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マニュアルトランスミッションの編集履歴

2021-12-20 13:00:27 バージョン

マニュアルトランスミッション

まにゅあるとらんすみっしょん

自動車、バイク、農機などで運転手が変速比を手動で選択操作する変速機。

概要

ドライバーが変速比を自ら選択する自動車(四輪車・二輪車)の変速機(トランスミッション)。一般的にMTと略される。


オートマチックトランスミッションに対して、従来の方式を指す言葉として生まれたもの(レトロニム)である。


初心者にとってはクラッチ操作が鬼門になるが、クラッチ操作(特に坂道発進と車庫入れ時の断続クラッチ)さえ慣れればあとは大して難しいものではない。自転車に乗るのにいちいちバランスをとることを意識しないように、MT車に乗り慣れれば特段意識しなくてもクラッチを操作できるようになる。普段からMTの感覚に慣れきっている人間にとっては、ATのクリープ現象やキックダウンなどは逆に思うように動いている気がしない為、時に恐怖ですらあるという。


趣味性が強い二輪車に関してはむしろMTの方が主流であり、「ATの二輪車=スクーター」というイメージがある(ツアラーなどでは非スクーターでATの二輪車もある)。出力重量比で言えば四輪車に比べると車重に対しトルクが十分あること、さらに車体制御の楽しみの1つにクラッチ操作があるためである。また、変速機の質量差はほぼ同一車格のオートバイ用サイズでMTに比べATが20kgほど増となり、これは普通二輪免許のバイクでも15%前後の変動となる。重くなる分車体傾斜のための体重移動はATのほうがシビアになる。


エンジンの出力が極めて大きく、自動車のような頻繁な変速の必要のない鉄道・船舶用の変速機は、現在ではすべてオートマチックだが、過去には手動変速の機械式変速機を採用した気動車があった(後述)。


メカニズム

5MT用通常版シフトパターンステッカー

マニュアルトランスミッションは、変速の際、人の手動(一般的な自動車の場合は足踏み式ペダル)クラッチによる動力断によって、歯車のスムースな噛み合わせを可能としたものである。


常時噛合式とシンクロナイザー

一般向けの自動車の図解では選択されたギアだけが噛み合っている(選択摺動式)構造図が多いが、実際にはいちいち歯車を噛み合せたり離したりするのは高度な技術を要する。現在のマニュアルトランスミッションのほとんどは常時噛合式と呼ばれるもので、簡単に言うと、


  1. 各々の段のギアは常に噛み合って回転している。
  2. 軸はギアと直結しておらず、ベアリングを介して自在に回転している。
  3. シフトレバー操作は軸と一緒に回転している“スパイダー”という爪をスライドさせる。
  4. 選択されたギアにスパイダーが噛み合い、エンジンと駆動輪がつながる。

というようになっている。


が、これでもクラッチが惰性で回転しているためスパイダーとギアがうまく噛み合わないことも多かった。そこでクラッチとトランスミッションの入力側の軸をすべり継手のようにして摩擦力で解消するシンクロナイザーが開発された。これを組み込んだマニュアルトランスミッションをシンクロメッシュと呼ぶ。


常時噛合式は自動車普及の早い時期に採用されたが、シンクロメッシュの普及は1960年代後半に入ってから。当初は耐久性の問題からトラックやバス、作業機械には採用されなかったが、1980年代後半頃からこれらにも採用されるようになり、現在のマニュアルトランスミッションのほとんどは「常時噛合式・シンクロメッシュトランスミッション」である。


ドグミッション

主に競技用車両に使われているギアにはシンクロメッシュ機構がないドグミッションと呼ばれるものがある。

回転を合わせるシンクロメッシュ機構がないのでギアチェンジの際にはドライバーが回転数を合わせて切り替える必要があるが、回転数を合わせる機構を持たないので部品テンスが少なく大きなギアを用いた強度の高い構造とすることが出来る。

ドグと呼ばれる凹凸があり、これが噛み合うドグクラッチと呼ばれる機構で断続を行う。

回転数を合わせてギアチェンジを行うので、クラッチ操作をなしでのギアチェンジも可能となる。


2ペダルMT

変速の操作は手動で行うが、クラッチ操作は電子制御によって自動で行うMT。

足でのクラッチ操作が不要なため、クラッチペダルがない。

クラッチを持つが法律上はクラッチ操作の有無でATとMTを区分している為、ATの一種と定義されAT限定免許でも運転可能。


MTの特徴

EDCにつき坂道発進注意

従来、MTはトルクコンバータによる損失と重量増のあるATに比べて燃費が良いとされてきた。しかし2000年代の燃費競争により伝達効率に優れるCVT車が台頭。変速制御には燃費重視のセッティングが施され、トランスミッションそのものの伝達効率もめざましく向上したのに対し、成熟した技術であるMTは燃費を伸ばす余地が少なかった。日本の燃費基準であるJC08モードでは、同一車種でも軒並みMTの方が燃費が悪く出ていた。そのため、MTは燃費が悪いという従来とは全く逆のイメージが生まれている。


