BBQとも書かれる。
概説
アウトドアにおける食宴の一種。いわゆる野外料理。
熾した炭火の上に焼き網や鉄板を置き、そこに肉や野菜を載せて焼いて食す豪快な料理法。
特にアメリカでは、ホームパーティーの形態の一つとしてお馴染みのものとなっており、庭先で家族や友人、近隣住民を誘ってバーベキューと酒で盛り上がる事が、幸福な家庭の理想の一場面として思い描かれる事も少なくない。
アメリカ人男性にとって、バーベキューの調理・進行を仕切る「ピットマスター」(日本的に言えば鍋奉行)を務める事は、集団を指揮するというリーダーという意味で栄誉でありステータスともなっている。
さらにアメリカでは各地でバーベキュー大会が模様され、最強のピットマスターを決めるべく1日がかりで巨大な肉塊を美味しく調理する光景を年中通して追いかけていける。
日本でも今では行楽の一環として親しまれており、アウトドアブームに乗っかってバーベキューで友人たちと休暇を過ごし、それを趣味とする人々もいる。
昨今ではアウトドアグッズの進化と多様化により、より凝った趣向のバーベキューを楽しむ事が出来るようになった。
また、これらから転じてバトル物やファンタジーなどの作品では「対象を火だるまにして焼き殺す」という比喩表現にこの言葉が用いられる事も。
アメリカ発の野外調理法
しかし日本人の知るバーベキューはバーベキューではないという衝撃の事実が存在する。
アメリカにおけるバーベキューは、元々「ステーキなどの通常の調理法では固くなってしまう部位の肉を固まりのままを弱火かつ遠火で時間をかけて火を通し柔らかくなるように調理した開拓時代の料理方法」であり、後の時代になってから一般的にイメージされる「野外で肉をグリル(直火焼き)する事」もバーベキューと呼ばれるようになった。
よって本場のバーベキューでは巨大な肉の塊を最大丸1日は掛けて焼き上げて振る舞うものであり、日本のようにざく切りの食材を串焼きにしたりするのはただの焼肉パーティーと定義されている。
また、アメリカでもバーベキュー発祥の地である南部の「バーベキュー」は元々の「塊肉を長時間かけて加熱し柔くする」に近く、北部や都市部、郊外でも大都市への通勤圏内などでは、日本人がイメージする「バーベキュー」に近いものとなっている傾向が有る。
おそらくは、日本人が思うバーベキューは後者がイメージの元になっていると思われる。(例えば、映画会社などのエンタメ産業は都市部に有る場合が多いので、アメリカ映画やカートゥーンなどに登場するバーベキューは南部の田舎などの「昔の形を残した本場のもの」ではなく「ホワイトカラー層の家の中庭で行なわれるグリルに近いもの」が多くなってしまう。これらの事も日本人が思う「バーベキュー」のイメージを形成した一因と思われる)
16世紀の開拓時代、開拓移民のスペイン人がインディアンに「豚の丸焼き」の調理法を教えたところ、それをヒントに現地民たちが長時間かけて肉を燻製する調理法へ発展させたのが、こんにちのバーベキューに変化したとされている。
――そう、本場のバーベキューとは燻製調理の亜種である。その証拠として、アメリカではバーベキューの肉を焼くことを「スモークする」と言う。(例えば、アメリカのメーカーが製造したバーベキューコンロにも、たしかに炭火による「グリル」用に近いものも有るが、ほぼ必ず蓋が付いており、蓋を閉めて焼く事で肉に燻製香を付ける事が出来る)
肉は必ず大きなモモ・肩・ウデ等の赤身の塊肉、背骨や肋骨周辺の枝肉を使い(豚の場合は丸一頭炉に入れる場合も有る)、調理前にしっかりと味付けを施し、そこから低温でじっくりと火を通し続け、最後は自家製のバーベキューソースを付けて賞味する。
もう一つ、肉は焼き終えて火から離してから切り分けるもので、日本のバーベキューが「ただの焼肉パーティー」と邪道扱いされるのは、そもそもバーベキューを調理方法ではなくパーティーの形式と勘違いしていることへの皮肉でもある。
なにより日本のバーベキューとの決定的な違いは、「ホストとゲスト」という関係性にある。
バーベキューはパーティー料理ではあるが、パーティーである以上開催する“主催者(ホスト)”と招待する“歓待客(ゲスト)”の関係をきっちり定めておくのが本式の暗黙の了解となっている。
ゆえにピットマスターは調理に専念して客人に肉を振舞って持て成すのがその日の仕事であり、日本のように全員で宴会形式で騒ぐなど在り得ない光景としている。
ピットマスターと云う呼び名も、本来は「穴(pit)のように密閉された場所で加熱した」事に由来する。
アメリカでも時代や地域が違えば「バーベキューとはそもそも何か?」は色々と違い、「うちの地元のバーベキューこそ本式だ」的な話は、政治論争・宗教論争並に「危険な話題」となりかねないというブラックジョークが親しまれたり、「野外で行なうグリルの事を、うっかり『バーベキュー』と呼んでしまったのが原因で選挙に落ちた政治家が居る」という都市伝説が存在するほどである。
そもそも論として、アメリカ国内でも「バーベキューで焼くのは豚肉か牛肉か??」さえ地域や時代によって違う。(例えば、バーベキューという調理法が伝わった頃に、たまたま、豚肉より牛肉の方が入手し易かった地域では、それ以降「バーベキューで焼くのは牛肉」が主流になったし、逆に豚肉の方が入手し易かった地域ではその逆)
