概要
第一次怪獣ブームに便乗し、1967年(昭和42年)3月25日に公開された松竹が制作した唯一の怪獣映画作品。
製作費は松竹によると当時における1億5千万円。
1960年代においては東宝で「ゴジラシリーズ」が、大映で「ガメラシリーズ」が制作、公開されたことによる“一大怪獣映画ブーム”が起き、それに加えてTVでは円谷監督の興した円谷特技プロダクションによるテレビ番組『ウルトラQ』が放映されたことでさらに怪獣ものコンテンツが活発化、その勢いを乗って日活が『大巨獣ガッパ』を製作し、そしてそれに対抗する形で松竹が制作したのがこの『宇宙大怪獣ギララ』である。
ただし1966年当時の「映画時報」では「東映の『大忍術映画ワタリ』のヒットを受けて制作した」といった主旨の記述がみられる。
本作は東宝や大映の怪獣映画と差別化を図るため、宇宙を舞台にしたSF作品としての制作を前提にしており、その科学考証にはSF作家の光瀬龍が招かれ、前半部では月面基地や宇宙空間におけるメカニック描写に力が入れられているが、月面基地に檜風呂があったり恋愛要素も盛り込まれるなど松竹昔ながらの「松竹大船調」の演出も盛り込まれているのも特徴である。
それと同時に本作は海外への輸出も視野に入れて「社団法人・映画輸出振興協会」からの輸出映画産業振興金融措置の融資を受けて製作されている。
あらすじ
宇宙で謎の発光体と接触し、行方不明となった宇宙船の調査のため、宇宙船「アストロボート」が宇宙へと飛び立った。
月面ステーション経由で帰路についたアストロボートは件の発光体と遭遇し、謎の物質の噴霧を受ける。隊員の佐野とリーザにより、噴射ノズルに付着した物質から岩石のような発光体が採集されて地球へ持ち帰られるが、研究室に保管されたそれはカプセルから消え、研究室には発光体の白いカスと鳥のような3本指の足跡が残されていた。
翌日、FAFC宇宙基地周辺に巨大怪獣が出現する。ギララと名付けられたその怪獣は徐々に東京方面へ移動して都心を蹂躙する。自衛隊の攻撃もまったく効果がなく、エネルギーを求めてギララは原子力発電所や水力発電所を破壊しつつ巨大化したうえ、巨大な火の玉となって空を飛び回り、エネルギーを吸収できる場所を求め続ける。
登場怪獣
(リンク先の記事を参照)
登場メカニック
- アストロボート
全長 | 28m |
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全幅 | 14.5m |
重量 | 20t |
宇宙探査と宇宙開発を目的にFAFCが新たに開発した新型原子力宇宙船。
正式名称は「Atmic Astro Boat」(AAB)で別名「宇宙船AAB-γ(ガンマ)」
正体不明の発光体に遭遇して消息を断った他の宇宙探査船の捜索中に自身もその発光体に襲われ、後にギララとなる胞子を機体に吹き付けられ、それを地球に持ち込んでしまう。
劇中には他に「アストロボート」を収納する宇宙母艦、月面移動用の「アストロスクーター」が登場した。
また、東宝以外の邦画作品では珍しく架空の兵器として「ミサイル搭載装甲車」と「自走レーザー砲」も登場する。実在の兵器として自衛隊のF-104や61式戦車が登場する。
本作に登場する「ミサイル搭載装甲車」は全くの架空兵器と思われがちだが、実はソ連のISU-152をベースにしたスカッドミサイルの輸送起立発射機8U218がモデルになっている。当時今井科学から「BB-3ミサイル戦車」という名前で商品化されておりこれを原型にしたものと思われる。
キャスト
佐野:和崎俊也
リーザ:ペギー・ニール
バーマン博士:フランツ・グルーベル
道子:原田糸子
宮本:柳沢真一
塩田:園井啓介
加藤博士:岡田英次
FAFC技官:穂積隆信
木村:浜田寅彦
月ステーション通信員:藤岡弘
スタッフ
製作総指揮:中島渉
製作補:島田昭彦
監督:二本松嘉瑞
脚本:二本松嘉瑞、元持栄美、石田守良
特撮監督:池田博
特撮監修:川上景司(日本特撮映画株式会社)
撮影:平瀬静雄、大越千虎
美術:重田重盛
編集:杉原よし
音楽:いずみたく
監修:光瀬龍
スタッフの中には島倉二千六ら東宝の特撮スタッフも多く参加していた。アルバイトとしてこっそり参加していたが、ロケハン先で東宝の円谷組スタッフと鉢合わせてしまったことからこれがバレて解雇されてしまったところを日本特撮映画株式会社に合流したという。
主題歌
「ギララのロック」
作詞:永六輔 作曲:いずみたく 歌:ボニージャックス セリフ:柳沢真一、原田糸子
ソノシート版ではセリフは和崎俊也。
「月と星のバラード」
作詞:永六輔 作曲:いずみたく 歌:倍賞千恵子
余談
- 怪獣としてはどちらかといえばマイナーかつマニアックなギララであったが、2008年には河崎実監督によるこのギララが再登場する『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』が公開された。
- 上記の『宇宙大怪獣ギララ』を現代映画として復活させた作品だが、物語は前作と全く異なっており、第34回主要国首脳会議(サミット)が行われた北海道にギララが現れてタケ魔人なる巨人と戦うというもので、そのタケ魔人役にはあのビートたけしが起用されている。
- ちなみに劇中では、ギララは当初無名の怪獣だった。しかし首脳会議中にいきなり入り込んできた少年が「眼がギラギラしてるからギララ」と勝手に命名。少年は即座に追い出されるが、以後は関係者たちがギララと呼称するようになった。
- 同じ松竹の映画である『男はつらいよ 寅次郎真実一路』に出演したことがあり(とはいえ、出演シーンは新撮ではなく原作の流用だが)、渥美清の演じる車寅次郎と共演している。
- シリーズ恒例の冒頭の夢のシーンで登場、原作同様日本全土を滅茶苦茶に破壊して回るが、最後は総理大臣の説得を受けて立ち上がった寅次郎博士のお守りから発せられた謎の光線を受け、「トラサ~ン……トラサァァァン……」という悲しげな鳴き声を発しながら倒された(と思われる)。
- 同じ松竹のキャラでありながら、作中の人物からは思いっきり「あ、ゴジラだ!」と言われてしまっている。
- さらに寅さんが夢から覚めると目の前にゴジラの玩具のマスクを被った少年が立っては寅さんが驚くシーンがあり、玩具のマスクだが会社の枠を超えた「寅さんとゴジラの夢の共演」が実現している。今作が公開された年には『ゴジラ(1984年)』が公開された。
関連項目
松竹 松竹特撮 松竹怪獣:松竹は劇場版ウルトラマンの配給元として知られているが自社製作の特撮映画作品は本作と『昆虫大戦争』などがある。
宇宙大怪獣ギララ→ギララの逆襲