警告
本記事は『Fate/Grand Order』2部6章「妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ」のネタバレが含まれます!!
概要
グロスターで開かれる舞踏会にてアルトリア・キャスターとの対決に負けた上に真名を暴露され、『予言の子』へのコンプレックスや過去のトラウマを刺激されて精神的に追い詰められた妖精騎士トリスタンことバーヴァン・シーが、モルガンから無断で持ち出した礼装。
エディンバラで再びカルデア一行と対峙した際に使用され、主人公とアルトリアを地上と星の内海の間の世界に閉じ込めた。
「甘き夢(ニューホーム)」「昏い淵(ホライゾン)」「罪なきもの(ヘブンリー)」などいくつかあるうちの「失意」の特性を持つ『庭』(ガーデン)の一種で、理論的にはマーリンが幽閉されている塔と同じもののようである。
そしてこの世界の特性は、自分の心の中にある不安や自嘲などのマイナス感情から生まれた幻影に「嘘や妄言のない絶望」を言わせ、訪れた者の心をへし折るというたいへん悪辣な仕組みである。
維持時間は使用者の魔力量に依存し、魔力が切れると解放される仕組みになっている。また、現実から礼装を物理的に破壊する事でも解放される。
アルトリアの方は、己が運命や妖精國に対する諦観が心に根付いていた事に加え、自前の技術で即回線をシャットアウトできた為、心が砕けることはなかった。
しかし主人公に対しては、本人や他の誰もが自覚していなかった、あるいは"希望"が失われるため無意識に目を逸らしていた、人理漂白および彼/彼女の未来に対する絶望を容赦なく突きつけてきた。
まず初めにカドックが回復してカルデアのマスターとして改めて配属され、自身は(善意込みで)もう戦う必要のない予備のマスターとして扱われた「もしもの世界」を見せられる。
しかしそれは、彼(彼女)が適任さえいれば簡単に取って代わられる程度の存在だった事の比喩でもあり、さらに今まで身の丈に合わぬ冒険や過酷な戦いを長きにわたり繰り返し、普通などとは程遠い感覚を身につけざるを得なかった彼/彼女は、もはや戦いが終わっても元通りの平穏な一般人に戻れる見込みはなかった。
加えて、七つの特異点を修正し魔神王を倒せば解決できると言われていた(実際その通りだった)人理焼却の時とは違い、人理漂白の原因かつ元凶と思われる七つの空想樹を切除し異星の神を倒したとしても、それで本当に汎人類史が蘇る保証などどこにも無い事を、ホームズの姿を取った自分の弱音に指摘される。
何より、幾つもの世界を理不尽に消滅させる罪を否応なく背負い、死の弾丸となって神殺しまで成した自分は、もう心身ともに後戻りはできない状況にいる事、それゆえ正常な一般人として振舞おうとするのはもはや"異常"になってしまった事を、オベロンの姿を取った自分の弱音に指摘され、心が折れかける一歩手前に追い詰められる。
しかし、彼(彼女)は医者から贈られた言葉を思い出し、あの日打倒した『善』に伝えた「生きたい」という願いの答えを探す為にその幻影を乗り越えた。
たとえもう自分に「未来」が無いのだとしても、その道程の答えを得るまでは終われない。後戻りできないからこそ、走り続けるしかないと口にした。
そして「弱音」を乗り越えた事を示すように、目を覚ました両者の前にはマシュによって粉々に破壊された「失意の庭」の残骸があった。
そして、この異空間に閉じ込められ克服した経験を得たことが、ブリテン異聞帯攻略の最後の最後に自分と仲間たちを最大の窮地から救う鍵となる。
一方バーヴァン・シーは、ベリルに乗せられてウッドワスに使用した呪術で魂が腐っていく状況に置かれながらも、これを仕掛ける前は戦闘が可能な状況にあったが、これを使用したのちに主人公とアルトリアが脱出を果たした頃には手足が全く動かない状況に陥っており、手指が腐り落ち始めるほどに容態は悪化していた。
ベリルはこれを使用した反動であると言うが、それが正しければ使用した側もタダではすまない正に危険物であり、モルガンが誰にも使用を許さず死蔵し続けていたのも納得である。
余談
『FGO Spotlight Lostbelt No.6』の解説
奈須きのこ氏曰く、第2部の舞台を異聞帯と決めた時点でいつかやらなくてはならない事として課題に挙がっていたもの。第6章にてアルトリア・キャスターと知り合い、マシュと別れ、オベロンという友人を得たことでそのタイミングがやってきたのだという。
