ウマ娘の2人
ウマ娘の企画が初めて発表された2016年3月時点で、2人とも最初期メンバーの18人の中に含まれている。当時名前も未公開だったその18人には現在のウマ娘からは抹消されてしまったキャラクターもいるが、クラシック三冠馬、七冠馬など日本競馬の各時代を象徴する名馬が集められていた。
シンボリルドルフ以来の三冠馬であり菊花賞では2着に7馬身差を付け稍重ながらレコードタイムを叩き出したナリタブライアン、中長距離の一線級牡馬と渡り合える牝馬などいないとされた時代に混合戦で数多くの重賞勝利を収めたヒシアマゾンは、まさしくその時代を象徴した2頭である。
ナリタブライアンはぼろぼろの学ランで番長風の勝負服、修正以前のヒシアマゾンの勝負服は改造セーラー服のスケバン風と、2人が企画当初から対のキャラクターとして作られていたことがわかる。また旧設定では「拳と拳で語り合う仲」とされていたこともあり、深い仲であることが窺える。
なお、発表当時のデザインにおいてヒシアマゾンが付けてないし履いてない服であったことは有名だが、実はナリタブライアンも最初はサラシが無く、こちらも相当危険なデザインだった。
互いの呼び方は媒体によって異なる。
STARTING GATE!においては、ブライアン→アマゾンは「アマさん」または「お前」、アマゾン→ブライアンは「(当初)ナリタ→(修正後)ブライアン」または「お前」。
アニメ1期においては、ブライアン⇔アマゾンとも「お前」。
うまよんにおいてはブライアン→アマゾンの「アマさん」が確認できる。
アプリにおいてはブライアン→アマゾンは「アマさん」「アンタ」「オマエ」、アマゾン→ブライアンは「ブライアン」「アンタ」となっている。
ウマ娘シリーズの各作品においてセットで描かれることが多い。
2人それぞれの描写については以下のタグを参照。
STARTING GATE!
2人同時に初登場。最初から漫才を繰り広げエアグルーヴ(ウマ娘)にウンザリされている。本作のナリタブライアンは無表情だが意外とノリは良いという設定になっており、お祭り好きなヒシアマゾンの悪ふざけにも即座に便乗するなど仲の良さが描かれている。第4巻の描き下ろしではナリタブライアンの気障な台詞に赤面するヒシアマゾンを見ることが出来る。
アニメ(テレビ1期、OVA、テレビ2期)
主人公であるスペシャルウィークが所属するチームスピカのライバル・チームリギルのメンバーとして登場する。本筋に関わってくることはないものの、概ね2人一緒にいることが多く、登場シーンでは親密な様子で描かれる。1期第6話のファン感謝祭ではリギル主催の執事喫茶に参加せず、2人で「ちびっこ探検隊」を担当していた。大勢の子供と賑やかに触れ合う2人を見られる微笑ましいシーンは必見。1期OVABNWの誓いにおいても良き友人であることが窺える描写があるほか、2期では2人ともほぼ台詞はなかったものの、相変わらず仲は良い様子。
うまよん
他の媒体に比べると2人セットの描写は少ないものの、ナリタブライアンに手作りの似顔絵弁当を渡すヒシアマゾンが描写されているほか、ヒシアマゾンの追い込みを見て「何故かちょっと微笑ましい」とニヤつく珍しいナリタブライアンが見られる。
スマホアプリ
それぞれの育成ストーリーで互いに重要な存在として登場する。
ナリタブライアンにおいては、デビュー前~クラシック級でメインのライバルキャラとしてヒシアマゾンが描かれている。
一方、ヒシアマゾンにおいては、デビュー前〜シニア級ラストまで一貫してナリタブライアンがメインのライバルキャラであるほか、ナリタブライアン本人の育成では描かれない史実の怪我(右股関節炎)についての詳細な描写がある。
