作品によって呼称や位置付けは異なる。
以下、「ポケモンのわざ」を代表例として解説を進めるが、同シリーズの場合はどうぐ「パワフルハーブ」で言及がある程度の、ほぼプレイヤー側から定義した俗称となっている。
概要
『ポケモン』シリーズは基本的にターン性RPG方式の戦闘スタイルを採るが、中には「選択(指示)したターンは『溜め』に専念し、次のターンに自動的に放つ」というわざも存在する。
「ソーラービーム」などは典型的な溜め技と言え、1ターン目に光を集め、2ターン目にそれを使って攻撃するわざとなっている。
この手の技は「ハイリスク・ハイリターンな大技」と位置付けられている事がほとんどで、1ターン無防備になってしまう代わりに、2ターン目に強力な効果を発揮する。
「そらをとぶ」や「あなをほる」のように、1ターン目に空中や地中などに身を隠し、2ターン目にそこから攻撃するというタイプもある。
こちらは「身を隠している間は基本的に相手の攻撃が当たらなくなる」という副産物を得られる分、威力は多少落とされる傾向がある。
「パワフルハーブ」の対象外であるため界隈では溜め技扱いされていないが、「ターンの最初に『集中』を始め、ターン中に乱されなければ最後に攻撃する」という性質を持つ「きあいパンチ」なども、一般的には溜め技の一種と言えるだろう。
こうした性質上、攻撃技が多くなる傾向があるが、サポート系の技もなくはない。
例えば「ジオコントロール」は、発動に2ターンかかる代わりに高いバフを得られる変化技として実装されている。
1ターン目にバフをかけ、2ターン目にそれ込みでの攻撃を行う「エレクトロビーム」のような折衷的な技も存在する。
もちろんRPG的な戦闘以外にも同様の概念はある。
ミュウツーが使用する「シャドーボール」は、『ポケモン』本編では一般的な単発攻撃技であるが、『スマブラ』シリーズでは溜め技と扱われており、溜めるほどに威力と当たり判定が大きくなってゆく。
アクション系の作品の場合、溜め方にも個性が出やすく、RPG系と同様に全くの無防備になるものから、中断や溜めない状態での使用が可能なもの、溜めた状態を保持できるもの、溜めを複数回行えるものなどに細分化できる。
例えば『スマブラ』でミュウツーと共演しているベレト/ベレスの「魔弓 フェイルノート」は、「溜めは無しか最大の二段階・無し判定の間のみ中断可・溜めの保持不可・移動不可方向転換一度のみ可」という仕様で、「シャドーボール」より融通が利かないと言える。
ちなみに『スマブラ』では、溜めによって威力が変動する技のみが「ためワザ」と定義されている。
そのため、同じくベレト/ベレスが使用する「魔斧 アイムール」は、明らかに溜めモーションが入るにもかかわらず、威力が固定である事から溜め技扱いされていない。
また、スマッシュ関係の溜めも「スマッシュホールド」として別枠で扱われている。
格闘ゲームを中心に、溜め方もコマンド式になっている場合などもあり、それ自体に技量が必要な反面、入力の仕方によって異なる技に変化させられるといった特有のメリットを生じる事もある。
対戦における扱い
こうした技はエフェクト等も華やかなものが多く、必殺技級の位置付けがなされがちである。
しかし、実際のプレイ、特に対人戦では積極的に使われる事はほとんど無く、「ロマン砲」や「縛りプレイ」などと同一視されている技さえ珍しくない。
何故かと言えば、どうしてもメリットよりもデメリットが上回りがちであるためである。
まず、溜め技の宿命とも言える溜め時間が戦闘において致命的である。自ら長時間の隙を作る以上、その間に相手は妨害でも回避でもいくらでも事前準備ができてしまう。
しかも、基本的に一度溜め始めると次に何が飛んでくるか丸わかりになるので、手の内を明かしているも同然である。対策難度は極めて低い。
『ポケモン』シリーズであれば、有利な相手への交代や「まもる」「みがわり」の使用などが考えられ、そうした手段が無くとも耐え切る自信があるなら「無視してバフがけなどに徹し反撃に備える」という選択肢も生じてくる。要するに試合の主導権を相手に渡してしまうのだ。
そもそも溜め技の多くは溜めと発動が揃って初めて成立するので、途中で倒されてしまうと何も残らない。よって「動き出す前にさっさと処理しておく」という発想をされる事もよくあり、必要以上に被ダメージを稼ぎやすい。無防備になるならば尚更である。
これは『スマブラ』のような多人数戦闘でも同じ事で、しばしば「実質何もしてないのに誰よりもヘイトを集める」という現象が発生している。
ならば小技でも一発でも多く当てる事を考えた方が余程有意義な時間の使い方になるわけで、優先度はますます下がってゆく。
身を隠すタイプであればある程度隙は無くなるが、それでもいつかは戻ってくるので「着地狩り」のような事が起きかねず、即効性が無いという根本的な問題も変わらない。
そのため端から溜め時間の方を主目的にし、TODやスリップダメージの蓄積を狙う時間稼ぎの手段として採用される事の方がむしろ多いくらいである。
それとて万全ではなく、「あなをほる」に対する「じしん」のように、隠れている相手にも当てられるようなメタ的な技や状態などが用意されている場合もある。
「ゴーストダイブ」のように、防御的な行動を貫通する技も出てきてはいるが、それでもメジャーと呼べるものは依然として少ない。
ざっと上げただけでもこれだけの不安要素があるため、溜め技の使用はいかにして隙を隠すかという半ば自分との闘いになっている。
冒頭で触れた「パワフルハーブ」は「溜め時間を無くして瞬時に発動させる」という効果を持つ使い捨てのアイテムであるが、これはポケモンバトルで溜め技を採用する際に必須級のどうぐとして語られるほどである。
メインウェポンに据えると言うよりも、むしろ確実に倒さなければならない相手用に忍ばせる一発限りの切り札と認識されていると言え、同時に「きあいパンチ」が溜め技扱いされない理由に単純な言及の有無以上の深い溝がある事も感じ取れる。
余談
ポケモンにはこの手のわざに何らかの補正や直接的な強化を施す特性は編集時点で存在していない(直接攻撃に分類されるわざはあるので、「かたいツメ」などが適用される例はある)。
なお、特性には2ターンに1度しか行動できない「なまけ」というものも存在するが、それを持った状態で溜め技を使用すると2ターン目になまけてしまい必ず不発になるという本当にただ無駄な行動となる。
『ポケモン』シリーズに限らず、溜め技が漫画やアニメで描写される際はターン制の表現が難しいため、「攻撃準備に時間が掛かる技」と描写されている場合が多い。
「ソーラービーム」には「にほんばれ」(と言うかその結果発生する「はれ」状態)で即射できるようになるという鉄板のコンボが存在するが、そうした手段が取れる技であれば積極的に活用される。媒体が変わっても取り扱いに注意を要する技には変わりが無いということか。
関連項目
ちからをためる:『ドラゴンクエスト』の定番技であるが、同シリーズでは次ターンに行動を再選択しているため、一般的には単発のバフ技と見做される。『スマブラ』にも持ち込んでいるが、扱いは変わっていない。