概説
「愉快(面白可笑しくする)」を犯罪に結びつけるタイプの人物。
他人を騙したり脅かすことで、周囲に混乱をもたらし、その様を楽しむことを目的としている。
目的はあくまで人が慌てふためく様子を笑うことであり、そのために質の悪い悪戯を計画・実行し、出来るだけ大きな混乱を呼ぶことにある。
よって多くは殺人や窃盗といった重大な犯罪にはあまり手を出そうとせず、陰から混乱する目標の醜態を見てほくそ笑むに留まっている(後述のゾディアック事件が複数の殺人や傷害を起こしているなど全てには当てはまらない)。
「他人の不幸は蜜の味」を、自ら仕掛けていくタイプともいえる。
メディアの発達と共に大規模化しており、特に新聞やラジオなど数日内に情報が世間に伝播する広域メディアの出現、さらにテレビの出現による報道番組の大衆化により、世間の反応がより素早く直接的に判るようになったためと思われる。
「劇場型犯罪」も愉快犯の一面があり、ある意味ではその究極と言える。
実際の犯罪性
愉快犯を罪に問えるかは、実行した内容による。
日常で人を担ぐ程度のものは、個人間のトラブルとして民事裁判にかけるのが精一杯だが、企業へのネガティブキャンペーンを決行した場合は「威力業務妨害」と「名誉毀損罪」で訴えることが可能になる。
悪戯による不慮の事故で怪我人や死者が出た場合は、「過失致死傷罪」や「過失致死罪」、程度によっては「傷害罪」や「殺人罪」が適用されるケースもある。
有名な実例
- ゾディアック事件:1968年〜1974年
- グリコ・森永事件:1984年
- 全日空857便ハイジャック事件:1995年
- 黒子のバスケ脅迫事件:2012年
- ミステリーサークル
- 炎上系YouTuber
- 大半が自己満足と再生回数稼ぎが目的の陳腐な愉快犯である。
創作における愉快犯
現実に存在する愉快犯は、あくまで「他人を揶揄って愉しむ」程度(とはいえ大袈裟なものは罪に問える)が限度だが、創作における愉快犯は極悪な狂人であることが多い。
また、中には本人なりの動機や目的はありながらも、目的よりも手段を重要視して犯行を行ったり、犯行その物を明らかに楽しんでいる等、「無自覚な愉快犯」と言える質の悪い存在もまた多い。
神話の時代からも「トリックスター」の位置付けにあるキャラクターが、愉快犯的な行動を起こすことが多い。しかし起こした事態が、予期せぬ大混乱として自身にも降りかかることになる。
推理小説の黒幕や、2000年代以降の漫画・アニメや特撮におけるラスボス役の多くに、人の不幸を快感にする悪質な愉快犯の傾向が見受けられる。
該当するキャラクター
- ジェームズ・モリアーティ:シャーロック・ホームズシリーズ
- 近代において元祖というべき「犯罪界のナポレオン」。人の暗い心に付け入り、犯罪計画を授けてその有効性の検証を繰り返していた、シャーロック生涯の宿敵。
- 怪人二十面相:明智小五郎・少年探偵団シリーズ
- 近代日本における代表格。自身の理想の美術館を作り上げるべく盗みを繰り返すが、シリーズが長引くにつれて愉快犯的な言動が増えていった。なお先の2名と違い、積極的な殺人は忌避している。
- 怪盗キッド/黒羽快斗:『まじっく快斗』/『名探偵コナン』
- 主に「ビッグジュエル」と呼ばれる宝石を中心に劇場型犯罪の窃盗を繰り返す怪盗。『名探偵コナン』では、主人公・江戸川コナンの宿敵。世間からはアイドルや権力に反抗するヒーローとして扱われるも、自らの窃盗行為を『芸術』と称して悦に入っている等、愉快犯的な側面も強い。幼馴染みの中森青子から「警察に恥をかかせて楽しんでいる愉快犯」と痛烈に批判されて一度自制する様子も見せていたが、その後もビッグジュエルを餌にされたとはいえ、鈴木次郎吉からの挑戦を引き受ける等、やはり犯罪行為を楽しんでいる部分があり、愉快犯的な側面を持っている点は変わらないと言える。
- ジョーカー(バットマン):バットマンシリーズ
- バットマン最大の宿敵であり、「陳腐で平穏な社会を犯罪という“笑い”で染め上げる」ことを愉悦とする、歩く凶悪犯罪装置。前者3名のような計画性は薄く、むしろいつ何を仕出かすか分からないのに極めて確実に混乱をもたらすことこそ、この男の最も恐るべき点である。
- サタラクラ(忍風戦隊ハリケンジャー)
- 性格は陽気なお調子者であるが、自分が楽しいかどうかで行動する自分勝手に命を弄ぶ残忍な性格。配下達の作戦も、ふざけたようなえげつない作戦が多い
- 鬼島夏児/ペガサス・ゾディアーツ(仮面ライダーフォーゼ)
- リブラ・ゾディアーツが落としたゾディアーツスイッチを利用して、自身の扇子を奪った宇津木遥への復讐を計画。彼女が嗜んでいるキックボクシングの技を真似て、スイッチャーがあたかも彼女であるかのように演出していた。ちなみに動機は「面白いから」
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