概要
CV:竹内良太
実写版キャスト:???(第1作では非公開だが、続編にて判明)
白い和服を着込み、白頭巾で顔を隠した謎の人物で、殺せんせー最大の宿敵。
堀部イトナの保護者を名乗り、イトナと共にE組の暗殺に参加した。
口調は理知的で穏やかだが、カルマによる「他人全てが『当たればラッキー』の使い捨ての駒」という人物評に違わず、寺坂竜馬を騙した上で他の生徒を巻き添えにした暗殺作戦を決行したり、殺せんせーに三度目の敗北を喫したイトナを(自ら拾った存在でありながら)あっさり切り捨てたりするなど、その本性は冷酷非情なエゴイストそのもの。また「結果さえ出れば自分の手で殺さなくともよい」とも発言している。
イトナには殺せんせーと同じ触手を移植したり、生徒達も知らない殺せんせーの弱点を知っていて、粘液を出させる薬剤やら動きを鈍らせる光線銃を所持するなど、様々な情報やテクノロジーを何処からか入手している(経験して知った情報、あくまで用意された環境や支給されたナイフ・BB弾で太刀打ちするE組とは対照的)。自身の隠し持つテクノロジーだけでなく、E組の暗殺の成果さえ応用して暗殺計画を練る柔軟な思考を持ち、幾度となく殺せんせーを死の際まで追い詰めた。
殺せんせーには激しい憎悪を見せており、何かしら因縁があるようだが…
以下ネタバレ注意
(以下、16巻以降の内容に関連しているため閲覧注意)
プロフィール(※ネタバレ注意)
本名 | 柳沢誇太郎(やなぎさわ こたろう) |
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誕生日 | 12月10日(34歳) |
身長 | 172㎝ |
体重 | 65㎏ |
経歴 | 古都大学生体エネルギー研究室⇒国際エネルギー研究機関 |
趣味、特技 | 手品、派閥作り |
座右の銘 | 天才の一瞬の閃きは、凡人の一生に勝る |
世界の中で、彼が最先端を行く分野 | 量子力学、生化学、物理化学 |
彼を見た、ある高名な学者の言葉 | 「モラルの生体移植技術が欲しい。それさえあれば彼は完璧になれるのに」 |
CV | 真殿光昭 |
実写映画キャスト | 成宮寛貴 ※実写版第1作の時点ではネタバレなどに配慮してかシロの演者が伏せられていたが、2015年12月頃続編に関するニュースが報道される過程で正式に柳沢としての演者が発表された際、正体が成宮寛貴であることが明らかになった。 |
本名は柳沢誇太郎(やなぎさわ こたろう)。
かつて数千人を殺した実績から『死神』という通称で知られた人間であった殺せんせーを現在の触手の化け物へと変えた張本人である。
その素顔はパーマのかかった黒髪とキツネのようなツリ目で、左目は機械製の義眼をはめている隻眼の男性。対先生繊維でできた白頭巾で顔を隠していたのは殺せんせーに正体を知られないための工作であり、「シロ」としての声色もその一環として生まれた、ボイスチェンジャーを用いた仮初の声である(この設定ゆえ、アニメ版ではシロと柳沢のCVを別人が担当している)。正体を明かした後は「私」だった一人称も本来の「俺」へと変化した。
茅野カエデ(雪村あかり)が自らの正体を明かし殺せんせーに一騎打ちを仕掛けた一件を機に殺せんせーのモノローグで苗字が触れられ、過去編にて上記のフルネームと本職が科学者であることが正式に明言された。
元々柳沢はバイオ企業を営む一族の御曹司として生まれ、国を越えた非公式研究組織の日本支部(本部はアメリカ)の研究主任を任されている優秀な科学者であった(そのため、現在の姿になる以前より防衛省ともコネがあった)。穏やかで丁寧な素振りを見せる表向きと傲岸不遜な本性は現在と同様だが、当時は言葉や暴力で部下や研究員など周りに当たり散らすことも珍しくなかった(また当時は義眼を嵌めていない)。
また、茅野カエデの姉・雪村あぐりの婚約者でもある。素性発覚前、カエデ(あかり)に対して「唯一の兄」と発言しているが、あくまで姉婿(義兄)であり、両者に血縁関係は存在しない。
婚約者とは言っても、研究成果を報告しに行った大学で偶然見かけて周りからの評判を聞いたあぐりを見初めた後に彼女の実家である製薬会社の経営が破綻したことから共々「買った」という認識であり、見初めた理由も彼女の直向きさを見て「自分に足りない『情熱』を取り入れられるかもしれない」という理由に過ぎない。
