品田辰雄
しなだたつお
「ヤクザに振り回されて夢失って────
ヤクザに助けられて夢取り戻すだ? そんなんじゃ俺の夢は戻ってこねえよ」
「勝手に語ってんじゃねえよ こっちはこの15年────
素振り5000回 腕立て腹筋1000回 一日たりとも休んじゃいねえんだ!」
『龍が如く5』の主人公の一人。37歳。
名古屋・錦栄町に住み、性風俗分野のルポライターとして貧乏な生活を送っている。
ボサボサ頭や無精髭が目立つように容姿に無頓着かつ不潔で、服装は茶色の革ジャケットにエンジニアブーツ、白いタンクトップに青いジーンズと質素な身なりをしている。
おまけに金銭面にだらしなく、高利貸しの闇金業者・高杉浩一に140万近い借金をしている。
所謂ダメ人間だが、楽観的かつ飄々とした性格で、底抜けに人懐っこく、錦栄町の人々から親しまれている。
実はこの男、かつて名古屋ワイバーンズ(モデルはおそらく中日ドラゴンズ)に所属していたプロ野球選手で、一軍に昇格したばかりの打席でサヨナラホームランを放つという奇跡を起こしていた。しかし、その直後、野球賭博への関与を問われ、球界を永久追放されてしまい、今に至っている。
東京の神室西高校出身で、東城会六代目会長・堂島大吾とは同級生である。甲子園では一回戦敗退となるものの後に甲子園優勝校となった対戦相手の高校のエースである澤田と激闘を繰り広げた。
高校卒業後、1993年に名古屋ワイバーンズにドラフトで下位指名されてプロ入りする。その後、4年間のファーム生活を経て一軍に初登録され、東京ギガンツ戦で代打として登板した初打席で因縁の澤田相手にホームランを打ち一躍時の人となるかと思われたが、その試合でサインを盗んで野球賭博に関与したという嫌疑をかけられ、「うだつの上がらない二軍上がりの俺がサイン盗んだ程度でホームラン打てたら苦労はしない」と弁明するも聞き入れられず、プロ野球界からの永久追放処分を受けた事で事実上の引退となった。
訳も分からぬまま長年の夢を失った事で、人生に絶望しながら名古屋の街を彷徨い、誰も自分のことを知らない錦栄町に流れ着き、風俗ライターとして現実から逃げるように生きてきた。
それから15年経った現在でも、貧乏な生活に見合わず、筋肉質で立派な体格をしているが、これはプロ野球の事を諦めきれず鍛え続けた結果であり、上記の台詞の通り、素振り5000本と腕立て、腹筋、背筋1000回を欠かさず毎日行なっている。
視力2.0で動体視力には自信があり、バッティングの際には集中力を極限まで高め、投球をスローに捉える"ヒートアイ"を使う事もある。
現在の仕事に関してはパソコンを使わずに手書きで原稿を執筆しており、加えて締め切りにルーズがゆえにその筆致は解読困難なほど悪筆になりがちで、出版社から原稿の内容について再確認を受けることもしばしばである。
学生時代から続けてきた野球で体は鍛えられ、錦栄町ではチンピラやヤクザから身1つで己を守っている。
元野球選手の為身体能力も高く追放されたあともトレーニングを続けていた事から、「泥臭く戦う」という独特の戦闘スタイルを持ち、拳のみを使ったスイングやベースを踏む時のようなスライディングを使ったり経験者ならではの技を使う。
敵に組み付いたり掴みかかったりと、同じくカタギの秋山駿と比べると動き自体は(あくまで喧嘩の強い)常人のできそうな動きの範囲内のものが多い。
野球選手時代からの影響で「道具は大切に扱うもの」とし武器をなるべく壊さずに使う事を得意としている為主人公の中では道具の扱いを得意とし、棒状の武器のみならずナイフや刀も巧みに使いこなす。その刃物の扱いはどう見ても刃物をそう使う機会がない(はずの)カタギには見えず、どの武器も扱い方がかなりエグい。
ただし本人のポリシーもあり、野球のバットだけは「人を殴るものじゃない」と地面に置いてしまう(ゴルフクラブやボウリングの球などは躊躇なく使ってるが)。
固有の絶技である「俺流 流星タックル」は胴に組み付くタックルの姿勢で敵を持ち上げながら前方に押し込んでいく強力な技で、この後に様々な技に派生させることができるが、敵によっては崩される、振りほどかれるなど欠点もある。
ライターとしての仕事を終えたある日、自宅に帰ると、マスクとサングラスで正体を隠した謎の男から「2000万円の報酬で野球賭博事件の真相を探って欲しい」という依頼を受ける。当初は乗り気ではなかった品田だが、高杉から「それならハンマーで指潰して保険金で金返せ(板金屋の機械に指挟まれたって言うんだぞ、と付け加えつつ)」という借金返済の脅しもあり、渋々ながら引き受ける。