大らかな性格として描かれているヒシアマゾンがナリタブライアン相手には泣くほどまでに取り乱したり、ナリタブライアンがヒシアマゾンを「喰らいつきたくなる灼熱」と称したりと、お互いに対する気持ちは大きいようである。
また、マヤノトップガン(ウマ娘)の育成ストーリーにおいては、2人がマヤノトップガンの成長に必要なキーマンとして登場する。目標を見い出せずにいたマヤノトップガンが打倒ナリタブライアンを目標とし、その様子を気に入ったヒシアマゾンがナリタブライアンに活を入れるべくマヤノのトレーニングを買って出るという物語が展開される。ちなみに最後の有馬記念では2人とも年下相手に大人げないほど強い。
『うまよん』で描写された「手作りのキャラ弁当を渡す関係」という設定も生きており、ナリタブライアンの野菜嫌いを手料理で支えるヒシアマゾンを見ることが出来る。
前述した3作品と比べるとよりぶっきらぼうな性格が強調されたナリタブライアンは、たとえ先輩であっても「アンタ」呼びのタメ口であるなど無愛想なキャラとして描かれているものの、ヒシアマゾンのことは「アマさん」と独自の愛称で呼んでおり、2人の親しい関係が見て取れる(ヒシアマゾンを「アマさん」と呼ぶのはナリタブライアンのみ、作中でナリタブライアンが「さん」付けをしているのもヒシアマゾンだけである)。
お互いのホーム画面の会話や1コマにも登場しているが、チームレースでの会話はない模様(2021年10月現在)。
アプリにおいては、ヒシアマゾンの勝負服は大幅に修正されている。こちらは馬名の由来であるアマゾネスを強調した衣装となっており、古代ギリシア服風のデザインが見られる。番長とスケバンという対の衣装ではなくなってしまったものの、ナリタブライアンの勝負服には星のマークが、ヒシアマゾンの耳飾りには三日月のモチーフが追加され、繋がりを感じさせるデザインとなっている。
史実の2頭
1991年生まれの同期。旧馬齢におけるJRA賞最優秀3歳牡馬・牝馬('93)、JRA賞最優秀4歳牡馬・牝馬('94)のタイトルを揃って獲得し、当時の歴代賞金王・賞金女王(ただし中央獲得賞金に限る)になるなど同世代の牡馬と牝馬をそれぞれ牽引する存在であった。
2頭の初対戦は1994年12月25日の有馬記念である。三冠馬のナリタブライアンは古馬を押し除け単勝オッズ1.2倍と圧倒的な1番人気に支持された。対するヒシアマゾンは19.1倍の6番人気と、G1を含む重賞6連勝中(当時の最高記録タイ)の馬としては低評価を受ける。これは当時中長距離G1でまともに牡馬と競える牝馬はいない、という固定観念があったためである。結果としてナリタブライアンは1着、ヒシアマゾンは3馬身離された2着であった。これによりナリタブライアンは名実ともに当時の現役最強馬となり、ヒシアマゾンは牝馬でありながら現役最強に次ぐ立場を確立する。4歳(現3歳)牝馬が年末のグランプリレースにおいて古馬一線級の男馬たちを完封するということは前代未聞の快挙だった。
なお、当時は外国産馬に対する規制が強く、ヒシアマゾンは八大競走中有馬記念以外全てのレースで出走権を持たなかった。2頭が揃って出走したレースは他にもあるが、互いに万全な状態でのレースはこれが最初で最後である。
