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概要

フレイヤ・ファミリア】所属の団員。主神フレイヤの侍従頭として身の回りの世話を任されている謎の多い人物。姓も二つ名も存在しない事から、『名のなき女神の遣い(ネームレス)』という渾名で呼ばれている。Lv.2の上級冒険者でありながら二つ名を持たないのは、『この子は誰にもなれはしない』と言う理由でフレイヤが断ったらしいが……。

人物像

容姿

右目の部分が隠れている灰色のロングヘアが特徴的な美少女。黒を基調にした、露出を控えるドレス然とした恰好は何処か『魔女』の弟子なんて言葉を彷彿させる。

性格

自らが仕えるフレイヤ以外に対しては無関心かつ冷淡そのもの。フレイヤの眷族達は皆主神に対して絶対の忠誠を誓っているが、その中でもヘルンのフレイヤに対する崇拝は異常で、フレイヤに対して自分の理想を押し付ける姿から『狂神者』と言われたこともある。

その為、フレイヤのお気に入りとなっているベルに対しては他のフレイヤの眷族同様、彼のことを妬ましく思っており、「品の無い顔」「不愉快」と明確に嫌悪の意を示している。ただし、誰に対しても冷酷非情という訳でもなく、オッタルとの修行で連日ボロボロになるアイズを見かねて着替えや水拭きを用意したこともある。

一方で、我儘で気まぐれなフレイヤに振り回されたり、対人能力が皆無な上に喧嘩ばかりしている幹部達の姿に呆れたりと、貧乏くじを引かされる事の多い苦労人でもある。更にどういう訳なのか、【フレイヤ・ファミリア】の本拠に度々訪れるシル・フローヴァの作る料理の味見(毒見)係も務めさせられている。

作中の動向とヘルンの真実

『女神祭』が始まる少し前に【ヘスティア・ファミリア】の本拠に訪れ、ベルに「シルからの恋文」を渡す。この際、初対面のはずのベルに何故か過剰なまでの敵意を向ける。その後はしばらく出番がなかったが…。

ここから先は、物語の重大なネタバレも含まれる為、注意

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──そう、決して許せるものか!!!

貴方と出会ってしまったが為に女神は穢れた!!

貴方のせいで、女神は堕ちようとしている!

私はわかる!私にだけはわかる!あの方さえ知りえない神の御心を、私だけが悟る事ができる!!

だからこそ、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!

貴方が、いやお前が、あの崇高なる女王を変えたのだ!

──どうして先に女神がお前と出会ってしまったのだろう!

私が先に出会っていれば!

こんな未来を知っていたならば!!

女神と出会う前に、私がお前を殺していたのに!!!!

『女神祭』の二日目にて、『変神魔法』の力でシルの姿となり突如ベルに刃を向ける。

かつて貧民街にいた一人の少女が、美しき女神と出会った。

少女の魂の美しさを見込んだ女神は、彼女に対し「これからあなたを助けようと思うけど何か欲しいものはある?」と尋ねた。

それを聞いた少女は、女神に対しこう望んだ…。

「わたしは、あなたになりたいです」

「わたしをやめて、きれいで、あたたかい、あなたになりたいです」

それに対し、少女の願いを聞いた女神はこう言った…。

「それじゃあ、名前をあげる。代わりに貴方の名を私に頂戴?」

その言葉に喜んだ少女は、躊躇いも無く譲り、そして女神の異なる名前である「ヘルン」を得た。自身の名前である「シル」を代償に…。

そう…『女神の付き人』であるヘルンの本当の名前こそがシルだったのである。

また、シルの名を捨て新たな名を得たヘルンには「女神になりたい」という強烈な願望から『ヴァナ・セイズ』という『変神魔法』が発現する。これは自らを女神へと変神する事を可能とし、神威を使えない事を除けばフレイヤの全てを模倣する事の出来る魔法だった。同時にこの魔法にはフレイヤが天界時代に使っていた『娘(シル)』の貌に変わる事が出来るという副作用もあったが、ヘルンと『真名』の交換をしたフレイヤにもこの魔法の恩恵が授かり、『神の力』を使用しなくでもシルの姿へと変わる事が出来るようになる。

