カミーユ・ビダン「歯ぁ喰いしばれ! そんな大人!修正してやる!」
概要
修正パンチとは機動戦士Ζガンダム第13話「シャトル発進」にて、主人公のカミーユ・ビダンがエゥーゴのクワトロ・バジーナ大尉を殴り飛ばした鉄拳制裁の事である。
しかも極端に言えば、この作品全体を表す代名詞とも言える行為である。
ジオンのシャアがなんでエゥーゴに手を貸すのです
この時、クワトロ大尉はその正体がジオン公国のエースパイロット「シャア・アズナブル」であること、ひいてはジオン共和国創始者の実子「キャスバル・レム・ダイクン」であることを看破されていた。
本来ならば政治的影響力を持った代表者として行動するのが筋であり、偽名を使ってパイロットに甘んじているシャアは卑怯者であると責められている最中であった。
実際、ブレックス准将と共にエゥーゴを創立したのは他ならぬシャアなのである。そうした幹部が大尉待遇で現場指揮官に甘んじ、だがヘンケン中佐やブライト大佐ら階級が上の者たちと対等以上の発言力を持っているのは実に不自然なのであった。
カイ・シデンからの手紙を元に論理的に問い詰めていくハヤト・コバヤシに対して
「シャアという人がそういう人ならばそうでしょう」「しかし私は、クワトロ・バジーナ大尉です」と、あくまでシャアであることを認めようとせず、聞き耳を立てて割って入ってきたカミーユに対して
「今の私は、クワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でも、それ以下でもない」と、開き直った為にカミーユの怒りが爆発。
論理を投げ捨てた鉄拳制裁に至り、ハヤトもそれを咎める様子すら見せなかった。
殴られたくなければ、自分のミスを無くせ
カミーユがこの暴行に至った理由の一つが、第9話「新しい絆」でウォン・リーから受けた鉄拳制裁とその後の上官二名からの説教である。
増長の兆しを見せていたカミーユは体罰による修正を喰らうが、クワトロ大尉はカミーユを慰めることはせず、上官、または良識ある大人として厳しく窘めていた。
なおも子供っぽくスネるカミーユに、横にいたエマ・シーン中尉が「自分の都合で大人と子供を使い分けないで!」と叱咤し、釈然としない思いを抱えながらもカミーユは気持ちを切り替える。
続く第10話「再会」にて、カミーユはエマから「修正」の意味を「殴って気合を入れること」と聞かされていた。
こうしたやり取りを踏まえたからこそ、カミーユは大人が背負うべき責任から逃れようとしつつシャア・アズナブルとしての存在感も捨てられず、自分の都合でシャアとクワトロの立場を使い分けている卑怯者への怒りを我慢できず、修正せずにはいられなかったのである。
ちなみにカミーユに「修正」の意味を教えたエマ中尉だが、第11話「大気圏突入」では功を焦って編隊行動を無視して突撃、味方機の足を引っぱったあげくアーガマへの後退命令を無視して戦闘を続けた結果、半壊したリック・ディアスで大気圏に突入しかけ、アーガマが危険を顧みず救助したにもかかわらず「地球に降りられましたのに」と口答えしたため、ブライト・ノアに「なんだと!後でブリッジに上がってこい、修正してやる!」とブチ切れられた。
その他
スーパーロボット大戦シリーズでも、ブライト・ノアがスーパーロボット大戦Fではパイロットを投げ出そうとした碇シンジに、スーパーロボット大戦Aではケーン・ワカバが実母であるアオイ・ワカバが人質に取られていたとはいえ一時的に自軍を裏切ったことについて、それぞれに「修正」を加える場面がある。
パンチだけではなく、平手打ちや頭上への拳骨に置き換えられる場合がある。
余談
本作の発表前にも、同じ富野由悠季監督が手掛けた「聖戦士ダンバイン」の9話にて、男勝りな女騎士ガラリア・ニャムヒーと口論になったトッド・ギネスが、ガラリアが高慢な騎士になったり不利になるとしおらしくなって逃げようとするさまを見て「都合で男と女を使い分けんじゃないよ!」と責めるシーンがある(脚本は富田祐弘が担当)。
自己都合で有利な立場を使い分ける者をことさらに卑劣に感じるのが、この頃の富野監督の考え方だったのだろうか。
関連語句
カミーユ・ビダン クワトロ・バジーナ シャア・アズナブル ウォン・リー ブライト・ノア
ポプ子…カミーユの中の人がCVを担当した回で登場したが、途中で割り込んできたある人物の説得で未遂に終わる。
グエル・ジェターク…修正してやる発言をしたガンダムキャラ。
チュアチュリー・パンランチ…実際にカミーユと同様以上の鉄拳制裁を実行したガンダムキャラ。その暴れっぷりに視聴者から令和のカミーユの称号を得ることに。
カミナ…天元突破グレンラガン第13話にて自身が致命傷を負ったことで弟分のシモンが自責の念に駆られるあまり気持ちが折れかける度に彼を殴り飛ばしやるべきことを悟らせている。
親父にもぶたれたことないのに!:直前にブライト・ノアが言った「殴ってなぜ悪いか!」というセリフや一連の件も含めて、本記事やシチュエーションの先駆けとも言えるもの。