概要
1985年に劇場公開された、映画ドラえもんの第6作。
独裁者相手の革命戦争と宇宙戦争をモチーフに描いた作品であり、スリルとサスペンスに満ちた展開になっている。
タイトルおよび物語は世界中で大ヒットを飛ばした『STARWARS』をモチーフにしており、そこに『ガリヴァー旅行記』の小人の国・リリパットを混ぜて独自性を出している。
物語の始まり自主制作特撮映画から始まっていることもあって、OPには様々な映画のパロディが織り込まれている。たとえば、スターウォーズのロボットが出演している。また、映画版では「いるだけ」になりがちな骨川スネ夫にスポットを当てた作品でもあり、『アメトーーク』でネタにされたこともある。
テーマソングの『少年期』は武田鉄矢の最高傑作とする評価が高い。
2022年にはリメイク作品『のび太の宇宙小戦争2021』が上映された(公開年とタイトルの誤差については当該項目を参照)。
あらすじ
スネ夫はジャイアン、のび太と組んでSF映画を作っていたが、ヘマをしたのび太を追い出し、出木杉と組むことになる。
仲間外れにされたのび太はドラえもんとしずかを誘い、人形を用いたメルヘン映画を作ろうとする。
しかし、いつもの裏山での撮影中に小さなロケットのようなものを見つけ、その夜にのび太の部屋にパピと名乗る小人が現れる。彼はあのロケットに乗ってやってきた宇宙人だった。
しずかちゃんにも紹介され、パピはスモールライトで小さくなって人形の家でともに遊んだりした。
一方、骨川家の庭で映画を撮影していたスネ夫たちの前に、クジラそっくりの戦艦がから飛来し、セットを熱線で滅茶苦茶に破壊してしまう。
ドラえもんの仕業だと考えたスネ夫はジャイアンと共に野比家に殴り込むが、そこに現れたパピが驚愕の真実を告げる。
パピはピリカ星の元大統領で、クジラ型戦艦はパピに敵対するギルモア政権の宇宙船だったのだ。ギルモアは側近のドラコルル長官と組んでクーデターを起こし、亡命した本来の指導者であるパピを抹殺しようとしていたのだった。
クジラ型宇宙船で地球に辿り着いたドラコルルは無人偵察機を大量に放ってパピを探しだそうとし、彼がしずかの家に潜伏していると突き止めると彼女の家に侵入。ドラコルルはたまたま小さくなって牛乳風呂を堪能していたしずかちゃんを人質として捕まえ、さらにスモールライトも持ち去ってパピを引き渡すようにドラえもんたちに告げ、パピはしずかを救うため自ら出頭し、連れ去られてしまう。
スモールライトを失って元の大きさに戻れなくなったドラえもんたちはパピを救い出すために、パピの愛犬ロコロコとともに小さいまま宇宙船に乗り込み、ピリカ星へと向かうのだった。
世界観・用語
- ピリカ星
宇宙の片隅にある星。
土星のような環が惑星の周りにある。
住民の身長は5cmほどしかなく、顔は人間に似ているが手の指は一本もなく、ヒゲは生えるが髪の毛は生えない。
リメイク版では手にミトンのような指があり、髪の毛も生えている。
英才教育が進んでおり、年齢よりも実力重視の社会構造となっている。そのため10歳未満で大学を卒業することも珍しいことではなく、パピのような少年が大統領になれたのもそのため。
ちなみにピリカとはアイヌ語の「美しい、可愛い」という意味だが、作品が執筆された1983年当時は多くの書物でピリカ=「小さい」と誤訳されていた。
- PCIA
独裁者ギルモア将軍が設立した諜報機関。
長官はドラコルル。
レジスタンスを根絶やしにするために活動を続ける。
この組織含めギルモアの総軍勢は八十万人とされる。
- ラジコン戦車
スネ夫が映画の撮影用に作製したラジコン戦車。
中盤、PCIAに対抗するために天才ヘルメットと技術手袋で改造を施したことで、無人戦闘機を撃墜する戦果を挙げるほどの攻撃力を持つようになった。そして、何より真価は改造を施した強化プラスチックによる耐久性と強度であり、無尽戦闘機に特攻されても傷一つ付かず中の操縦者にも被害が及ばないほど。しかし、終盤にドラコルルが鹵獲したラジコン戦車を解析したことで、受信アンテナが弱点である事を知られてしまい撃墜されてしまう。
リメイク版ではアストロタンクという名前になっており、コックピットのモニターもスマホの画面のようになっていたり、変形機能が搭載されたりとパワーアップしている。こちらは終盤でPCIAの電磁パルスミサイルによって操縦系を破壊されて撃墜されている。