そのため彼から見れば彼女も『死神』同様の「死んでも誰も文句を言わないモルモット」という認識で、裏では日常的に辛く当たっている。(実際婚約者のあぐり以外にも複数の女性と関係を持っており、少なくとも彼女に対して誠実さや一般的な意味での愛情表現などは無い)。また、自分にないものをあぐりが持っているからといった(ある種のリスペクト)は当人には言わず、「あぐりの実家が自分の父親の会社の下漬けだから情けで貰ってやる」と婚約を決めた理由を偽って横暴な態度で恩返しを要求していた。
当時から義妹のカエデ(あかり)は仕事の経験で培った観察眼からその横暴な本性を見抜いており「支配下に置いた途端に横暴になるタイプ」と評し、婚約者であるあぐりからも「婚約者にとって自分は召使いであって女じゃない」「才能は尊敬しているがどうしても好きになれない」「断ると物凄く角が立つ相手」とよく思われていなかった。
彼が考案した、生物細胞を利用して反物質を作製する理論が組織によって認められ実験が行われることになり、弟子の裏切りで捕縛された『死神』を実験素材として入手したところから、彼と殺せんせーの因縁は始まった。
大量殺人犯であるため死刑が確実で、明晰な頭脳に強靭な肉体を持ち、戸籍も無いため死んでも一切文句を言われない存在である『死神』は、彼が行おうとする非人道的人体実験のサンプルには最適だった。柳沢は囚われの身でありながら余裕を失わない『死神』に苛立ちつつも、「死んでも誰も文句を言わないモルモット」のあぐりを利用して『死神』を監視しつつ、彼への人体実験を開始する。
そしてその結果、見事に反物質細胞の作製に成功した。計算上、牛サイズの反物質生物が20頭いれば一国の電力が賄えてしまうという夢の研究。『死神』はその影響で徐々に人ならぬ姿に変貌してしまったが、結果だけ見れば柳沢の計画は大成功を収めたかに見えた。
ところが、これまで着実に成果を出しつつあった自らの研究をひっくり返す出来事が起きてしまう。月に設置した無人実験室の中で、『死神』の反物質細胞を移植されたマウスが寿命を迎えた事により反物質サイクルが飛び出し、月の7割を消し飛ばし三日月にしたのである。柳沢を含めた研究チームは『死神』を反物質生物へと変えることに成功したが、細胞分裂の減少、つまり細胞の老化が起こった際に何が起こるかを懸念していた。そのための実験として、万が一何が起きても大丈夫なよう遠く離れた月の無人施設で寿命の短いマウスを用いて老化を検証していたのだ。不安は研究チームの予想を超えた最悪の形で的中してしまったわけである。(つまり、月は殺せんせー本人が直接破壊したわけではない。あくまで間接的な原因だとも言えるが、結局は反物質細胞を用いた実験を行った柳沢自身が最大の責任者であろう)。
研究室の計算の結果、『死神』の反物質細胞の爆裂のタイムリミットは1年後…来年の3月13日。しかし爆発前に殺せば爆裂は食い止められる。柳沢は地球が滅ぶ危険性から彼を爆発前に殺処分するべく、直ぐに米国の本部に連絡を取る。しかしあぐりを通して当人に知られることになり、激しく動揺した『死神』の暴走を招いてしまう。
柳沢は彼の残酷な行く末を見かねたあぐりから救いを求められるが、自分の予想以上の能力を発揮した死神の触手細胞の力と挑発の言葉から自分の実験が結局モルモットと思っていた『死神』の手中にあったことを知り、さらに元々死神に洗脳されようが裏切ろうが何の問題もない道具として軽んじて扱っていたあぐり(そのため研究所での権限も最低限しか与えていかなかった)が死神に心を奪われている姿を実際に目の当たりにすると逆上してしまう。
柳沢はあぐりを散々痛めつけ、『死神』を抹殺すべく多数の警備員や研究員を率いて彼を始末しようと動き出す。しかし触手による並外れた能力・『死神』の元来の暗殺技術には太刀打ちできず、遂には部下が全員殺害され、自身の左目も彼の攻撃の影響で潰されてしまう。この時の怪我こそが左目に義眼をはめることになった原因である。
あぐりも暴走した死神を止めようとした結果、柳沢が開発し対死神用に使用した防御装置「触手地雷」の作動の巻き添えになって死んでしまう。
『死神』は自身の暴走で完全に廃墟と化した実験施設より逃げ出し、あぐりが自身の胸の中で死に際に遺した言葉を心に秘め、3年E組のクラス担任『殺せんせー』となった。
柳沢の方も覆面を被り、自分の目的を果たすためだけに声を変えてまで彼を追い、あの手この手で殺そうとした。死に際のあぐりに寄り添う殺せんせーを目撃し、彼が姉を殺した犯人だと誤認したカエデ(あかり)に対しても触手による心身への影響を気に掛ける素振をしながら、せんせー殺害の道具として間接的に利用しようとする始末であった(とは言え、先述の理由もあり、あかり自身は柳沢の協力を自ら拒否していた)。
