概要
発行部数は約17万部、山梨県で7割のシェアを誇る新聞紙である。通称は「サンニチ」。
歴史は古く、廃藩置県で山梨県が誕生して間もなお1872年(明治5年)7月に甲府の書籍商である内藤伝右衛が峡中新聞として創刊したのが始まりである。その後「甲府新聞」「甲府日日新聞」と改称し、内藤伝右衛から野口家へ経営権が移され、1881年に現在の紙名に変更。その後は山梨県内の他紙を次々と吸収していき、1967年(昭和42年)にはテレビ山梨関連の株式譲渡に絡み、富士急行系列の山梨時事新聞を吸収したことで県内一紙体制を確立した。
系列には山梨放送をはじめケーブルテレビや旅行会社など様々な企業があり、これらを統括する山日YBSグループを形成している。また、社主の野口家は甲府市長を輩出するなど、政界にも影響のある名門である。なお、野口家は静岡新聞や 静岡放送の大石家と婚姻関係を結ぶなど周辺にも影響を及ぼしている。
2022年7月に創刊150周年を迎えたが、丁度映画ゆるキャン△の公開日だったこともあり、ゆるキャン△を使った特別紙面を発行している。
報道姿勢
県政の御用新聞と称されており、他メディアが県政に批判的論調でも山梨日日新聞だけは県政の意向通りの論調が多い。また、県知事の姿勢により手のひら返しを繰り返しており、その風見鶏っぷりを好ましく思わない者もいる。
例えばヴァンフォーレ甲府の筆頭株主であることから新スタジアム建設に積極的であったが、2019年に就任した知事が白紙を表明した途端まったく触れなくなったり、富士登山鉄道の推進メンバーに入っていることから他メディアが資金面や環境面で懐疑的なのに対し、山梨日日新聞はこれら問題を棚上げして推進を行なっている。
また、先述の通り静岡新聞の社主である大石家と婚姻関係にあるが、大石家に配慮しているのか富士川の汚濁問題や中央新幹線に関して静岡新聞が山梨県に対して批判的記事を書いているのに山梨日日新聞は沈黙を貫いており、汚濁問題で山梨県庁が静岡新聞に対して反論した時も日本経済新聞や産経新聞が大々的に報じたのに対し、山梨日日新聞は誌面で小さく扱ったのみで、WEB版にいたってはまったく触れなかった(このため静岡側からは「山梨日日新聞は都合が悪いことを知っているから報じていない」と言われている)。
社説に関しても引きこもり問題やジェンダーフリーについて積極的に触れ、特にジェンダーフリーについては協賛している信玄公まつりで信玄役を女性に変えている。これについて山梨日日新聞はジェンダーフリーの成果と強調しているが、SNSでは行き過ぎではという指摘も挙がっている。
一方で全国記事には疎く、内容が少ないうえ1日遅れで掲載ということが多い。これは通信社が配信する記事の締め切りが他誌と比べて早いほか、山梨県内に注力しすぎて全国記事の人員が足りないという話もある(一説には山梨県外の取材は静岡新聞に丸投げしており、静岡新聞から得た情報をもとに記事を掲載しているとも)。要は山梨県内でどのようなことが起きてるかだけ知ればよいと言う姿勢で、一種のガラパゴス化を推進している。
このような姿勢もあり、山梨県内のシェア2位である読売新聞からは「山梨に地元紙が1紙だけというのは好ましくない」と異例ともいえる社説を掲載されたことがある。
シェア
このように報道姿勢について色々言われる山梨日日新聞であるが、山梨県内のシェアは2020年時点で56%と2位の読売新聞(9%)を大きく引き離している(実はこれでもシェアは減っており、1980年代は80%台だった時期もあった)。
ここまでシェアを伸ばしている理由として山梨日日新聞は冠婚葬祭の報告が充実している点がある。山梨日日新聞にはお悔み欄以外にも結婚欄というのがあり、誰が結婚をしたかを把握することができる。また無尽に代表されるように「近所はみな兄弟」といわんばかりに冠婚葬祭には気を遣う地域である一方で、山梨県民は面倒臭がりが多いのか山梨日日新聞にしかお悔み報告をしない人が多い。このため他の新聞をとっていた場合通夜や告別式に気付かず、近くを通ったら初めて訃報があったことに慌てふためくことになる。当然すっぽかしたら「知りませんでした」では済まされず村八分不可避案件になる。
その他ではやはり地域記事では全国紙地方版より多く割いているという部分があり、2ページのみのため掲載できる全国紙県内版と比較してもアドバンテージがある。
権力
山梨日日新聞や山梨放送を統括する山日YBSグループは「山梨のメディア王」と称され、あらゆる面で権限を掌握しているとされている。
ケーブルテレビ
