世界基督教統一神霊協会
せかいきりすときょうとういつしんれいきょうかい
名称について
- 日本語:統一教会 とういつきょうかい
- 英語:The Holy Spirit Association for the Unification of World Christianity
- 韓国語:통일교회
- 漢語:統一敎會
かつての教団名の略称は「統一協会」。英語名に由来する「統一教会」の略称が使用されることもある。
しかし現在では世界平和統一家庭連合に法的に改名されており、正式な略称は「家庭連合」となるが、世間一般では未だに統一教会と呼ばれており、マスコミ等では「旧統一教会(家庭連合)」などと呼ばれる。
「家庭連合」への改名は1994年になされているが、日本では2015年8月26日に正式に名称変更が行われた。なお、通常は過去に重大な問題を起こした宗教団体の改名は許可されないが、統一教会は過去に霊感商法などの問題を起こしているにもかかわらず改名が許可された。宗教法人関係の所轄の大臣は文部科学大臣だが、改名の翌年に当時の文部科学大臣だった下村博文が統一教会の関連会社である世界日報より政治献金を受け取っていた事が政治資金収支報告書から判明した。
統一「教」会か統一「協」会か?
前述のように、この教団の(旧名称の)略称の漢字表記は「統一協会」「統一教会」の2通りがあり、どちらも間違いではない。
「統一協会」の呼称は教団の日本語名に由来するもので、古くから教団に批判的な組織は「協会」表記を使う傾向にある。例えば日本共産党の機関紙である「しんぶん赤旗」は一貫して「統一協会」表記を使用しており、この教団に批判的なキリスト教系の宗派・団体も「統一協会」表記を行なっている。「統一教会」の呼称は英語略称である「Unification Church」に由来するもので、マスコミなどではこちらの表記の方が一般的である。この教団自身も「旧名称の略称」として「統一教会」を使う場合が多い。
本記事では特に理由なき限り、この教団の略称を「統一教会」とするが、「統一協会」表記を誤りと主張するものではない。
概要
1954年5月1日に韓国で発祥したキリスト教系宗教団体。「世界の宗教の統一」をその究極の目的とし、韓国を中心とした世界統一を主張している。
一応「プロテスタント」と称しているが、「原罪は姦淫」「イエス・キリストの十字架刑は失敗」「真の救世主は肉体をもって韓国に現れる」という独特の教義を持つので、カトリック・プロテスタント・正教会等の伝統教派からはキリスト教とは別の宗教だと認識されている。また、その規模からエホバの証人、末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)とともに「三大異端」に数えられる。
教祖(創始者)の文鮮明は、神の創造目的は神の三大祝福による天国実現だと考え、神の国を実現しようとした。しかし三位一体を否定し三体同位とでもいうべき神の三柱説を説く(末日聖徒イエス・キリスト教会と違って「聖霊は女性」説をとる)ため、既存教会からは異端視され迫害を受けたので、世界基督教統一神霊協会を創設したのである。
なおカルト宗教の記事にもあるが、教義が伝統的な教派の考えから著しく逸脱していることは、教団の反社会性(カルト性)とはまた別問題である。本教団はLGBTや女性の人権擁護を「文化共産主義」などと吹聴するが、反共的な陰謀論を流布する宗教団体は他にも多くあり、この教団が特に危険な宗教団体とみなされてきた理由は、そういったところにあるわけではない(後述)。
組織
世界本部はニューヨーク(かつては韓国のソウル)にあり、世界193か国に支部(協会)がある。
文鮮明は事業家・実業家としての顔も持ち、韓国では系列企業は「統一グループ」と呼ばれ、財閥の一つとみなされるほどの勢力を誇っている。近年はNGO、NPOなどの非営利組織も使って活動を展開している。
系列の政治団体として、「反共産主義」をその目的とする勝共連合を結成し、本拠地の韓国をはじめ、日本やアメリカ合衆国で教団と一体となった活動を展開している。
なお、台湾では1990年代の李登輝政権下で勢力を拡大、天宙和平統一家庭黨という独自の政党を作っており、カルト扱いはされていない。ロシアでは1990年代にゴルバチョフとの関係を深め大々的な布教活動を行なったが、同時期にロシアに進出したオウム真理教が数々の事件を起こしたことでロシアから締め出されている。