あかりには「シロ」としての初対面の時点で正体を見抜かれており、柳沢も触手の事実を知った上で彼女を(あくまで自分の暗殺のための手足として)「イトナ以上の怪物」「殺し屋としての素質はクラス内でもダントツ」と評していたが、渚が捨て身の戦法を取り、彼女の殺意を氷解させてからは、イトナ同様すぐさまあかりを切り捨てた。
そして今度は「二代目」と呼ばれる謎の黒コートの人物を使って、殺せんせー(死神)を殺すことを画策する。
つまり、月が破壊され、殺せんせーが今の姿になり、カエデ(あかり)が復讐に身を投じ、ひいては暗殺教室が始まる原因を作りだした全ての元凶である。
これまでの経緯でもわかるように、殺せんせーに対する執着心は決して賞金300億円や地球を救う事が目的ではなく、自身の研究とプライドを傷つけられたことへの逆恨みと八つ当たりである。
名前の由来は、殿中で吉良上野介を暗殺しようとした浅野長矩をその日のうちに切腹処分とした柳沢吉保からだと考えられる。なお、彼は忠臣蔵など赤穂浪士関連の作品において事件の黒幕とされていることが多い。
末路(※ネタバレ注意)
(単行本18巻以降の展開・および実写版の続編やアニメ第2期のネタバレあり)
烏間とE組に敗北した二代目と出会った柳沢は、彼に殺せんせーが『死神』であることを伝え共に殺せんせーこと『死神』を殺すため滾る憎悪と無二の才能を研ぎ澄ますことになる。その目的はただの抹殺ではなく、「苦悶と無念に満ち、全てを否定する死を与える」ためであった。
そして3月。
防衛省や世界中の政府組織が共同作戦で、触手細胞を消滅させるビームで全周囲を覆った対先生透過レーザーバリア「地の盾」・ゾウガメ型触手生物によるエネルギー充電から放たれる触手細胞だけを消滅させる対先生透過レーザー衛星「天の矛」で殺せんせーを消滅させようとしていた。その直前柳沢は遂に触手細胞で異形の化け物に変わり果てた二代目と共に、殺せんせーを閉じ込めている裏山の旧校舎へと向かう。殺せんせーの遺体を手に入れることを目論む政府により一瞬だけ解除された地の盾の一部分から中へと乗り込む。
寿命が3ヶ月程に減る代わりに基本性能を殺せんせーの二倍に強化され、爆発の危険性もない二代目の圧倒的なパワーで殺せんせーを襲わせる姿に、茅野から自分は安全なところで他人ばかり傷つける傲慢さを批難されるが、今度ばかりは柳沢も本気だった。
二代目を強化するだけでなく自分にも関節、筋繊維、脊髄、神経と言った全身の重要器官に少しずつ触手細胞を埋め込み、人間としての姿は保ちつつ殺せんせー達に準じるパワーを手に入れていたのだ(正体を明かした後もシロとしての全身を覆う服装で行動していたのは、この処置の最中の身体を隠すためだと思われる)。
触手細胞によるパワーに加えて身体に仕込んだ武器、そしてどこまでも激しい憎悪(=愛を巡って産まれた殺意)で二代目と共に襲いかかるが、徐々に対応していく殺せんせーからは「ここは生徒が育つための場所だ 君に立ち入る資格はない!!!」と命をかけた殺意も軽くあしらわれてしまう。そこで柳沢は殺せんせーの最大の弱点を利用し、「あえてE組を庇わせ、殺せんせーを圧倒して散々に痛めつける」という作戦に切り換える。
E組が真相を知る発端となってしまった責任と殺せんせーを守るため、二代目に応戦する茅野。しかし柳沢は二代目の手に掛けさせ、その倒れ行く様を「姉妹揃って俺の目の前で死にやがった!!」と自身を裏切った「モルモット」のあぐりに例え悪態をつきながらせせら笑う。これにより、殺せんせーはフルパワーを解放し黒く染まる。
これ自体は柳沢の目論見通りであり、殺意の黒に染まった触手細胞が破壊生物の本性とし、この一年間の殺せんせーとしての偽善を剥ぎ取り否定させたとして満足する。逃げるE組に目もくれず黒く染まった殺せんせーを二代目のフルパワーで殺すことで復讐を完成させようとするが、何と殺せんせーが解放しようとするフルパワーとは、彼が狙っていたド怒りの黒ではなかった。
全ての色と感情を込めた殺せんせーが、「…教え子よ せめて安らかな…卒業を」という二代目に対する言葉と共に放った「怒りではない」究極の全力と純白の光によるエネルギー砲に二代目は飲み込まれ、その余波で柳沢は吹き飛ばされる。