レギュラーキャラクター
- ドラえもん
パピと友達になる。ビッグライトはこの映画中ではポケットに無い様子。
- のび太
パピと友達になる。本作では他作品に比べ、射撃やひみつ道具の活用のアイディアを出したりと言った活躍は控えめ。
- しずか
夢だった牛乳を使ったお風呂に入っているときに誘拐されてしまう。人質交換でパピが連れていかれた責任を感じており、恒例の入浴については以後パピのロケットにお風呂がないことに言及する程度で、ぜいたく言ってる場合じゃないとがまんする。
- ジャイアン
ピリカ星に行く。勇敢なセリフが多く、最終バトルでは決着をつける活躍をする。
- スネ夫
プラモを作っている際には大丈夫だったが、ピリカ星に乗り込む際などでは気弱に泣き叫ぶ。しかしこの作品ではきちんとした活躍の出番がある。
また、一行が別行動時は「ドラえもん・のび太・しずか」・「ジャイアン・スネ夫」の組み合わせが多いが本作は「ドラえもん・のび太・ジャイアン」・「しずか・スネ夫」という珍しい状況があった。
ゲストキャラクター
パピ一派
ピリカ星の大統領。
年齢は地球人ののび太たちと変わらないらしい。
冷静で礼儀正しく、心優しく責任感も強い。映画のキャラクターとしては異例ののび太の両親に素性を明かした上で置いてもらった人物でもある(通常ドラえもん一行以外の世間は事件の兆候すら気づくことがないまま物語を終えることも少なくない)。
パピの飼っている犬で、耳をパタパタさせて空を飛ぶことができる。パピに本星で自由同盟の準備が整ったことを受けて迎えに地球にやってきたが接触前に捕われてしまったので救出の協力を持ちかけたドラえもん達と本星へと向かう
猛烈におしゃべりだが、自分のことを寡黙だと信じて疑わない。
終盤で処刑されそうなパピを救ったのはこの悪癖でもある。(しかし街中を案内中に演説に夢中になって、片付けラッカーの効果が切れてアジトがばれる遠因を作った。この時は「僕がおしゃべりなばっかりに…」と嘆いた)
ピリカ星ではネズミのことを「ネコ」と呼ぶと彼は言っていたが、真偽は不明。
後に『のび太のワンニャン時空伝』にもそれっぽいアトラクションが登場。
元治安大臣で、パピとともに反政府組織・自由同盟を指揮している。
ロコロコ曰くカラオケが趣味だが音痴とのこと。
ギルモア一派
クーデターを起こし、ピリカ星を乗っ取った独裁者。
徹底した監視社会と恐怖政治でピリカ星を支配し、自ら皇帝になろうとしている。
とても用心深く猜疑心も強く、癇癪持ち。
自分の不人気も自覚しており、側近ですら信用していない。
実際にいそうな設定だがモデルは不明(ヒトラーやスターリンは軍人ではなく、軍事クーデターで政権を獲っていない)。
原作・映画公開当時の1985年は冷戦の最終期で東西の独裁者に対する反政府運動が盛り上がっていた時期だった。PCIAはKCIAを連想させ、誘拐しに来るストーリーも金大中事件を想像させる。また、皇帝になろうとした軍人独裁者としては中央アフリカ帝国のジャン=ベデル・ボカサがいる。
また、ドラコルルの性格・言動などはヒムラーよりむしろラインハルト・ハイドリヒを思わせる。
ギルモアの副官で特殊警察PCIAの長官。ドラえもん史上最も知に優れた悪役。位こそ上記のギルモアが上だが、実質的なラスボスはドラコルルである。残忍かつ狡猾な性格で、常に思慮深く冷静。
基本的に体力馬鹿の集まりだったり、どこか抜けたところがあるドラえもん映画の悪役の中でも、ここまで裏の裏を読む敵キャラは存在しないと断言できる。
というか、スモールライトの構造的欠陥を知ってさえいれば間違いなくドラえもんは本作で終わっていた。サイズの違いから直接戦闘能力で行けば下の下の下だが、今なお最強の悪役と推すファンも多い。
ギルモアに対する忠誠心も陰口を叩くなどあまりいいとは言えず、ギルモアにとっても互いの地位と能力を利用しているような描写が見受けられた。パピに一度でも約束を守った覚えがないやつと評されており本人もそれを認めている。
- 作者曰く「ドラえもん映画で一番の策略家であり倒す手を考えるのに苦労した」とのこと。
登場したひみつ道具
関連項目
リメイク版・のび太の宇宙小戦争2021
のび太の空飛ぶ船:グランブルーファンタジーのコラボイベントで、こちらでも前半エピソードで技術手袋と天才ヘルメットが活躍する。