文鮮明は現在の北朝鮮の平安北道出身であり、若い頃にその活動が問題視されて北朝鮮当局に投獄されたことがあったが、後年には南北朝鮮の統一を目指して金日成との関係を築き、「反共」の教義とは裏腹に北朝鮮と接近することになった。
2012年、文鮮明が死去。妻の韓鶴子が組織全体の責任者となり、七男の文亨進派と分裂した。文亨進は世界平和統一聖殿(サンクチュアリ教会)を設立した。このサンクチュアリ教会はドナルド・トランプを強く支持し、アメリカ連邦議会襲撃事件に参加している。
偽装勧誘・マインドコントロールなど様々な違法・脱法的手法を駆使した布教は、特に日本で大きな成功を収め、信徒の数は韓国を上回っているという。当然ながら、発祥の地である韓国を含めた様々な国でカルト宗教と見做され、日本国内でも様々な問題を起こしていたので公安警察の監視対象だったが、第一次安倍政権下の2006年、監視対象から外されている。
日本では、この教団が韓国中心主義を奉じていることと、反日的教義を持つことから「日本からの献金で韓国は潤っていた」などとして韓国へのヘイトスピーチに結び付けられることがあるが、韓国で信徒の多いプロテスタント諸派からは異端・邪教扱いされており、韓国の既存教会は大々的な「反統一教会」キャンペーンを度々展開している。韓国は統一教会以外にも摂理や新天地教会、救援派などのキリスト教系カルト宗教が多くあり、既存教会からすると頭の痛い問題である。
日本での統一教会
もともと勝共連合は統一教会が笹川良一・岸信介らと「反共主義」を旗印に結成したもので、日本の右派勢力(自民党・民社党)とは非常に関係が深く、安倍晋太郎、渡辺美智雄らは選挙において勝共連合・統一教会から公然と支援を受けていた。
初代会長の久保木修己は「美しい国日本の使命」という一見愛国的なスローガンを唱えたが、教団の実態は、韓民族中心主義に基づき日本を搾取するものである。文鮮明は「韓国はアダム(父)国家」「日本はエバ(母)国家でありサタン(悪魔)の国」とし、「日本は韓国と国内外の統一教会に全てを捧げるべき」と説いた(ソース)。
日本ではこの教義に則り、世界で最も激しい資金集めが為されたという(Wikipediaには出典が無いが「教団の運営資金の7割は日本が担っており」と書かれている)。
1960年代ごろから、大学の「原理研究会」(CARP)などを拠点に学生に熱烈な勧誘を行い「マインド・コントロール」などが問題化。1980年代には「先祖の因縁」などと不安を煽り法外な値段で壷を買わせるという霊感商法で資金集めに走り、マインドコントロールから解けた元信者が教団を告訴するなどの事件が起こり、世間に知られるようになった。1992年にはタレントの桜田淳子と体操選手の山崎浩子が教団の決めた相手との「合同結婚式」に参加することを明かし話題となった(山崎は翌年に脱会)。合同結婚式に参加した多くの日本人女性が見も知らぬ外国人と結婚させられ海外に渡っており、オウム真理教による一連の事件が明るみに出る前から異様な教団として知れ渡っていた。
なお、1990年代の日本において、オウム真理教を批判していた人達の多くは、統一教会への批判も行なっており、オウム真理教に取り込まれた人を脱退させる為のマニュアル・ノウハウは、統一教会対策のマニュアル・ノウハウを流用したものであった。これらの点から「オウム真理教など統一教会の下位互換に過ぎない」「統一教会は成功したオウム真理教」という見方も可能であろう。
かつては反共の立場から公然と右派勢力の支援を受けていた統一教会であるが、世間の注目が高まった1990年代に、教団の反社会性が知られるようになったことと、右派・保守層の中で統一教会・勝共連合の韓国中心主義が批判を受けるようになったことから、勝共連合が公然と選挙活動に参加することは控えられるようになった。