日本のバーベキューが現在のようになったのは、おそらく「家族の団欒」という側面だけを切り取った結果であり、また日本伝統の寄せ鍋や戦後発展した焼肉と概念が混同された結果、全員で肉を囲んで食すという点だけに要点が置かれてしまった結果と思われる。
バーベキュー料理あれこれ
もっとも一般的なバーベキューメニューの定番。
食材を火の上で焼くだけの簡単な調理なので、食材を準備して切るだけで済む。
なお先述通り、本式では巨大な肉塊を長時間かけて加熱し、切り分けて食す。
バーベキューと言われてこちらを想起する人も多いだろう。
肉や野菜や輪切りのトウモロコシを一本の串に通し、豪快に焼き上げる。
日本でバーベキューといえば、これを想起される。
浜焼き
焼肉の魚介類版。
おもにイカやホタテなどを焼くが、釣った魚をその場で捌いて焼くのも乙な食べ方。
特に海辺でのバーベキューだと、登場率が跳ね上がる。
アウトドア料理の王様として、こちらも定番。
学校での野外活動授業で、飯盒でご飯を炊いたり、汁気の多いカレーが出来上がる光景は、遠い日の思い出として残っている人も多いだろう。
昨今、注目を集めている新ジャンル。
ホームセンターにも燻製用セットが販売され、気軽に楽しめるようになってきた。
本式からすればこれが本来のバーベキューに近い。
ダッチオーブン
本格バーベキュー上級者の必須アイテム。
ドーム状の大きな蓋が付いた丸い大型の鉄板で、焼き料理はもちろん、蒸し料理や名前通りにオーブン料理も可能なスグレモノ。
これを利用すれば、本格的なパエリアやローストチキンもバーベキューでおこなえるようになる。
焼きマシュマロ
バーベキューにおけるスイーツの鉄板。
串に刺した巨大マシュマロを、火の上で炙って焦がし、ふわふわとろとろの食感を楽しむ。
このほかにも、工夫次第でいろんなバーベキューを楽しむ事が出来る。
バーベキューの“光”と“闇”
一時期は「家族の団欒のかたちの一つ」であり、家々で楽しむ気ふんが日本で強かったバーベキューだが、昨今では友人を集めて行う「気軽なパーティー」として、人気を博している。
この気軽さから若者ウケしている傍ら、ウェイ系どもの狂宴と卑下される面もある(同じ話を、別のイベントでも聞いた事があるような...)。
インドア派、内向的、一人行動好きなオタクにとって、サンサンと輝く陽光の下の集団行動、くっちゃべりは地獄絵図でしかない。
オタクでも人間関係の距離感が丁度いいさっぱりした友情劇なら好むのだが、サザエさん一家のような団欒ならともかく、思春期や若者の集いはそうもいかない。
呼ぶ仲間にしても、昨今は野外における集団での食事に抵抗感を示す人も少なくなく、不意に普段は見えてこない性格的な問題が浮上して、喧嘩が始まるケースも、なぜかバーベキューには多い。
またマナー問題も叫ばれており、気軽に楽しめるようになった半面、脳味噌まで気楽になって後始末を放棄する困った人々も後を絶たない。
あまりにマナーが悪過ぎるせいで、“バーベキュー禁止”となった海水浴場や公園は多く、指定区画を設けてそこでバーベキューをするよう喚起するリゾート地も増えている。
特に花見シーズンと、夏休みのキャンプ場や海水浴場では、盛り上がるだけ盛り上がったらバーベキューコンロまでそのままにして帰るという、呆れた一団まで出没する。
大きな話題となった例として、2017年8月にはとうとう「消火が不十分なまま砂浜に放置されたバーベキュー用の炭を、これに気付かぬまま子供が踏んでしまい両足裏に火傷を負う」という痛々しい事故まで発生した(参考)。
炭は火がついたままのものに砂をかけて隠ぺいするかのような状態であったとされ「消火不十分な上にパッと見ただけでは気付かない」という、ほとんどトラップのような最悪の状態で放置されていたとされる。
一応書いておくと、(種類にもよるが)一度火が点いた炭は砂をかけた程度ではそうそう鎮火しないし、仮に鎮火したとしても水をかけた時と違って温度はほとんど下がらないため、触れると容易に火傷を負う。
こんな事もわからない輩が行うバーベキューなど、子供の火遊びにも劣る愚行でしかない。
近年では、こうした「事前準備や後始末が面倒」という点を解消するため、コンロや炭、鉄板やテーブルなどを会場側が用意してくれているうえに後始末も不要…どころか、果ては肉や野菜も完備(もちろんカット済み)、飲み物や備品その他も全て向こうが手配済みで、利用者は身ひとつで行って飲み食いして帰るだけというバーベキュー場や、それらの機材や食材の準備に場の設営、後片付けにゴミ処理までをもひとつのパッケージとしてレンタルする企業まで出現しており、とうとうオプションで焼いてくれる人を派遣してくれる企業まで出始めた(言うまでもなく、いずれも相応に金がかかるが...)。
「上げ膳据え膳」とはまさにこの事で、「バーベキューを楽しみたいが、面倒臭いのは嫌だ」という現代っ子のニーズに応えた形ではある(加えて、人任せではあるが後始末も行うので、マナー問題にもなりにくい)が、「バーベキューは準備や後片付けも込みで楽しむもの」というこだわり派の意見もあり、「ユニークなビジネス」と評価する声がある一方、「甘やかし過ぎ」「これでは焼肉屋となんら変わらない」という批判もある。
バーベキューを楽しむなら、マナーを守り、お互いに気配りしながら楽しむ精神で臨みたい。
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ブラック企業:休日に社員同士でバーベキューをしている姿をホームページやSNSで発信することがある。