東城会と近江連合の幹部が謎の死を遂げ、不穏な空気が流れる錦栄町で真相を追う品田たちだったが、事件は思わぬ方向に進み、やがて名古屋を支配する謎の組織「名古屋組」に行き当たった。
かつて名古屋は東城会と近江連合に二分されており、両組織共に資金源はワイバーンズを中心とした八百長による野球賭博であった。そんな2つの組織を追い出すため、地元住民達の手によって結成されたのが名古屋組だった。
彼らは野球賭博を警察にリークすることで極道組織の資金源を断ち、名古屋から追い出すことを計画。
そのために、八百長や賭博とは無関係なワイバーンズの選手1人を犠牲に、警察が動く様な証拠を捏造することにした。その選手こそが1997年のあの日、サヨナラホームランを打った品田だったのである。
引退後の品田は貧乏ながらも、気の良い地元住民に囲まれ気楽に生きてこられたと思っていたが、実は彼らこそが自分を嵌めた張本人達だという真実を知り、自身の信じていたもの全てに裏切られたと絶望。錦栄町を出て行こうとする。
しかし、高杉が自分のあのホームランボールを拾った観客であり、ファンとして、一人の人間として自分のことを気にかけてくれていた事を知って思い留まる。
その後、名古屋組のリーダーが当時ワイバーンズの監督だった冨士田であること、自身に仕事を託した男の正体が堂島大吾だということを知った品田は、冨士田に会うため大吾と共に東京へと向かおうとする。自宅に高杉に宛てた手紙と例のホームランボール、大吾から貰った2000万円を置いて、新幹線に乗り込むが新聞で澤田の東京ギガンツからワイバーンズへの移籍の記事を見て、真相に気付き、大吾を置いて澤田の元へ駆けつける。
そこで澤田から、ワイバーンズへの移籍は名古屋組二代目襲名を意味すること、富士田が品田に夢を託していたこと、名古屋組の設立には近江連合の神戸黒羽組が関わっていたことを聞かされる。真相を知り過ぎた品田は黒羽組に消されそうになるが、黒羽組を裏切った澤田の助けもあり撃退する。そして、15年前の賭博の件で有耶無耶になってしまったあのホームランの決着をつけるべく、澤田と勝負を行い、再びホームランを打ち取った。
一方その裏で東京にいる富士田もまた因縁に決着をつけるべく真相を書いた告発文をマスコミに送ろうとしていたが、黒羽組関係者らしき人物に殺されてしまう。
その後、品田は澤田から澤村遥の日本ドーム公演で黒羽組が何か事件を起こそうとしている事を聞き大吾に遅れて東京へと向かう。東京では黒羽組の動向がわからない為、公演そのものを中止すべく違約金3億円(と大吾に貰った2000万円)を借りるべくスカイファイナンスに出向き、そこで秋山駿と出会い、遥を預かっている彼と共に舞台裏で何が起こっているのか調べる為、手を組むことになる。
黒羽組は現在の近江連合七代目会長・黒澤翼の古巣であり、大吾が名古屋にまで来て追っていた組織とはこの黒羽組の事であった。大吾は黒羽組が動き出したという事は、黒澤にも動きがあり、黒澤こそが名古屋での東城会幹部の暗殺も含めた全ての事件の黒幕だと考えたのだった。富士田の暗殺もまた自らの正体を明かされそうになった黒澤が行った行為であり、大吾は裏をかいて遂に黒澤と対面するが、更に裏をかかれ、黒澤一派の一人・金井嘉門に背後から撃たれ重傷を負ってしまう。
病院に駆け付けた品田はそこで偶然、近江連合の若頭である渡瀬勝とすれ違い、同じく友人である勝矢を黒澤に撃たれた彼にふと「夢」と「復讐」どちらを選ぶか尋ねられ、間違いなく復讐を取るが、もし死んだ仲間がそれを望んでいないのなら夢を取るし、それが仲間であると答え、渡瀬の進む先を決定付けた。
病院から戻ると秋山と合流しそこで秋山の紹介で桐生一馬や冴島大河と知り合う。最終決戦では元野球選手で球場の構造に詳しい点から遥の護衛を自ら引き受け冴島の援護を受けながら神室町を脱出し日本ドームへと向かう。
事前に予見していたバックスタンドへ向かうと、そこには冴島に恩がある黒澤一派の一人・馬場茂樹が、遥を暗殺するためライフルを構えていた。神室町脱出の際、品田は冴島から伝言を預かっていたが、遥を暗殺する勇気が出ず帰ろうとしていた馬場にケジメを着けさせるために相対する。
撃破後、観客席から見る遥の小ささにかつての自分を重ね、自分もあんなに小さな存在だったのかと沈んだ気分になる。更に馬場の網走刑務所時代の仲間に自殺を阻止され一緒に帰ろうと諭される馬場の姿を見て、自分には帰る居場所があったか郷愁に耽る品田だったが、そこに一本の電話が入る。