山梨県はNHKを除く地方局が2局しかなかったことからネット局がなかったフジテレビやテレビ朝日が山梨に地方局を開局しようとしたが、これに対し競争を恐れた山日YBSグループは再送信用のケーブルテレビ局(日本ネットワークサービス、通称NNS)を設立。当時の郵政省(現在の総務省)は民間によるケーブルテレビ開局は認めていなかったが、山日YBSグループはフジテレビやテレビ朝日を株主として取り込み、山梨県と働きかけて公共物という名目にしたことで特例で認可を受けている。
一方民間のケーブルテレビ事業が認められた後も山梨県内では「公共権の保護」を理由に参入を認めていないことから、JCOMは勿論のことひかりTVも山梨県でのサービスを行なっておらず、競争がないことから工事費は全額契約者負担(10万円)、月額料金も税抜きで3千円(NHK受信料別)となっている。
なお、NNSが山梨県内のケーブルテレビ事業を独占しているというのは正しくなく、一部地域では自治体や地元電器店がケーブルテレビを開局し、NNSが管理している電波塔を間借りして送信している。また、NNSは共同設立した地元政治家が大株式であったが、その政治家が失脚して持ち株を他所へ手放したことで一時期グループから外れたことがある(デジタル化前に山日YBSグループが株を買い戻して再度グループ入り)。
不祥事や騒動など
- 2007年に神戸新聞や西日本新聞などから社説を盗用していたことが発覚。盗用した論説委員長が懲戒解雇になったほか、社主一族である社長が引責辞任する事態となった。
- 但し日刊新聞法では「代表職は社主から輩出しなければならない」との規定があり、山梨日日新聞は社長以外に代表職を置いていなかったことから社長が辞任しても社主一族から社長を選出しなければいけなかった。代わりに就任できるものが当時いなかったことから、社長職を一度空位としたうえで禊が済んだと判断のうえ1年で復帰している。
- 2010年にオープンした複合ビルについて、全国紙の地方版は商業施設の空き具合を危惧する記事を書いたのに対し、山梨日日新聞だけは「賑わう街の顔」と称した提灯記事を書いた。しかし一緒に1人の客に複数の店員が応対する写真を一緒に掲載したことや、半年後に批判に転じたことで複合ビルの問題が挙がるたびにこのことがネタにされている。
- 2018年4月、成績低迷にあえぐヴァンフォーレ甲府のサポーターが監督解任を求めれ居座ったが、一部サポーターが監督解任を求めて多数決をするなど子供のいじめに近い行動が行われた。すると翌日に番記者が「常軌を逸脱した暴挙」「冷静になれ!」とサポーターに対して紙面で説教をおこなっている。これは暴走したサポーターを制するものとして評価があった一方で、野球で例えるならスポーツ報知が巨人ファンを、デイリースポーツが阪神ファンを説教するような行為であり、一新聞メディアが介入しすぎではという意見もあった(説教した番記者であるが、成績が悪いと監督や特定の選手を批判する記事を書いており、今回の説教に対してダブルスタンダードの指摘もあった。なお、2024年1月に異動となり、現在は別の人が番記者をやっている)。
- 2021年8月29日の紙面で本来日曜日であるはずが間違えて月曜日と表記してしまった(この新聞社がよく日付を間違えたことがあるというネタをされることがあるが、山梨日日新聞は本当に間違えてた。なお地方紙では他に四国新聞も日付ミスをやらかしている)。
その他
- 山梨日日新聞社が入居している山梨文化会館は代々木第一体育館や東京都庁を設計した「世界のタンゲ」こと丹下建三が関わっており、その多機能とデザインの良さから丹下氏自身も傑作のひとつとするほどの建物である。ちなみにアニメ傷物語で登場する建物はこの建物をモチーフにしているほか、最臭兵器でも主人公がこの建物の屋上で旗を振って救助を求めている。
- WEB版もあるが有料で、しかも課金しないと表題以外は見れないという徹底ぶりである。Yahoo!ニュースにも一時期掲載していたが「続きはwebサイト(有料)で」と誘導する形をとっており、記事によってはほぼ表題のみという記事もあった。現在は山梨日日新聞としてはYahoo!ニュースから撤退している(代わりに系列の山梨放送のニュースを配信)。
- 1993年に起きた甲府信金OL殺人事件で、犯人は関連誌の「ザ・やまなし」の記者を騙って女性に取材を申し入れておびき寄せていた。女性が遺体で見つかり、記者を騙られた形となった山梨日日新聞は犯人の特定に躍起になり、様々な犯人の特徴を報じ、声紋鑑定での特徴も詳細に掲載していた。
関連項目
ヴァンフォーレ甲府-筆頭株主(親会社ではない)。