実際のところ、MTはギア比とアクセル開度の両方をドライバーが調整しなければならないために燃費は運転者の技量によるところが大きい。これに対し、AT車のドライバーが選べるのはアクセル開度のみなので、AT車の燃費はあらかじめプログラムされた変速パターンによるところが大きい。特にJC08モードでの変速パターンは著しくMT車に不利に設定されていて、MTならJC08モードのカタログ値を上回る燃費を簡単に出せるのに対し、ATでカタログ値並みの燃費を出すのは極めて難しかった。新しい国際的な燃費基準であるWLTCモードでは、この問題はほぼ是正されており、それでも同一車種の同等グレードで比べるとMTよりCVTの方が燃費に優れるモデルが多いものの、アルトHA36型)ではMTとAGSがほぼ同等(いずれもCVTには劣るが)、スイフトスポーツ(4BA-ZC33S型)やジムニー/ジムニーシエラ(JB64/JB74型)ではATよりMTの方が良い値が出ている。


近年の日本ではMTは貨物車や大型車(重機バス)かスポーツカーというイメージがあるが、変速する速度は機械の方が当然早いのだから、速さを求めるならATの方が有利である。フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーにはMT車がなくなり、ポルシェも911で一部の限定モデル等しか存在しなくなった。日本のトヨタ スープラやホンダ NSXも、多段トランスミッション採用のためにATのみとなっている。


日本車におけるMT

今や、日本国内で販売されている乗用車と普通車以下の貨物車の98%以上がATであり「MTは絶滅危惧種」と言われるほど。それでも三菱以外の日本車メーカーはMTのモデルを残している。各メーカーの2020年夏時点の登録車のラインアップは次の通り(OEM除く)。


マツダは最もMTの設定に積極的で、CX-8以外の全ての自社生産車種に設定している。コンパクトカー(MAZDA2)やオープンスポーツ(ロードスター)をはじめ、ミドルセダン/ワゴン(MAZDA6)やクロスオーバーSUV(CX-3CX-30CX-5)でもMTが選べる。もちろんMAZDA3もMTを設定している。


トヨタヤリス(GRヤリス含む)、86カローラ(カローラスポーツ、ツーリング含む)、C-HR(1.2Lターボガソリンエンジン搭載の2WD車のみ)の各車種に設定。スズキは軽自動車ではMTの設定が多いが登録車はスイフトスイフトスポーツ含む)とジムニーシエラだけである。ホンダシビック(ハッチバック、タイプR)のみ(フィットは先代モデルまで設定があったが新型では廃止されてしまった)。日産フェアレディZノートNISMO S、マーチNISMO S、NV200バネットの各車種だが、スポーツ志向のモデルとライトバンだけで普通の乗用車のMTモデルが無い。スバルBRZのみに設定されている。ダイハツグランマックスがMTを選べる(ただしインドネシア製の逆輸入車である)。


軽自動車では、MTを設定している乗用車はアルトアルトワークス含む)、ワゴンRジムニーコペンS660の5車種。あとは軽トラックN-VANなどの貨物車のみ。エブリイは5ナンバーのワゴンはATのみの設定だが、4ナンバーのバンはすべてのグレードにMTが設定されている。ハイゼットも同様にクルーズターボSA IIIは2WD/4WD共にMTが設定されている。


日本ではすっかりマイナーになってしまったMT車だが、信頼性や故障時のメンテナンス性を求める途上国では今なおMTの方が主流。日本車各メーカーも日本国外ではMTのモデルを多くラインアップしている。


先進国でも、ヨーロッパ(EU圏)では2010年代でもなお4割がMTであり、ATでもMTをベースにクラッチ操作を自動化したDCTやセミATの比率が高い。特にイタリアフランス2000年代までATの比率は10%未満と、MTが圧倒的多数だった(ただし、両国とも2010年代後半以降AT車のシェアが急増している)。


アメリカでは1960年代には既にATが主流になっていた(1965年時点で約9割)。ところが、その後も長らく、アメ車のMT設定率は意外と高かった(本国では)。というのも、消費者の権利意識が高いアメリカでは、消費者の選択肢が充分に用意されていない商品は“足元を見られる”からである。しかし、2017年にはAT車の比率が97%まで伸びており、今でもMTモデルを設定しているアメ車は少ない。