電話の相手は高杉からだった。金なら返したという品田に対し高杉は単に心配して電話しただけだと伝え、更に名古屋組の一員だった馴染みのみるくという風俗嬢からの「ゴムなしベッド90分3000円でいいから店に来て」という伝言や、高杉の「借金の完済証明が出せないから戻ってこい」という言葉に自分にも帰る場所があると分かり堪え切れず涙を流すのであった…。
『龍が如くONLINE』では
カード別のキャラクターストーリーでは野球賭博疑惑から10年後の2007年(当時32歳)の品田のエピソードが描かれた。行きつけの定食屋の店主の息子・優太に野球を教える中で発覚した打席に立つことで野球賭博疑惑を掛けられた時のトラウマをフラッシュバックしてしまう癖を、野球を苦手とする優太と共に克服した。
メインストーリーでは第二部「黄龍放浪記」の第二章で登場。
1999年(当時24歳)、野球賭博疑惑から2年、自暴自棄になった品田はホームレスとなり、その日暮らしの生活を送っていたが、ある日、近江連合を破門され訳あってハン・ジュンギと日本中を旅して名古屋に辿り着いた郷田龍司と出会う。龍司は品田の事を知っておりサインを求めるが、品田は逃げてしまう。
次の日、現在の品田の数少ない楽しみであるヘルスへ行った帰りに龍司に声を掛けられ、またしても逃走。今度は追ってこられてしまい、そこで龍司は品田が野球賭博をしていないのは一目で分かったと伝えるが、ホームレスで、更に貯まった金も風俗に使ってしまう様な自分にはサインをする資格などないと答え、その場を去っていった。
一方、龍司も近江連合会長の息子という立場から名古屋組に追われて、そう長く名古屋にいられなくなり、名古屋を立つ前夜、名古屋組に追われながらマジックペンと求人雑誌を持って品田の元へ直行する。またしても言い訳をして逃げようとするに品田に龍司はファン(自分)の前で情けない姿を見せるなと説教し殴り合いの喧嘩に発展。戦いの中で品田は諦めきれないという気持ちに素直になっていく。
それを聞いた龍司は安心し、同じく組織を追放された自分と重ね、夢だけ追いかけて前のめりに死ぬのも悪くないが、のたうち回って生き延びるのも一興だと教え、先日のヘルスから出てきた所の品田の幸せそうな姿から風俗関係の仕事を進める。最後にまたサインを求めると品田も半ば自棄になり求人雑誌の破いたページにサインを残し、それを受け取ると嵐の様に去っていった。
結局、品田が龍司達の名を知る事は無かったが、龍司が残した求人雑誌のページの中には風俗ライターの求人にマーカーが引かれていたのだった。
- 上記の通り品田の物語は『5』で綺麗に完結してしまってる為か主人公でありながら『5』以降はソシャゲの『ONLINE』以外まともな出番がない。
- 本編の主要キャラが歴史上の人物として登場する『維新!』では『5』の主人公達(遥は主人公・坂本龍馬の別荘のみの登場)は物語において重要な役が与えられている中で品田はダンジョン専用のアイテムカードとして登場するという扱いだった。
- 尤もカードそのものの性能は最強クラスであるため、これを優遇とするか不遇とするかは微妙なところである。
- その後、長らくメインシリーズでは音沙汰がなかったものの、『龍が如く8』における桐生のサイドコンテンツ「エンディングノート」にて久しぶりに言及された。
- 桐生は品田を「人生をかけて一つのことに打ち込む男」と評し、その熱量を尊敬しつつ羨ましくも思っていたと独白している。
春日一番…品田と同じく『龍が如く』シリーズの主人公。ただし、品田はバットを一切武器にしないのに対し、春日は積極的にバットを武器にしている。ちなみに、春日が使用しているバットは「勇者シリーズ」というとあるスポーツメーカーが生産したものの流通が少数のうちに倒産してしまったことで希少価値がついたレアモノらしい。
伊藤開司…ギャンブル漫画の主人公。借金でヤクザっぽい闇金業者(ただし本職と嘘をついていた高杉と違いこちらは完全にヤクザである)に追われるダメ人間である点や、楽観的でお人好しである点などが共通している。
だが品田は少なくとも真面目に仕事をして借金を返そうとする気があるのに対し、こちらは仕事にすら就かず、ギャンブルに明け暮れている点が異なる。
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