単に衝撃波に巻き込まれただけでエネルギー砲を受けていない柳沢は、触手細胞で強化された強靭な体もあってダメージは無かった。しかし自らが開発・設置させた「地の盾」に激突し、重要器官も含め全身に埋め込んだ触手細胞が溶かされ、上空に投げ出されてしまう。
(誰か助けろ二代目
いや無理だ畜生あのバカ肝心な時に役立た
待てよ違う
作戦本部に連絡してバリア解除を
ダメだ するわけないし間に合うわけない
うあああああああああああああ)
(この俺が…こんな…ついでの雑魚みたいなやられ方…)
「嫌だぁぁーーーーーーーーーーッ!!!」
こうして彼は無残な最期を遂げた…
…かのように思われていたが、全てが終わった後一命を取りとめていたことが判明した。
しかし、全身(しかも関節・筋繊維・脊髄・神経と言った重要器官)に埋め込んだ触手細胞が強制的に溶かされた上に高所から落下したダメージの影響は大きく、もはや看護師などの力を借りなければ何もできない全身不随状態になってしまった。自らの生命を賭して挑んだ「殺せんせーの全てを否定しつくして苦悶と無念に満ちた死を与える」という目的も、本人が一貫して望み続けた「生徒による暗殺」という形での終焉で永遠に叶わぬものとなる。
更に彼が行ってきた(反物質や触手と言った)一連の研究は、エネルギーとしても兵器としても制御不可能との観点から「実用に値せず」という失敗作の烙印を押されてしまう。
プライドの高い彼にとっては雑魚のような最期を遂げるよりも自分が命を賭けた研究が世界から否定されるのを傍観するしかなく、自分が見下してきた他人に介護されながら余生を生きることしか出来ずに、自死することさえできないという状況の方がよほど屈辱的と言えるだろう。彼の行ってきた一連の行動は死んで償えるようなものではなかったということかもしれない。
渚はその柳沢の無残な行く末に、彼がこれからは「人間は誰かの助けを借りなきゃ生きられない」ものだということに気づくこと、そして、溶かされずに済んだその優秀な頭脳を「人のため」にも使ってくれることを望むのだった。
なお、アニメ版では柳沢が迎えたこの末路については一切語られておらず、上空に投げ出された場面を最後に登場していない。
また、実写版「卒業編」の終盤では、自ら触手細胞を埋め込んだ末に原作・アニメの二代目死神のような異形と化すものの、上記のエネルギー砲の直撃により一瞬で消し飛ばされて死亡するという結末に変更されている。
実写版でのキャストである成宮氏はインタビューの中で(こうした本編での末路を踏まえていたのか)柳沢のことを「頭が良いあまり、曲がった方向へ行ってしまった悲しいキャラクター」と評している。
実際原作中でも「全ての勝負に勝ってあらゆる敵を蹴落としてきた」(157話)という記述があり、下手に中途半端ではなくかなりの万能の天才であったことが窺えるが、その万能さが仇となり54話で殺せんせーが語っていたような「負ける経験の重要性」を理解せずに成長してしまったせいで、却って取り返しがつかなくなってしまったということだろう。
「勝つ経験の重要性」を知らずに成長してしまったせいで毒親に成り果ててしまった潮田広海が「E組が殺せんせーと出会えなかった場合のIF」を体現していた大人だったのに対し、浅野学秀達の「A組が成長したE組との勝負で正しい敗北を学ばなかった場合のIF」を体現する大人であったと言える。
だが、柳沢が存在していなければ、雪村家は社会的破滅を避けられず、そうなればあぐりも教師になること自体叶わなくなり、E組はおろか死神と出会う機会も失われ、そして、死神も改心することなく「殺せんせー」に生まれ変わることもなく、彼の弟子の死神も師と和解することは出来なかった。
その場合、ドン底に墜ちたE組の生徒達が救われず、家族が離散して孤独だった堀部イトナが暗殺教室に巡り合うことも、過去に囚われた浅野學峯が自責の念から開放されることも、イリーナとレッドアイやリュウキ(修学旅行編で女子生徒数名を誘拐した不良)が殺し屋や悪事から足を洗うきっかけを掴むことも、わかばパークのさくらがいじめのトラウマを克服して再び学校に通うことも、余命が3年に追い詰められていた梓の命が救われたりすることもなかったため、全ての元凶である彼の所業が作中の人物達を(結果的にとはいえ)救っているという当人も意図していない影の立役者になってしまっている。
このため、これらの何とも皮肉極まりない事態と役割を果たすこととなった柳沢の存在そのものが世の中のままならなさを表してもいるとも言っても過言ではない。