今でこそAT主流の日本車だが、1970年代までは高級車を除きMT主流で、1980年代中盤でもほぼ五分五分であった。それがバブル期までに圧倒的多数がATに入れ替わったのである。

一般人だけでなく車好きもATを選んだ背景として考えられるのが、80年代の日本車の過剰な高出力競争である。当時の2000cc未満の日本車の多くは販売戦略としてカタログ値で排気量1L当たり100PSを凌駕する設計をしており、最大トルク域を4000rpm以上という四輪車用の実用域では殆ど使わない極端な高回転域に置くものが多かった。こうしたエンジンは発車時の低速回転(700~1200rpm程度)ではトルクが極めて細くなるためクラッチの扱いが難しく、簡単にエンストする運転のし辛い代物になってしまっていた。AT車のトルクコンバーターはこうした細いトルクでも、どうにか繋いで起動ができたのである。こうして当時のドライバーはMT車に必要以上に苦手意識を持つようになり、運転のしやすいAT車が好まれるようになった。1991年のAT限定免許の創設を経て、販売台数の98%がAT車という今日に至っている。


21世紀以降に登場した車種のエンジンの主流は、燃費重視で粘り強い特性を持つ低回転型になっているので、80年代のピーキーなMT車よりずっと運転が楽である。MT自体も改良されているため、昔のMT車にありがちだった「発進時のクラッチ操作がシビア」、「シフトフィールがグニャグニャでどこのギアに入っているのかわからない」、「街乗りでは小まめなシフト操作が欠かせない」といったものは、(スポーツ系車種を含めて)ほとんどないといっていい。坂道発進時の後退を防ぐ「ヒルスタートアシスト」の搭載も常識化しており、中にはブリッピングを自動的にやってくれるMT車すらある。


将来

耐久性の低さ、燃費の悪さ、変速ショック、レスポンスの悪さ...といった往年のATの弱点が潰されていったことにより、実用面ではMTの優位点は非常に少なくなった。乗用車はもとより、バストラックなどの大型商用車でもATのみとする車種が出現している。


さらにMT車は全車速追従アダプティブクルーズコントロール(ACC)のような自動運転技術や、衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備との相性が悪いとされ、MT車の生き残りは厳しさを増している(例えば、スバルは目玉技術であるEyeSightをMTに設定したことがない)。MT車はトップギアのまま速度を落とすとエンストしてしまうので全車速対応ACCは難しいと思われるが、衝突被害軽減ブレーキに関しては動作時にエンストしても構わないのであり、技術的困難はないはずである。実際にホンダやスズキやマツダはMTモデルにも衝突軽減ブレーキを搭載している。スバルがMTにEyeSightを設定したことがないのは、現行MT車がいずれもスポーツモデルのみだから(趣味性を重視する層には「余計なもの」と先進安全技術を嫌う人が多い)という可能性が高いが、日本では衝突被害軽減ブレーキの装着が義務化されるため、現行型ではEyeSightの設定のないWRX STiのMTモデルも次期型では採用されるだろう。


「自動車の電動化によりMTは絶滅する運命」とよく言われる。実際に電気モーターはすべての回転数で最大トルクを発生するので、電気自動車(EV)にトランスミッションは必須ではないが、高速域での効率改善を考えると変速機の搭載が望ましいとされる。実際に実験車両ではEVにMTを組み合わせた例があり、自動車がモーターで動く時代になってもMTが(細々と)生き残る可能性がないわけではない。


鉄道の場合

キハ01形極寒地&孤島的暖地使用

鉄道車両では、気動車ディーゼル機関車の変速方式の1つの機械式がマニュアルトランスミッションにあたる。日本で戦前以来使われていた変速機は概ね3速程度の必要最低限の仕様で、1・2速が1960年代以降の液体変速式の「変速段」に、3速が「直結段」にあたる。国鉄レールバスキハ01にも採用されたが、鉄道車両の場合、総括制御ができない、および大出力エンジンへの対応が困難(日本の場合DMH17系エンジンで150〜180psが限度。キハ01の場合60~75ps)という欠点を抱えていた。連結すると運転はとても大変で、1両ごとに運転士を置いて合図で同時に変速するという超人的な操作を要求された。


そのために機械式は1950〜60年代には日本からほぼ絶滅し、現在の営業車はなく、動態保存車は南部縦貫鉄道の2両のみである。更には機械式だったキハ07でも、一部は長編成用に液体式に改造されていた。一方、ドイツでは機械式気動車用の総括制御装置を積んで1990年代まで現役であった例があった。


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