フレイヤはこの魔法の効果で『シル』の姿になって『豊穣の女主人』で働くことを決め、自身が『娘』をやっている間は『女神』の影武者をヘルンに任せることを決める。敬愛するフレイヤの影武者を喜んで務めたヘルンだったが、フレイヤがベルと出会った事で状況が大きく動き出す事になる。

ヘルンの『変神魔法』には「フレイヤの感覚や感情すらもそのまま受信してしまう」という特性があり、崇拝する女神がベルに心を奪われ、変わっていく現状を文字通り身をもって感じることになる。この事に業を煮やしたヘルンは「女神であるフレイヤを堕落させない」という大義名分から、自身がフレイヤの怒りを買って殺される可能性も承知の上で、シルに成りすましベルの暗殺を画策するのだが、違和感を感じていたベルにはすぐに偽物だとバレてしまい暗殺は失敗に終わる。

フレイヤと事前に「ベルに嘘が見破られた時、負けを認めること」「嘘が見破られた時点で、ベルに何もしてはならない」「ベルの前に、貴方は二度と姿を現してはいけない」という約定をしていたヘルンは素直にベルから手を引く。本物のシル(フレイヤ)の居場所に関するヒントをベルに与え、彼が去るのを見届けるが、その直後に自らの行動に激怒していたアレンを始めとする【フレイヤ・ファミリア】の幹部達の襲撃を受ける。

重傷を負いながらも自らの持論を声高に叫ぶが、そのあまりにも歪なフレイヤへの狂信と、自らの考えこそが正しいと信じて疑わない陶酔ぶりを目の当たりにした【フレイヤ・ファミリア】の上級団員達を代表するかの様に、アレンからは「てめえは女神のお付きじゃなく、ただの『狂神者』だ」と唾棄される事になるのだった。

その後、フレイヤがオラリオに住む全ての者に『魅了』を施し、「ベルは最初からフレイヤの眷族」という記憶の改竄を行い、ベルを強制的に【フレイヤ・ファミリア】に仮入団させる。また、ベルを殺そうとしたことに何らかの罰が与えられると思ったヘルンだったが、罰しないことが『罰』になるというフレイヤの判断で、これまで通り侍従頭としてフレイヤの付き人になる。

上述のフレイヤとの約定に従い、ベルの前には姿を出さないように注意を払いつつ、フレイヤに変神してオラリオの入り口で都市の外からやって来る人々に『魅了』を施すように命じられた。しかし、フレイヤがリューを捕らえた日の夜、ベルがフレイヤに対して「シルさん?」と呼んだ際に、フレイヤの心に大きな異変が生じたことを『変神魔法』を通じて感知する。ベルを手に入れる為に何もかも捨てることを決意したフレイヤだったが、彼女が心の中で悲しみに暮れ、涙を流し続けている事に気づいたヘルンは、フレイヤを救う為にもう一度だけ裏切者となることを決意する。

ベルが折れた心を持ち直したその日の夜、捕らわれたリューを陽動を条件に脱走を手引きし、約束を破ってベルと対面する。

「どこまで気付いていますか?」

そう問うが、意図が分からず困惑するベル。すると……

「………………………………………………屑」

「……屑、屑っ、屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑屑ッ!!!!!」

「真性の馬鹿を通り越したド屑!! あの方を惑わしておいて! 苦しめておいて! お前は何もわかっていない!? 戯言を抜かすなっ! いい加減にして!!」

突然、爆発したように糾弾・罵詈雑言の嵐で彼を責め始めるヘルン。

「人畜無害を装った淫獣(ケダモノ)!! 無自覚の犯罪者!! 遍く女の敵!! 人類の汚物!! 誠実さと鈍感をはき違えた化物!! 神の失敗があるとすればお前みたいな怪物を生み出した事! 自分より年上ばかり誘惑する原罪の害虫めッ、崇高なる女神まで誑し込んで、恥を知れ!!!!」

「許せない、許せない、許せない!! 私はお前の全てを許せない!! 間抜けな顔も、情けない声もっ、女神を苦しめているその優しさも! やはりあの時、殺しておくべきだった!!!」

今まで溜め込んでいた憎悪を吐き出すかのようにベルを罵り続けるヘルンは、ナイフを取り出して振り回しながらベルに襲い掛かる。ベルはナイフを取り上げようとするが、彼女の一粒の涙を見て動揺した隙に体当たりされて押し倒され、馬乗りにされる。