『失意の庭』とは罪(生き方)を問うのではなく、その人物の決して「見たくない/恐れているもの」を見せるもの。人それぞれが持つ価値観・道徳・倫理性が今ある意志をへし折りに来る底なし沼。
自分が一番恐れているものを自分だけの答えで受け入れ、人間的に強くなる(成長する)ことで霧散するものとのこと。
反響
「型月」に限らず、ただの一般人である主人公が、世界を救う(滅ぼす)重圧に耐えられず心が壊れてしまう、あるいは既に壊れていることを示唆するファンや作品、二次創作などは昔から存在するが、それを公式、しかも奈須きのこ氏本人が突き落としてきたシナリオは、メッキの剥がれた妖精國の雰囲気と相まって、多くのマスター達の心をゴリゴリと削っていった。
アルトリア・キャスターにとっても、心が折れそうになる場面や精神的にキツイ罠に捕らえられた際、魔力をカットする形でレジスト(邪推するなら「突きつけられてなお目を逸らし、逃げる」という正攻法にして現実逃避)せず、真正面から直視し、膝を折ってなお、最後には立ち上がる姿に(彼女だけでなく追い詰めてきた失意の庭そのもの含めて)驚かされる等、その影響は大きかった模様。
ファンの間では感傷が一周し、誰が早く失意の庭を抜け出すか、あるいは抜け出せないかを考察する「失意の庭RTA」または「失意の庭逆RTA」なるものが考案されている。
サーヴァントのうち、大願を叶える為に似た経験をしているだけでなく心象風景そのものが実質失意の庭でありしかもその地獄のような光景を見て安心する(言い換えれば「初心に帰れる」)という境地にまで至ってしまっている天草や、スキル「鋼鉄の決意:EX」により極めて高い精神強度を誇るうえ、宝具「虎よ、煌々と燃え盛れ」により牢獄などを脱することに特化した能力を持つエドモン・ダンテスは早く脱出できるだろうと評される事が多い。
この他にも、鋼のメンタルの持ち主であるジャンヌ、聖杯の泥に耐え、固有結界すら打ち砕く対界宝具を持つギルガメッシュや逆境を乗り越える事を良しとするスパルタクスは無論、こちらの部類だろう。あとドリカムおじさんとか。
恐らく、凄惨な人生を送っていたとしても、その人生を生き抜いた者や自分なりの「答え」を見出した者[[であれば、抜け出しやすくなるのかもしれないと考察する声もある。
この理論が正しい場合、逆に生前に未練のあるサーヴァントは脱出が厳しい事になるが、これに関しては幕間の物語や過去作の聖杯戦争を経験したかで変わってくるという指摘もある。
一方で、ヴリトラの場合は観客に回り、挑戦者が失意の庭で挑戦者が懸命に足掻く様に喝采を送るのではという声も(さすがにあっさりクリアされたり、挑戦者の心が折れたりすれば興が醒めると思うが)。
なお、「カドックが回復した結果、マスターとしての立場がなくなる」可能性については、この次のトラオムでの展開をもって(少なくとも人理漂白が解決するまでの間は)消滅したと言えなくもない。
断罪の庭
類似ケースとして2022年版ぐだぐだイベントに登場した呪い空間がある。『断罪の庭』とは、『FGO Spotlight Lostbelt No.6』にて奈須きのこが『失意の庭』になぞらえて命名したもの。
きのこ曰く『失意の庭』と近いようで遠いもので、こちらは社会の価値観で罪を問うもの。
そのため、「お前たちの価値観なんか知るかバカ、こっちは自分の価値観だけで手一杯だ!」という罪を背負う覚悟がガン決まってる人間は一刀両断するとのこと。
具体的には、織田四天王+ミッチーによる本能寺の変を疑似体験させられたノッブと、先に散った名もなき新選組隊士達の怨嗟に襲われた沖田は、それらが身内に化けた怨霊と分かっていたとはいえ躊躇なく殲滅。多少のダメージは受けたものの自力で脱出している。
実際、裏切りが日常茶飯事の乱世を生きたノッブにとっては地雷ではあるが決定的なレベルを避けており、戦死より掟違反や内部粛清による死者のほうが多い新選組出身の沖田にとっては"よくあること"であったため、前例よりはぬるかったとする意見が強い。
ファンの間では実際に彼女らが『失意の庭』に閉じ込められた場合、沖田は「仲間と共に最後まで走れなかった病床の無念の日々」を、ノッブには「親しい者たちが信勝のように自身の為に積極的に死ぬ事」を見せてくるのではないかと推測されている。
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Fate/Grandorder 妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ
アフロディーテ:オリュンポスで行われた主人公への精神攻撃の先例。