概要
人形爆破とも。
カポックとはこの場合、小道具用の発泡スチロールの塊の事を指し、発泡スチロールで怪獣の造形物を作り、それに火薬を詰めて爆発させる事で、「攻撃を受けた怪獣等が、粉々に砕け散る」という演出を行うことができる。この際に用いられる造形物を爆破用人形、もしくは爆破人形という。
カポック爆破風に破片が飛び散る「コルク爆破」という手法も存在する。
特撮番組においては、かつて赤字覚悟で予算をつぎ込む社風が売りだった円谷プロダクションのウルトラシリーズにおける演出が有名である。一方で仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズを手掛ける東映では、予算に関する社風が違う為なのか基本的には見られず、爆発シーンは概ね編集による「怪人が倒れると同時に地面が爆発」といった演出が多い。
ウルトラシリーズでの歴史
円谷特撮においては昭和のウルトラシリーズで怪獣が爆発する際の主力となる演出技法であり、最盛期だった『帰ってきたウルトラマン』~『ウルトラマンタロウ』においては造形技術の向上に加え、視聴率対策の一環なのか爆裂と同時に人形内部の鮮やかな粉末が飛び出したり、ナパームが内側からメラメラと燃え上がるなどとにかくド派手であり、ファンからの評価が高い。
それなりに予算がかかる演出である事も確かで、またオイルショックにより石油加工品であるカポックが手に入りにくくなった事もあり、『タロウ』後期以降は頻度はある程度抑えられたが、それでも予算を削減した『ウルトラマンレオ』の後期においても見られる事から、お決まりの演出としてシリーズに定着していた事が分かる。
その後1980年代に消防法の改正によって、ガソリンを用いた演出が制限されるようになったことで、『電光超人グリッドマン』、海外制作のウルトラマン、『ウルトラマンゼアス』等、平成初期の作品においてはCGによる合成や、カットの編集による爆発を用いるなど、一時的に見られなくなった。
久々のTVシリーズである平成三部作においても、『ウルトラマンティガ』においては新技術の試行錯誤故にCGモデルや、爆炎の中から破片だけ飛ばすCG演出の方が多く、人形爆破は健在だったものの回数自体はそれほど多くなかった。しかし『ウルトラマンダイナ』から徐々に増えていき、『ウルトラマンガイア』『ウルトラマンコスモス』等ではCG合成よりも迫力があることから多用されていき、平成においてもその演出の痛快さは視聴者から少なくない人気を集めていた。
特に『ウルトラマンコスモス』の前半においてはエピソード毎にルナモードとコロナモード(カポック爆発)を使い分ける事が出来たことから、一定の制作期間を脚本に無理をさせずに確保出来たことも大きかった。
平成ウルトラマンにおけるカポック爆発は、前述の消防法の改正によってナパームこそ使用できなくなったものの撮影技術は更に発展し、「カメラアングルが変わった瞬間に棒立ちの怪獣が爆発する」という演出だったものが年月の経過と共に洗練され、光線をくらった時のポーズで爆発する、という演出へと変化していった。『ガイア』『コスモス』では爆破が連続しテンポよく怪獣の身体が頭の上から粉砕されていくという(現実で考えると中々グロい)ド派手な物へと変化していった。
細かく人形を砕いていくことで、昭和の爆発の際によくあった「砕ききれず発泡スチロール丸出しの肉片が転がる」という難点も解消されており、技術の進歩が窺える。またナパームは使用できなくなったものの、小規模な火花を散らせたり地面を発光させるなど新しい手法によって派手な演出を生み出したり、カポック爆発とCG合成を組み合わせて肉片が粉々に消え去る様な演出に見せていた事もあった。
しかし人形作成や撮影には依然として手間暇がかかる上に、円谷の財務状況が苦しくなったことによる予算節約により『ウルトラマンネクサス』以降は再びCG演出が増えるようになり、『ウルトラマンメビウス』第2話のグドン戦(劇場版も含めると本編以前に制作が始まっていた『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』のガッツ星人)以降は久しく見られない演出となっていた。その後怪獣がバラバラになる演出は「怪獣が倒れると同時に地面が爆発」「光線を喰らった後に周囲が大爆発」という演出が多用されるようになった。
しかしその約15年後、『ウルトラマントリガー』第1話のゴルバー戦にて久々にこの演出がなされた際には、令和にカポック爆発が復活という事でSNS上でも話題となった。そして第25話(最終話)のメガロゾーア第二形態で再びこの演出がなされ、トリガーの最初と最後を飾った。
なお、ゴルバーのカポック爆破とメガロゾーアのカポック爆破は実は様式が異なるものである(精度の高い爆破人形を作成する為には実際のスーツが完成してから作成する必要があるため、準備期間のある一話以外では難しい)。ちなみにパワードダダの最期もカポック爆破となっている。
ちなみに後続の作品である『ウルトラマンデッカー』、『ウルトラマンブレーザー』では再びこの演出はご無沙汰となっていたが、『ウルトラマンアーク』第3話のディゲロス戦にて3年ぶりにこの演出がなされた。
『アーク』のパイロット監督である辻本貴則氏曰く「スタジオ内だとホリゾントの空(背景の壁に描かれた空)が傷付いたり汚れたりするので、今ではオープン撮影でしか出来ず。準備に相当時間を要し、もはやメイン監督のパイロット時しかチャンス無し。」とのこと。