「嗚呼、憎たらしい! 恨めしい! 殺してやりたい!!」

ナイフを投げ捨ててベルの首に手を掛けようとするヘルン。

「なのにっ――狂おしい! こんなにも、愛おしい!」

だが、手が首に喰い込むことはなかった。

彼女がベルに本当に抱いていたのは『憎悪』ではなく、『愛憎』であった。

「私が先に出会っていれば!」

「こんな未来を知っていたなら!」

「女神と出会う前に、私がお前をっ…………貴方をっ、抱き締めていたのにっ……」

ヘルンは、女神を堕落させたベルを殺したいほど憎んでいたはずなのだが、同時に狂おしい程、本当にベルを愛してしまっていたのである。

運命を呪うかのように慟哭し、隠れていた右眼の薄鈍色の瞳が露わになりながらベルに訴える。

「気付いて……ベルさんっ──」

ヘルンのこの言葉で『シル』、『ヘルン』、そして『フレイヤ』の3人の姿が重なったベルは、遂に彼女たちが同一人物である事に気づく。真実にたどり着いたベルにヘルンは持っていた《ヘスティア・ナイフ》を渡すと、そのまま女神を裏切った償いとして自らをナイフで刺し自害を図る。傷の手当てをしようとするベルを止め、最後の力を振り絞って『変神魔法』で『シル・フローヴァ』の姿になると、自分でも止められない暴走にフレイヤが心の奥底で涙を流し、悲しみ続けていることを伝える。

そして、女神には決して言えない言葉を彼女の代わりに言い放った。

「助けて……ベルさんっ……!!」

『シル』の助けを求める言葉を受けたベルは、彼女達を救うことを決心する。

自分達の想いを受け止めたベルの姿を見て意識を失うヘルン。変神魔法の副作用で傷が塞がれ一命を取り留めると、フレイヤの「ヘルンを決して死なせてはならない」という命でヘイズの治療を受ける。傷は完治したものの、仮死状態のように『シル』の姿のまま眠り続ける事になった。ヘイズはこの状態を、ヘルン自ら覚醒を拒んでいることと、フレイヤが捨てた『シル』を繋ぎとめているのではと推測し、これ以上手の施しようがないと【フレイヤ・ファミリア】の本拠で安静させる事になる。

しかし、ヘルンは仮死状態にもかかわらず、うわ言の様に『豊穣の女主人』の面々に謝罪と助けを求める言葉を呟き続けていた。そして、この言葉はロキの手引きで連れてこられたミア達『豊穣の女主人』の元に届く事になり、彼女たちもシルを助けるべく『派閥大戦』への参戦を決意させる。ベル達の奮闘や『豊穣の女主人』の援軍もあって、『派閥大戦』は【フレイヤ・ファミリア】の敗北が決まる。

『派閥大戦』終結後に目を覚まし、ファミリアの解体とフレイヤのオラリオ追放を言い渡された事を聞く。この決定にヘイズたち他の眷族は泣き崩れたのに対して、ヘルンだけは悲しむ資格など持ち合わせていないように、ぐっと俯いて何かに堪えていた。

そして、オラリオから立ち去ろうとするフレイヤだったが、彼女の前にベルと『豊穣の女主人』の店員達が現れる。シルの正体がフレイヤと知っても一緒にいることを望むリュー達の姿と、フレイヤが二度と間違いを起こさないよう彼女の『騎士』としてずっとそばで見守り続ける事を誓うベルの言葉に、「私は女神をやめたい」「みんなの側で私(シル)でいたい!!」と涙を流しながら『本当の望み』を叫ぶフレイヤ。そんなフレイヤの姿を見届けると、透明な微笑みを浮かべつつ自身もまた涙を流しながら「私達(シル)を救ってくれてありがとう」とベルに感謝を告げた。

その後は、ミアによって他の団員達とともに『豊穣の女主人』に強引に引き取られて給仕をさせられている。ベルに憎悪の視線と罵詈雑言を浴びせつつも、彼から『豊穣の女主人』の制服姿も似合っていると褒められたら赤面したりと、相変わらずベルに対して愛憎入り交じった複雑な感情を抱き続けている。