翌95年、古馬となった2頭は春に揃って故障、ヒシアマゾンは秋には復調するものの、ナリタブライアンの成績は翌96年の阪神大賞典勝利まで低迷し続ける。その間、ヒシアマゾンは95年秋にオールカマーと京都大賞典を連勝しジャパンカップで日本勢最高順位の2着に入るなど好走を続け、牡馬に引けを取らない実力と、自身に勝った嘗てのナリタブライアンの強さを証明し続けた。95年の有馬記念でヒシアマゾンは有馬記念史上初の牝馬のファン投票1位、オッズにおいても1番人気となる。同じ6枠に入ったナリタブライアンもそれに続きファン投票2位、オッズも2番人気となったものの、2頭とも新星マヤノトップガンの前に敗れ、馬券圏外の入着となった(ナリタブライアン4着、ヒシアマゾン5着)。
翌96年、ナリタブライアンは阪神大賞典→天皇賞春→高松宮杯、ヒシアマゾンは香港遠征中止→安田記念を経て、春の締め括りとして2頭とも宝塚記念を目標としていたものの、直前になってまたもや2頭揃って故障し、結局ナリタブライアンはそのまま引退に追い込まれた。ヒシアマゾンは秋には戦線復帰し、翌97年も現役を続行する予定だったものの、春に再度故障したため急遽引退・繁殖入り。同年の秋に故郷アメリカ・ケンタッキー州に帰国、そのまま繁殖生活を送った。一方、ナリタブライアンは翌98年春に腸捻転を発症し回復したものの、同年秋に胃破裂によりこの世を去った。
ちなみに94年の有馬記念ファン人気投票では1位:ナリタブライアン、2位:ヒシアマゾンと、ここでもワンツーを決めている。有馬記念直前の時点で2頭は既に13戦と11戦レースに出走しており、どちらも時代柄を加味しても走り過ぎの部類である。しかしレースに出れば勝ってしまうのだから人気の高さも頷けるだろう。王道のクラシックとマル外の裏街道を揃って盛り上げた2頭が年末のグランプリでも期待通りの活躍を挙げたことは、ファンを大いに興奮させた。
2頭にまつわる逸話について
陣営の計らいで、引退したナリタブライアンにまだ現役のヒシアマゾンを引き合わせたというエピソードがある。京都で行われたナリタブライアンの引退式は96年エリザベス女王杯の前日であり、2頭は揃って近郊に逗留していた。かつてのライバルに会わせることで、成績が落ち込んでいたヒシアマゾンを奮い立たせる意図があったとされている。実際に馬同士がどう思っていたかを確かめる術は無いが、翌日のエリザベス女王杯でヒシアマゾンは2着入線を果たした。(残念ながら妨害判定により降着となった。2着→7着。)
また厩務員等の関係者から「ブライアンが結婚するならアマゾン」「アマゾンはブライアンが好き」といった発言があったとされている。
ファンや関係者を問わず強豪馬同士の繁殖に期待を寄せる向きはあったものの、2頭の交配が実現することは無かった。
2頭それぞれの生涯については以下のタグを参照して頂きたい。
表記揺れ
当カップリングを指す表記にはナリアマ以外にブラアマ表記も確認されている。現在投稿されている作品はナリアマタグとブラアマタグを両方付けているものもある。
ウマ娘の最初期に発表された設定ではヒシアマゾンがナリタブライアンを「ナリタ」と呼んでいる描写があったため、当時の二次創作にはナリアマ表記が多かったという背景がある。また当時は公式がナリタタイシン(ウマ娘)の登場を発表していなかったこともあり、区別する必要性が無かった。「ナリタ」は冠名であり、現在のウマ娘にはナリタブライアンとオーナーを同じくするナリタタイシンが登場することを踏まえると、識別子としてはブラアマ表記が優秀と思われる。
しかし、ナリアマという表記が定着したのは企画発表からアニメ化までコンテンツ展開が停滞気味だった2016〜2018年までの2年間のことであり、ウマ娘ファン、ナリアマファンにとっては不遇の時代を支えた表記とも言える。
余談
仲が良い上、ヒシアマがブライアンに料理を振る舞うような描写もあるため勘違いされがちだが、2人は同じ寮住まいではない(ブライアンは栗東寮、ヒシアマは美浦寮のしかも寮長である)。