しかしその後も、岸の孫である安倍晋三をはじめとする自民党の政治家の秘書に関係者を送り込む(第一次安倍内閣で主席秘書官を務めた井上義行は教団の集会で「信徒」として紹介された)など、政界との関係は変わらず続いていた。なお、公明党の例を挙げるまでもなく政界には宗教との関わりの深い政治家が多くいるし、日本政府も、政党が特定の宗教から支援を受けること自体は「政教分離」の観点からも問題はないという見解を示している。しかし、統一教会の場合は反社会的な問題を多く起こしている「カルト宗教」であり、政治家とのパイプを布教に活用しているため問題視されている。
日本では2019年の消費者契約法改正により霊感商法で結んだ契約は取り消せるようになったが、その後も寄付を巡るトラブルを度々起こしている。関連団体のPure Love Alliance(PLA)は、反児童ポルノを名目にした表現規制運動や、子宮頸がんワクチンに関連して反ワクチン運動に関わったりしている。
なお、8月15日に靖国神社近辺で勧誘を行なっているのが度々目撃されているので、終戦記念日に靖国神社に参拝する人は引っ掛からないように注意が必要である。
裏を返せば、統一教会は「8月15日に靖国神社に参拝するような日本人」の中に自分達の「潜在的な信者」が含まれていると見做している訳である。
安倍晋三銃撃事件
一時期に比べ、世間の話題になることが少なくなっていた統一教会であったが、2022年の参院選の最中、7月8日に発生した安倍晋三銃撃事件で、その名が再び広く知れ渡る事となった。
この事件の容疑者は奈良県警の取り調べに対し「特定の宗教団体」に恨みを持っていたと述べた上で、「母親が宗教団体に多額の寄付をして破産した」、「宗教団体が安倍元総理と密接な関係にあると思っていた。」と供述した。県警はこの宗教団体の名前を発表しなかったが、安倍と統一教会の繋がりはよく知られていたことから、動機が統一教会への恨みであることはほぼ確実視されていた。そして「宗教団体の施設に試し撃ちをした」という容疑者の供述を受け、7月11日に教団の田中富広会長が記者会見を開き、容疑者の母が会員で破産していたことを認め、問題の宗教団体が統一教会であることが確定した。記者会見に出席出来たのは統一教会側が選んだ報道機関のみで、質問は1社につき1つまで、「更問い」(回答内容に疑問点・不明点などがあった場合の追加質問)は無しというものであったが、出席した朝日新聞社の記者の質問により、安倍が射殺された際の聴衆に統一教会の会員が多数いたことが明らかになった。
その様子は教団のYouTube公式チャンネルにアップされているが、地上波のテレビ局でもその一部がニュース番組で流された。この事について
「カルト団体の記者会見をテレビ等がそのまま流すのは危険。カルトの好印象化、ソフトイメージ化、普通の宗教団体っぽく見せることに協力し加担することになりかねない。コロっと人を騙すことなどカルトにとってはお手のもの。詳しい専門家による解説を付けないと、弊害が大きいと思います」
と危惧する声も見られた(九州大学の南野教授のツイート)。
なお、この事件の容疑者をサンクチュアリ教会の信者とする推測があったが、サンクチュアリ教会側はこれを否定している。
家庭連合の関連・偽装団体
- 国際勝共連合(勝共UNITE)
- 原理研究会(CARP)
- 世界平和女性連合(WFWP)
- 世界日報社
- UPI通信社
- ワシントン・タイムズ(米大手紙のワシントン・ポストとは無関係)
- 天宙平和連合(UPF)
- 天宙清平修練苑
- 世界平和連合(FWP)
- 真の家庭運動推進協議会(APTF)
- ユニバーサル・バレエ団
- グローバル・ピース・ファウンデーション(GPF)
- Pure Love Alliance(PLA)
- 日韓トンネル国際ハイウェイ財団
- 平和ボランティア隊(UPeace)
※ワコムは過去に統一教会関連企業であったが、1990年代に経営陣が教団と対立し絶縁している。
関連人物
岸信介 安倍晋太郎 ゴルバチョフ 朴正煕 李登輝 安倍晋三 下村博文 稲田朋美 萩生田光一 中曽根康弘 渡辺美智雄 田沼隆志 福田赳夫:統一教会・勝共連合と関わりが深いとされる政治家(の一部)。
桜田淳子:信者であった芸能人。
関連タグ
幸福の科学 オウム真理教 創価学会 法輪功 日本会議 生長の家 ...政治との関わりの深い宗教団体・宗教右派系団体。
外部リンク
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