ヘグニからベルがエイナと一緒にいるという知らせを受けた際、シルが書いた「白兎のもとに妖婦(エイナ)の影あり……急がれたし」という手紙を凍てついた顔でヘスティア達に渡した後、厨房に押し入って刃物を持ち出そうとしたため、ヴェルフに止められて激しい抵抗の末に、意識を刈り取られて抑えられる。

人間関係

敬愛する主神。フレイヤの眷族の中でも一際強い崇敬を抱いており、最早『狂神者』と言える領域にまで達している。『女神』になりたいという願望を抱いた自分に対し、フレイヤは『娘』になりたいという望みを抱くなど、奇しくも正反対の願いを抱いていたヘルンとフレイヤだが、ヘルンが発現した『変神魔法』のおかげで互いの願いが叶うことになる。

自分同様フレイヤに対して強い崇敬を抱いている少女。団員の中でも長い付き合いで、本編から7年前の暗黒期の戦いでも行動を共にしている。ヘルンの言葉遣いが荒れて敬語を忘れるのも彼女の前くらいで、ヘイズからも不器用と思われつつも友人と思われていた。

愛憎入り混じった想いを向ける少年。敬愛する主神の心を奪った彼の事を憎みつつも、『シル』の眼を通してベルの人となりを知る内に何時しか愛情も抱くようになってしまった。現在も彼に対しては複雑な想いを抱いており、その様子を見た神々からは『クール系ヤンデレ美少女のプリティー絵面キター!』と評されている。

自分と同じくベルに対して重たい感情を抱いているエルフの女性。冒険者ランキングのアンケートをしていた彼女と偶然知り合いベルについて話し合うことになるが、自身のベルに対する愛憎入り混じった想いを延々と語り、彼女をドン引きさせている。ちなみに、彼女もベルに好意を抱きつつも、どこぞのエルフと同じくポンコツ行動を起こしているので、思わず「ポンコツエルフ2」というあだ名を付けている。

ステイタス

Lv.2

耐久器用敏捷魔力
H122I94G227H180S998
神器
D

スキル

  • 偽神憲章(デア・カルタ)

詳細不明。

  • 美惑灰光(ヴァナディース・スュール)

詳細不明。

発展アビリティ

  • 神器

詳細不明。

魔法

  • ヴァナ・セイズ

詠唱式:【未到の階梯(かいてい)よ、禁忌の門よ、今日この日、我が身は天の法典に背く。虚ろな魂、浅ましき渇望、交わした真名(まな)のもとに降りろ、神々の娘(むすめ)

ヘルンの「女神になりたい」という強烈な願望から発現した前代未聞の変神魔法。自らをフレイヤに変神することが可能で、『神の力(アルカナム)』こそ使えないが美の権能から派生する『魅了』も行使することが出来る。『賢者』と同じ『禁断の領域』を開く唯一の秘法で、己と主神を含めて多くの者の運命を変える事になった魔法。

装備

  • 兎殺しのナイフ

詳細は不明だが、掌編集の書下ろしSSでそれらしき漆黒の短剣を取り出している。

  • 兎狩の逆脚(ラビット・カース)

呪具らしいが詳細は不明。

余談

  • 名前の由来

ヘルンの名前の由来だが、北欧神話でフレイヤが行方不明の夫・オーズを探す最中に名乗った異名の一つ「Hörn(ホルン)」だと思われる。ちなみにフレイヤは他にも様々な異名を名乗ったが、その中に「Sýr(シル)」という異名もあり、名前の由来からも『シル』『ヘルン』『フレイヤ』の3人が同一人物だったことは示唆されていたことになる。

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  • ダンジョンで幸せを願うのは間違っているだろうか

    流転Ⅲ:正義邂逅 ー《アストレア・ファミリア》ー

    第4話です! まずは盛大な副題詐欺である事を謝罪します。本当はもっと進めるつもりだったんですけど、思ったより文字数が多くなっちゃって……。 あと前半の回想に何をトチ狂っちゃったのか、ねっとりしたR-18描写をぶち込んじゃったので、前半部分をかなり修正、割愛しました(それでも2万字超えとか…)。 投稿頻度上げられるよう、なるべく努力しますので、感想ドシドシ書き込んでくれちゃって下さい。私は今、猛烈に眠い!! これからも応援よろしくお願いします!!
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