワーナーブラザーズ)
巨獣ガジュラ(アメリカ合衆国)